2006 年 11 月 24 日 構造形成学特論Ⅱ (核形成ゼミ) 小高正嗣

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2006 年 11 月 24 日 構造形成学特論Ⅱ (核形成ゼミ) 小高正嗣 火星の CO2 氷雲に関する 問題の検討 2006 年 11 月 24 日 構造形成学特論Ⅱ (核形成ゼミ) 小高正嗣

火星の気候 現在:寒冷乾燥な気候 過去:温暖湿潤? 平均気温 220 K 可降水量 10 μm 程度 流水地形の存在 バレーネットワーク (35 億年よりも前) アウトフローチャネル (35-18 億年前)

温暖な気候は実現するか? 鉛直1次元モデル研究 ○ × ○(?) 厚い CO2 大気の温室効果 Pollack et al. (1987) Kasting (1991) ○(?) CO2 大気+氷雲の温室効果 Forget & Pierrehumbert (1997) [Colaprete and Toon, 2003: JGR,108. E4, 5025, Fig.7.]

CO2 氷雲の温室効果(1) CO2 氷雲は太陽放射と地表および下層大気からの赤外放射を散乱 ② 赤外放射散乱(①)が太陽放射散乱(②)よりも大きいと, 温室効果を強める ② ①

CO2 氷雲の温室効果(2) 一次元雲層モデル計算 小杉田 他(2002) 雲粒サイズと光学的厚さを仮定し, 雲層での放射収支を計算 高度(×10 km) 一次元雲層モデル計算 小杉田 他(2002) 雲粒サイズと光学的厚さを仮定し, 雲層での放射収支を計算 雲粒サイズが大きいほど温室効果大 光学的厚さが薄すぎても厚すぎてもダメ 温度(K) 雲層に入射する赤外放射/太陽放射 雲の光学的厚さ

CO2 氷雲の温室効果(3) 一次元放射対流凝結平衡モデル計算 光田 他(2006) 凝結核数密度を仮定 凝結層での鉛直運動による熱輸送を無視 凝結層で放射冷却= 潜熱となる平衡解が存在する 雲粒サイズが大きいほど温室効果大

これらの問題に答えるためには大気の運動を 問題点 雲粒のサイズと雲の鉛直分布はどう決まるか 鉛直運動とそれにともなう熱輸送は無視できないだろう 雲の水平分布はどう決まるか 一次元モデルでは水平一様な雲を考えていることになる 実際にはどのような分布になるだろうか? 積雲 or 層雲? これらの問題に答えるためには大気の運動を 考慮したモデルを用いて考える必要がある

考えたい系の枠組み

問題へのアプローチ: 気象学におけるモデルの枠組み 雲微物理モデル 雲粒の成長と消滅を陽に計算 雲層下端の鉛直風を仮定 観測や雲解像モデルの結果を利用 雲解像モデル 雲生成をともなう大気運動を陽に計算 雲の生成と消滅はパラメタ化 パラメタ化には観測や雲微細モデルの結果を利用 「雲微物理パラメタリゼーション」と呼ばれる

雲微物理モデル 主に鉛直1次元 雲内の凝結潜熱とそれにともなう上昇運動を考慮 2 次元もある 雲内の凝結潜熱とそれにともなう上昇運動を考慮 凝結物をサイズ毎に複数の区分(BIN)に分け, 各区分の数密度の時間発展を計算

雲解像モデル 2次元 or 3次元 雲内外の大気運動を陽に計算 凝結物は重力落下の有無で二分, それらの混合比を計算 雲:落下しない 雨(雹):落下する

問題へのアプローチ: 気象学におけるモデルの枠組み 雲微物理モデル 雲粒の成長と消滅を陽に計算 雲層下端の鉛直風を仮定 観測や雲解像モデルの結果を利用 雲解像モデル 雲生成をともなう大気運動を陽に計算 雲の生成と消滅はパラメタ化 パラメタ化には観測や雲微細モデルの結果を利用 「雲微物理パラメタリゼーション」と呼ばれる このモデルの枠組みで考えはじめたい

火星 CO2 氷雲の 微物理パラメタリゼーション 以下の過程をどうパラメタ化すべきか? 蒸気から雲への変換 雲から雹の変換 雹の蒸発 … 既存のパラメタ化は地球大気の H2O の雲を想定 地球の雲の観測に基づく部分もあるので注意 素過程に立ち戻って検討しなおす必要がある

最近の動向 雲微物理モデルによる CO2 雲の研究がなされるようになってきた これらの研究を参考に Colaprete and Toon (1999, 2002, 2003) Colaprete et al. (2003) Maattanen et al. (2005) これらの研究を参考に まずは雲微物理の基礎知識をひもとくところから

参考文献 Pollack et al., 1987: Icarus, 71, 203. Kasting, 1991: Icarus, 94, 1. Forget and Pierrehumbert, 1997: Science, 278, 1273. Colaprete and Toon, 1999: JGR, 104, E04, 9043. Colaprete and Toon, 2002: JGR, 107, E07, 5051. Colaprete and Toon, 2003: JGR, 108, E04, 5025. Colaprete et al., 2003: JGR, 108, E07, 5081. Maattanen et al., 2006: JGR, 110, E02, E02002.

参考 URL http://antwrp.gsfc.nasa.gov/apod/ap061017.html