3.8m新技術望遠鏡を用いた 超新星爆発の観測提案 -1-2mクラス望遠鏡による成果を受けて-

Slides:



Advertisements
Similar presentations
第 21 章 私たちはひとりぼっち か? 宇宙の生存可能性についての疑 問
Advertisements

~ファーストスターを探 れ!~ 第 9 回きみっしょん A 班 相羽祇亮(高1) 栃木県立宇都宮高 校 飯田美幸(高2) 茨城県立竹園高校 栗原佑典(高2) 埼玉県立熊谷高校 小林千鶴(高2) 愛媛県立松山中央 高校 永井悠真(高2) 埼玉県立浦和北高 校 福本菜々美(高1) 私立済美高校.
初期に複数のピークを示す古典新星 のスペクトルの変化 1 田中淳平、野上大作 ( 京都大学 ) 藤井貢 ( 藤井美星観測所 ) 、綾仁一哉 ( 美星天文台 ) 大島修 ( 水島工業高校 ) 、川端哲也 ( 名古屋大学 )
新星は新たな宇宙線の起源 か? 武井大、北本俊二 ( 立教大学 ) 、辻本匡弘 (JAXA) 、 Jan-Uwe Ness (ES A) Jeremy J. Drake (SAO) 、高橋弘充 ( 広島大学 ) 、向井浩二 (NASA) アメリカ天文学会研究報告誌より論文として発表 ( Takei et.
宇宙のはじまり ー 地球・生命の起源をもとめ て ー 野沢 貴也 東京大学 国際高等研究所 数物連携宇宙研究機構( IPMU ) 葛飾区郷土と天文の博物館 第61回 星の講演会 2011年10 月29日.
日本学術会議マスタープランへの提案 ガンマ線バーストを用いた初期宇宙探査計画 HiZ-GUNDAM 主査: 米徳 大輔(金沢大学) HiZ-GUNDAM WG 光赤天連シンポジウム「光赤外将来計画:将来計画のとりまとめ」( 2016/02/09 – 10 国立天文台.
ところで一般相対性理論によれば、太陽を半径3 kmにまで 圧縮したらブラックホールになるらしい。どんな世界なのか?
X線で宇宙を見る ようこそ 講演会に 京大の研究
- Dark Energy in Dark Age -
国立天文台 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
神岡宇宙素粒子研究施設の将来 Future of the Kamioka Observatory
中小口径望遠鏡を用いた超新星を はじめとする突発天体観測とその未来
新星:変わりものランキング 加藤 万里子 (慶応大).
第6回 制動放射 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
大学共同利用機関と大学間連携による研究・教育協力の強化
科学概論 2004年12月9日
プロポーザル準備/観測準備 ダストをたくさん持つ銀河 の赤外線分光観測の例 国立天文台 今西昌俊.
JAXA宇宙科学研究所 海老沢 研、辻本 匡宏 西はりま天文台 森鼻 久美子
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
南極からの新赤外線天文学の創成 南極内陸は、ブリザードがなく、非常に穏やかな、地球上で最も星空の美しい場所です。この場所で私たちは新しい赤外線天文学を展開します 宇宙初期の広域銀河地図を作って、私たちの銀河系の生い立ちを解明します 137億年前 100億年前 宇宙の果て 最初の星が生まれ、銀河が成長した時代.
「Constraining the neutron star equation of state using XMM-Newton」
謎の惑星スーパーアースを探れ! 国立天文台・成田憲保.
Nova in M31: b b: 山中雅之(広島大)、新井彰(京産大)、かなた望遠鏡グループ
恒 星 葛飾区郷土と天文の博物館 天文学入門講座 第5回 担当 高梨直紘.
トランジット法による低温度星まわりの地球型惑星探索と大気調査
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
WISHによるhigh-z QSOs 探査案 WISH Science Meeting (10 Mar. 三鷹
赤外線で見る宇宙の始め 京都大学 理学部 舞原 俊憲
銀河物理学特論 I: 講義1-2:銀河の輝線診断 Tremonti et al. 2004, ApJ, 613, 898
すばる望遠鏡を用いた 太陽系外惑星系の観測的研究
宇宙の一番星が見えてきた ─ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールドで 発見された131億光年彼方の銀河は一味違う─
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの力学的安定性 星間ガスの力学的な安定性・不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
土野恭輔 08s1-024 明星大学理工学部物理学科天文学研究室
国立天文台 光赤外研究部 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
かなた望遠鏡/TRISPECによる変動天体観測
邑久(おく)天文台サーベイによる新変光天体の検出 中島洋一郎 、大倉信雄 (MISAOプロジェクト)
宇宙観の変遷 膨張する宇宙 超新星と観測的宇宙論 天文学入門講座 「宇宙論入門」 2005年5月7日
Type Ia SN 2014J D 高木 勝俊 ・ Zheng et al. 2014
重力・重力波物理学 安東 正樹 (京都大学 理学系研究科) GCOE特別講義 (2011年11月15-17日, 京都大学) イラスト
銀河・銀河系天文学 星間物理学 鹿児島大学宇宙コース 祖父江義明 .
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
水素核融合炉 7MeV/n.
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
星の進化と元素の起源 -我々はどこからきたのか-
COSMOS天域における ライマンブレーク銀河の形態
論文紹介 Type IIn supernovae at redshift Z ≒ 2 from archival data (Cooke et al. 2009) 九州大学  坂根 悠介.
東邦大学理学部物理学科 宇宙・素粒子教室 上村 洸太
小型JASMINE計画の状況       矢野太平(国立天文台)       丹羽佳人(京大).
科学概論 2005年1月20日
S5(理論宇宙物理学) 教 授 嶺重 慎 (ブラックホール)-4号館409 准教授 前田 啓一(超新星/物質循環)-4号館501
瀬戸直樹(京大理) DECIGO WS 名古屋大学
宇宙線研究室 X線グループ 今こそ、宇宙線研究室へ! NeXT
超新星爆発.
超高光度赤外線銀河(ULIRGs)中に埋もれたAGNの探査
銀河座 12月番組 製作:高梨 ダークが支配 我が宇宙 2011年度 ノーベル物理学賞 解説.
京大岡山 3.8m 新技術望遠鏡 東アジア最大の望遠鏡計画 この望遠鏡で用いられる3つの新技術
京大岡山 3.8m 新技術望遠鏡 東アジア最大の望遠鏡計画 この望遠鏡で用いられる3つの新技術
大学院ガイダンス(柏キャンパス) 2011年6月11日 岸本 康宏
Introduction to the X-ray Universe
スターバースト銀河NGC253の 電波スーパーバブルとX線放射の関係
MOAデータベースを使った セファイド変光星の周期光度関係と 距離測定
COSMOS天域における赤方偏移0.24のHα輝線銀河の性質
理論的意義 at Kamioka Arafune, Jiro
星間物理学 講義7資料: 物質の輪廻と銀河の進化 銀河の化学進化についての定式化
形成期の楕円銀河 (サブミリ銀河) Arp220.
OAO/MITSuME photometry of SU UMa
BH science for Astro-E2/HXD and NeXT mission
望遠鏡技術検討会 (2013/2/9) 京大3.8m望遠鏡用 面分光装置開発 松林 和也 (京都大学)
どんな天体がX線を出すか? MAXIのデータを1年半に わたり集積した全天X線画像
Presentation transcript:

3.8m新技術望遠鏡を用いた 超新星爆発の観測提案 -1-2mクラス望遠鏡による成果を受けて- 山中雅之 (京都大学) 京都大学3.8m望遠鏡技術検討会 @ 京都キャンパスプラザ2014. 04. 12. Sat

私からの話題 Ia型超新星が与えた天文学(宇宙論)へのインパクト 0.5 – 2.0m 望遠鏡による連携観測の成果 : -スーパーチャンドラセカール超新星の発見 では、残された未解決問題は何か? 3.8m望遠鏡で正体不明の超新星の正体を暴く。

Ia型超新星爆発 白色矮星とチャンドラセカール限界質量 白色矮星とは… 典型的な星 チャンドラセカール限界質量 近接連星系の場合、 白色矮星の質量は増加する。 重力が量子力学的力に勝る チャンドラセカール限界質量 ~太陽の1.4倍の質量 白色矮星とは… ある量子力学的な力で支えられた極めて高密度の星(炭素酸素から成る。) 地球程度のサイズで太陽程度の質量 Ia型超新星爆発 似たような質量で爆発するので、似たような光度で輝く

Ia型超新星を使った、遠方銀河の距離測定 膨張加速 膨張速度一定 光度から求めた距離 Suzuki et al. 2012 赤方偏移 (後退速度)

2011年度 ノーベル物理学賞: “遠方の超新星爆発の観測による宇宙の加速膨張の発見” Adam Riess Brian Schmidt Saul Perlmutter

0.5-2.0mクラス望遠鏡を使った成果例: ━史上最も明るいIa型超新星爆発━ SN 2009dcを可視近赤外で観測 3例目となるスーパー チャンドラセカール超新星

事の始まり:スーパーチャンドラ候補 超新星の発見報告 4月9.31日(世界時)、おおよそ3億光年の距離の銀河にて発見。 4月16日 :Ia型超新星に似ている+炭素を確認 ⇒過去に観測されている極めて明るい SN 2006gzによく似ている。 もし、スーパーチャンドラセカール超新星なら3例目の発見!? 4月17日 (当時) 東京大の田中雅臣氏から連絡 ⇒ 翌晩にも広島大1.5mかなた望遠鏡で観測、増光を確認:  爆発して間もない ⇒ 国内の中小口径望遠鏡での観測を依頼 過去2例に比べて近い距離の銀河で発生 ->従来の描像に新しい側面を見出すことができるかもしれない!

史上最も多くの放射起源物質を作ったIa型超新星 明るさの変化と放射起源物質 ● 09dc(吸収あり) × 09dc(吸収なし) かなた望遠鏡 1.5m ― 06gz -- 05cf 吸収を無視 : 1.3 +/- 0.3 太陽質量 吸収を仮定 : 2.0+/- 0.5 太陽質量 例)平均的な超新星:0.8 太陽質量 (白色矮星のチャンドラセカール 限界質量:1.4M8) Yamanaka et al. 2009 史上最も多くの放射起源物質を作ったIa型超新星

C Ni,Fe Ni,Fe 普通は見られない炭素を同定 Si,S,Ca Typical SN Ia SN 2009dc ぐんま天文台 1.5m Ni,Fe Ni,Fe Yamanaka et al. 2009 炭素が長期間見られた ⇒非常に厚い炭素層 炭素:白色矮星起源物質 ⇒非常に重い白色矮星質量を示唆 超新星 炭素の吸収線 SN 2009dc 極大5日後まで SN 2006gz 極大11日前まで SN 2003du (typical) 見られない。 Si,S,Ca

史上最も明るいIa型超新星の発見 2009年9月14日付け各社新聞 日本経済 新聞 中国新聞 読売新聞

ところが1年後の観測で新たな謎が 標準モデルよりも暗い 特殊なモデルよりもまだ暗い いくつかのシナリオ… ⇒ 固体微粒子生成の 8.2m すばる望遠鏡 標準モデル(SN 2009dc) 標準モデル(平均Ia型) ある特殊なモデル 標準モデルよりも暗い 特殊なモデルよりもまだ暗い SN 2009dc いくつかのシナリオ… ⇒ 固体微粒子生成の 可能性がもっともありそう? 平均的なIa型 直接的な証拠は無い -> 100~300日の振る舞いを知りたい 山中博士論文(2010) すばる望遠鏡による観測 たったの1~2夜/年

現状でのスーパーチャンドラセカール超新星の描像と未解決問題 明るさの変化をどう説明するか? 最も外側は本当に炭素か? より初期でも単調増光か? ダストは本当に生成されたのか? そして爆発天体の正体は? 天文月報2010年10月号

爆発した天体の正体は? ? 高速回転白色矮星 白色矮星同士の合体

3.8m望遠鏡を使って、 実施したい観測 ① より長期間に渡って、明るさの変化を追う -> モデルの再構築 ② 増光期の観測 標準モデル(SN 2009dc) 標準モデル(平均Ia型) ある特殊なモデル SN 2009dc ① より長期間に渡って、明るさの変化を追う -> モデルの再構築 平均的なIa型 ② 増光期の観測 -> より外層の物質 -> 爆発した天体の正体 ③ 近赤外線での観測 -> ダスト生成に制限 山中博士論文(2010)

3.8m望遠鏡による観測戦略 + 明るさの変化と元素の観測 アマチュア天文家 国内外観測所のサポート体制 広視野超新星探索 (例えば木曽観測所) + 明るさの変化と元素の観測 早期発見 アマチュア天文家 国内外観測所のサポート体制

まとめ 1-2mクラス望遠鏡を用いて、とても奇妙な超新星が発見されつつある。 ところが、多くの未解決問題が残される。

超新星の発見数