ハイパー核物理分野から見た K原子核物理へのコメント 肥山詠美子(奈良女大)
本研究会、K核世話人、比連崎さんからの依頼: 少数系物理分野、ハイパー核物理から見て、 K核分野に対してどういう意見がありますか? そこで、意見というほどでもないが、少数系物理分野 から見て、2点ほど、よく分からないことがある。 私の方から、2点ほど、質問をさせていただいきたい。 この質問に対して、私は明確な「答え」というものは 持っていない。単なる「話題提供」なので、 私のディスカッションの時間は不要
今のホットな話題 ・K原子核は、束縛状態としてどこに存在するのか? decay widthは? ・凝縮は起きるのか? これらの議論するためには、KN相互作用についての 情報が必要である。 おそらく、K原子核の世界もハイパー核物理分野と 同じようにK原子核の構造の研究から、KN相互作用に 対する情報を得ようとしつつあるのではないでしょうか?
少数粒子系物理の観点からみて 2つの質問 (1)解き方(計算法)と使うべき相互作用は対応しているのでしょうか? (2)研究しようとしている原子核と計算法は対応してい るのでしょうか?
少数粒子系、ハイパー核物理分野から見て・・ (1) 解き方(計算法)と使うべき相互作用は 対応しているのだろうか? 少数粒子系、ハイパー核物理分野から見て・・ n p n n n Λ n p n p 3H p n n Λ Λ p p p p 4H 4He 4He 3H Λ Λ Λ p n これらの核を研究しようとする場合:使用する計算法: Faddeev法 変分法(SVM,ガウス展開法etc) 3He 使用する相互作用:bareな相互作用を用いる
少数粒子系物理グループの間で、各自の計算法が 信頼できるかどうか、ベンチマークテストをして、 チェックしている。 例 少数粒子系物理分野では、 少数粒子系物理グループの間で、各自の計算法が 信頼できるかどうか、ベンチマークテストをして、 チェックしている。 n p NN:AV8ポテンシャル n p 4He
7グループによる国際ベンチマークテスト (2001) 4体問題における (左表)エネルギーの一致の様子 (右図)波動関数の一致の様子
少数粒子系物理屋から見て、次に魅力的に思える分野 私が計算するわけではないが・・ Faddeev計算が行われつつある。 K原子核 3体計算なので、非相対論の 枠組みでは計算できそう 計算するにあたって重要なポイント 用いる相互作用: NN相互作用:bareな相互作用を用いたい 現実的相互作用(メソン理論に基づいて 高運動量領域の散乱実験データを再現する) Argonne,Paris,Bonn,Nijmegen 多くの相互作用がある K p p 中心力+スピン軌道力+テンサー力+運動量依存力+・・ But, KN相互作用は?
質問:少数粒子物理屋が使用できるKN相互作用はあ りますか? Chiral Unitary modelから導出するKN相互作用 Bareな相互作用? Effective interaction? もし、bareな相互作用であれば、計算は可能 でも、もしeffective相互作用であれば、ちょっと考え なければならない。
Effective interactionといっても、私の中には 2種類に分けて考えるべきと思っている。 Bareな核力(NNやYN)をG-行列理論によって、effective にしたもの Shell modelやクラスターモデルに使用される。 α Λ ΛN effective interactionをαの波動関数(0s)4でfoldする
少数粒子物理屋が使うeffective interaction 例:NN相互作用:Minnesota 相互作用 deuteronの束縛エネルギーを再現する NNのlow energy散乱データを再現する。 中心力のみ YN相互作用として・・ 例:Nijmegen soft core ’97f(NSC97f)という現実的核力 ΛN-ΣN部分をΛNチャネルに繰り込む。 現実的核力(NSC97f)のphase shiftを再現するような、 Effective ΛN相互作用を用いる。 中心力のみで表したりする。(元の相互作用はテンサー力、スピン 軌道力・・がある。)
これまでにs-shellハイパー核に適用してきた。 n n Λ n p p n Λ Λ p p 4H 4He 3H Λ Λ Λ 今、問題としているKN相互作用は、bareな相互作用 なのでしょうか? それとも、どういったeffective interactionなのでしょうか? 私には分かりません。
さらに、もし、今、問題としているKN相互作用がeffective Interactionだとしたら、 KN相互作用について質問: 今後、bareな相互作用としてのKN相互作用を作ろう という計画はないのでしょうか? 今は、それどころではないにしても・・。 Cf. ハイパー核物理では、 Bareな相互作用が最初にあり、その相互作用の研究を 行うために、精密な構造研究が重要であるという方針を 取っています。
(2)研究しようとしている原子核と、用いる計算法は 対応しているのでしょうか? そして、そこで用いている相互作用は適切なのでしょうか? 通常原子核(S=0)やハイパー核分野 S-shell核:少数粒子系に基づく計算 SVM,Faddeev法、ガウス展開法etc・・ が適している。 P-shell核:クラスター模型、shell模型が使用されている。
K原子核ではどういう研究の 進め方をされているのでしょうか? 4H 4He 3H 13C 9Be ハイパー核 n n Λ n p Λ Λ α p n Λ Λ p p α α α α 4H 4He 3H 13C 9Be Λ Λ Λ Λ Λ 少数粒子系に基づく計算(ガウス展開法、 SVM,Faddeev etc) +bareな相互作用or free space effective interaction シェル模型、クラスター模型 +G-行列に基づいたeffective interaction n n K n p K K α p n K K α α α α p p
少数粒子系物理の観点からみて 2つの質問 (1)解き方(計算法)と使うべき相互作用は対応しているのでしょうか? (2)研究しようとしている原子核と、用いる計算法は 対応しているのでしょうか?そして、そこで用いている相 互作用は適切なのでしょうか?