Astro-E2 搭載 XIS のX線検出効率における

Slides:



Advertisements
Similar presentations
『わかりやすいパターン認 識』 第 5 章 特徴の評価とベイズ誤り確率 5.4 ベイズ誤り確率と最近傍決定則 発表日: 5 月 23 日(金) 発表者:時田 陽一.
Advertisements

2013 年度課題研究 P6 Suzaku によるガンマ線連星 LS I の観測データの解析 2014 年 02 月 24 日 種村剛.
較正用軟X線発生装置のX線強度変化とスペクトル変化
W e l c o m ! いい天気♪ W e l c o m ! 腹減った・・・ 暑い~ 夏だね Hey~!! 暇だ。 急げ~!!
単色X線発生装置の製作 ~X線検出器の試験を目標にして~
「Constraining the neutron star equation of state using XMM-Newton」
Astro-E2搭載X線CCD(XIS) flight model の性能評価
単色X線の応答、線形性 2005/2/25 鳥居研一, XISチーム.
Astro-E2搭載用X線CCDカメラ XISの軟X線領域での較正 (III)
すざく衛星搭載XISのバックグラウンド特性
Astro-E2搭載X線CCD(XIS) BIチップにおける 新しい解析法の構築および応答関数の作成
○山口 弘悦、小山 勝二、中嶋 大(京大)、 馬場 彩、平賀 純子(理研)、 他 すざくSWGチーム
すざく衛星塔載XISの軌道上での較正:検出効率
すざく衛星搭載XISの軌道上での性能:検出効率と応答関数
すざく衛星によるTeV γ線天体HESS J の観測 --dark accelerator?--
「すざく」搭載XISのバックグラウンド ――シミュレーションによる起源の解明
「すざく」搭載X線CCDカメラXISの 放射線バックグラウンドの解析 ーバックグラウンドの起源の解明を目指して−
Astro-E2衛星搭載 XISの データ処理方法の最適化
較正用軟X線発生装置のX線強度変化とスペクトル変化
信号電荷の広がりとデータ処理パラメータの最適化
Astro-E2衛星搭載用X線CCDカメラ(XIS)の軟X線領域における較正
すざく衛星による、2005年9月の太陽活動に起因する太陽風と地球大気の荷電交換反応の観測
信川 正順、小山 勝二、劉 周強、 鶴 剛、松本 浩典 (京大理)
単色X線発生装置の製作 副島 裕一.
Fermi Bubble と銀河中心の巨大構造
信川 正順、福岡 亮輔、 劉 周強、小山 勝二(京大理)
放射光実験施設での散乱X線測定と EGS5シミュレーションとの比較
国際宇宙ステーション搭載全天X線監視装置MAXI/GSCのエネルギー波高値較正実験
全天X線監視装置(MAXI)搭載用CCDカメラ の開発の現状
光電効果と光量子仮説  泊口万里子.
全天X線監視装置(MAXI)搭載用CCDカメラのエンジニアリングモデルの性能
X線天文衛星「すざく」による HESS未同定天体の観測
XMM-Newton 衛星による電波銀河 Fornax A の東ローブの観測
Charmonium Production in Pb-Pb Interactions at 158 GeV/c per Nucleon
X線天文衛星「すざく」搭載X線CCD(XIS)の現状報告
XIS低エネルギー側QE PCのQE、XIS-EUのQEの測定
BIのデータ解析法と 高エネルギー側の検出効率
電子後方散乱の モンテカルロ計算と実験の比較 総研大 桐原 陽一 KEK 波戸 芳仁、平山 英夫、岩瀬 広.
X線CCD検出器 ーCCD‐CREST(deep2)ー の性能評価と性能向上 (京阪修論発表会)
MIT-LL CCID41 CCD with Charge Injection
宇宙線研究室 X線グループ 今こそ、宇宙線研究室へ! NeXT
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
TES型X線マイクロカロリメータ の多素子化の研究
X線CCD新イベント抽出法の 「すざく」データへの適用
X線CCD新イベント抽出法の 「すざく」データへの適用
超高光度赤外線銀河(ULIRGs)中に埋もれたAGNの探査
Astro-E2(すざく)衛星の現状 X線CCD検出器(XIS)
   電荷漏れ補正後の           スプリット閾値の最適化 宮内 智文、XISチーム 大阪大学.
「すざく」搭載XISのバックグラウンド ――シミュレーションによる起源の解明
国際宇宙ステーション搭載全天X線監視装置
ーラインX線天文学の歴史と展望をまじえてー
「すざく」でみた天の川銀河系の中心 多数の輝線を過去最高のエネルギー精度 、統計、S/Nで検出、発見した。 Energy 6 7 8
Astro-E2搭載XISの電荷注入機能を用いた 較正方法の 開発
2005/2/25 (金) 大阪大学 東海林 雅幸、XISチーム
M1M2ゼミ suzaku衛星搭載XISを用いた観測
Introduction to the X-ray Universe
増倍管実装密度の観測量への影響について.
すざく衛星搭載X線CCD(XIS)の現状報告
全天X線監視装置MAXI/GSCの封入ガス、 Xe-L殻吸収端の不連続性の定量的見積もり
X線天文衛星「すざく」搭載 X線CCD(XIS)のバックグラウンド
CHANDRA衛星の観測結果による、 球状星団M4(NGC6121)のスペクトル解析
超高角度分解能X線望遠鏡 Xmas Project
国際宇宙ステーション搭載 全天X線監視装置搭載用CCDカメラ開発の現状
全天X線監視装置(MAXI)搭載 X線CCDカメラの開発の現状2
ASTRO-E2搭載CCDカメラ(XIS)校正システムの改良及び性能評価
Astro-E2搭載用X線CCDカメラXISの軟X線領域での較正 II
次世代X線天文衛 星に向けた 256素子TES型X線 マイクロカロリメータの開発
高次のサンプリングとスプラインを用いた電子エネルギー分布のサンプリング
TES型カロリメータのX線照射実験 宇宙物理実験研究室 新井 秀実.
すざく衛星によるSgr B2 分子雲からのX線放射の 時間変動の観測
Presentation transcript:

Astro-E2 搭載 XIS のX線検出効率における 並木 雅章、林田 清、鳥居 研一、勝田 哲、東海林 雅幸、松浦 大介、宮内 智文、常深 博(阪大理)、 片山 晴善(JAXA)、幸村 孝由(工学院大)、他 Astro-E2 XIS チーム 概要 2005年打ち上げ予定のX線天文衛星Astro-E2には、4台のCCDカメラ (XIS2号機; X-ray Imaging Spectrometer 2) が搭載される。XISはエネルギー範囲0.2--12 keV に感度を持ち、大阪大学では主に0.2--2.2keVの低エネルギー側の較正を行っている。 XIS較正実験の一つの目的は、入射X線エネルギーの関数としての検出効率の測定にある。0.2--2.2 keV という低いエネルギー範囲における検出効率は、主に、電極や保護膜などのX線不感層の構造と厚みによって決定される。これらは、シリコン及び酸化シリコンを原料としているため、酸素やシリコンの吸収端に相当するエネルギーでは検出効率の値が大きなジャンプを持つ。このジャンプは、単純な階段関数で近似されることも多いが、実際には XAFS (X-ray Absorption Fine Structure) と呼ばれる複雑な微細構造をもつことが知られている。 我々の較正実験では、連続X線をグレーテイング分光器を通して XIS-CCD に照射しており、CCD上でのX線入射位置によって入射エネルギーが一意に決定されるために、連続的なX線エネルギーに対する検出効率測定が可能となっている。我々は、特に酸素やシリコンのK殻吸収端付近に着目し、精度のよい測定を行った。結果として、FI型XIS-CCDの検出効率において、酸素のK吸収端付近(0.52--0.58 keV)で顕著な微細構造があることがわかり、例えば0.01 keV 以下の幅で、検出効率が周囲の1/4以下に落ちこむ。シリコンのK吸収端付近(1.85 keV) でも構造が見られるが酸素の場合ほどの強度減少は見られない。また、BI型XIS-CCDでは酸素のK吸収端でもFI型ほど顕著な構造はなく、XAFS の BI型CCDへの影響は少ない。 3. K殻吸収端近傍の構造 1. XAFS (X線吸収微細構造) XAFS とは 元素に固有のX線吸収端近傍に現れる振動構造を XANES (X-ray Absorption Near Edge Structure)、それよりも高いエネルギー側に現れるなだらかな振動構造を EXAFS (Extended X-ray Absorption Fine Structure) と呼び、その両者を合わせて XAFS (X-ray Absorption Fine Structure) と呼ぶ。 表面照射型(FI) CCD、裏面照射型 (BI) CCD によって検出された、酸素K吸収端付近の分散X線スペクトル。緑の点線はXIS-1号機で取得されたデータ。 FI-CCD: 酸素の吸収端付近で鮮明な XAFS 。 BI-CCD: 保護膜(SiO2) を通過しないため、酸素の吸収端による影響はない。 XIS-1号機 (FI): 2号機とほぼ同じ構造を示す。 XAFS の原理 物質中に含まれるある元素の特性吸収端付近のエネルギーを持つX線を照射したとき、一部が吸収され、原子の内核電子を光電子として放出するためのエネルギーとして使われる。放出された光電子は、球面波として振る舞い、周りの原子によって散乱される(上右図参照)。この散乱波と元の球面波が干渉し、吸収係数が変調され、吸収端付近に微細構造が現れる。吸収端のごく近傍においては、光電子の持つエネルギーが小さいために、多重散乱による効果が大きく、複雑な微細構造、XANES が現れる。入射X線のエネルギーが、吸収端から高エネルギー側へ離れるにつれ、振動は緩やかに減衰する (EXAFS) 。 XAFS は、原子の近傍の構造を反映していることから、表面や界面の微小な領域の構造を調べるのに適した方法として広く用いられている(X線吸収分光学)。 シリコンK吸収端付近の分散X線スペクトル。取得条件は、若干異なる。 FI では、約 30% の強度減少が見られるが、酸素の吸収端付近ほど鮮明な XAFS 構造は見られない。また、BI では吸収端に相当する構造は見受けられない。 また、XIS-1号機(点線)との比較では、シリコンの付近でも大きな差異は見られない。 4. XAFS のモデル化 上図は、酸素K吸収端付近の、規格化した分散スペクトル (FM-S2)に、Q.E.を重ねて表示したもの、下図は、FI-CCD の Q.E. からのズレの割合をあらわしたものである。XAFS を細かく区切ったエネルギー範囲にわけ、それぞれをモデルに基づいてフィッティングを行い、エネルギーの関数として求める。例えば、E1 ~ E2 の XANES に相当する区間では、 2. XISの検出効率 XAFS の影響 我々のXIS較正実験の一つの目的は、入射X線エネルギーの関数としての検出効率の測定にある。 X線CCD検出器においては、電極や保護膜などの不感層に用いられている酸素やシリコンのK殻吸収端エネルギー付近にXAFSの影響が現れる。天体からやってくるX線は、このエネルギー付近に、熱的なプラズマ中の高階電離した元素からの輝線など、重要な構造を持つものが多い。したがって、このXAFS の効果を取り入れた検出効率を求め、全ての衛星搭載用センサーについて、より精密な応答関数を構築することが要求されている。    F(E) = A0 ∙ sin (A1 ∙ E 0.5 + A2)     A2 = - A1 ∙ E1 0.5 というモデルが A0、A1、A2 をフリーパラメータとして適用される (Mori et al. 2001, NIMPR A, 459, 191-199)。 暫定的に求められている Q.E. とこの XAFS の結果を合わせ、最終的な検出効率として 衛星搭載用 XIS の応答関数に組み込まれる。 XIS (FI-CCD) の検出効率 阪大実験システムで得られた XIS-EU 及び、XIS FM-S2センサー(ともに表面照射型: FI-CCD)の 0.2 –2.2 keV の検出効率(Q.E.)。実験システムの詳細は W10c (松浦他)、検出効率の詳細な導出方法は W06b (勝田他)を参照。 尚、このモデルではまだ酸素、シリコンの吸収端近傍でのXAFS の影響は取り入れられていない。 5. まとめと今後の予定 • FI-CCD は XAFS の影響により、酸素の吸収端近傍で顕著な微細構造を示す。シリコンの吸収端付近でも構造は見られるが、酸素の場合ほど顕著ではない。 • BI-CCD は、その構造のため XAFS による影響が、いずれの場合も小さい。 • XIS-1号機との比較において、2号機でも同様の振る舞いを示すことから、XIS-1号機で用いられた手法が適用可能。 • 全ての衛星搭載用センサーの XAFS 周辺の検出効率をモデル化し、XIS の応答関数に組み込む。