木内 建太(早稲田大) 共同研究:柴田大(京大基研) 関口雄一郎(国立天文台) 谷口敬介(ウィスコンシン大)

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木内 建太(早稲田大) 共同研究:柴田大(京大基研) 関口雄一郎(国立天文台) 谷口敬介(ウィスコンシン大) 中性子星連星合体で探る高密度状態方程式 木内 建太(早稲田大) 共同研究:柴田大(京大基研) 関口雄一郎(国立天文台) 谷口敬介(ウィスコンシン大) Numazu Workshop 2009 3.17

Talk Plan 序章 研究動機 基礎方程式と手法 結果 まとめと議論 Numazu Workshop 2009 3.17

序章 爆発的(高エネルギー)天体現象 =1053 erg(太陽静止質量エネルギー)を数秒~数十秒で放出する宇宙の現象 例. 超新星爆発、ガンマ線バースト、コンパクト連星の合体 エネルギー供給源=重力束縛エネルギー 最後に残されるのは、中性子星やブラックホール Numazu Workshop 2009 3.17

序章 これら天体現象の爆発機構の解明=宇宙物理学の中心的課題 しかし、どれ一つをとっても未だ解明に至っていない。 超新星爆発:爆発の機構は大まかには分かってきたが、未だ決定的な結論は得られず。 ガンマ線バースト:未だもって、中心動力源は分かっていない(磁場?ニュートリノ?) コンパクト連星合体:存在は確認済み(但し、中性子星連星)だが、合体は未観測 Numazu Workshop 2009 3.17

宇宙は、素粒子・原子核物理の最高の実験所 序章 調べるほど、重要な対象であるか? Yes! 高密度、高温度下での物理と密接にリンク 1.状態方程式(原子核物理) 2.微視的物理過程(弱い相互作用) cf. ニュートリノ 3.強重力場での重力理論の検証 4.etc. 宇宙は、素粒子・原子核物理の最高の実験所 Numazu Workshop 2009 3.17

序章 ガンマ線 ニュートリノ 入力物理 ○状態方程式 ○微視的物理過程 出力物理 ○ ガンマ線(ガンマ線バースト) ○ニュートンor一般相対論 ○例えば、星のProgenitor 出力物理 ○ ガンマ線(ガンマ線バースト) ○ ニュートリノ(超新星爆発) ○ 重力波(全て) ○ etc. 光子数 時間(秒) これらのシグナルを用いたプローブが必要不可欠 Numazu Workshop 2009 3.17

爆発的天体現象の中心部分を直接プローブ可能 序章         重力波 = 重力の漣 ○一般相対背理論の重要な帰結 ○非常に微小な時空の変化:10-21 の歪み ⇔太陽ー地球間の距離が原始一個分の変化 ○透過性が非常に高い 爆発的天体現象の中心部分を直接プローブ可能 Numazu Workshop 2009 3.17

序章 重力波観測の現状(神田展行先生 (大阪市立大) より提供) 重力波観測(とノーベル賞受賞)は時間の問題(個人的見解) Numazu Workshop 2009 3.17

序章 爆発的天体現象の解明と重力波観測に向けて ○ 様々な状態方程式を設定 ○ 微視的素過程を考慮 ○ 観測に先駆けた重力波の理論的予言   爆発的天体現象の解明と重力波観測に向けて ○ 様々な状態方程式を設定 ○ 微視的素過程を考慮 ○ 観測に先駆けた重力波の理論的予言 が必要 ○ ニュートリノ、ガンマ線といった他のシグナルとの同時観測 も究極的には必要 Numazu Workshop 2009 3.17

Talk Plan 序章 研究動機 基礎方程式と手法 結果 まとめと議論 Numazu Workshop 2009 3.17

研究動機 本研究の対象=中性子星連星(の合体) PSR1913+16 始まりは、(おそらく)Hulse&Taylorによる連星中性子星の発見 一般相対論による予言 重力波の間接的存在証明 Numazu Workshop 2009 3.17

研究動機 ○ 重力波の良いソース ○ マージングは状態方程式に強く依存 ○ 最終産物(ブラックホールor中性子星)も状態方程式に強く依存 ○ 重力波の良いソース ○ マージングは状態方程式に強く依存 ○ 最終産物(ブラックホールor中性子星)も状態方程式に強く依存 ○ すなわち、重力波には状態方程式の情報が含まれる。 中性子連星の運命 重力波放射による軌道半径の減少 ⇒ 連星が十分に近づくと重力波を強く放出(インスパイラル) ⇒ 互いの星の構造を無視できなくなり合体開始(マージング) ⇒ ブラックホールもしくは重い中性子星が形成(リンギング) Numazu Workshop 2009 3.17

研究動機 合体までの時間 = PSR1913+16では、4億年!! 1-100年で約1発(LIGO) 合体までの時間 = PSR1913+16では、4億年!! 現存する連星中性子星 合体の発生頻度 Kalogera+ 04’ Lattimer&Parakash 06’ 1-100年で約1発(LIGO) 1年に10-500発(adv. LIGO) 運がよければ、観測できそう。 Numazu Workshop 2009 3.17

研究動機 既に中性子星連星合体を見ている? ショートガンマ線バースト 1048 erg以上のエネルギーを0.1-1秒で放出。 ⇒ ブラックホールと降着円盤(0.01太陽質量以上)が有力候補 ⇒ 中性子星(ブラックホール)連星合体が有力候補 Numazu Workshop 2009 3.17

研究動機 中性子星連星合体の様相と放出重力波を探る。 連星の質量比、総質量による合体過程の違い。 状態方程式に対する合体の依存性(準備中) 重力波で質量や高密度状態方程式をどうプローブするか? Numazu Workshop 2009 3.17

Talk Plan 序章 研究動機 基礎方程式と手法 結果 まとめと議論 Numazu Workshop 2009 3.17

基礎方程式と手法 アインシュタイン方程式(対称性、近似なし) 一般相対論的流体 状態方程式は、零温度+ΓーLaw(要改良) 物理的素過程は簡略化(要改良) 但し、中性子星連星合体の場合、全てに対して、 有限温度状態方程式や物理的素過程が必要なわけではない。(次ページ以降) Numazu Workshop 2009 3.17

基礎方程式と手法 中性子星連星の運命 連星の総質量と状態方程式で支えられる最大質量の兼ね合いで決まる。 Akmal-Pandhalipande-Ravenhall (APR)とPandalipande-Ravenhall(FPS)における密度ー質量図 (Shibata & Taniguchi 06’) Numazu Workshop 2009 3.17

基礎方程式と手法 連星の合体後に(一時的に)出来る星が、 しかし、合体後の星は一般に強く早く差動回転 ⇒遠心力は星の自己重力を支える要因 ブラックホール 重い中性子星 ブラックホール 中性子星 しかし、合体後の星は一般に強く早く差動回転 ⇒遠心力は星の自己重力を支える要因 ⇒支えられる最大質量が底上げ Numazu Workshop 2009 3.17

基礎方程式と手法 モデル APR(2.9太陽質量) FPS(2.4太陽質量) 青:重い中性子星 赤:ブラックホール APR(2.9太陽質量)      FPS(2.4太陽質量) 青:重い中性子星 赤:ブラックホール Numazu Workshop 2009 3.17

Talk Plan 序章 研究動機 基礎方程式と手法 結果 まとめと議論 Numazu Workshop 2009 3.17

結果 アニメーション(APR) Numazu Workshop 2009 3.17

結果 アニメーション(APR) Numazu Workshop 2009 3.17

結果 アニメーション(APR) Numazu Workshop 2009 3.17

結果 重力波波形(APR1.4-1.4) インスパイラル マージング 重い中性子星の振動 Numazu Workshop 2009 3.17

結果 重力波波形(APR1.5-1.5) マージング BHの固有振動 インスパイラル Numazu Workshop 2009 3.17

結果 重力波波形(APR1.35-1.65 vs APR1.5-1.5) ブラックホール形成直前 APR1.5-1.5の振幅>APR1.35-1.65の振幅 ブラックホール形成直後 APR1.5-1.5の振幅<APR1.35-1.65の振幅 ブラックホール形成 Numazu Workshop 2009 3.17

結果 重力波スペクトル 重い中性子星 ブラックホール Numazu Workshop 2009 3.17

非等質量(APR1.3-1.6, 1.35-1.65)の方がスペクトルの傾きが変わる周波数が低い。 結果 ブラックホール 連星的な形が持続 軽い中性子星が潮汐破壊 非等質量(APR1.3-1.6, 1.35-1.65)の方がスペクトルの傾きが変わる周波数が低い。 Numazu Workshop 2009 3.17

結果 ブラックホール 非等質量の場合、総質量が軽い程(APR1.3-1.6)、ピークが高く、幅が広い 等質量(APR1.5-1.5)の場合、ピークの高さ小 ⇒ブラックホール形成後、全ての物質は直ちに飲み込まれる。 Numazu Workshop 2009 3.17

結果 状態方程式依存性 重力波スペクトルは状態方程式にも強く依存 ⇒スペクトルの形状による状態方程式の制限が可能(案:スペクトルをフィット) Numazu Workshop 2009 3.17

まとめと議論 ○ 中性子星連星合体の様相及び重力波は、状態方程式と質量(総質量、質量比)に強く依存 ○ 中性子星連星合体の様相及び重力波は、状態方程式と質量(総質量、質量比)に強く依存 ○ スペクトルによる質量、質量比、状態方程式の制限が可能 ○ ブラックホール形成の場合には、有限温度の効果はほぼ効かない(提案:零温度の状態方程式でスペクトルを調べつくす) ○ 重い中性子星連星や降着円盤の場合には、有限温度状態方程式、物理的素過程(ニュートリノ)を考慮する必要あり(大雑把に10MeV程度まで衝撃波加熱) Numazu Workshop 2009 3.17