6.煙.

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内燃機関と外燃機関.
第2章 機械の強度と材料 機械の必要条件 ★壊れない ★安全である ★正しく機能する そのためには・・・ ★適切な材料を使う
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
1.ボイルの法則・シャルルの法則 2.ボイル・シャルルの法則 3.気体の状態方程式・実在気体
建築環境工学・建築設備工学入門 <空気調和設備編> <換気設備> 換気設備 演習問題
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
微粒子合成化学・講義 村松淳司
医薬品素材学 I 1 物理量と単位 2 気体の性質 1-1 物理量と単位 1-2 SI 誘導単位の成り立ち 1-3 エネルギーの単位
生体分子解析学 2017/3/2 2017/3/2 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析.
平成20年度 核融合科学研究所共同研究 研究会 「負イオン生成および負イオンビーム加速とその応用」 プロセスプラズマのPIC計算のモデリング
講義の予定 はじめて学ぶ建物と火災 第1章 建物火災に対する安全 第2章 火災は意外と多い ー 火災の実態
医薬品素材学 I 3 熱力学 3-1 エネルギー 3-2 熱化学 3-3 エントロピー 3-4 ギブズエネルギー 平成28年5月13日.
2009年8月27日 熱流体力学 第14回 担当教員: 北川輝彦.
P.154 建築・都市的対策 設備・消防的対策 1.
はじめて学ぶ建物と火災 第1章 建物火災に対する安全 第2章 火災は意外と多い ー 火災の実態 第3章 ものが燃える ー 火災の現象
平成25年度 東京工業大学 大学院基礎物理学専攻
第9回 星間物質その2(星間塵) 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
高分子電気絶縁材料の撥水性の画像診断に関する研究
金箔にα線を照射して 通過するα線の軌跡を調べた ラザフォードの実験 ほとんどのα線は通過 小さい確率ながら跳ね返ったり、
スパッタ製膜における 膜厚分布の圧力依存性
シリカガラスの熱的性質 II ガラス転移,仮想温度 福井大学工学部 葛生 伸.
1.Atwoodの器械による重力加速度測定 2.速度の2乗に比例する抵抗がある場合の終端速度 3.減衰振動、強制振動の電気回路モデル
固体電解コンデンサの耐電圧と漏れ電流 -アノード酸化皮膜の表面欠陥とカソード材料の接触界面-
反応性流体力学特論  -燃焼流れの力学- 燃焼の流体力学 4/22,13 燃焼の熱力学 5/13.
流体のラグランジアンカオスとカオス混合 1.ラグランジアンカオス 定常流や時間周期流のような層流の下での流体の微小部分のカオス的運動
塩化銅(Ⅱ)CuCl2水溶液の電気分解 (1)陰極で銅が析出 陰極:還元反応 Cu2+ + 2e- → Cu (2)陽極で塩素が発生 陽極:酸化反応 2Cl- → Cl2 + 2e-
科学的方法 1) 実験と観察を重ね多くの事実を知る 2) これらの事実に共通の事柄を記述する→法則 体積と圧力が反比例→ボイルの法則
生物機能工学基礎実験 2.ナイロン66の合成・糖の性質 から 木村 悟隆
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
酸化と還元.
5.燃焼と火炎性状(2).
Dissociative Recombination of HeH+ at Large Center-of-Mass Energies
7.伝熱(1).
自然通風時の室内風速分布に関する研究 ー噴流理論を応用した簡易予測手法の検討ー
計測工学15.
プラズモン共鳴を用いたC-dot-Ag ナノ粒子-シリカコンポジット 薄膜蛍光増強
燃焼の流体力学 4/22 燃焼の熱力学 5/13 燃焼流れの数値解析 5/22
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
Taniguchi Lab. meeting 2004/10/15 Shigefumi TOKUDA
9.内外装設計.
シリカガラスの熱的性質 I 粘度,特性温度,熱膨張,比熱,熱伝導 福井大学工学部 葛生 伸.
化学工学基礎 −後半の後半− 第1回目講義 (2009年7月10日) 1 担当 二又裕之 物質工学1号館別館253ー3号室
環境負荷低減・資源高効率利用技術の開発プロジェクト
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
ジアイーノ 空間除菌脱臭機 浮遊ウイルスや浮遊菌を抑制、 健康に安心して過ごせる 空間づくり ◆ジアイーノと空気清浄機の違い
2.4 Continuum transitions Inelastic processes
連続体とは 連続体(continuum) 密度*が連続関数として定義できる場合
10.建築材料の燃焼性 燃焼 強い発熱を伴う化学反応が高速で起きる現象 発光を伴うことが多い 発熱作用による高温⇔大きな反応速度
6.4.3電解法 (1)水溶液電解法 2種類: 直接法:板状の析出物→機械的に粉砕(Fe、Cr) *金属イオン濃度を低くする
環境表面科学講義 村松淳司 村松淳司.
アモルファスSiO2による結晶構造制御と磁気特性(S-13-NI-26)
建築環境工学・建築設備工学入門 <空気調和設備編> <換気設備> 自然換気の仕組みと基礎
今後の予定 (日程変更あり!) 5日目 10月21日(木) 小テスト 4日目までの内容 小テスト答え合わせ 質問への回答・前回の復習
モル(mol)は、原子・分子の世界と 日常世界(daily life)をむすぶ秤(はかり)
近代化学の始まり ダルトンの原子論 ゲイリュサックの気体反応の法則 アボガドロの分子論 原子の実在証明.
河川工学 -洪水流(洪水波の伝播)- 昼間コース 選択一群 2単位 朝位
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
流動を伴う物質移動(p.483) y x 壁を伝わって流れ落ちる 薄い液膜にA成分が拡散 δ NA,y 速度分布:p.96.
課題 1.
4.燃焼と火炎性状(1).
環境触媒グループ ガソリン車と比べて ディーゼル車の利点 現在ディーゼル車の走行台数が増加している ディーゼル車排ガス中での汚染物質 危害
3.建築材料の密度 密度の支配因子 原子量 原子の配列状態 一般的に原子量(原子番号)が大きいほど、密度は大きい
My thesis work     5/12 植木             卒論題目 楕円偏光照射による不斉合成の ためのHiSOR-BL4の光源性能評価.
・Bernoulli(ベルヌーイ)の定理
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
電磁気学C Electromagnetics C 7/10講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
外部条件に対する平衡の応答 ◎ 平衡 圧力、温度、反応物と生成物の濃度に応じて変化する
熱伝導方程式の導出 熱伝導:物質の移動を伴わずに高温側から低温側へ熱が伝わる現象 対流、輻射 フーリエの法則Fourier’s law:
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6.煙

煙の性質 煙(smoke) 粉塵 フューム ミスト 火災時の不完全燃焼で生じた煤や低分子量燃焼生成ガスが縮合してできた微粒子 固体(炭化水素粒子)、液滴(タール粒子)、表面を液体で覆われた固体微粒子の複合体 燃焼や熱分解によるガス(CO2、CO、HCN、HCl、炭化水素ガス)も共分散 粉塵 固体の破砕によって生じた微粒子 フューム 熱分解や電気分解によって固相から気相へ噴出飛散した微粒子 ミスト 浮遊分散した液体微粒子

煙の性質 煙の組成 煙粒子の粒径 可燃物の種類、燃焼条件(温度、酸素濃度、気流の有無)によって異なる 固体の煙粒子 液体の煙粒子 熱分解し炭化が進んだ高分子や煤の混合したもの 液体の煙粒子 炭化水素高分子の酸化で生じた水蒸気、それに溶け込んだ有機酸、アルデヒド、炭化水素、タールなどの凝縮体 煙粒子の粒径 木質系材料 :0.1~0.2μm プラスチック系材料 :0.7~1.5μm

煙の性質 煙濃度の評価 一定体積中の煙粒子の質量(フィルターで濾過し秤量) 一定体積中の粒径ごとの煙粒子の個数 単位距離当たりの光の減衰(濁度):Cs Cs=-1/L・ln(I/I0) L:光源から目までの距離(光路長さ) I:光路長さLにおける光の強度 I0:光源における光の強度 煙濃度(Cs:m-1)と見通し距離(Lv:m )の積は一定 扉、反射型標識:Cs・Lv=2~4 窓、発光型標識:Cs・Lv=5~10 見通し距離 光の強さ、コントラストの強弱 目の粘膜に対する刺激の強さ セルロース系の燃焼 →アルデヒド 塩化ビニル →塩化水素 石油系 →刺激小

煙の性質 煙の発生 燃焼温度、高→煙発生能、小(一般) 塩化ビニルは逆 木材 煙量=工学的煙濃度(Cs)×煙を含む気積(V) 塩素の分解→塩素ラジカル→燃焼反応を阻害・抑制→未燃の炭化水素増加 木材 燻焼と有炎燃焼の境界温度(450℃)で煙発生量の大幅な変化 煙量=工学的煙濃度(Cs)×煙を含む気積(V) 燃焼量に比例して煙量が増加(早期燃焼状態)

煙の性質 煙の発生 発煙量の温度依存性

煙の性質

煙の性質 煙濃度の予測(Csm*:無次元化した煙濃度) Csm*=1/(0.035+0.15・r/H)2/3 天井流の温度 煙濃度

煙の性質 煙中の歩行速度 不適切な避難誘導、避難経路情報の不備 見通し距離の影響 目に対する刺激の有無・大小の影響 視覚情報の低下 天井下への煙の滞留・成層→照明遮断→光量低下→心理的圧迫 生理機能の低下 目・喉・鼻の粘膜に刺激→生理的負荷→判断力・行動力の低下 セルロース系可燃物 高温の煙→呼吸器系に強い刺激→咳き込み→呼吸数増加→吸引有毒ガス量の増加 不適切な避難誘導、避難経路情報の不備 不安感、心理的ストレス→判断力・行動力の低下→集団行動

煙の性質 煙中の歩行速度

煙の性質 刺激を与える煙濃度 目 鼻 喉 煙いと感じ始める チクチクした痛み かなりの痛感 涙が止まらない 鼻汁が出る ヒリヒリする 息苦しい 杉 燻焼 0.09 0.02 有炎燃焼 2.28 0.44 0.37-0.47 0.28 0.36 麻 0.02-0.07 0.025-0.07 0.06 0.08 0.07 0.095 綿 0.016 0.14 0.22 新聞紙 0.23 0.3 ガソリン有炎燃焼 0.72

煙の性質 煙層の降下 降下速度 熱煙気流の質量mz 実火災時(長崎屋火災) 火炎・プルームへの雰囲気空気の巻き込み量の影響 火災室の規模(床面積、天井高さ)の影響 熱煙気流の質量mz mz=0.21・QD*1/3・(Z/D+Z0/D)5/3 QD*=Q/ρ∞・Cp・T∞・(g・D)1/2・D2 Z:仮想点源からの垂直上方距離 Zuloski :Z0/D=0.5-0.33Lf/D(床面上の火源) :Z0/D=0.5-0.33Lf/D(床から浮いた状態の火源) Heskestad :Z0=1.02-0.083Q2/5 Thomas :Z0=1.5√Af D:火源の代表径、Lf:火炎長さ、Af:火源面積 実火災時(長崎屋火災) 100kgの吊り下げカーテンの燃焼→2分間で床面積約800m2、高さ2.7mの空間に煙充満

煙の性質 煙層の降下

煙の性質 区画天井流の気流温度・速度、煙濃度 火災感知器の作動、スプリンクラーの作動の予測に重要 天井に達する熱煙気流 熱流量Qcと上昇温度ΔTsの関係 Qc∝ρs・Cps・v・ΔTs・A∝ρs・Cps・v・ΔTs・A=ρs・Cps・ΔTs3/2・A ρs・Cpsの変化小 Qc/(ρs・Cps・A)≡Q∝ΔTs3/2 熱流量Qcと気流速度vcの関係(ランキン則) vc∝√ΔTs=√Qc2/3=Qc1/3 ΔTs∝H-5/3、v∝H-1/3の減衰性状を呈して天井に衝突

煙の性質 区画天井流の気流温度・速度、煙濃度 天井流(天井面に沿う流れ) 天井流の上昇温度ΔTsに対する主支配則 ΔTs∝Q2/3/H5/3=Q2/3/(H3/3・r2/3)=(Q/r)2/3/Hの性質で流動を開始 A:熱煙気流の流動断面積 ρs:熱煙気流の密度 Cps:熱煙気流の比熱 ΔTs:熱煙気流の雰囲気からの上昇温度 H:床近傍の火災火源からの高さ(天井高さ、代表長さ) r:天井面に沿った流動長 天井流の速度vcに対する主支配則 vc∝Q1/3/H1/3=Q1/3・H1/2/r5/6の性質で流動を開始

煙の性質 区画天井流の気流温度・速度、煙濃度 天井流(天井面に沿う流れ) Alpertの提案 天井流上昇温度ΔTs =5.38・(Q/r)2/3/H (r/H≧0.18) =16.9・Q2/3/H5/3 (r/H≦0.18) 天井流速度vs =0.197・Q1/3・H1/2/H (r/H≧0.18) =0.946・Q1/3/H1/3 (r/H≦0.18) Heskestad-Delichatosisの提案 ΔT*=(ΔTs/T∞)/Q*2/3=(0.188+0.313・r/H)-4/3 Q*=Q/(ρ∞・Cp∞・T∞・√gH・H2) v=0.68・(ΔT*)1/2・(r/H)-0.63 (r/H≧0.3)

煙の性質 区画天井流の気流温度・速度、煙濃度 須川の予測式(上昇温度ΔT、気流速度v、煙濃度Cs) ΔT=k・{(H+r)/Q2/5}-5/3 v=H/(H+2r)・√(ΔTs/T∞)・g・H Cs=ks・{(H+2r)/Q2/3}-1 k=20~22 ks :10~15(%・kW3/2) (ウレタンフォーム、有炎燃焼) :35 (ポリスチレンフォーム、有炎燃焼) :2.5 (n-ヘプタン・プロパンガス、有炎燃焼) :4.5~5 (木クリブ、有炎燃焼) :1200~1800 (綿シーツ、燻焼) Q≒α・(t-t0)2 熱煙気流は4~5秒天井に到達→天井下流れは火源での変化と同期

煙の性質 区画天井流の気流温度・速度、煙濃度 角度θの傾斜天井の場合 火源位置が室隅(2壁面)近接の場合 火源位置が壁面に近接の場合 ΔT=k・{(H+r・cosθ)/Q2/5}-5/3 v=H/(H+2r・cosθ)・√(ΔTs/T∞)・g・H 火源位置が室隅(2壁面)近接の場合 ΔT=k・(4/1)2/5・{(H+r)/(4Q)2/5}-5/3 火源4個相当分の天井面温度 v=H/(H+2r)・√(ΔTs/T∞)・g・H 火源位置が壁面に近接の場合 ΔT=k・(4/2)2/5・{(H+r)/(2Q)2/5}-5/3 火源2個相当分の天井面温度

煙の性質 室隅火源の場合の天井下の熱煙気流温度

煙の性質 壁面火源の場合の天井下の熱煙気流温度