「溶剤塗装 火災リスクアセスメント」 実施マニュアル 【労働安全衛生法改正「化学物質のリスクアセスメント義務化」対応】 IPCO(国際工業塗装高度化推進会議 安全技術分科会編) 「溶剤塗装 火災リスクアセスメント」 実施マニュアル http://ipconet.org/index.html 【目次】 1、本マニュアル策定の背景と適用範囲 2、実施概要と事前準備及びリスクアセスメント用語 (作業者・観察者人選、仕様書、SDS、工程表、地図、カメラ、測定器、記録用紙、‥) 3、ステップ1: 危険源(第4類危険物が生ずる引火性ガス)の特定 事前学習(危険源の特性理解、火災事例と原因の学習、知識の共有) 4、ステップ2: 火災リスクアセスメントの実施:「実施シート」記入&写真撮影 (塗料・溶剤入荷から廃棄までの全工程・全場面毎に実施) ①引き金事象(スイスチーズ孔貫通による着火事象)の特定 ②中間事象(自然鎮火・初期消火失敗→延焼)シナリオの同定(複数) ③結果事象(火災による労災と物損被害の想定)シナリオの同定(複数) ④既存リスク低減措置(実施中防火対策)の確認 ⑤既存リスク低減措置が無い場合の①②③を再実施 ⑥リスク見積と評価の実施(その1:既存リスク低減措置無し、その2:有り) ⑦リスク低減措置機能維持のための注意事項抽出 ⑧その他の注意事項抽出 ⑨シナリオ毎の追加リスク低減措置の立案(着火防止、延焼防止、消火、避難) ⑩追加リスク低減措置の実装可否検討 5、ステップ3: リスク低減措置の決定(措置の決定と実施はリスクアセスメントの範囲外) ①ステップ2内容の一覧表への転記と整理:「実施結果シート」記入&写真整理 (②リスク低減措置の決定(及び実施)) 6、ステップ4: 火災リスクアセスメント実施結果の作業者・関係者への周知と活用 この 「溶剤塗装火災リスクアセスメント実施マニュアル」 は本技術資料 JNIOSH-TD-NO.5(2016) に沿って、IPCO安全技術分科会が策定したものである。 http://www.jniosh.go.jp/publication/doc/td/TD-No5.pdf#zoom=100 1 2016年8月 1日 発行 N 2016年5月23日 原案策定
別編「健康障害のリスクアセスメント:工業塗装編」 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 1、本マニュアル策定の背景と適用範囲 本マニュアル策定の背景と適用範囲 「労働安全衛生法改正(平成26年6月25日改正、平成28年6月1日施行)」により「化学物質による労働災害リスクアセスメントの実施(4M変化点があったものから実施)」が義務付けられた。 本編は工業塗装業界リスクアセスメントの下記4領域のうち「第4類危険物(溶剤塗装火災の主要化学物質)火災リスクアセスメントの実施マニュアル」を提示するものである。 化学物質(SDS交付義務640物質) による労働災害リスクアセスメント 健康障害 リスクアセスメント 別編「健康障害のリスクアセスメント:工業塗装編」 爆発・火災 リスクアセスメント 粉体塗装等火災 リスクアセスメント 別途作成 安全管理活動 ・法令 安全パトロール ・標準・基準 チェックシート ・5S ・KYT、ヒヤリハット イベント(安全週間‥) ・リスクアセスメント 実施義務化(青字だけでは不足) 溶剤塗装火災 リスクアセスメント 下記以外の火災 リスクアセスメント 別途作成 第4類危険物火災 リスクアセスメント 本編 なお、同時実施が必要な 「健康障害リスクアセスメント」 については、厚生労働省のホームページ掲載の 「化学物質による健康障害のリスクアセスメント: 工業塗装編」 に沿って進める事を推奨する。
第4類危険物火災リスクアセスメント(現場調査) 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 2、火災リスクアセスメント実施概要とリスクアセスメント用語 火災リスクアセスメント実施概要 【スタート】 4M変化点発生! 事前準備 (人、書類、機材、‥) 危険源特定 (危険物詳細内容) 調査前学習 (危険レベル、火災事例等) 追加リスク低減措置検討 措置決定 第4類危険物火災リスクアセスメント(現場調査) 火災リスクアセスメント 実施結果の 作業者・関係者への 周知・共有 ・活用 引き金事象 特定 中間事象 シナリオ 同定 結果事象 シナリオ 同定 既存リスク 低減措置と 効果の確認 リスク 見積と 評価実施 シナリオ 毎に 立案 実装可否 検討 機能維持 注意事項 抽出 その他の注意事項 抽出 一覧表 への まとめ 低減 措置 決定 № 用語 英語 意味 1 危害 Harm 「人への害(身体的障害、健康障害、死亡)」と「財産・環境への害」 2 危険源 Hazard 「危害(Harm)」の潜在的な源 3 リスク Risk 「危害の発生確率」 と 「危害の程度」 の組み合わせ 4 リスク分析(見積) Risk Analysis 「危害」を特定し、「リスク」を見積もること 5 リスク評価 Risk Evaluation 「リスク分析(見積)」し「許容可能レベルに到達したかどうか」を判定すること 6 リスクアセスメント Risk Assessment 「リスク分析」し「リスク評価」すること 7 リスクレベル Risk Level 「リスク」の大きさをⅠ(小)、Ⅱ(中)、Ⅲ(大)の3段階に分類したもの 8 リスク低減措置 Risk Reduction Measure リスクレベルを下げるための「本質安全対策」「工学的対策」「管理的対策」 9 リスクレベルⅠ Risk LevelⅠ 「必要に応じて」リスク低減措置を実施すべきリスクがある(許容レベル) 10 リスクレベルⅡ Risk LevelⅡ 「速やかに」リスク低減措置を講ずる必要のあるリスクがある(許容レベル) 11 リスクレベルⅢ Risk LevelⅢ 「直ちに」解決すべき、または「重大な」リスクがある (非許容レベル) 12 リスクマネジメント Risk Management 「リスクアセスメント」を実施し、結果に基づく「リスク低減戦略」を実施すること 13 引き金事象 Trigger Event 「危険源」のリスクを顕在化させる「事象(事故につながる一連の現象)」 14 シナリオ Hazard Scenario 「危険源(Hazard)→引き金事象→中間事象→結果事象(災害)」の一連の過程 15 残留リスク Residual Risk 実装可能なリスク低減措置が無い、または許容可能として残留したリスク 16 多重防護 Multiple Protection Measure 異常発生防止/異常発生検知/事故発生防止/被害の局限化を複数用いるリスク低減戦略
4M変化点の把握 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 2、火災リスクアセスメント実施概要とリスクアセスメント用語 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 2、火災リスクアセスメント実施概要とリスクアセスメント用語 4M変化点の把握 【スタート】 4M変化点発生! 平成28年6月1日からは、4M変化点があったものから「化学物質のリスクアセスメント」が義務付けられている。 よってまずは「4M変化点」を把握し、その変化点に着目したリスクアセスメントを行う必要がある。 これは消極的には「労働安全衛生法改正による法規対応」であるが、それ以上に 「自分を守り、仲間を守り、会社を守る!」 積極的な労災防止の自主的アクション として取り組むべきである。 4M変化点発生事例 新規塗装受注樹脂部品「リアバンパーロア」の指定塗料「KAEベースコート」は過去に塗装実績が無い新規塗料であった。 よってMaterialの変化が生じる事となった。 変化点 発生年月日 2016年5月23日~ Material Machine Method Man 塗料、シンナー、添加剤、薬剤、‥ 設備、機器、工具、道具、建屋、‥ 工程、方法、順番、‥ 作業者、監督者、管理者、業者、‥ 変化点以前 過去実績無し 変化点以降 新規塗料 KAEベースコート
事前準備 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 2、火災リスクアセスメント実施概要 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 2、火災リスクアセスメント実施概要 事前準備 事前準備 (人、書類、機材、‥) リスクアセスメントを実施するには下表のような事前準備が必要である。 実施者人選 書類整備 機材準備 スケジュール調整 作業者、観察・記録者、評価者、‥ 仕様書、SDS、工程表、地図、‥ カメラ、測定器、記録用紙、‥ 日時・場所‥ 事前準備事例(新規色KAE導入対応) 業務 人選 機材 作業者 職人 太郎 塗料・機器 観察者 火災 博士 カメラ ビデオ 記録者 安全 守 書類・用紙 実施日時:2016年4月29日13時~15時 実施場所:国際工業塗装(株) 塗装工場 内容: 火災リスクアセスメント初回
危険源(第4類危険物が生ずる引火性ガス)の特定 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 3、ステップ1: 危険源の特定 「出典元:図解でわかる危険物取扱者講座」 危険源(第4類危険物が生ずる引火性ガス)の特定 危険源特定 (危険物詳細内容) http://zukai-kikenbutu.com/ 「溶剤塗装火災の危険源」 は 「(第4類危険物から生じる)引火性ガス」である。 この引火性ガスは第4類危険物(引火性液体)の蒸気(揮発ガス)と空気が燃焼範囲に混合されることで生じる。 この「危険源」に「点火源」が引火して第4類危険物の着火に至る「引き金事象」が引き起こされる。 着火後に自己消火や初期消火が出来ず、延焼物が多ければ延焼して火災に至り、避難に失敗すれば労災に発展する。 これらの一連の過程がハザードシナリオである。 ハザードシナリオの起点になるのが 「危険源:引火性ガス」 であり、この特性(引火点、燃焼範囲、 石油類分類、‥)をSDSにより調査して「溶剤塗装火災リスクアセスメント」の実施前に情報共有しておく事が重要である。 ハザードシナリオ 引き金事象(初期事象) 中間 事象 結果 事象 延焼 火災・労災 引火性ガス (燃焼範囲 空気混合ガス) + 引火 第4類危険物 (引火性液体) 危険源 点火源 着火
危険源(第4類危険物が生ずる引火性ガス)の特定 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 3、ステップ1: 危険源の特定 危険源(第4類危険物が生ずる引火性ガス)の特定 危険源特定 (危険物詳細内容) 「危険源(第4類危険物が生ずる引火性ガス)」 の特定は溶剤塗料仕様書に基づく、組成把握に始まる。 組成把握事例 (新規色KAE導入対応) KAEはR-303N、T-271、T-227の3つを規定比率で混合したものであり、これらすべてのSDS情報が必要である。 次に、組成品のSDSから必要情報を抽出して単品及び混合品の引火性ガスの特性を把握し、危険源を特定する。 危険源特定事例(新規色KAE導入対応) 【危険源特定内容】 ・第1石油類である。 ・引火点が極めて低い。 ・低濃度でも燃焼する。 ・下限~上限の幅が広い。 →引火・着火リスク大! № 第4類危険物名称 SDS整理番号 第4類危険物品名 引火点 ℃ 爆発下限 % 爆発上限 % 組成比 % 発火点 ℃ 密度 1 BKAE R-303N 201100388 第1石油類(非水溶性) 7.7 1.1 15 30.0 370 0.95 2 T-271 200703142 1.0 1.3 11 31.5 272 0.88 3 T-227 200702880 7.5 0.6 38.5 427 4 混合品 - 0.86 100.0 0.90 最小値 計算値 最大値 特定した危険源(引火性ガス)の特性「常温でも引火性ガスが発生している」「低濃度でも引火・着火する」などを、次のステップの調査前学習で調査者全員で情報共有し、引き金事象特定に役立てる。
溶剤塗装火災リスクアセスメント調査前学習 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 3、ステップ1: 調査前学習(危険レベル、火災事例等) 溶剤塗装火災リスクアセスメント調査前学習 調査前学習 (危険レベル、火災事例等) ・ 「火災リスクアセスメントの実施」の直前に会議室等に参加者全員が集合し、「調査前教育」を実施する。 ・ 講師は「観察者」が勤め、作業者と記録者に「危険源特定結果」「溶剤塗装火災防止入門(特に火災事例)」を伝える。 ・ 最後に火災リスクアセスメントの目的 「自分を守り、仲間を守り、会社を守る」 を復唱し、調査開始する。 ・ この調査前学習によって、調査目的や問題発掘視点を共有しておく事で一丸となったアセスメントが出来る。 調査前学習事例(新規色KAE導入対応) 業務 人選 機材 作業者 職人 太郎 塗料・機器 観察者 (講師) 火災 博士 カメラ ビデオ 記録者 安全 守 書類・用紙 【危険源特定結果共有】 危険レベルの高い塗料である! 【危険源特定内容】 ・第1石油類である。 ・引火点が極めて低い。 ・低濃度でも燃焼する。 → 引火・着火リスク大! 【溶剤塗装火災防止入門学習】 第4類危険物の基礎復習、火災事例の学習 【リスクアセスメント目的復唱】 自分を守り、仲間を守り、会社を守る!
第4類危険物火災リスクアセスメント実施(現場調査) 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: 現場調査実施要領概要 現場調査要領概要 第4類危険物火災リスクアセスメント実施(現場調査) 第4類危険物が事業所へ入荷される時点・場所・作業を起点として、危険物では無くなるか事業所外へ出荷されるまでの全工程を作業者と共に廻り、調査・記録を行う。 このため、工程フローや地図を携帯し、所定フォーマットへの記入と共に「どの工程で、どの時点で、何のために、誰が、どのように、何をしているのか(5W1H)」毎に撮影と記入を行う。 現場調査ルート事例(新規色KAE導入対応) 業務 人選 機材 作業者 職人 太郎 塗料・機器 観察者 火災 博士 カメラ ビデオ 記録者 安全 守 書類・用紙 調査ルート事例(新規色KAE導入対応) 【B】 【C】 【E】 【F】 【D】 【A】 実施日時:2016年4月29日13時~15時 実施場所:国際工業塗装(株) 塗装工場 内容: 火災リスクアセスメント初回 調査ルート 【A】塗料倉庫(危険物保管庫) 【B】塗料・溶剤搬入口 【C】塗料調合場 【D】塗料一時置き場 【E】塗料色換・洗浄場 【F】塗装ブース
第4類危険物火災リスクアセスメント実施(現場調査) 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: 現場調査実施要領概要 現場調査要領概要 第4類危険物火災リスクアセスメント実施(現場調査) 現場調査は危険物入荷から出荷または危険物では無くなるまでの全ルートを順番に辿って実施するが、ここでは「新規色KAE」の「【E】塗料色換・洗浄場」での事例に沿って、説明を進める。 現場調査事例(新規色KAE導入対応) 業務 人選 機材 作業者 職人 太郎 塗料・機器 観察者 火災 博士 カメラ ビデオ 記録者 安全 守 書類・用紙 【A】 実施日時:2016年4月29日13時~15時 実施場所:国際工業塗装(株) 塗装工場 内容: 火災リスクアセスメント初回 【E】 調査ルート 【F】 【A】塗料倉庫(危険物保管庫) 【B】塗料・溶剤搬入口 【C】塗料調合場 【D】塗料一時置き場 【E】塗料色換・洗浄場 【F】塗装ブース 調査ルート事例(新規色KAE導入対応) 【D】 【C】 【B】
第4類危険物火災リスクアセスメント実施(現場調査) (工程、場面別にリスクレベルの高いシナリオから並べて、全体調整する。) 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: 現場調査実施要領概要 現場調査要領概要 第4類危険物火災リスクアセスメント実施(現場調査) 記録フォーマット(書式)は「労働安全衛生総合研究所技術資料(表紙参照)」の「実施シート」と「実施結果シート」を踏襲した「溶剤塗装 火災リスクアセスメント」用フォーマットを使用する。 労働安全衛生総合研究所版 実施シート (工程、場面、シナリオ毎に1枚記入) 労働安全衛生総合研究所版 実施結果シート (工程、場面別にリスクレベルの高いシナリオから並べて、全体調整する。) 工程・場面毎のシナリオが数枚(実施シート枚数が数枚)の時は、この実施結果シートへの転記を省略しても良い。 (数枚の実施シートを並べて、評価の偏りが無いかをチェックし、全体の俯瞰は実施の事。)
第4類危険物火災リスクアセスメント実施(現場調査) 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: 現場調査実施要領概要 現場調査要領概要 第4類危険物火災リスクアセスメント実施(現場調査) それでは、「【E】塗料色替・洗浄場」での「塗料充填作業/塗装機洗浄作業」を事例として「実施シート」の記入方法を説明して行く。 「実施シート」は「場所・工程毎」に作成し、「シナリオが複数存在する」場合は更に「シナリオ毎」に追加作成する。 スタートは下記の①~④の基本事項記入である。 ②実施理由と特記事項(危険源の特徴など)を記入 ③実施日、作業者、観察者、記録者を記入 ①危険源情報を記入 ④場所名・工程名を記入 次は対象の場所・工程へ行って、「現場調査①: 引き金事象の特定」の準備にとりかかる。
(被塗物、塗料、機器、塗装条件、人、気象‥) 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ①「引き金事象」 の特定 現場調査① 引き金事象 特定 「引き金事象」 とは「危険源が持つ潜在リスクを顕在化させる事象(事故につながる一連の現象)」 である。 これを説明するのに良く使われるのが 「スイスチーズモデル」 である。 「条件が揃ってしまい、引き金が弾かれる」 状況を直観的に理解出来る。 こうした「引き金事象」の抽出・特定が 「火災リスクアセスメントの成否」 を握っている。 労働災害(リスク顕在化) 危険源(潜在リスク) 着火 火災・爆発 第4類危険物 引火・延焼・受傷・死亡‥ 化学物質(SDS 640物質) 溶剤塗装では第4類危険物 が生成する引火性ガス 引き金事象 【スイスチーズモデル】 何十年もやって来たが、火災は起こしていない。 (無知、慣れ、慢心‥) 着火 火災!(燃えてしまった!) (一巻の終わり) 危険物種 温湿度 蒸気濃度 着火 エネルギー 作業方法 その他 変化点(最後の孔) (被塗物、塗料、機器、塗装条件、人、気象‥)
【スイスチーズモデル】 現場調査① 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ①「引き金事象」 の特定 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ①「引き金事象」 の特定 現場調査① 引き金事象 特定 「引き金事象」を特定するには、「危険源(引火性ガス)が存在、または発生し得る場所で」、「引火性ガスに着火させる可能性のある事象(特に静電スパーク)を洗い出し」、「事故事例などを参考に、スイスチーズ孔が貫通してしまう事象を想定する」と良い。 これを調査者全員でワイガヤしながら「着火シナリオ」を創作する。 【スイスチーズモデル】 何十年もやって来たが、火災は起こしていない。 (無知、慣れ、慢心‥) 着火 火災!(燃えてしまった!) (一巻の終わり) 危険物種 蒸気濃度 着火 エネルギー 温湿度 作業方法 その他
現場調査① 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ①「引き金事象」 の特定 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ①「引き金事象」 の特定 現場調査① 引き金事象 特定 「現場調査」は「作業名・作業目的・設備・機器・特記」を明確化し、「引き金事象の特定」の準備を行うものである。 この調査では「作業者が一人」の方が良く、可能ならビデオで全作業を記録した方が記録漏れ防止になる。 作業名等明確化及び 引き金事象特定準備 現場調査事例 (新規色KAE導入対応) ③④の作業はポリ容器との摩擦で静電スパークの危険性があり、特に注意が必要である。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑦ ⑧ ⑨ ⑥
現場調査① 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ①「引き金事象」 の特定 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ①「引き金事象」 の特定 現場調査① 引き金事象 特定 「現場調査」の結果を基に、表の⑤⑥に記入する。 特記があれば、それも記入する。 「実施シート」記入開始 事例 (新規色KAE導入対応) ⑤作業名・作業目的を記入 ⑥使用設備・機器・材料等を記入
「引き金事象特定」事例 (新規色KAE導入対応) 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ①「引き金事象」 の特定 現場調査① 引き金事象 特定 次は「引き金事象の特定」を行う。 現場調査の結果、「危険源(引火性ガス)」のリスクは6作業中5作業で×と判定した。そして「着火源発生リスク」は6作業中6作業で×と判定した。よって、着火総合リスクは6作業中5作業が×で、残る1作業も△というハイリスク工程であると判定した。 こうした状況下では「乾燥注意報の出るような低湿度」のような「最後の孔」が揃えば、「引き金事象(着火)」に至る。 そうした着火に至るストーリーを「引き金事象」欄に記入する。 「引き金事象特定」事例 (新規色KAE導入対応)
現場調査① 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ①「中間・結果事象シナリオ」 の同定 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ①「中間・結果事象シナリオ」 の同定 現場調査① 中間事象シナリオ同定 結果事象シナリオ同定 次に、「中間事象シナリオ」と「結果事象シナリオ」を「同定(=分類)」する。 「シナリオ」が異なる時には、追加の「実施シート」に記入する。 この「溶剤塗装 火災リスクアセスメント実施マニュアル」では「中間事象シナリオ」は「消火が出来ずに延焼するシナリオ」とし、「結果事象シナリオ」は「火災規模・避難難易度・労災」とした。 これにより、「引き金事象(着火)」に始まり「中間事象(延焼)」と続き「火災、労災」の結果までの一連の事象として想定出来るようにした。 「中間事象シナリオ」「結果事象シナリオ」の同定 事例 (新規色KAE導入対応)
現場調査② 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ②「既存のリスク低減措置の確認」 と「リスク見積評価」 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ②「既存のリスク低減措置の確認」 と「リスク見積評価」 現場調査② 既存リスク低減措置と効果の確認 リスク見積と評価実施 次は「現場調査②」となる「既存リスク低減措置と効果の確認」である。 「火災防止のための既存のリスク低減対策」は何なのかを現場で確認し、「それが無いとどうなるのかのリスク見積評価」と「それがある事でどうなっているのかのリスク見積評価」により「既存リスク低減措置の効果の確認」を行う。 「リスク見積」は「重篤度(火災の程度)」と「発生頻度」について行い、この組み合わせで「リスクレベル評価」を行う。 この「見積り基準」及び「評価基準」は次頁に示す。 「既存のリスク低減措置の確認」と「リスク見積りと評価(その1)(その2)‥効果確認」 事例 (新規色KAE導入対応)
現場調査② 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ②「既存のリスク低減措置の確認」 と「リスク見積評価」 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ②「既存のリスク低減措置の確認」 と「リスク見積評価」 現場調査② 既存リスク低減措置と効果の確認 リスク見積と評価実施 以下に「リスク見積り基準」と「リスクレベル評価基準」を示す。 「重篤度」「発生頻度」は日常感覚とは異なるものであるが、この基準に従ってのリスクレベル評価が必須である。 リスクレベルはⅢは生産開始または生産続行が出来ないレベルであり、リスク低減措置の即実施が必要とされる。(措置の実施はリスクアセスメントの対象外)
現場調査③ 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ③「追加のリスク低減措置の検討」 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ③「追加のリスク低減措置の検討」 現場調査③ 追加のリスク低減措置検討 シナリオ毎に立案 「リスクアセスメント」の範囲には「追加のリスク低減措置立案と実装可否の検討、措置の決定」は含まれていない。 よって「リスクアセスメントの実施義務化」の対象外であるが、「法規対応」では無く「自分の身を守り、仲間を守り、会社を守る」理念に沿えば、これは不可欠のステップである。 この実施例を以下に示す。 「措置の種類」「措置の目的」については説明を次頁以降に添付する。 「追加のリスク低減措置の検討&リスク見積りと評価」「実装可否」 事例 (新規色KAE導入対応)
現場調査③ 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ③「追加のリスク低減措置の検討」 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ③「追加のリスク低減措置の検討」 現場調査③ 追加のリスク低減措置検討 シナリオ毎に立案
現場調査③ 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ③「追加のリスク低減措置の検討」 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ③「追加のリスク低減措置の検討」 現場調査③ 追加のリスク低減措置検討 シナリオ毎に立案
現場調査③ 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ③「追加のリスク低減措置の検討」 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ③「追加のリスク低減措置の検討」 現場調査③ 追加のリスク低減措置検討 シナリオ毎に立案
現場調査② 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ②「リスク低減措置の機能維持」「残留リスク」 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ2: ②「リスク低減措置の機能維持」「残留リスク」 現場調査② 機能維持注意事項抽出 その他の注意事項抽出 この時点では「追加のリスク低減措置」は検討されただけで「実装」されていないため、この「リスク低減措置の機能を維持するための作業者・関係者への注意事項」は「既存のリスク低減措置」が対象となる。 また「その他、作業者・関係者に伝えておくべき事項(残留リスクと、その対応方法)」も現状が対象となる。 以下に、事例を示す。 「リスクの低減措置の機能を維持するための注意事項」と「残留リスクと対応等通知事項」 事例 (新規色KAE導入対応) リスクレベル評価結果がⅢ(許容出来ないリスクレベル)であった場合は、ここには重大な残留リスクが存在する事を示す事になる。
(工程、場面別にリスクレベルの高いシナリオから並べて、全体調整する。) 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ3: ①「一覧表(実施結果シート)」への転記 リスク低減措置の決定 一覧表へのまとめ 複数のシナリオが同定された場合は、同一工程の同一作業について複数の実施シートが出来る。 これを一覧表にまとめる事で、実施シート記入内容のレベリングが出来、俯瞰出来るようになる。 労働安全衛生総合研究所版 実施シート (工程、場面、シナリオ毎に1枚記入) 労働安全衛生総合研究所版 実施結果シート (工程、場面別にリスクレベルの高いシナリオから並べて、全体調整する。) 今回の事例ではシナリオが一つであったため、一覧表(実施結果シート)作成を割愛。
リスク低減措置の決定 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ3: ②リスク低減措置の決定 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 4、ステップ3: ②リスク低減措置の決定 リスク低減措置の決定 低減措置決定 「実施シート」の「②リスク見積りと評価(その2)」がリスクレベルⅢとなったため、追加措置の実施が必須と判断し、青塗りの低減措置を追加する事とした。 しかし、作業性・品質(塗料凝固防止)に優れるポリ容器の低減措置は今回追加出来なかった。 また延焼物の最少化についても、具体策が無く今回は追加出来なかった。
再実施 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 5、ステップ3: 火災リスクアセスメントの再実施 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 5、ステップ3: 火災リスクアセスメントの再実施 再実施 第4類危険物火災リスクアセスメント 追加低減措置(青塗り部分)の実施後となる5月21日に火災リスクアセスメントを再実施し、リスクレベルを低減。 4月29日実施 5月21日実施 追加措置実施 残留リスク、残課題としては下記2件が残った。 1)ポリ容器対策 2)延焼物最少化 リスクレベル Ⅲ→Ⅱへ低減
再実施 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 5、ステップ3: 火災リスクアセスメントの再実施 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 5、ステップ3: 火災リスクアセスメントの再実施 再実施 BEFORE / AFTER 「初回または前回のリスクアセスメント結果(BEFORE)」と「再実施したリスクアセスメント結果(AFTER)」は写真で比較すると、非常に分かりやすくインパクトのある説明資料となる。 是非お勧めする。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑦ ⑧ ⑨ BEFORE ⑥ ・作業者がズック靴を履いて、普通のフロア上で作業(人のアースが取られておらず静電スパーク着火源となる危険性大)。 ・溶剤を含んだウェスやフィルターをプラゴミ箱に開放投棄(危険源の引火性ガスが常時存在)。 ・近くに消火器無し(初期消火出来ず、延焼する危険性大)。 AFTER ・静電靴を履き、アースチェックし、記録。 危険源近くの床はすべてステンレス化。 (人も物もアース) ・ゴミ箱や溶剤廃棄缶はすべてアースされた金属缶とし、蓋をした。(危険源遮断) ・消火器も常備した。(初期消火可)
実施結果の作業者・関係者への周知・共有・活用 【溶剤塗装 火災リスクアセスメント 実施マニュアル】 6、ステップ4: 実施結果の作業者・関係者への周知・共有・活用 実施結果の作業者への周知 実施結果の作業者・関係者への周知・共有・活用 最終頁 「火災リスクアセスメント等」の最終段階はアセスメント結果の周知と活用である。 これにより、注意点や遵守事項や残留リスクへの対応を共有出来る。 そして、次のリスクアセスメントサイクルへの起点が出来る。 火災リスクアセスメントの実施結果については、国際工業塗装(株)にて、作業者・関係者への説明会が開催され、情報共有されると共に 「基準書・手順書・チェックシート」 や 「現場看板」 に結果が反映された。 http://ipconet.org/index.html 安全技術分科会 メンバー表 坂井 木下 窪井 平野 田村 藤井 石井