メスバウアー効果で探る鉄水酸化物の結晶粒の大きさ 柴田研究室 藤原 豊 1.メスバウアー効果とは? 2.粒子の大きさによるスペクトルの変化 磁性をもった結晶粒の内部磁場の方向は緩和時間τで確率的に反転する。ここで緩和時間τは以下の方程式できまりV/Tに依存する。内部磁場の反転が遷移にかかる時間τ1~τ3に比べ早くなると、メスバウアースペクトルのτ依存性に示すように変化する。 鉄原子核による γ線の無反跳吸収 メスバウアー効果 ・・・ 磁化容易軸 内部磁場方向 結晶粒 γ線 透過γ線 14.4keV 57Co 57Fe 振動させる 比例計数管 ドップラー効果によってγ線のエネルギーをシフトさせる。γ線は、57Feで吸収されるために、比例計数管で右図のようなスペクトルが得られる。 V:結晶粒の体積 T:温度 緩和時間 Ku:一軸異方性定数 C=0.1ns メスバウアースペクトルのτ依存性 合成 温度一定下で体積分布しているサンプルを測定すると、右図のような合成されたスペクトルが得られる。 分解 57Feの超微細構造。 内部磁場により 縮退がとけている。 57Feの メスバウアースペクトル 測定した全ての温度についてスペクトルを分解できれば、結晶粒の体積分布を求めることができる。 3.β-FeOOHのメスバウアースペクトルの解析ー結晶粒の大きさ、β-FeOOHの異方性定数 4.まとめ β-FeOOHは鉄水酸化物のひとつである。これらは、すべて反強磁性体である。卒業研究では、β-FeOOHのメスバウアースペクトルを分解して体積分布と磁気異方性定数Kuを求めた。 ・脱水後のスペクトルを解析することによって、脱水後の結晶粒の体積分布を求めた。体積が集中しているところが二つある特徴的な分布であった。 β-FeOOH 6Å O/OH ・脱水前後で体積分布が変わらないと仮定してβ-FeOOHの異方性定数をもとめた。 β-FeOOHの異方性定数はKu=8000J/m3が一番良く実験結果を満足させた。 β-FeOOHの結晶粒 Fe β-FeOOHの 結晶構造 測定したサンプルはβ-FeOOHとそれが脱水して、Fe2O3に変化したものがある。 解析 まず、脱水後のスペクトルから解析する。Fe2O3の異方性定数はすでに知られていて、Ku=4700J/m3である。よってスペクトルのτ依存性を利用して、脱水後のスペクトルから脱水後の結晶粒の体積分布をもとめることができる。 ・問題点としては、2(β-FeOOH)→Fe2O3+H2Oとなるときに、体積が小さくなっている可能性がある。 12K 25K 60K 160K Relative transmission (%) 2(β-FeOOH)→ Fe2O3+H2O 脱水後 得られた体積分布 脱水後のスペクトル 次に脱水前のスペクトルの解析をする。脱水前後で体積分布が変わらないと仮定すると、β-FeOOHの異方性定数を求めることができる。一番よく実験結果を満足させたのはKu=8000J/m3であった。 脱水前 2(β-FeOOH) →Fe2O3+H2O 80K 150K 200K Velocity (mm/s) Relative transmission (%) β-FeOOHの異方性定数Ku=8000J/m3 脱水前のスペクトル