大型ヘリカル装置における実座標を用いた 粒子軌道追跡モンテカルロコードの開発

Slides:



Advertisements
Similar presentations
宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
Advertisements

2013 年度課題研究 P6 Suzaku によるガンマ線連星 LS I の観測データの解析 2014 年 02 月 24 日 種村剛.
YohkohからSolar-Bに向けての粒子加速
平成20年度 核融合科学研究所共同研究 研究会 「負イオン生成および負イオンビーム加速とその応用」 プロセスプラズマのPIC計算のモデリング
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
太陽多波長フレアデータ解析研究会 NSRO-CDAW10 ピーク時のループトップ電波源(2周波)の高さ (統計解析)
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの熱的安定性 星間ガスの力学的・熱的な不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
較正用軟X線発生装置のX線強度変化とスペクトル変化
相対論的重イオン衝突実験 PHENIXにおける Aerogel Cherenkov Counterの シミュレーションによる評価
(Fri) Astrophysics Laboratory MATSUO Kei
電子物性第1 第5回 ー 原子の軌道 ー 電子物性第1スライド5-1 目次 2 はじめに 3 場所の関数φ 4 波動方程式の意味
「高強度領域」 100 MW 〜 1 GW 50 Pcr 〜 500 Pcr 高強度レーザーパルスは、媒質中で自己収束 光Kerr効果
磁気モーメントを用いた 磁力線再結合域の推定
Determination of the number of light neutrino species
スパッタ製膜における 膜厚分布の圧力依存性
大阪市立大学数学研究所 孝森洋介 共同研究者: 大川、諏訪(京大基研)、 高本(京大理)
埼玉大学大学院理工学研究科 物理機能系専攻 物理学コース 06MP111 吉竹 利織
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
システムモデルと伝達関数 1. インパルス応答と伝達関数 キーワード : 伝達関数、インパルス応答、 ステップ応答、ランプ応答
地球近傍における陽子・ 反陽子の空間分布 I I
すざく衛星による、2005年9月の太陽活動に起因する太陽風と地球大気の荷電交換反応の観測
Dissociative Recombination of HeH+ at Large Center-of-Mass Energies
原子核物理学 第8講 核力.
電磁流体力学乱流の高精度・高並列LESシミュレーションコード開発研究
PIC/MCによる窒素RFグロー放電シミュレーション
ブラックホール周辺の 磁場構造について 大阪市立大学 孝森 洋介 共同研究者 石原秀樹,木村匡志,中尾憲一(阪市大),柳哲文(京大基研)
モデルの逆解析 明治大学 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 金子 弘昌.
QMDを用いた10Be+12C反応の解析 平田雄一 (2001年北海道大学大学院原子核理論研究室博士課程修了
Alfvén波の共鳴吸収・ 位相混合とコロナ加熱
創造設計演習(S&V演習) 提出課題 課題内容
Azimuthal distribution (方位角分布)
研究背景 電荷移行反応とは・・・ 核融合(重水素 + 三重水素→ヘリウム原子核+中性子) ・・・しかし、
電磁気学C Electromagnetics C 7/17講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
参考資料 球状トカマク プラズマの閉じ込め 電流駆動・立ち上げの意義 低アスペクトの利点 中心ソレノイドの役割 中心ソレノイド無しの核融合炉.
Introduction to Soft Computing (第11回目)
Bursty Bulk Flow 生成に関する理論モデル
プラズマ発光分光による銅スパッタプロセス中の原子密度評価
理研RIBFにおける 中性子過剰Ne同位体の核半径に関する研究
~系外短周期スーパー地球シリケイト大気に関する研究~
高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡
化学工学基礎 −後半の後半− 第1回目講義 (2009年7月10日) 1 担当 二又裕之 物質工学1号館別館253ー3号室
開放端磁場における低温プラズマジェットに関する研究
電子物性第1 第9回 ー粒子の統計ー 電子物性第1スライド9-1 目次 2 はじめに 3 圧力 4 温度はエネルギー 5 分子の速度
K核に関連した動機による K中間子ヘリウム原子X線分光実験の現状 理化学研究所 板橋 健太 (KEK-PS E570 実験グループ)
Charmonium Production in Pb-Pb Interactions at 158 GeV/c per Nucleon
星間物理学 講義2: 星間空間の物理状態 星間空間のガスの典型的パラメータ どうしてそうなっているのか
Mini-RT装置における 強磁場側からの異常波入射による 電子バーンシュタイン波の励起実験
平山 英夫、波戸 芳仁 KEK, High Energy Accelerator Research Organization
第6回講義 前回の復習 ☆三次元井戸型ポテンシャル c a b 直交座標→極座標 運動エネルギーの演算子.
SciFi を用いたΣ+p散乱実験での (ほろ苦い)思い出
卒業論文発表 中性子ハロー核14Beの分解反応 物理学科4年 中村研究室所属   小原雅子.
ブラックホール近傍からの高エネルギー輻射について
九州大学 猿渡元彬 共同研究者 橋本正章 (九州大学)、江里口良治(東京大学)、固武慶 (国立 天文台)、山田章一(早稲田理工)
永久磁石を用いた高出力マイクロ波 放電型イオン源の開発
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
北海道大学 理学部 地球科学科 惑星物理学研究室 B4 近藤 奨
惑星と太陽風 の相互作用 惑星物理学研究室 4年 深田 佳成 The Interaction of The Solar
地球近傍における宇宙線陽子・反陽子空間分布シミュレーション
実験結果速報 目的 装置性能の向上 RF入射実験結果 可動リミター挿入 RFパワー依存性 トロイダル磁場依存性 密度依存性
【第六講義】非線形微分方程式.
原子核物理学 第6講 原子核の殻構造.
Simulation study for drift region
2008年 電気学会 全国大会 平成20年3月19日 福岡工業大学 放電基礎(1)
弱電離気体プラズマの解析(LXXVI) スプラインとHigher Order Samplingを用いた 電子エネルギー分布のサンプリング
大阪市立大学 孝森 洋介 with 大川,諏訪,高本
荷電粒子の物質中でのエネルギー損失と飛程
? リー・ヤンの零点 これまでの格子QCD計算の結果 今年度の計画 リー・ヤンの零点分布から探る有限密度QCDにおける相構造の研究
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
Time Reversal E-Text: pp.80-83(PDF: pp.49-50) FM08002 太神 諭
Presentation transcript:

大型ヘリカル装置における実座標を用いた 粒子軌道追跡モンテカルロコードの開発 關 良輔, 松本 裕, 鈴木康浩1), 渡邊清政1) 北海道大学大学院工学研究科, 1)核融合科学研究所

はじめに 大型ヘリカル装置(LHD) 高ベータ実験(低磁場Bax = 0.5 T) ⇒ NBIによる加熱 高ベータプラズマでの平衡, 安定性解析において必要 ビーム圧力の同定 ⇒ 軌道追跡が重要 LHDでは高エネルギー粒子の軌道が複雑 ⇒ 軌道追跡が特に重要 従来の高エネルギー粒子の軌道をもとにした分布関数, 圧力の解析 ・粒子の損失境界は最外殻磁気面(LCFS) 磁気座標を使用 ・ LCFSの内側のみを解析

はじめに(続き) Re-entering 実座標を用いた粒子軌道解析 Re-entering粒子 LCFS外側の周辺磁場領域に出ても再び 〇高ベータプラズマ ・周辺磁場領域が厚い ・ドリフトによるズレが大きい 〇低磁場中 ・LCFS外側に出る粒子が増加 Re-entering粒子が重要 目的 ○Re-entering粒子も考慮可能な, 実座標を用いた粒子軌道追跡に基づくモンテカルロコードの開発

開発したモンテカルロコード ○分布関数算出の流れ 個の高エネルギー粒子の案内中心を追跡 各位相空間中のmeshにおける滞在時間 を算出 熱速度の3倍以下になった粒子が緩和 エネルギー緩和, 軌道損失まで追跡 ⇒ 真空容器壁に衝突した粒子が損失 分布関数算出 加熱入力 初期エネルギー エネルギー緩和には, OFMCコードと同様の衝突オペレータを採用

衝突オペレータ (Plasma Phys. Control. Fusion 49 (2007) 1955) c: pitch angle, h: gyro-phase ○温度Tbのマクスウェル分布を持つ  b種粒子に衝突したa種粒子δt秒間の速度変化 は, 以下の平均と分散を持つ正規乱数により算出 平均: , 分散: ○δt秒後の速度 , ○drift-kinetic方程式 衝突項 損失項 高エネルギー粒子源 熱化による吸収項 drift-kinetic方程式の定常解を求めるコードを作成

テスト計算1(衝突オペレータのみと開発したコードの比較) ○使用磁場 ○粒子 陽子 ○粒子の初期エネルギー 200 keV ○初期位置 横長断面上の磁束 の磁気面上 ○初期ピッチ角 のみ与えた ○モンテカルロ粒子数 1,000 ○back ground(軽水素プラズマ) 温度 1 keV 密度 1020 m-3

テスト計算1(衝突オペレータのみと開発したコードの比較)の結果 速さ-分布関数 ピッチ角-分布関数 開発したコード   衝突オペレータのみ  緩和時間 16.2 ms 16.2ms

テスト計算2 ○使用磁場 ○粒子 陽子 ○粒子の初期エネルギー 200 keV ○初期位置 横長断面上の磁束 の磁気面上 ○初期ピッチ角 ○粒子 陽子 ○粒子の初期エネルギー 200 keV ○初期位置 横長断面上の磁束 の磁気面上 ○初期ピッチ角 一様に分布 ○モンテカルロ粒子数 1,300 ○back ground(軽水素プラズマ) 温度 1 keV 密度 1020 m-3

磁束(位置), 速さ, ピッチ角に対する分布関数 磁束-分布関数 速さ-分布関数 ピッチ角-分布関数 磁束-分布関数 ・初期の粒子位置 でピーク ・プラズマ中心部ならびにLCFS近傍まで分布関数が到達 速さ-分布関数 ・ で分布関数がピークを持つ ・ で分布関数が0になる ⇒ の粒子を緩和と仮定 ピッチ角-分布関数 ・ と において, 分布関数が減少 ⇒ 損失領域が存在

荷電交換反応の導入 Re-entering 粒子 ⇒ 中性粒子密度の高いプラズマ周辺部を運動 ○荷電交換反応のモデル化 (参考:R. J. Goldston et al., J. Comput. Phys. 46 (1981) 61) 中性粒子の密度 中を1個の荷電粒子が速度 で飛ぶとき 秒間の荷電交換反応の確率 :荷電交換反応断面積 粒子の軌道に沿って積分 まで軌道を追跡 ⇒ 荷電交換により損失 :一様乱数

テスト計算3 ○使用磁場 ○粒子 陽子 ○粒子の初期エネルギー 200 keV ○初期位置 横長断面上の磁束 の磁気面上 一様に分布 ○粒子   陽子 ○粒子の初期エネルギー 200 keV ○初期位置 横長断面上の磁束 の磁気面上 ○初期ピッチ角 一様に分布 ○モンテカルロ粒子数 1,300 ○back ground(軽水素プラズマ) 温度 1 keV 密度 1020 m-3 ○中性粒子の密度(水素原子を仮定) 最外殻磁気面外側で一様と仮定 の6パターンで検証 (荷電交換なし) (LCFSを損失境界)

分布関数への荷電交換反応の影響 荷電交換の分布関数への影響は ・LCFS近傍において大きい. ・初期の出発点より内側ではほとんどない (荷電交換なし) (LCFSを損失境界) 磁束-分布関数 速さ-分布関数 ピッチ角-分布関数 荷電交換の分布関数への影響は ・LCFS近傍において大きい. ・初期の出発点より内側ではほとんどない ・ のピーク付近で最も大きい. ・ , , において大きい ⇒LCFS外側を通り, 閉じたドリフト面を持つ粒子に荷電交換が大きく影響

粒子軌道追跡に基づくモンテカルロコードを開発 まとめ LHDにおいて, 実座標を用いた 粒子軌道追跡に基づくモンテカルロコードを開発 今後の課題 ○NBIなどによって発生する高エネルギー粒子の分布関数の算出 ○NBIに起因するビーム圧力の計算 ○場のプラズマ, 中性粒子に分布を持たせる

磁場構造 LHDの磁場構造 真空磁場(b = 0.0 %) 高ベータ(b = 2.7 %) Helical Coil Vacuum Vessel Field Lines Magnetic Axis Magnetic Axis

粒子軌道の例(B = 3 T, b = 0 %) 通過粒子 バナナ粒子 カオス軌道粒子 即損失粒子 χ = 2π/20 χ = 11π/20 χ = 13π/20 χ = 7π/20 粒子 磁力線 r LCFS Initial Point 粒子 磁力線 r LCFS Initial Point 粒子 磁力線 r Initial Point LCFS LCFS 粒子 磁力線 r Initial Point 粒子 磁力線 粒子 磁力線 粒子 磁力線 損失粒子× 速損失粒子 短損失粒子 即損失粒子 非閉じ込め粒子 短閉じ込め粒子 Poincarè plot は描けない

粒子の軌道特性(Z = 0 m) ◎ Re-entering 通過 カオス 損失 バナナ 即損失 B = 3 T, b = 0 % LCFS R (m) LCFS R (m) (pitch angle)/π (pitch angle)/π

Re-entering粒子に対する荷電交換の影響 ○Protonと水素原子との荷電交換についてのみ考慮 ○水素原子はカオス磁力線領域にのみ存在 水素原子との荷電交換の断面積 荷電交換の断面積 :断面積(cm2) :Protonのエネルギー(eV) (A. C. Riviere : NUCL. FUSION vol.11 (1971) 363) 荷電交換の平均自由行程 :断面積(m2), :密度(m-3)

Re-entering(通過粒子) B = 0.5 T, b = 3.2 % c = 2p/20 r LCFS r 磁力線 Initial Point 粒子 r LCFS r

テスト計算1(衝突オペレータのみと開発したコードの比較)の結果 速さ-分布関数 ピッチ角-分布関数 解析解 開発したコード   衝突オペレータのみ  緩和時間 16.2 ms 16.2ms