東京都心1m解像度10km四方気流計算の可視化

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偏光ライダーとラジオゾンデに よる大気境界層に関する研究 交通電子機械工学専攻 99317 中島 大輔 平成12年度 修士論文発表会.
6 . 9 解析シミュレーションについて 計算科学技術の観点から事故から伺える(で明らかとなった)課題の 分析 2013 年 9 月 3 日(火) 計算科学技術部会 中島 憲宏 (日本原子力研究開発機構)
Computational Fluid Dynamics(CFD) 岡永 博夫
豊洲 304教室 15 JULY コンピュータグラフィックス 2008年度版.
高度情報演習1A “テーマC” 実践 画像処理プログラミング 〜画像認識とCGによる画像生成〜 第四回 演習課題 画像中からの物体抽出処理(背景情報を手がかりとして) 芝浦工業大学 工学部 情報工学科 青木 義満 2006/05/15.
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北海道大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻 地球流体力学研究室 M1 山田 由貴子
永井晴康、都築克紀(原研)、植田洋匡(京大防災研)
A④_05 (チーム4:雲解像モデリング) 「雲解像モデルの高度化と その全球モデル高精度化への利用」
制約条件の確率的選択に基づく 資源追加削減法の改良 三木 光範(同志社大工) 廣安 知之(同志社大工) ○小林 繁(同志社大院)
建物周辺気流の予測手法としての 数値シミュレーション・風洞実験の検証
流体のラグランジアンカオスとカオス混合 1.ラグランジアンカオス 定常流や時間周期流のような層流の下での流体の微小部分のカオス的運動
熱流動解析のための格子ボルツマン法による超大規模高速GPUコードの開発と複雑固相界面乱流熱伝達の大規模数値解析
リカレントニューラルネットワークによる高解像度流体解析コードの開発
文献名 “Performance Tuning of a CFD Code on the Earth Simulator”
サポートベクターマシン によるパターン認識
研究背景・目的 研究組織 実施内容 適用手法 提案研究により期待されること
圧力発展格子ボルツマン法による大規模気液二相流GPUコードの開発 ならびに多孔体浸潤液滴シミュレーション
現実の有限密度QCDの定性的な振る舞いに
協調機械システム論 ( ,本郷) 協調機械システム論 東京大学 人工物工学研究センター 淺間 一.
ひび割れ面の摩擦接触を考慮した損傷モデル
AMR法フレームワークの様々なアーキテクチャへ向けた発展 研究背景と研究目的 Xeon Phi対応に向けた拡張
第11回   ディジタル画像(2) ディジタル画像処理(2)
電磁流体力学乱流の高精度・高並列LESシミュレーションコード開発研究
半無限領域のスペクトル法による竜巻を模した渦の数値実験に向けた研究開発
HLとEHLモデルでの圧力分布と軸受の変形分布
Jh NAHI 横田 理央 (東京工業大学) Hierarchical low-rank approximation methods on distributed memory and GPUs 背景  H行列、H2行列、HSS行列などの階層的低ランク近似法はO(N2)の要素を持つ密行列をO(N)の要素を持つ行列に圧縮することができる。圧縮された行列を用いることで、行列積、LU分解、固有値計算をO(NlogN)で行うことができるため、従来密行列の解法が用いられてきた分野では階層的低ランク近似法
一般財団法人 VCCI 協会 教育研修専門委員会
QMDを用いた10Be+12C反応の解析 平田雄一 (2001年北海道大学大学院原子核理論研究室博士課程修了
YT2003 論文紹介 荻原弘尭.
アンテナ最適化技術と電波伝搬シミュレーション技術の高速化と高精度化
研究課題名 研究背景・目的 有機エレクトロニクス材料物質の基礎電子物性の理解 2. 理論 3. 計算方法、プログラムの現状
プラズマ発光分光による銅スパッタプロセス中の原子密度評価
Environment Risk Analysis
航空エンジンの翼列周り流れ解析のメニーコアシステム向け最適化
開放端磁場における低温プラズマジェットに関する研究
都市表面における 熱輸送速度の実験的研究 スケールモデルによる野外実験と風洞実験の比較 大久保 典明
可視化用粒子データを用いたIn−Situ可視化システムのSIMD最適化
流氷運動の数値予測における氷の初速度の算定法について
Bruciteの(001)面における真の接触面での摩擦特性
背景 課題 目的 手法 作業 期待 成果 有限体積法による汎用CFDにおける 流体構造連成解析ソルバーの計算効率の検証
Iida, O., N. Kasagi and Y. Nagano
Chapter 26 Steady-State Molecular Diffusion
研究背景・目的 研究組織 実施内容 適用手法 提案研究により期待されること
竜巻状渦を伴う準定常的なスーパーセルの再現に成功
高精細計算を実現するAMR法フレームワークの高度化 研究背景と研究目的 複数GPU間での袖領域の交換と効率化
プラズモニック構造付シリコン光検出器のHPC援用設計に関する研究
堆積炭塵爆発に対する大規模連成数値解析 研究背景 研究目的 計算対象および初期条件 燃焼波の様子(二次元解析) 今後の予定
複雑流動場における物質移行過程の解明を目指した大規模数値計算 :実験計測データとの比較による数値モデルの構築
対象:せん断補強筋があるRCはり(約75万要素)
研究背景と目的 解析結果・グラフ 解析手法 今後の展望 太陽光模擬の高精度化 熱中症リスク評価シミュレータの開発と応用
Jh NAHI 横田 理央 (東京工業大学) Hierarchical low-rank approximation methods on distributed memory and GPUs 背景  H行列、H2行列、HSS行列などの階層的低ランク近似法はO(N2)の要素を持つ密行列をO(N)の要素を持つ行列に圧縮することができる。圧縮された行列を用いることで、行列積、LU分解、固有値計算をO(Nlog2N)で行うことができるため、従来密行列の解法が用いられてきた分野では階層的低ランク近似
雲解像モデルCReSSを用いた ヤマセ時の低層雲の構造解析
■ 背景 ■ 目的と作業内容 分子動力学法とフェーズフィールド法の融合による 粒成長の高精度解析法の構築 jh NAH
「大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの共同利用・共同研究拠点化」に向けた要望書・意見書のお願い
豪雨災害の被害予測に向けた土粒子‐流体‐構造の大規模連成解析の 国際標準V&V例題の確立
格子ボルツマン法によるリアルタイム物質拡散シミュレーション手法の開発
弱電離気体プラズマの解析(LXXVI) スプラインとHigher Order Samplingを用いた 電子エネルギー分布のサンプリング
背景 粒子法(SPH・MPSなど)は大規模流体シミュレーションなどで幅広く利用.一方で,手法の数学的正当化(数値解析)が不十分
? リー・ヤンの零点 これまでの格子QCD計算の結果 今年度の計画 リー・ヤンの零点分布から探る有限密度QCDにおける相構造の研究
エアリード楽器および音響機器における大規模音響流体解析
従来研究 本研究 結果 南極大型大気レーダーPANSYで観測された大気重力波の数値モデル再現実験による力学特性の解明
大規模粒子法による大型クルーズ船の浸水解析
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東京都心1m解像度10km四方気流計算の可視化 jh180041-NAH 小野寺 直幸(日本原子力研究開発機構システム計算科学センター) 格子ボルツマン法による都市街区を対象とした物質拡散シミュレーション 1. 研究背景と研究目的 放射性物質の拡散予測解析は社会的関心が非常に高く、迅速性および正確性が求められている。日本での予測手法として、緊急時環境線量情報予測システム(SPEEDI)が用いられており、観測値を基に放射性物質の拡散挙動を計算する。また、日本原子力研究開発機構では、局所解析での予測精度の向上に向けて非圧縮性Navier-Stokes方程式に基づく解析手法(LOHDIM-LES)の開発を進めているが、都市街区を捉えた高解像度の解析の実現には、計算機性能を最大限に引き出すことが可能な解析手法の開発が必須となる。本課題では、GPUスパコンに適した格子ボルツマン法(LBM)に対して、都市部の熱対流および植生等を考慮した物理モデルを導入することで、汚染物質の拡散・沈着を再現可能な解析手法の確立を目指す。今年度は、汚染物質の拡散予測として最も関心が高い、都市部での予測精度の向上に向けて、物理モデルの高度化を行い、迅速性と精度を兼ね備えた予測システムの確立を目指す。 JAEA : 福島県における放射性核種の環境中移動調査・研究 より抜粋 https://fukushima.jaea.go.jp/initiatives/cat01/pdf/project.pdf モニタリングポスト 環境放射線観測車 移動サーベイ 地上基地局と受信用アンテナ 気象観測 観測塔 機体の制御 東京都心1m解像度10km四方気流計算の可視化 (格子数10080×10240×512, GPU数4032) 4.1. Cumulant relaxation timeモデルを用いた解析 格子ボルツマン法(LBM)は連続体である流体を格子上を並進・衝突する粒子の集合と仮定し、格子上の粒子の速度分布関数に対して時間発展を行う手法である。LBMは規則的なメモリアクセスおよび高密度な演算を持つ陽的なアルゴリズムを持つため、GPUを用いた大規模計算に適している。しかしながら、都市気流解析のような乱流解析では、安定性の観点からサブグリッドスケール(SGS)モデル等が必須となる。本研究では、LBMの衝突・緩和モデルとして、Cumulant relaxation timeモデルを採用することで、SGSモデル等で必要となる空間微分を必要としない、メモリアクセスが局所的でGPUに適した解析手法を構築した。 2. 研究計画 昨年度のJHPCN課題「格子ボルツマン法によるリアルタイム物質拡散シミュレーション」により、適合細分化格子(AMR)法に基づく高速・高解像度の汚染物質の拡散解析手法を構築した。今年度は、都市街区における予測精度を向上に向けて、都市域の熱対流構造の解析および汚染物質の拡散・沈着に関わる物理モデルの高度化に取り組む。以下に、具体的な研究項目を示す。 ・GPUでの並列計算で重要となるNVLinkを用いた高速な通信の実現 ・都市街区における熱の効果(熱対流構造)を考慮した物理モデルの導入 ・発電施設周辺や都市街区の森林等を考慮した植生キャノピーモデルの導入 ・大気環境アセスメント手法のガイドラインに沿った解析モデルの検証 ・データ同化手法の導入によるメソスケールモデルや観測との連携 ボルツマン方程式 Cumulant relaxation timeモデル 4.2. Temporal blocking法を用いた省通信アルゴリズム GPUを用いた解析では、その演算性能の高さから通信のオーバーヘッドが顕著となる。特にAMR法を適用した解析では、格子解像度間の境界面における余分な時間・空間補間が必要となり、そのオーバーヘッドはより深刻である。Temporal blocing(TB)法は、計算に必要なメモリバンド幅の比(Byte/Flops)を削減可能な方法であり、そのアルゴリズムの採用により、対象のオーバーヘッドを別の計算に置き換えることが可能である。本研究では、Block AMR法での袖領域のLeafの通信を、GPUを用いた時間発展計算に置き換えることで、通信量および通信回数を削減した。 3. 共同研究に関する情報 (1)共同研究拠点:東京工業大学 (2)共同研究分野:超大規模数値計算系応用分野 (3)研究グループ:代表者   小野寺 直幸(日本原子力研究開発機構)         副代表者  青木 尊之(東京工業大学) 課題参加者 町田 昌彦(日本原子力研究開発機構)         課題参加者 井戸村 泰宏(日本原子力研究開発機構)         課題参加者 河村 拓馬(日本原子力研究開発機構)         課題参加者 下川辺 隆史(東京大学) 省通信マルチタイムステップ法による解析でのタイムライン 強スケーリング性能:省通信マルチタイムステップ法, (左)有、(右)無 5. 研究進捗状況 5.1. 省通信アルゴリズムの平行平板間乱流計算での検証 5.2. 産総研の風洞での汚染物質拡散実験 AMR法を適用したLBM法での乱流解析の検証として、平行平板間乱流計算を実施する。解析手法として、従来のマルチタイムステップ法を適用した解析手法、および省通信アルゴリズムを適用した解析手法をDNSの結果と比較する。計算パラメータとして、乱流境界層を捉えるために、Block AMR法にて3階層の格子分割を行った。  計算結果より、省通信アルゴリズムの採用により、マルチタイムステップ法で必要であった時間補間が不必要となり、解像度の境界面で発生する比物理的な数値振動を抑えることが可能となり、DNSと良く一致する結果が得られた。 汚染物質の拡散解析の検証として、産総研の風洞実験との比較を行った。計算条件として、長さ20m、幅および高さが2mの計算領域に対して、汚染源および物体近傍に最密格子を配置することで、計算速度の向上および総格子点数の削減を行った。汚染源は物体前方の50mm手前に配置され、汚染物質は物体近傍の流れにより激しく拡散される。計算結果より、物体近傍の速度および汚染物質の拡散分布が実験結果と良く一致することを確認した。 垂直および水平断面内の主流方向速度分布 汚染物質拡散実験の概略図 主流・壁面断面内の速度分布(Wireframe) 平行平板間乱流での計算パラメータ 汚染物質の鉛直軸上の濃度分布(x=65, 100, 150mm) 平行平板間乱流での(a)平均速度、(b)レイノルズ応力、(c)乱流強度分布 (a) (b) (c)