「生命融合科学概論」 生体機能を合成する Synthesizing functions in living body

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「生命融合科学概論」 生体機能を合成する Synthesizing functions in living body 生命科学院 生命融合化学コース (電子科学研究所) 玉置 信之 Nobuyuki Tamaoki

本日の講義の目次 1.生体機能の合成について 2.アゾベンゼンazobenzene(光駆動エンジン分子)について   1.生体機能の合成について   2.アゾベンゼンazobenzene(光駆動エンジン分子)について      ・アゾベンゼンを使った1分子機械      ・アゾベンゼン+液晶性(分子集合体)による分子機械      ・プラスチックモーターの紹介    3.アゾベンゼンによるモータータンパク質の光制御 

生体機能 化学エネルギーを使って 生きる、活動する 情報を受けて応答する 自己を複製して子孫を残す ... これらすべてが分子からマクロなレベルまで制御されて働いている

モータータンパク キネシンで微小管を溝に沿って一方向に動かす(上田太郎ら、2001年) Motor protein kinesin microtubule 微小管 キネシン ガラス基板

ロドプシンの働き

アゾベンゼン 紫外線 青色光 トランス-アゾベンゼン シス-アゾベンゼン

アゾベンゼンの光反応 励起状態 励起状態 DG=280kJ/mol DG=330kJ/mol 基底状態 DG=約45kJ/mol 基底状態

アゾベンゼンの異性体における性質の違い 5.5Å 9.0Å 長さ 0D 3.0D 双極子モーメント 365 nm光(紫外線)をより強く吸収 光吸収 熱安定性 安定 1日程度でトランス体に変化

アゾベンゼンを使った最初の分子機械(新海、1981) 青色光 紫外線 O カリウムイオンの流れ 水 カリウムイオンを含む水溶液 紫外線 青色光 アゾベンゼンを含む有機溶媒

分子ペンチ(相田、金原、2006) 紫外線 青色光

完全なON-OFFを示す分子ブレーキ(玉置、2009) 紫外線 青色光   回転不可(ブレーキON)      回転可(ブレーキOFF)   

アゾベンゼンでマクロな物体を回転させる(玉置、2009) 紫外線 青色光 キラルな光駆動エンジン分子 (トランス体とシス体では液晶分子に対する“ねじり力”が異なる) キラル化合物(赤)の混入でねじれた配列を示す液晶

ガラスロッド アゾベンゼン入り液晶 ガラス基板

プラスチックモーター(池田、2008)

分子が規則正しく整列する.分子がお互いを認識しあう. 液晶性アゾベンゼン高分子 分子が規則正しく整列する.分子がお互いを認識しあう. →分子レベルの変化が足し合わされる

DNA 二足モーター (Seeman, 2009) Walker Fuel Track

可視光でDNA鎖間の相互作用を制御(亀井、玉置、2009) trans cis 5’-AAAXAAAAAAXAAA-3’ 3’-TTTTTTTTTTTTTT-5’ cis trans

Introduction of azobenze to energy molecule Driving and photo-controlling kinesin-microtubule motor protein by azobenzene ATP ADP 微小管 キネシン ガラス基板 Introduction of azobenze to energy molecule Introduction of azobenze to inhibitor molecule

Molecular structure of a new energy molecule “AzoTP”

Motility of microtubule Without irradiation After UV irradiation After Vis irradiation

Velocity change by photoirradiation Initial UV Vis UV Vis

Dependence of gliding velocity of microtubules on AzoTP concentration before and after UV irradiation

Photo-responsive inhibitor Synthesized peptides has the kinesin C-terminus tail sequence, which inhibits the function of motor domain when not bound to cargo.

Motility of microtubule Without irradiation After UV irradiation After Vis irradiation

Velocity change upon UV and Vis lights irradiation

Dependence of gliding velocity of microtubules on photoresponsive inhibitor concentration before and after UV irradiation

試行錯誤による進化を経て達成された生体機能またはそれを超える機能を、分子デザインと合成によって実現することで、生体機能のより深い理解に貢献できる。