双極性(感情)障害の薬物療法
双極性障害の治療動向 欧米ではもっとも注目される心の病気に 双極性障害の診断の範囲も広がる傾向 新たな治療薬の開発も盛んである アメリカでは推定患者数も急激に増えている うつ病と診断されているケースが多い 新たな治療薬の開発も盛んである 小児や思春期に対する試験も行われている
双極性障害は うつ病から始まる方が多いので注意が必要 慢性の病気で、長期の治療が必要 躁よりもうつ病のエピソード方が数も多く、長く続く 再発予防を行っても、うつ病相の再発が躁よりも多い 慢性の病気で、長期の治療が必要 予防しないと再発しやすい 適切に治療しないと、再発の間隔が短くなる
気分の変動と気分障害
双極性障害の薬物治療の現状 気分の高揚が目立たず、うつ病として抗うつ薬だけが出されているー単極性のうつ病との誤診が多い 不安定化(なかなか安定した状態にならない) 気分安定薬の併用が欠かせない 中には再発の多い急速交代型(ラピッドサイクリング)に移行 急速交代型では抗うつ薬の中止も必要になる 双極性障害の診断治療を受けているが、なかなか安定しない
診断治療を受けているのに不調 躁を抑えることに主眼が置かれ、軽いうつが続いている 通院服薬はしているが再発してしまう QOLの低下 自殺のリスク 通院服薬はしているが再発してしまう 薬を医師から指示された通り、きちんと服用していない きちんと服用しているのに再発してしまう 1種類の薬でコントロールできれば理想的ではあるが、現実には2-3種類の併用が必要な場合が多い
なぜ双極性のうつが注目されるのか 長期に気分の変化を記録してみると うつの週が人生のかなりを占め、気分の高揚した 週は少ない 病気による人生への悪影響 対人関係のトラブル、職業上の困難 自殺 一生の間でみると約 15% にも うつのときだけでなく、躁とうつの混じった混合状態が危険
双極性障害患者は 平均して人生の1/3 を うつ症状で過ごす 気分の状態 気分高揚:躁・軽躁 急速交代 ごく軽いうつ 正常気分 慢性軽うつ うつ NIMH の研究データ 、2002
双極性感情障害の治療法 いわゆる気分安定(化)薬 リチウム バルプロ酸 カルバマゼピン 抗けいれん薬(気分安定薬候補) ラモトリジン リチウム バルプロ酸 カルバマゼピン 抗けいれん薬(気分安定薬候補) ラモトリジン ギャバペンチン 第二、第三世代の抗精神病薬 クロザピン オランザピン リスペリドン クエチアピン ジプラシドン アリピプラゾール 心理面からの治療法 認知行動療法(CBT) その他の心理社会的 治療アプローチ 薬以外の身体的治療 電気けいれん療法(ECT) 光線療法 磁気刺激(TMS) 迷走神経刺激(VNS) (?)
治療のゴールは、一回の躁やうつの波を抑えることよりも、長期の安定化である
双極性障害治療の2つのステージ 第一段階:躁やうつの急性期治療 第二段階:躁とうつのエピソードの再発防止 重い躁(妄想や攻撃性、暴力を伴う) 機嫌の良い多幸的な躁 軽い躁 躁うつが混じった混合状態、 うつ 急速交代型 第二段階:躁とうつのエピソードの再発防止 むしろこちらが重要 完全に再発がなくなることが理想 再発までの間隔が長くなり、症状が軽くなる
急性期の治療 ー状態により選択する薬が異なるー 重い躁(妄想や激しい興奮、攻撃性、暴力を伴う) 機嫌の良い多幸的な躁 軽い躁 躁とうつが混じった混合状態(見かけ上はいらいらの強いうつ) 急速交代型ラピッドサイクリング
状態別の薬の選択(1) 重い躁(妄想や激しい興奮、攻撃性を伴う) 新しいタイプの抗精神病薬(オランザピン、リスペリドン、クエチアピン)かバルプロ酸、その併用 さらに鎮静させる必要があるときは、ロラゼパム、クロナゼパムなどの効果の強い抗不安薬を短期間併用する 古いタイプの抗精神病薬は過度の鎮静、パーキンソン症状、うつ転などの副作用が出易い クロナゼパムの錠剤
状態別の薬の選択(2) 機嫌の良い多幸的な躁, 軽い躁 躁とうつが混じった混合状態(見かけ上はいらいらの強いうつ) リチウムを単独で 躁とうつが混じった混合状態(見かけ上はいらいらの強いうつ) バルプロ酸を 急速交代型ラピッドサイクリング 抗うつ薬を徐々に減らして中止し、バルプロ酸に 効果不十分であれば2-3種類の気分安定作用のある薬の併用に
状態別の治療(3) うつ病エピソード まずは主剤の気分安定薬を十分に用いる ラピッドサイクリングの可能性がないかチェックする 一ヶ月以上慢性的にうつ状態が持続する場合は抗うつ薬の服用を考慮する かならず気分安定薬と併用する 抗うつ薬だけの服用は波が多くなるので避ける(特に古いタイプの三環系抗うつ薬は躁にスィッチする危険が高いので避ける) リスクの低いSSRI, SRNI, ブプロピオン(わが国では試験中)を用いる 症状によっては非定型(新世代)の抗精神病薬も考慮する 古いタイプの抗精神病薬では逆にうつに転じるリスクも
双極性感情障害の治療法 いわゆる気分安定(化)薬 リチウム バルプロ酸 カルバマゼピン 抗けいれん薬(気分安定薬候補) ラモトリジン リチウム バルプロ酸 カルバマゼピン 抗けいれん薬(気分安定薬候補) ラモトリジン ギャバペンチン 第二、第三世代の抗精神病薬 クロザピン オランザピン リスペリドン クエチアピン ジプラシドン アリピプラゾール 心理面からの治療法 認知行動療法(CBT) その他の心理社会的 治療アプローチ 薬以外の身体的治療 電気けいれん療法(ECT) 光線療法 磁気刺激(TMS) 迷走神経刺激(VNS) (?)
第二段階: 躁とうつのエピソードの再発防止 気分の波の安定化 むしろこちらが重要 ムードスタビライザー(気分安定薬)の服用だけでなく、心理社会的な面からの注意も欠かせない 現時点では本当の意味でムードスタビライザーと呼べる薬物は存在していない リチウムが現時点ではもっとも、それに近い薬剤
双極性障害治療の基本薬 ムードスタビライザー 双極性障害治療の基本となる薬 躁うつ治療・再発予防薬のこと その定義はあいまいである 本当の意味でムードスタビライザーといえる薬はない 抗躁薬と呼ぶべき薬も、マーケティング上そう呼ぶ傾向がある 現時点では かなりそういえるのはリチウム(微量の金属元素) 次がバルプロ酸(元来はてんかんの治療薬) その次がカルバマゼピン(同じくてんかんの治療薬)
理想のムードスタビライザー 躁に効く うつに効く 副作用が少ない 安全性が高い
4種のムードスタビライザー候補
リチウムといえば
リチウム元素とは