MAXI & Astro-E2 時代の binary研究 P16 MAXI & Astro-E2 時代の binary研究 ○三原 建弘、小浜 光洋 (理研)、 松岡 勝、上野 史郎、冨田 洋、磯部 直樹、片山 晴善、森井 幹雄、横田 孝夫、倉又 尚之、川崎 一義 (JAXA)、 常深 博、宮田 恵美 (大阪大)、河合 誠之、片岡淳 (東工大)、吉田 篤正、山岡 和貴 (青学大)、根来 均 (日大) MAXIのホームページ: http://www-maxi.tksc.jaxa.jp/ 概要 E-mail: mihara@crab.riken.jp MAXIは、全天のX線天体を史上最高の感度で監視する。その観測対象は、我々の銀河系内の天体だけでなく、銀河系の外の天体にも及び、広く宇宙で起こっているダイナミックな振る舞いを調べることが初めて可能になる。MAXIによって全天1000個を越えるX線天体の1時間から1年にわたるX線強度の監視が行なわれる。 急に増光するX線新星やガンマ線バーストなど突発的な天体は、即時にデータを解析してインターネットを通して世界に速報され、Astro-E2を含めたいろんな望遠鏡で早期に詳しい観測が可能になる。ここではMAXI, GLAST, Astro-satなどが実現するAll-sky monitor新時代におけるAstro-E2の意味をbinary研究の面から考えてみた。 MAXIの打ち上げ 2005/2/26にH-IIA7号機が無事打ち上げられ、固体ブースター事故から復帰した。スペースシャトルもコロンビア事故からの再開機STS-114(野口宇宙飛行士搭乗)が5/15に打ち上げ予定で進んでいる。これでMAXIの打ち上げも見えてきた。MAXIは2008年度(夏期か冬期)にHTV初号機に格納されH-IIAロケットで打ち上げられる予定である。 MAXIの感度と Discovery space 下図は各All-sky monitorの感度とモニタ頻度を書いたものである。 MAXIを用いた高感度・長期X線変動モニタ 105 1h 1d 1w 1y 1Crab 100mC 10mC 1mC MAXI XTE/ASM Discovery space for MAXI 10y タイムスケール HEAO-1 A1 X-ray nova CI Cam Her X-1 Be Binary recurrent Be Binary Ariel V Ginga/ASM X線源の 明るさ 2-10keVの全天モニタの感度とモニタ頻度 104 103 All-Sky monitor 新時代 下の年表の通り、MAXIが2008年に打ち上げられ、2年以上稼動する同時期には、GLAST(アメリカ)、Astro-sat(インド)が動いているはずである。またLobsterもISSには乗りそうにないものの、衛星搭載の道を模索しているので上がるかもしれない。GLASTはGeVの広視野の観測装置であり、Astro-satにはXTE/ASMのような小型の全天モニタが搭載される。Lobsterはチャンネルプレートを利用した集光系で軟X線帯である。 XTE/ASMはまだ動いているかもしれない。INTEGRALは広視野の装置を持ちまだ動いているだろう。ガンマ線バースト衛星Swiftもまだ動いているかもしれない。これらは感度が低いが、独自の時間スケール、エネルギー帯をカバーする。 天体のX線強度 [mCrab] MAXI以前の感度 102 X線新星出現 ! 1周回 101 1週間 1 MAXIの感度 100 200 時間 [ days ] MAXI以前は観測できなかった遠方のX線新星を発見し、その光度変化を追うことができる。X線新星のサンプル数が飛躍的に増加する。明るい新星は、増光前、増光後のより暗い時期まで監視できる。 ここでXTE/ASMの観測例を示して、このようなライトカーブが、この20倍の感度で取れるということを想像していただきたい。 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 MAXI ASTRO-E2 Swift INTEGRAL GLAST Chandra XMM-Newton Lobster RXTE 現在 Astro-sat XTE/ASMの観測例 Levine 2005 長期にわたって活躍しているXTE/ASMは全天を網羅できる感度が50mCrab程度である。この深度で定常X線源は23個、トランジェントは1観測あたり平均2.4個である。MAXIはその20倍の感度なのでX線源数は201.5=90倍に増えるであろう。ざっと定常X線源が1000個、トランジェントが平均100個である。 Arial V、Ginga/ASM、XTE/ASMは感度は似たようなものだが、稼動時期が異なるため、三者三様の活躍をした。MAXIとて、もちろん同様のチャンスがある。 Non-periodic variations トランジェント天体とバイナリ研究 X線天文学の歴史を見るに、トランジェント天体で知見が一気に広がったという例が多い。X線天体の変動は不規則であるので、明るくなったのを検知して、その放射を集中的に研究してきたという経緯がある。1つには単に明るいことを利用したということであるが、もう1つには、ある運動を調べたければそのタイムスケールで見なければならないということがある。例えば、降着円盤全体の不安定性は1時間から1週間の変動に現れる。 トランジェントと言っても系に応じていろんなタイムスケールがある。変動は各X線源でまちまちなので、いろんなタイムスケールで監視しなければならない。 X線天体も系が銀河団などと大きくなると、その変動は期待できない。運動のスナップショットを数多く撮って研究することになる。AGNのように108Moのブラックホールだと微妙なところで、典型的な1日という観測時間では短すぎる。そこで高感度全天モニタの出番となる。 トランジェント天体と発見 I型X線バーストの光度 NGC6624 X線新星の降着円盤 A0620-00 GS2000+25 Beバイナリパルサーのサイクロトロン共鳴線 X0115+63 ジェット天体の鉄吸収線 GRS1915+105 ブレーザーのシンクロトロン放射と逆コンプトン放射 Mkn421 ガンマ線バーストの正体解明 GRB970228 GRB030329 ブレーザー天体などのGeV天体の放射を理解するにはX線の観測が必要不可欠である。GLASTの感度と、明るいAGNまでモニタできるようになったMAXIの感度は同程度(1mCrab)であり、よきパートナーである。これにより10keV X線と GeVガンマ線の全天無バイアス観測が実現する。Lobsterも加われば1keV X線も追加される。銀河系内天体のみならず、系外天体も含めた「本日の宇宙X線天体の活動状況」 「宇宙の高エネルギー天体の動的なカタログ」が実現する。X線天体の発現は天気などと違い、不規則かつ予測不可能である。 Frequent transients そのころのAstro-E2 そのころポインテイング衛星としては、Astro-E2のほか、Chandra、XMMが健在だろう。Astro-E2は、3年間のXRS時代を終え、CCDとHXDを中心としたbroad-band観測衛星となっているだろう。チャージインジェクションなどによりCCDは「あすか」やACIS-Iほどは劣化していないだろう。長時間観測も比較的容易になっているだろう。MAXIのアラートを元に、フレアを起こしたジェット天体のTOO観測やAGNの詳細モニタ観測ができるだろう。GRS1915のような天体からの吸収線は十分観測できる。MCG-6-30-15のような明るくなったAGN からのdisk lineの観測も十分可能である。長時間広帯域観測を行うことで、Disk lineについて新見識が得られるかもしれない。 Long-term periodicities MAXI と Astro-E2 のバイナリ研究 MAXIとAstro-E2のバイナリ研究は、 1.MAXIの豊富なデータベースを元に観測タイミングを図る。 2.MAXIで発見したトランジェントをAstro-E2で詳細に調べる。 広帯域スペクトルを取得し、数時間以短の時間変動を調べる。 のが主になろう。その時は、既存の観測スタイルに加え、現在XTE/PCAで行われているような 1.素早いTOO観測 例。アラート後1日以内に見る。 2.連続モニタ観測 例。 3日に2時間見るのを1ヶ月続ける。 が必要となるだろう。 Hardness light curve Spin period