化学療法学 抗ウイルス薬
ウイルス疾患に対する化学療法 DNAウイルス ヘルペスウイルス科 単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1) 口唇ヘルペス 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV) 水痘,帯状疱疹 ヒトサイトメガロウイルス(HCMV) サイトメガロウイルス網膜炎 ヘパドナウイルス科 B型肝炎ウイルス(HBV) B型肝炎 RNAウイルス フラビウイルス科 C型肝炎ウイルス(HCV) C型肝炎 レトロウイルス科 ヒト免疫不全ウイルス(HIV) AIDS オルトミクソウイルス科 インフルエンザウイルス インフルエンザ
抗ヘルペスウイルス薬
アシクロビルの発見 アシクロビル ガンシクロビル 単純疱疹,帯状疱疹,水痘(注射,経口) ウイルスのチミジンキナーゼでリン酸化され,感染細胞のDNA合成を阻害 副作用(弱い) 胃腸症状(下痢や吐き気),皮膚症状(発疹など),眩暈,眠気,頭痛 稀に腎障害,意識障害 アシクロビル AIDS,臓器移植,悪性腫瘍におけるHCMV感染症(注射) HCMV網膜炎(経口) ウイルスのホスホトランスフェラーゼでリン酸化され, 感染細胞のDNA合成を阻害 副作用(強い) 消化器症状(下痢,悪心,腹痛,食欲不振),発熱,発疹 白血球減少,血小板減少 ガンシクロビル
DNA合成阻害 デオキシグアノシン アシクロビル ガンシクロビル dGTP アシクロビル トリリン酸 ガンシクロビル トリリン酸 HCMV ヒト チミジンキナーゼ HSV チミジンキナーゼ HCMV ホスホトランスフェラーゼ dGTP アシクロビル トリリン酸 ガンシクロビル トリリン酸 DNA合成阻害
抗ヘルペスウイルス薬(プロドラッグ) バラシクロビル(経口) バルガンシクロビル(経口) 単純疱疹,帯状疱疹,水痘 アシクロビルのプロドラッグ 吸収効率向上・・・1日2~3回服用(アシクロビルは5回) 副作用 胃腸症状,皮膚症状,めまいや眠気,頭痛 稀に腎障害,意識障害 バラシクロビル(経口) AIDS患者におけるHCMV網膜炎 ガンシクロビルのプロドラッグ・・・吸収率向上 副作用 血液障害(白血球減少,赤血球減少,血小板減少) 精神神経障害(頭痛,眩暈,不眠,思考異常,不安感 ) 悪心,嘔吐,下痢,発熱,腹痛,発疹 バルガンシクロビル(経口)
抗ヘルペスウイルス薬(プロドラッグ) ファムシクロビル(経口) (ペンシクロビル) 帯状疱疹,単純疱疹 ペンシクロビルのプロドラッグ ペンシクロビルはチミジンキナーゼでリン酸化された後 ペンシクロビルトリリン酸となり,DNA合成を阻害する 副作用 頭痛,下痢,吐き気,発疹 精神神経系障害(幻覚,錯乱など) 腎機能障害患者における血中濃度上昇
その他の抗ヘルペスウイルス薬 ビダラビン ヘルペス脳炎,免疫抑制患者における帯状疱疹(注射) 単純疱疹,帯状疱疹,ヘルペス角膜炎(外用) トリリン酸体に変換され,ウイルスのDNAポリメラーゼを阻害 ジリン酸体に変換され,ウイルスのリボヌクレオチド還元酵素を阻害 副作用:精神神経障害,骨髄機能抑制 ,ショック 併用禁忌:ペントスタチン(抗がん剤)・・・腎不全,肝不全,神経毒性
その他の抗ヘルペスウイルス薬 ホスカルネット(注射) AIDS患者におけるHCMV網膜炎 造血幹細胞移植患者におけるHCMV血症,HCMV感染症 DNAポリメラーゼ阻害 副作用 血液障害,心機能障害,過敏症,皮膚障害, 腎障害,消化器症状,精神神経障害 電解質異常(低マグネシウム血症,低カリウム血症, 低カルシウム血症 など) 併用禁忌:ペンタミジン(腎障害,低カルシウム血症)
その他の抗ヘルペスウイルス薬 アメナメビル 帯状疱疹(経口,1日1回) ウイルスのヘリカーゼ・プライマーゼ複合体のDNA依存的ATPase活性,ヘリカーゼ活性,プライマーゼ活性を阻害 → ウイルスDNAの複製阻害 腎機能低下による投与量調節不要 副作用:消化器症状(下痢,悪心,胃炎など) 禁忌:リファンピシン投与中患者
抗HIV薬
ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI) ジドブジン(アジドチミジン:AZT) HIV感染症(経口) トリリン酸体に変換され,逆転写酵素を阻害 副作用:血液障害(白血球,血小板,赤血球の減少) 吐き気,嘔吐,下痢,頭痛 乳酸アシドーシス,肝障害,膵炎,痙攣発作 併用禁忌:イブプロフェン(出血傾向増大)
ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI) HIV感染症(経口)・・・第2選択 ddAトリリン酸に変換され,逆転写酵素を阻害 副作用 膵炎,末梢神経障害 乳酸アシドーシス,肝障害,視覚障害,痙攣発作 併用禁忌:テトラサイクリン系抗菌薬 キノロン系抗菌薬 (抗菌力低下) ジダノシン(ddI) HIV感染症(経口)・・・第2選択 トリリン酸体に変換され,逆転写酵素を阻害 副作用 乳酸アシドーシス,末梢神経障害,膵炎 吐き気,下痢,頭痛,痙攣発作,意識障害 併用注意:ジドブジンとの併用療法は避ける サニルブジン(d4T)
ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI) アバカビル(ABC) HIV感染症(経口) カルボビルトリリン酸(グアニンヌクレオチド)に 変換され,逆転写酵素を阻害 副作用:過敏症・・・HLA-B*5701を有する患者 (白人では5~8%,日本人では0.1%)
ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI) ラミブジン(3TC) HIV感染症,B型慢性肝炎(経口) トリリン酸体に変換され,逆転写酵素を阻害 副作用・・・他のNRTIに比べて弱い 血液障害,膵炎 ,吐き気,下痢,腹痛,頭痛 乳酸アシドーシス,肝障害,痙攣発作 アバカビル/ラミブジン配合剤 ジドブジン/ラミブジン配合剤
ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI) エムトリシタビン(FTC) HIV感染症(経口) トリリン酸体に変換され,逆転写酵素を阻害 副作用・・・他のNRTIに比べて弱い 吐き気,下痢,腹痛,眩暈,頭痛 乳酸アシドーシス 併用注意:ラミブジン(作用重複)
ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI) テノホビル ジソプロキシル(TDF) HIV感染症,B型慢性肝炎(経口) テノホビル二リン酸に変換され,逆転写酵素を阻害 副作用・・・他のNRTIに比べて弱い 胃腸症状(吐き気,嘔吐,下痢,腹痛),眩暈,頭痛 腎機能障害 テノホビル ジソプロキシル/エムトリシタビン配合剤
ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI) テノホビル アラフェナミド(TAF) HIV感染症(経口)・・・TAF / FTC / EVG / COBIの配合剤 テノホビル二リン酸に変換され,逆転写酵素を阻害 副作用・・・TDFと比較して腎機能障害,骨密度低下作用が弱い 胃腸症状(吐き気,嘔吐,下痢,腹痛),眩暈,頭痛
非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI) エファビレンツ(EFV) HIV感染症(経口) 副作用 皮膚症状 (発疹など) 眩暈,不眠,眠気,鬱症状,催奇形性
非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI) ネビラピン(NVP) エトラビリン(ETR) HIV感染症(経口) 副作用 皮膚障害,肝障害 吐き気,嘔吐,下痢,眠気,頭痛 HIV感染症(経口) 副作用 発疹,過敏反応,悪心
非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI) リルピビリン(RPV) HIV感染症(経口) 副作用 皮膚症状 (発疹など) 眩暈,不眠,眠気,異常な夢,鬱症状 EFV より精神神経系の副作用は軽いが, 抗ウイルス活性は弱い リルピビリン/テノホビル ジソプロキシル/エムトリシタビン配合剤
HIVプロテアーゼによる翻訳後切断 直接翻訳 フレームシフト翻訳 gag pol p17 p24 p9 p6 p17 p24 TF PR SQNY::PIVQ ATIM::MQRG PGNF::LQSR p17 p24 p1 TF PR RT RN IN ARVL::AEAM TLNF::PISP AETF::YVDG SFNF::PQIT RKIL::FLDG
HIVプロテアーゼ阻害薬(PI) サキナビル(SQV,1990) HIV感染症(経口) 副作用:吐き気,嘔吐,下痢,腹痛,頭痛,異常感覚 糖尿病,肝障害,腎臓結石,血液障害,痙攣,意識障害 併用禁忌:アミオダロン,ベプリジル(抗不整脈薬),エルゴタミン製剤(偏頭痛治療薬), ピモジド(向精神薬),トリアゾラム(睡眠薬),バルデナフィル(勃起不全治療薬) CYP3A4による代謝阻害 → 副作用増強 併用注意:リファンピシン・・・サキナビルの作用減弱
インジナビル(IDV) ネルフィナビル(NFV) HIV感染症(経口) 副作用:腎臓結石,吐き気,嘔吐,下痢,頭痛,異常感覚 肝障害,腎不全,血液障害,高血糖 併用禁忌:エルゴタミン製剤(偏頭痛治療薬), アルプラゾラム ,ピモジド(向精神薬), バルデナフィル(勃起不全治療薬) インジナビル(IDV) HIV感染症(経口) 副作用:下痢,吐き気,嘔吐,頭痛,異常感覚,発疹 糖尿病,血友病における出血傾向増大 併用禁忌:エルゴタミン製剤,エレトリプタン (偏頭痛薬), アルプラゾラム ,ピモジド(向精神薬), バルデナフィル(勃起不全治療薬) トリアゾラム(睡眠薬) キニジン,アミオダロン (抗不整脈薬) ネルフィナビル(NFV)
リトナビル(RTV) HIV感染症(経口) 副作用:吐き気,嘔吐,下痢,頭痛,異常感覚 意識障害,痙攣,肝障害 意識障害,痙攣,肝障害 併用禁忌:キニジン,ベプリジル(抗不整脈薬),エルゴタミン,ジヒドロエルゴタミン(偏頭痛治療薬) ピロキシカム,アンピロキシカム(鎮痛薬),フルラゼパム,ミダゾラム(鎮静薬), ジアゼパム,クロラゼプ酸 ,アルプラゾラム(抗不安薬),ピモジド(抗精神病薬), トリアゾラム,エスタゾラム,クアゼパム(睡眠薬),バルデナフィル(勃起不全治療薬) CYP3A4による代謝阻害 → 作用・副作用増強
ロピナビル(LPV) HIV感染症(経口)・・・ロピナビル/リトナビル配合剤 副作用:胃腸障害,高脂血症,頭痛,異常感覚 糖尿病,膵炎,肝障害 併用禁忌:エルゴタミン,ジヒドロエルゴタミン(偏頭痛治療薬) ミダゾラム(鎮静薬),ピモジド(抗精神病薬), トリアゾラム(睡眠薬),バルデナフィル(勃起不全治療薬)
ホスアンプレナビル(FPV) HIV感染症(経口) アンプレナビルのプロドラッグ 副作用:皮膚症状(発疹など),高脂血症, 吐き気,嘔吐,下痢,頭痛,高血糖,糖尿病 併用禁忌:ベプリジル,フレカイニド,プロパフェノン(抗不整脈薬), ピモジド(抗精神病薬),トリアゾラム(睡眠薬), エルゴタミン,ジヒドロエルゴタミン(偏頭痛治療薬)
ダルナビル(DRV) HIV感染症(経口) 副作用:皮膚症状(発疹など),肝毒性,高脂血症 下痢,悪心,頭痛,高血糖,脂肪分布異常 下痢,悪心,頭痛,高血糖,脂肪分布異常 併用禁忌: エルゴタミン,ジヒドロエルゴタミン,エルゴメトリン,メチルエルゴメトリン(偏頭痛治療薬), トリアゾラム,ミダゾラム(睡眠薬),プロナンセリン(抗精神病薬), バルデナフィル,シルデナフィル,タダラフィル(勃起不全治療薬), ピモジド(抗精神病薬),アゼルニジピン(カルシウム拮抗薬) ダルナビル/コビシスタット(COBI,CYP3A4阻害薬)配合剤あり
アタザナビル(ATV) HIV感染症(経口) 副作用:腎結石,発疹,高ビリルビン血症,吐き気,嘔吐,下痢,頭痛,糖尿病 併用禁忌: ベプリジル(抗不整脈薬),シンバスタチン(コレステロール低下薬) エルゴタミン,ジヒドロエルゴタミン(偏頭痛治療薬),ピモジド(抗精神病薬), ランソプラゾール,オメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬), トリアゾラム(睡眠薬),バルデナフィル(勃起不全治療薬)
HIVインテグラーゼ阻害薬(INSTI) ラルテグラビル(RAL) HIV感染症(経口)・・・他の抗HIV薬と併用すること 副作用(軽い):吐き気,下痢,めまい,頭痛,不眠 逆転写によってできたHIVのDNAが宿主DNAに 組み込まれる際に必要な酵素インテグラーゼを阻害 EFVとほぼ同等(非劣勢)の抗ウイルス活性
HIVインテグラーゼ阻害薬(INSTI) エルビテグラビル(EVG) コビシスタット(COBI) CYP3A4阻害薬 HIV感染症(経口)・・・EVG / COBI / TDF / FTCの配合剤 EVG / COBI / TAF / FTCの配合剤 副作用:吐き気,下痢,異常な夢,頭痛,腎障害 1日1回1錠(食中または食後) リファンピシンやCYP3A4の基質となる薬剤との併用は禁忌
HIVインテグラーゼ阻害薬(INSTI) ドルテグラビル(DTG) HIV感染症(経口)・・・他の抗HIV薬と併用すること 副作用(軽い):吐き気,下痢,めまい,頭痛,不眠 EFV,RALより抗ウイルス活性が強い INSTI耐性ウイルスにも有効 1日1回または2回(耐性HIV) ドルテグラビル/アバカビル/ラミブジン配合剤
CCR5受容体拮抗薬 マラビロク(MVC) CCR5指向性HIVー1感染症(経口) CXCR4指向性またはCCR5/CXCR4指向性HIVには投与しない 副作用(軽い):疲労,不眠,眩暈,発疹,便秘,肝障害 HIVが細胞に侵入する際に利用するケモカイン受容体 CCR5に拮抗してウイルス侵入を阻害する
HIVに対する多剤併用療法 推奨 キードラッグ バックボーン 服薬数 INSTIベース DTG / ABC / 3TC 1日1回1錠 + TDF / FTC 1日1回2錠 EVG / COBI / TAF / FTC / TDF / FTC RAL 1日2回3錠 PIベース DRV + RTV 1日1回3錠 代替 キードラッグ バックボーン 服薬数 PIベース ATV + RTV + TDF / FTC 1日1回4錠 DRV + RTV + ABC / 3TC 1日1回3錠 NNRTIベース EFV 1日1回2錠 RPV / TDF / FTC 1日1回1錠
●HIV感染症治療の原則● ・治療目標は血中ウイルス量(HIV RNA量)を検出限界以下に抑え続けることである ・治療は原則として3剤以上からなるART(Antiretroviral Therapy)で開始すべきである ・治療により免疫能のいくつかの指標が改善しても治療を中止してはならない ●HIV感染症治療の留意点● ・患者個々の状態や環境に応じた治療戦略をたてる ・ARTの効果維持にはアドヒアランスが重要である ・現在のARTはHIVの増殖を強力に抑制するが、体内から排除するものではない ・患者にその時点での最新・最良の治療情報を提供する ・効果的なARTは二次感染を高率に阻止する ・治療開始にあたっては医療費助成制度の活用を図る
cART (Combination Antiretroviral Therapy) INSTI全般 EFVに対して非劣勢 安全性が高い PIより薬剤耐性を獲得しやすい DTG 1日1回投与 ウイルス学的抑制率が高い RALよりも薬剤耐性を獲得しにくい可能性 RALおよびEVG耐性ウイルスに対しては倍量が効果的 食事に関係なく服用できる CYP3A4相互作用がない クレアチニンクリアランス低下 RAL INSTIのなかで市販後実績が最も長い 1日2回投与 薬剤耐性を獲得しやすい クレアチンキナーゼ上昇,横紋筋融解症,ミオパチー まれに重篤な皮膚反応,発疹を伴う全身性過敏反応
DTG/ 1日1回1錠投与 ABC / 3TC ウイルス学的抑制率が高い 食事に関係なく服用できる クレアチニンクリアランス低下 EVG / COBI / 1日1回1錠投与 TDF / FTC クレアチニンクリアランス70 mL/min以上の患者のみ推奨 腎障害の可能性 CYP3A4で代謝される薬剤との相互作用 薬剤耐性を獲得しやすい可能性 服用は食事中または食直後 TAF / FTC クレアチニンクリアランス30 mL/min以上の患者のみ推奨 服用は食後
PI全般 NNRTIを将来の治療選択肢として温存できる NNRTI,EVG,RALよりも薬剤耐性を獲得しにくい RTVでブーストしたPIでは治療失敗の場合でも耐性変異が少ない 代謝合併症(脂肪分散異常,血中脂質異常,インスリン抵抗性) 消化器症状 CYP3A4阻害に伴う薬物間相互作用(特にRTV) 骨密度が低下する可能性がある DRV+RTV 1日1回投与 発疹 服用は食事中または食直後 ATV+RTV 1日1回投与 脂質代謝への影響や消化器症状が少ない 腎結石,胆石,発疹,高ビリルビン血症 LPV/RTV 1日1回投与が可能 食事の影響がない 配合剤 胃腸障害,高脂血症
NNRTI全般 PI併用療法と比べて脂肪分布異常や血中脂質異常が少ない 1アミノ酸変異により耐性を生じる NNRTI間に交差耐性がある 発疹 CYP450による薬物間相互作用の可能性 EFV 抗HIV活性が強い 1日1回投与 食事の影響がない 精神神経系の副作用 催奇形性があり,妊婦や妊娠の可能性がある場合は避ける RPV 1日1回投与,錠剤が小さい EFVより眩暈や異常な夢が少ない EFVより脂質への影響や発疹が少ない RPV / TDF / FTCの配合剤 EFVと比較して治療失敗時に耐性変異が多い 服用は食事中または食直後 PPIとの併用は禁忌 鬱病発症の可能性
NRTI全般 抗HIV薬使用時の基本療法として確立 まれに脂肪肝を伴う乳酸アシドーシス ABC/3TC 1日1回投与 食事に関係なく服用できる 腎毒性がない DTG/ABC/3TC配合剤 チミジン系薬剤耐性変異を誘導しない HLA-B*5701を有する患者での過敏反応の可能性 TDF/FTC 1日1回1錠投与 EFVまたはATV+RTVとの組合せでABC/3TCより有効 HIV/HBV重複感染者に対して推奨 EVG/COBI/TDF/FTC配合剤 RPV/TDF/FTC配合剤 腎障害の可能性 骨密度低下の可能性
抗インフルエンザ薬
抗インフルエンザ薬 アマンタジン(経口) A型インフルエンザウイルス感染症 パーキンソン症候群 脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下の改善 A型インフルエンザウイルスのH+チャンネルを阻害 副作用:精神症状(不安,興奮,混乱,幻覚など ),腎障害
ノイラミニダーゼ阻害薬 ザナミビル(吸入) ウイルスは細胞表面のシアル酸を認識して吸着する ウイルスが放出されるにはノイラミニダーゼによる ウイルスが放出されるにはノイラミニダーゼによる シアル酸の分解 → 吸着解除が必要 N-アセチルノイラミン酸(シアル酸) A型またはB型インフルエンザウイルス感染症 治療:1日2回,5日間吸入 予防:1日1回,10日間吸入 副作用はほとんどない ザナミビル(吸入)
ノイラミニダーゼ阻害薬 オセルタミビル(経口) A型またはB型インフルエンザウイルス感染症 治療:1日2回,5日間内服 治療:1日2回,5日間内服 予防:1日1回,7~10日間内服 副作用:胃腸症状(吐き気,嘔吐,腹痛,下痢など) 肝障害,皮膚障害 異常行動(因果関係は解明されていない) ハイリスク患者と判断される場合を除く10歳以上の未成年者は禁忌
ノイラミニダーゼ阻害薬 ラニナミビル オクタン酸エステル(吸入) A型またはB型インフルエンザウイルス感染症 治療:40 mg 単回 副作用:消化器症状(下痢,悪心,胃腸炎)
ノイラミニダーゼ阻害薬 ペラミビル(注射) A型またはB型インフルエンザウイルス感染症 点滴静注(単回) 点滴静注(単回) 副作用:下痢,好中球減少,タンパク尿
RNAポリメラーゼ阻害薬 ファビピラビル(経口) 新型または再興型インフルエンザウイルス感染症(他薬無効例に限る) 厚生労働大臣から要請を受けて製造・供給等を行う 1日目:1600mgを1日2回,2~5日目:600mgを1日2回 副作用:催奇形性(妊婦禁忌)
抗肝炎ウイルス薬
B型肝炎治療薬 ラミブジン アデホビル ピボキシル B型慢性肝炎(経口) トリリン酸体に変換され, HBVのDNAポリメラーゼ(逆転写酵素)を阻害 副作用:血液障害,膵炎 吐き気,下痢,腹痛,頭痛 乳酸アシドーシス,肝障害,痙攣発作 耐性ウイルスが出やすい ラミブジン B型慢性肝炎及びB型肝硬変(経口) ラミブジンと併用 アデホビル二リン酸に変換され, HBVのDNAポリメラーゼ(逆転写酵素)を阻害 副作用:胃腸症状(吐き気,腹痛など) 腎機能障害 アデホビル ピボキシル
B型肝炎治療薬 エンテカビル B型慢性肝炎(経口)・・・長期継続投与 トリリン酸体に変換され, HBVのDNAポリメラーゼ(逆転写酵素)を阻害,DNA鎖伸長を阻害 副作用:頭痛,倦怠感 ,腹痛,下痢,吐き気,乳酸アシドーシス,肝障害 抗ウイルス活性が高く,耐性ウイルスは出にくい
B型肝炎治療薬 テノホビル ジソプロキシル B型慢性肝炎(経口)・・・長期継続投与 テノホビル二リン酸に変換され,HBVのDNAポリメラーゼ(逆転写酵素)を阻害 副作用:胃腸症状(吐き気,嘔吐,下痢,腹痛),眩暈,頭痛 ,腎機能障害 耐性ウイルスは出にくく,効果はエンテカビルとほぼ同等
B型肝炎治療薬 ペグインターフェロンアルファ-2a(遺伝子組換え) B型慢性肝炎(注射) 週1回/24~28週 初回治療の基本 HBe抗原セロコンバージョン,HBs抗原陰性化の可能性(約10%) 副作用:高頻度かつ多彩 非代償性肝硬変への投与は禁忌 妊娠中への投与は不可 薬剤耐性はない
インターフェロン インターフェロンアルファ B型慢性肝炎,C型慢性肝炎 インターフェロンアルファ-2b(遺伝子組換え) C型慢性肝炎,B型慢性肝炎 インターフェロンベータ B型慢性肝炎,C型慢性肝炎,C型代償性肝硬変 ペグインターフェロンアルファ-2a(遺伝子組換え) ポリエチレングリコール結合型インターフェロン C型慢性肝炎,B型慢性肝炎 ペグインターフェロンアルファ-2b(遺伝子組換え) ポリエチレングリコール結合型インターフェロン C型慢性肝炎
インターフェロンと肝炎ウイルス インターフェロンの作用機序 ・肝細胞における抗ウイルスタンパク質の誘導 ・肝細胞における抗ウイルスタンパク質の誘導 ・ウイルス感染肝細胞におけるHLA class-I抗原の発現増強 ・免疫担当細胞の活性化 ・(がん細胞の増殖抑制) インターフェロンの副作用 初期:インフルエンザ様症状(発熱,頭痛,関節痛など) 中期:精神症状(抑鬱など),白血球減少,血小板減少 後期:間質性肺炎,脱毛 日本のC型慢性肝炎患者:1b型(70%),2a型(20%),2b型(10%) インターフェロン感受性 2a > 2b > 1b ペグインターフェロンアルファ-2b + リバビリン ウイルス陰性化率 50%
C型肝炎治療薬 リバビリン C型慢性肝炎(経口) 他の抗HCV薬との併用 HCVのRNA依存性RNAポリメラーゼ 阻害 HCVのRNAに取り込まることによる抗HCV作用 副作用:貧血
C型肝炎治療薬 テラプレビル セログループ1(ジェノタイプ1aまたは1b)C型慢性肝炎(経口) HCVのNS3/4Aプロテアーゼ 阻害 副作用:貧血,重篤な皮膚障害,肝障害 併用禁忌:キニジン,ベプリジル,フレカイニド,プロパフェノン,アミオダロン,ピモジド,エルゴタミン, ジヒドロエルゴタミン,エルゴメトリン,メチルエルゴメトリン,トリアゾラム,ロバスタチン, シンバスタチン,アトルバスタチン,アルフゾシン,バルデナフィル,シルデナフィル,タダラフィル, ブロナンセリン,コルヒチン,リファンピシン ペグインターフェロンアルファ-2a + リバビリン(48週) ウイルス陰性化率 46% ペグインターフェロンアルファ-2a + リバビリン + テラプレビル(24週) ウイルス陰性化率 69%
C型肝炎治療薬 シメプレビル セログループ1(ジェノタイプ1aまたは1b)のC型慢性肝炎 (経口) HCVのNS3/4Aプロテアーゼ 阻害 副作用:皮膚症状(発疹,そう痒症など),貧血・・・テラプレビルより弱い,高ビリルビン血症 併用禁忌:エファビレンツ,リファンピシン,リファブチン 含 シメプレビル12週,トータル24週でウイルス陰性化率が89%
C型肝炎治療薬 バニプレビル セログループ1(ジェノタイプ1aまたは1b)のC型慢性肝炎 (経口) HCVのNS3/4Aプロテアーゼ 阻害 副作用:発熱,好中球減少,頭痛,血液障害,貧血,ヘモグロビン減少,鬱病 併用禁忌:リファンピシン,リファブチン,カルバマゼピン,フェニトイン,フェノバルビタール, クラリスロマイシン,シクロスポリン,セイヨウオトギリソウ含有食品,エルトロンボパグ イトラコナゾール,ボリコナゾール,コビシスタット含有製剤,インジナビル,リトナビル, ネルフィナビル,サキナビル,アタザナビル,ロピナビル・リトナビル シメプレビルより前回治療無効例に対する治療成績良好
C型肝炎治療薬 アスナプレビル セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変 (経口) ダクラタスビルとの併用 HCVのNS3/4Aプロテアーゼ 阻害 副作用:肝機能障害 併用禁忌:アゾール系抗真菌薬などCYP3A4阻害作用のある薬物 リファンピシンなどCYP3A4誘導作用のある薬物 シクロスポリン(OATP1B1阻害),フレカイニド,プロパフェノン(CYP2D6阻害)
C型肝炎治療薬 ダクラタスビル セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変 (経口) アスナプレビルとの併用 HCVのNS5A複製複合体阻害 副作用:肝機能障害,妊婦禁忌 併用禁忌:リファンピシン,リファブチン,フェニトイン,カルバマゼピン, フェノバルビタール,デキサメタゾン全身投与,セイヨウオトギリソウ含有食品 インターフェロン無効または不適症例にも有効・・・ウイルス陰性化率85%
C型肝炎治療薬 ベクラブビル セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変 (経口) ダクラタスビル,アスナプレビルとの合剤 HCVのNS5Bポリメラーゼ阻害 副作用:肝機能障害,妊婦禁忌 併用禁忌:リファンピシンなどCYP3A4誘導薬剤, イトラコナゾールなどCYP3A4阻害薬剤 ダクラタスビル/アスナプレビルに抵抗性のウイルスにも有効 ・・・ウイルス陰性化率95%
C型肝炎治療薬 ソホスブビル セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変 (経口) リバビリンと併用 HCVのNS5Bポリメラーゼ阻害 副作用:貧血,頭痛,倦怠感,悪心,そう痒症 禁忌:重度の腎機能障害者,透析を必要とする腎不全患者 併用禁忌:リファンピシン,フェニトイン,カルバマゼピン,セイヨウオトギリソウ含有食品 12週・・・ウイルス陰性化率96%,第1選択
C型肝炎治療薬 レジパスビル HCVのNS5A複製複合体阻害 ソホスブビルとの合剤 (経口) セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変 (経口) 副作用:そう痒症,悪心,口内炎 禁忌:重度の腎機能障害者,透析を必要とする腎不全患者 併用禁忌:リファンピシン,フェニトイン,カルバマゼピン,セイヨウオトギリソウ含有食品 12週・・・ウイルス陰性化率100%,第1選択
C型肝炎治療薬 オムビタスビル パリタプレビル HCVのNS5A複製複合体阻害 HCVのNS3/4Aプロテアーゼ 阻害 リトナビルとの3剤合剤(経口) セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変 (経口) 副作用:そう痒症,悪心,口内炎 併用禁忌:アゼルニジピン,トリアゾラム他多数 12週・・・ウイルス陰性化率95%
C型肝炎治療薬 グラゾプレビル セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変 (経口) エルバスビルと併用(12週) → ウイルス陰性化率97% HCVのNS3/4Aプロテアーゼ 阻害 副作用:肝機能障害 併用禁忌:シクロスポリン,アタザナビル,ダルナビル,ロピナビル・リトナビル,サキナビル, カルバマゼピン,フェニトイン,ホスフェニトイン,フェノバルビタール, リファブチン,リファンピシン,エファビレンツ,セイヨウオトギリソウ含有食品
C型肝炎治療薬 エルバスビル セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変 (経口) グラゾプレビルと併用(12週) → ウイルス陰性化率97% HCVのNS5A複製複合体阻害 副作用:肝機能障害 併用禁忌:リファンピシン,リファブチン,フェニトイン,ホスフェニトイン,カルバマゼピン, フェノバルビタール,エファビレンツ,セイヨウオトギリソウ含有食品
抗RSウイルス抗体 パリビズマブ 遺伝子組み換え抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体(注射) RSV感染流行初期(10月)において ・在胎期間28週以下の早産で12ヶ月齢以下の新生児および乳児 ・在胎期間29~35週の早産で6ヶ月齢以下の新生児および乳児 ・過去6ヶ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた 24ヶ月齢以下の新生児および乳幼児 ・血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)をもつ