特殊感覚 視覚 聴覚 嗅覚 味覚 これに体性感覚を加わったものが「五感」
1.視覚
Color Blindness Ishihara Test for Color Blindness
2.嗅覚 鼻のなかには嗅覚神経細胞がおよそ500万個 。 人間には、いたんだ肉から恋人の香水まで、1万種類ものにおいをかぎ分ける能力があると考えられている。 2004年ノーベル医学生理学賞 (2004 Nobel Prize, Physiology or Medicine) Richard Axel and Linda B. Buck “for their discoveries of odorant receptors and the organization of the olfactory system”
Richard Axel, MD. Linda B. Buck Columbia University, Department of Biochemistry and Molecular Biophysics and Pathology Investigator, Howard Hughes Medical Institute Member, Center for Neurobiology and Behavior born January 29, 1947, Seattle, WA, USA Address: Basic Sciences Division, Fred Hutchinson Cancer Research Center, 1100 Fairview Avenue North, A3-020, P.O. Box 19024, Seattle, WA 98109-1024, USA
鼻腔の構造 鼻腔内の嗅粘膜には基底細胞、支持細胞とにおいを感じる嗅細胞(直径40-50ミクロン)があり、人では約4000万、においに敏感な犬では約10億の嗅細胞がある。
匂いの受容体 数百種類が存在することが明らかになっている。それぞれの受容体は、限られた数のにおい分子しか検知できない。 たとえば、人間が香水や上等のワインのにおいを嗅ぐと、さまざまなタイプの分子が混ざったまま、鼻の奥にある受容体の周囲を流れる。ここで、流れてきた特定の分子に反応する形の受容体だけが活性化する。脳は、どの受容体が活性化したかという情報を受け取り、そのパターンをにおいとして解釈する。 鼻のなかには嗅覚神経細胞がおよそ500万個あるが、アクセル博士とバック博士は、この細胞のそれぞれに、たった1種類の受容体だけが対応するという事実も明らかにした。
嗅覚の分子機構 G蛋白共役受容体(GPCR)が関与している。 この受容体は細胞膜を7回貫通する型でラットなどの動物では数百から1000種以上の亜型が見つかっており、ヒトでも同様の受容体が存在する。
嗅覚の伝導路 におい物質(化学物質)が嗅覚受容器を刺激して発生したシグナルは、嗅細胞の軸索を介して篩骨板を通り、嗅球(Olfactory bulb)に入る。 その後、嗅神経を通り一部は側頭葉の嗅覚野、海馬、扁桃体、視床下部に投射している。 これらの投射はにおいに対する感情や記憶に関与している。 他の繊維は視床で繊維を変えて眼窩前頭回に投射しており、においの認識に関係している。
フェロモン ある種の動物は嗅球(Olfactory Bulb)以外に、Vomeronasal organ(VNO)という器官をもっている。 VNOにはフェロモンという動物種に特異的なにおい物質の受容器があり、フェロモンによって異性を引きつけたり、テリトリーやグループ行動に影響を与えたりしている。 ラットのフェロモン受容体については研究が進んでおり、フェロモン受容体も嗅覚と同じ構造を持つ、G蛋白共役受容体であることがわかっている。 ラットのフェロモン受容体にはV1RとV2Rの2グループがあり、それぞれ数十種類の類似蛋白が含まれる。V1RとV2Rはそれぞれ、違ったG蛋白に共役している。
匂いとフェロモンの受容機構を 探る嗅覚グループ 東大・新領域創成科学研究科 東原 和成 研究グループ マウスのオスの性フェロモンは涙に分泌! 尿中ではなく、揮発性でもない化学物質であった。 Kimoto H, Haga S, Sato K, Touhara K.Related Articles, Sex-specific peptides from exocrine glands stimulate mouse vomeronasal sensory neurons. Nature. 2005 Oct 6;437(7060):898-901. Kazushige Touhara and some of his mice.
人間の五感の一つを説明する発見:どのような医学的・科学的な重要性があるか 心理学から料理まで、幅広い分野に影響をもたらす可能性がある 。 例:においで子ども時代を思い出すということはよくあるが、その理由を心理学的に説明するのに役立つかもしれない。 フェロモンの研究の進展
3.聴覚
蝸牛chochlea 蝸牛の断面図をみると、三つに分かれており、それそれがリンパ液で満たされている。 一番上が前庭階(Scala vestibuli), その下が蝸牛管(Cochlear duct),一番下が鼓室階(Scala tympani)。 蝸牛管の下壁は基底膜と呼ばれ、基底膜上にはコルチ器官(Organ of Corti)がある。 あぶみ骨に伝わった音は前庭窓(vestibular membrane)を振動させ、振動は前庭階から鼓室階を伝わる。その際に基底膜(basilar membrane)を振動させ、この振動は聴覚の受容器である基底膜上の有毛細胞(hair cell)を興奮させる。
聴覚の伝導路 蝸牛の受容器からの神経インパルスは背側と腹側の蝸牛神経核(Cochlear nucleus)に入る。ここでシナプスを変え、大部分は対側の上オリーブ核(Superior olivary nucleus)へ伝達される。3次ニューロンはここから外側毛帯を通り、下丘(Inferior colliculus)に到達する。ここから出る4次ニューロンは内側膝状体(Medial genuculate)に入り、5次ニューロンとなって皮質の聴覚野(Auditory cortex)に情報を伝達する。さらに聴覚の一部の繊維は脳幹網様体に連絡しており、大きな音などに反応して脳を賦活化させる。また、他の繊維は小脳へ連絡していまる。
平衡感覚 ひとが体をまっすぐにして立っていられるのは前庭感覚器によって体の平衡をたもっているから。 前庭器は前(Anterior),後(Posterior),外側(Lateral)の3つの半規管と、卵形嚢(Utricle)と球形嚢(Saccule)の耳石器官からなる。3つの半規管はお互いに垂直な面に位置していてその中にはリンパ液が満たされている。 三半規管の膨大部(Ampulla)には有毛細胞があり、体が回転するとリンパ液の動きによって有毛細胞が刺激を受け、ジャイロスコープのように回転方向を感知する。
聴覚の分子機構 聴覚の受容器である有毛細胞先端の毛(Stereocilia)には機械的刺激に応答してカリウムイオンを通過させるイオンチャンネル(K+ gated ion channel)がある。 有毛細胞の毛は蓋膜 (Tectorial membrane)に固定されている。 蝸牛管内部のリンパはカリウムイオン濃度が高く、音刺激によって毛(Stereocilia)が動かされると、カリウムイオンチャンネルが開き、カリウムイオンが細胞内に流入する。 このイオン流によって有毛細胞は脱分極し、神経伝達物質を放出する。このインパルスは有毛細胞から蝸牛神経に伝達される。
4.味覚 口にする物の化学的特性に応じで認識される感覚。 生理学的には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが基本味に位置づけられる。 基本味の受容器はヒトの場合おもに舌にある。 基本味が他の要素(嗅覚、視覚、記憶など)で拡張された知覚心理学的な感覚としての味は、風味(ふうみ、flavour)と呼ばれることが多い。また、認識の過程を味わう(あじわう)という。 味覚閾値:中学生頃が最も低く(つまり味に対して鋭敏である)、幼児・学童、成人、高齢者の順で高くなっていく。 (子供の時の食生活が大事?)
各味に対する舌上の感受部位
味覚の分子機構
味覚のシグナル伝達系 (1)塩辛さ:ナトリウムイオンが味覚細胞の分布するナトリウムチャンネルを通して細胞内に流入すると脱分極がおこり、さらに電位依存性(Voltage gated)のナトリウムやカリウムのイオンチャンネルが開いてアクションポテンシャルが発生し、塩辛いという感覚が伝達される。アミロライド(Amiloride)という物質はこのナトリウムチャンネルをブロックするので舌に作用させると塩辛さを感じなくなる。 (2) 酸っぱさ:水素イオンによって活性化されるチャンネル(H+ gated cation channel)によって味覚細胞が脱分極し、活動電位が発生する。またdegenerin-1という蛋白もこの感覚に関与していると考えられている。 (3)甘み: G蛋白共役受容体(G protein coupled receptor(GPCR))が関与していると考えられてる。最近発見されたTas1r3という蛋白は味蕾に発現しており、甘さを感じる受容体だと考えられている。 (4)苦み:GPCRが関与していると考えられている。たとえば、TR2RはGPCRの1種で味蕾に発現している。 (5)うま味: うま味はグルタミン酸が関係している。グルタミン酸の受容体もGPCRの1種。
G蛋白共役受容体 GTP結合タンパク質 G protein-coupled receptors (GPCRs)
G-protein-coupled receptor mechanism.
味覚の伝導路 舌の前三分の二の感覚は舌神経から鼓索、顔面神経(Facial nerve:VII)を通り、孤束核に入る。 後ろ三分の一は舌咽神経(Glossopharyngeal nerve:IX)を経由して孤束核に入る。 その後、一部の繊維は唾液分泌、嘔吐等の反射を誘発する脳幹の他の部位に投射し、他の繊維は視床を経由して大脳皮質体性感覚野の下部(味覚野)に投射する。
味覚異常 精神医学疾患に由来することが多い タバコの吸い過ぎや口腔乾燥症(ドライマウス)などによる口腔粘膜の乾燥は、味覚を損なう。 また亜鉛欠乏により、突発性味覚異常(味覚の歪み)が発生する。 急性インフルエンザなども一過性の味覚異常を引き起こす。 慢性関節リウマチで金化合物療法を受けている患者が金属味を愁訴するのは、口内炎の始まりを意味する。 不愉快な甘味は肺の小細胞癌を示唆することがある。