観測的宇宙論ジャーナルクラブ 2006年5月22日 成田 憲保 1

Slides:



Advertisements
Similar presentations
火星の気象と気候 2004 年 11 月 10 日 小高 正嗣北海道大学 地球惑星科学専攻. 講義の概要 太陽系の惑星概観 太陽系の惑星概観 地球型惑星と木星型惑星 地球型惑星と木星型惑星 地球と火星の比較 地球と火星の比較 火星の気象と気候 火星の気象と気候 探査衛星による最新の気象画像 探査衛星による最新の気象画像.
Advertisements

第 21 章 私たちはひとりぼっち か? 宇宙の生存可能性についての疑 問
系外惑星系 TrES-1 における Rossiter 効果の検出可能性と その観測意義 東京大学大学院 理学系研究科 成田憲保 共同研究者 太田泰弘、樽家篤史、須藤靖 (東京大学) Joshua N. Winn ( Harvard-Smithsonian Center ) Edwin L. Turner.
太陽系外地球型惑星の 発見に向けたロードマップ 成田 憲保. 目次: 地球型惑星の発見に向けて 1. これまでに何がわかったか? 2. 今何をやろうとしているのか? 3. 将来何がどこまでわかるのか?
系外惑星系セミナー速報 Balmer line features of HD 東京大学大学院 理学系研究科宇宙理論研究室(須藤研)修士1年 成田憲保.
銀河物理学特論 I: 講義1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 遠方宇宙の銀河の理解のベースライン。 SDSS のデータベースによって近傍宇宙の 可視波長域での統計的性質の理解は飛躍的 に高精度になった。 2009/04/13.
国立天文台 光赤外研究部 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
日本トランジット観測ネットワークによる Transit Timing Variationの探索
TMT可視分光観測のサイエンス <太陽系外惑星の光と影の観測>
Spectroscopic Studies of Transiting Planetary Systems
かなた望遠鏡による NGC2264の可視赤外同時観測
星形成領域NGC2264における AA Tau 型星の可視赤外同時観測
系外惑星の大気透過スペクトル 観測による大気成分の分析 ( Swain et al レビュー)
国立天文台 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
HETE-2のバースト観測ネットワーク マウイ 副地上局 パラオ 副地上局 シンガポール 主・副地上局 赤道
国立天文台 光赤外研究部 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
晩期型星T-Lepに付随する 水メーザースポットを用いた年周視差測定 ~系内MIRA型変光星周期-絶対光度関係の測定に向けて~
Hyper Luminous X-ray Source in ESO
軌道が傾いた系外惑星は意外と多い: ロシター効果の観測と惑星移動理論への示唆
原始惑星系円盤の形成と進化の理論 1. 導入:円盤の形成と進化とは? 2. 自己重力円盤の進化 3. 円盤内での固体物質の輸送
国立天文台・太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
謎の惑星スーパーアースを探れ! 国立天文台・成田憲保.
天体の諸階層1 太陽系 Solar system.
すばる観測体験企画参加者向け 惑星軌道進化の理論と観測的検証の研究資料
トランジット法による低温度星まわりの地球型惑星探索と大気調査
High-amplitude, long-term X-ray variability in the solar-type star HD 81809: The beginning of an X-ray activity cycle? F. Favata, G. Micela, S.L. Baliunas,
東京大学大学院 宇宙理論研究室 成田 憲保(なりた のりお)
北海道大学 理学部 地球科学科 惑星宇宙グループ 高橋康人
宇宙物理II(9) Planetary Formation
銀河物理学特論 I: 講義1-1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 Kauffmann et al
すばる望遠鏡を用いた 太陽系外惑星系の観測的研究
Primordial Origin of Magnetic Fields in the Galaxy & Galaxies - Tight Link between GC and Cosmic B –  Y. Sofue1, M. Machida2, T. Kudoh3 (1. Kagoshima.
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義6 特別編 観測装置の将来計画
太陽・恒星フレアにおける輻射流体シミュレーション
系外惑星系セミナー速報 Balmer line features of HD209458
成田 憲保 国立天文台・太陽系外惑星探査プロジェクト室
国立天文台 光赤外研究部 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
系外惑星探査の現在 2003年天文・天体若手夏の学校 成田 憲保
太陽系外惑星の トランジット観測 和歌山大学  教育学部  自然環境教育課程   地球環境プログラム  天文学ゼミ   玉置 順大.
理学部 地球科学科 惑星物理学研究室 4年 岡田 英誉
系外惑星系TrES-1におけるRossiter効果の検出可能性と その観測意義
トランジット惑星系TrES-1での Rossiter-McLaughlin効果の観測結果
大離心率トランジット惑星HD17156bの ロシター効果の観測結果
大離心率トランジット惑星HD17156bの 公転軌道傾斜角の測定
実習課題B 金属欠乏星の視線速度・組成の推定
天体の諸階層1 太陽系 Solar system.
ANIRによるM型星まわりの トランジット地球型惑星の観測 国立天文台 成田憲保.
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
論文紹介 Type IIn supernovae at redshift Z ≒ 2 from archival data (Cooke et al. 2009) 九州大学  坂根 悠介.
フレアの非熱的成分とサイズ依存性    D1 政田洋平      速報@太陽雑誌会(10/24).
地球で最初の海.
星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 2 銀河スケールのダスト、ダストの温度、PAH ほか
倉本研究室 宇宙理学専攻 修士1年 岡澤直也.
ESS-II報告: Atmosphere関連
The Baryonic Tully-Fisher Relation
すばる望遠鏡、 主星の自転に逆行する 太陽系外惑星を発見
New Sources in the Sgr B & C Regions
国立天文台 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
小型科学衛星LiteBIRD におけるスキャンの最適化
スターバースト銀河NGC253の 電波スーパーバブルとX線放射の関係
10/19 GMCゼミ.
すばる /HDSによる系外惑星 HD209458bの精密分光観測
トランジット惑星系TrES-1における 初めてのRossiter効果の観測結果
すばる/HDSによる系外惑星HD209458bの精密分光観測
トランジット惑星系におけるRossiter効果 I. HD209458での観測結果
すばる&マグナム望遠鏡による 系外惑星トランジットの 同時分光・測光観測
Distribution of heat source of the Earth
星間物理学 講義7資料: 物質の輪廻と銀河の進化 銀河の化学進化についての定式化
(FMOS戦略枠観測で余ったファイバーによる) M型星まわりのトランジット地球型惑星探し
科学概論 2005年1月27日
Presentation transcript:

観測的宇宙論ジャーナルクラブ 2006年5月22日 成田 憲保 1 観測的宇宙論ジャーナルクラブ 2006年5月22日 成田 憲保 1 Origin of the obliquities of the giant planets in mutual interactions in the early Solar System A. Brunini Nature, vol. 440, pp. 1163, (2006) 2 A Determination of the Spin-Orbit Alignment of the Anomalously Dense Planet Orbiting HD 149026 A. Wolf et al. ApJ, accepted 3 Detectability of Planetary Characteristics in Disk-Averaged Spectra. I: The Earth Model G. Tinetti et al. Astrobiology, vol. 6, No. 1, pp. 34, (2006) 4 Vegetation signature in the observed globally-integrated spectrum of Earth: Modeling the red-edge strength using simultaneous cloud data and application for extrasolar planets P. Montanes-Rodriguez, E. Palle, P. Goode astro-ph/0604420 5 An extrasolar planetary system with three Neptune-mass planets C. Lovis et al. Nature, vol. 441, pp. 305, (2006) 6 A Transiting Planet of a Sun-like Star P. McCullough et al. astro-ph/0605414

3つの海王星型惑星を持つ惑星系の発見

要点 800日にわたる超高精度の視線速度観測から、3つの海王星型惑星(10~20地球質量)を持つ惑星系が発見された その最も外側の惑星はハビタブルゾーン(親星からの輻射により液体の水が存在・維持できる領域)に存在していた

背景 南米チリのLa Silla天文台にあるHARPSという観測装置では恒星の視線速度を1m/sの精度で測定できる 最初の系外惑星発見者であるMayor博士らは、この望遠鏡とフランス・OHPにある望遠鏡で多くの恒星の視線速度をモニターし続けている 今回はその中で見つかったHD69830という惑星系の報告

今回の結果 ←800日に渡る精度~1m/sの視線速度サンプル 周期で折り畳んだ3つの惑星の視線速度曲線↓

今回の結果 それぞれの惑星のパラメータ 主星がやや軽いK型星(太陽光度の60%)であるため 0.63AUのこの位置はハビタブルゾーンにあたる

議論 それぞれの惑星の形成と組成について コアアクリーションモデルによる惑星形成のシミュレーションでこの配置を再現した 内側の2つは氷が凝結する距離(snow line)より内側で生まれ、もうひとつの惑星は外側で生まれ、現在の位置まで内側に移動してきた 外側の2つは地球質量の数倍のガスの大気を獲得した

議論 この系は安定か? この系と同様に惑星を配置し、時間進化をシミュレーションした Inclination(→惑星の真の質量)を変えてもこの系は安定であることがわかった

議論 この系はどんな環境か? もちろんこれはわからない しかし、ハビタブルゾーンにある惑星の発見は、地球外生命探査への新しい一歩である