インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成 第16回理論天文学懇談会シンポジウム 2004年1月6日~8日 京都大学基礎物理学研究所 1. 序 2. Maxwell場とディラトン場との結合 3. 時空の不確定性関係と時空計量の揺らぎ 4. 結語 大阪大学大学院理学研究科 宇宙進化グループ 発表者: 馬場 一晴 共同研究者: 横山 順一
インフレーション期に生成される電磁場の量子揺らぎ 1. 序 No. 2 <観測> (1) 銀河磁場 (Sofue et al. [1986]) (2) 銀河団内の磁場 (Clarke et al. [2001]) :コヒーレンススケール インフレーション期に生成される電磁場の量子揺らぎ
共形不変性を破る物理機構が必要 <問題点> Maxwell理論: 共形変換に対して不変 巨視的な電磁場が生成されない No. 3 <問題点> Maxwell理論: 共形変換に対して不変 〈空間的に平坦なFRW宇宙〉 :スケールファクター :Conformal time 巨視的な電磁場が生成されない 共形不変性を破る物理機構が必要
2‐1 モデル (KB & Yokoyama [2003]) 作用積分: (1) インフレーションを担うインフラトン場 No. 4 2‐1 モデル (KB & Yokoyama [2003]) 作用積分: (1) インフレーションを担うインフラトン場 (2) 高次元時空理論から予言されるディラトン場 (3) 電磁場 :無次元パラメタ :定数 :電磁場テンソル
2‐2 運動方程式(インフレーション期) (1) インフラトン場 Slow-roll インフレーション (2) ディラトン場 No. 5 2‐2 運動方程式(インフレーション期) (1) インフラトン場 Slow-roll インフレーション :Hubble パラメタ (2) ディラトン場 *Friedmann方程式
No. 6 (3) 電磁場
2‐3 ディラトンの進化 [ 振動期 ] [ 振動期以前 ] インフレーション終了時 2‐3 ディラトンの進化 No. 7 ( 付近) [ 振動期以前 ] インフレーション終了時 [ 振動期 ] 再加熱以降, はしばらく指数関数的なポテンシャルに沿って運動する. その後, 付近でポテンシャルが最小値を持つ形に変化し,この最小値付近で, 質量 を持って振動しながら崩壊する. 振動期に, 輻射に比べてディラトンのエネルギー が優勢になる場合 エントロピー生成 ディラトンの崩壊前後でのエントロピー比
インフレーション後のディラトンの進化による寄与 2‐4 磁場のエネルギー密度 No. 8 インフレーション期 瞬間再加熱以降 (1) 電気伝導率 (2) 固有電場 (3) 固有磁場 〈磁場のエネルギー密度〉 で となり, 通常のMaxwell理論が回復. エントロピーの生成により, は薄められる. 〈現在での値〉 インフレーション後のディラトンの進化による寄与
2‐5 現在での磁場の強度 No. 9 <スケール不変> 生成されるエントロピーが比較的少ない場合
3‐1 の値 強い磁場が生成される状況 電磁場との結合項 (1) Slow-rollインフレーション 〈スケール不変〉 3‐1 の値 No. 10 強い磁場が生成される状況 電磁場との結合項 ディラトンポテンシャル (1) Slow-rollインフレーション 〈スケール不変〉 (2) Power-lawインフレーション 〈曲率揺らぎのスペクトル指数〉 インフラトンポテンシャル :無次元パラメタ, :定数 (Peiris et al. [2003])
3‐2 時空の不確定性関係 弦理論から示唆される時空の不確定性関係 時空計量の揺らぎに対する作用積分が変化 3‐2 時空の不確定性関係 No. 11 弦理論から示唆される時空の不確定性関係 時空計量の揺らぎに対する作用積分が変化 (Brandenberger & Ho [2002]) (Yoneya [1989]) :ストリングスケール Power-lawインフレーションの場合, 大きなスケールの揺らぎのパワースペクトルのスペクトル指数が通常に比べて変化する. 宇宙背景輻射(CMB)の非等方性のスペクトルを計算し, WMAPの観測結果を用いて, スケールファクターの指数 のとり得る値の範囲を統計的に評価. (Tsujikawa et al. [2003], Huang & Li [2003]) である可能性もある. 〈スケール不変〉 〈ダイナモの種磁場〉
4. 結語 宇宙における大域的磁場の起源として, Maxwell場とディラトン場との結合を導入し, 電磁場の量子揺らぎの生成と発展を考察. 4. 結語 No. 12 宇宙における大域的磁場の起源として, Maxwell場とディラトン場との結合を導入し, 電磁場の量子揺らぎの生成と発展を考察. インフレーション後もディラトンは進化し, 質量 を持って振動しながら崩壊する場合を考察. 生成するエントロピーが比較的少ない場合: には, の磁場が生成され得る. 生成するエントロピーが比較的多い場合: であっても, の磁場が生成され得る. 銀河ダイナモ作用の有効な種磁場となる. Power-lawインフレーションの場合, 弦理論から示唆される時空の不確定性関係を考慮すると, 観測的に興味深い強度の磁場が生成される場合の は, より小さな値をとり得る可能性がある.