北海道大学 理学部 地球科学科 惑星物理学研究室 4 年 堺 正太朗

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北海道大学 理学部 地球科学科 惑星物理学研究室 4 年 堺 正太朗 土星オーロラ放射の発生機構に関する研究 北海道大学 理学部 地球科学科 惑星物理学研究室 4 年 堺 正太朗 アップする時は,出典を書く.

土星 赤道半径: ( ) 質量: (地球 ) 密度: 赤道重力: (地球 ) 公転周期: 年 自転周期: 日 磁気モーメント: (地球 ) 赤道半径: ( ) 質量: (地球 ) 密度: 赤道重力: (地球 ) 公転周期: 年 自転周期: 日 磁気モーメント: (地球 ) 地軸に対する磁気軸傾斜角: 図 1: 土星 [NASA]

土星電離圏 電離圏 土星電離圏 分子や原子が電離されて生じるプラズマ (電離気体) が存在する高層大気 電離源 水素のイオンに富む 極端紫外線 (FUV), X 線など 土星電離圏 水素のイオンに富む , , Ingress: 入っていく軌道, egress: 出ていく軌道, 地球電離圏のものを用意しておく. 図 2: 土星電離圏構造, Pioneer 11 号による観測 [Kliore et al, 1980]

土星磁気圏 惑星磁場が支配する領域 惑星の磁場と太陽風との相互作用により夜側に引き伸ばされた構造 磁気圏はプラズマで満たされている 大きさ から (太陽側) 形 地球と似た形 地球磁気圏のものを用意しておく. 図 3: 土星磁気圏 [Bagnal, 1992]

本研究の動機と目的 土星にはオーロラが存在 夜明け領域でのオーロラ放射増大の機構を理解 夜明け領域で放射が増大 磁気圏対流と沿磁力線電流が関連 Cowley et al. (2004a, 2004b), Jackman and Cowley (2006) 磁気圏プラズマ分布を数値計算 オーロラ粒子は磁気圏プラズマが起源

磁気圏対流 Dungey サイクルによるプラズマ対流 (地球磁気圏) Vasyliunas サイクルによるプラズマの流れ (木星磁気圏) 磁気圏尾部から前面への流れ 惑星付近では共回転の影響が強い プラズマは閉じた軌道 Vasyliunas サイクルによるプラズマの流れ (木星磁気圏) 基本的には Dungey サイクルによる流れと同じ 夕暮れ領域の磁気圏尾部からプラズマが磁気圏外へと流出 Vasyliunas サイクル: 惑星風の影響. 惑星風: 深夜-子午線付近で太陽とは逆方向に動く→ 夜側では束縛力のみ (昼側では太陽風圧によってプラズマが閉じ込められる). 図 4: (上) Dungey サイクル概念図 [Brice, 1967] 図 5: (下) Vasyliunas サイクル概念図 [Vasyliunas, 1983, 改]

土星オーロラに関する先行研究 明け方領域での強いオーロラ放射 Cowley et al. (2004a) 磁気圏プラズマ流の概念図を作成 夕暮れ領域の磁気圏尾部からプラズマが流出していることを示唆 極域プラズマ流の概念図を作成 Jackman and Cowley (2006) 極電離圏流と電流モデル 夜明け領域での沿磁力線電流が強いことを提案 極冠境界にオーロラ粒子源を仮定 沿磁力線電流とは? 図 6: (上) 土星磁気圏プラズマ流概念図 [Cowley et al., 2004a] 図 7: (下) 土星極域プラズマ流概念図 [Cowley et al., 2004a]

磁気圏界面 Arridge et al. (2006) のモデル :太陽風速度, :土星から磁気圏界面までの距離, :方位角 :太陽風数密度, :質量, 以前の研究では r0=10.04Dp^(-1/6.1). 図 8: 土星磁気圏界面

土星磁気圏とプラズマ圏 共回転電場ポテンシャル 対流電場ポテンシャル 太陽風 :共回転電場ポテンシャル, :対流電場ポテンシャル, プラズマポーズ 太陽風 :共回転電場ポテンシャル, :対流電場ポテンシャル, :自転角速度, :対流電場, :太陽風磁場 :太陽風速度, :任意の距離, 磁気圏界面 :赤道磁場, 図 9: 共回転電場と対流電場の等ポテンシャル面 :太陽となす時角

太陽風速度とプラズマ圏 プラズマポーズが磁気圏界面付近 太陽風が弱い → プラズマ圏が大きい 太陽風が強い → プラズマ圏が小さい 図 10: 共回転電場と対流電場の等ポテンシャル面 図 11: 共回転電場と対流電場の等ポテンシャル面 プラズマポーズが磁気圏界面付近 夕暮れ領域でのプラズマ流出を示唆 太陽風が弱い → プラズマ圏が大きい 太陽風が強い → プラズマ圏が小さい

プラズマ分布とオーロラ (1) ドリフトから計算 プラズマ分布 オーロラ粒子源 →夜明け領域でオーロラ放射増大の可能性 夜明け領域の方が密度が高い オーロラ粒子源 プラズマ圏界面付近 電流源が極冠境界と仮定 →夜明け領域でオーロラ放射増大の可能性 オーロラが明るいということと,磁気圏プラズマ密度が高いということの関連性を考えておくこと.地球の場合はプラズマシートにプラズマがたまっている.土星も同様にあるはずだけどオーロラの位置にはない.プラズマ圏のすぐ外. 図 12: プラズマ分布

プラズマ分布とオーロラ (2) 2000 年 12 月 8 日に観測されたオーロラ (HST) 磁気緯度 75 度付近, 太陽風速度約 オーロラ粒子起源はほぼプラズマ圏界面 図 13: Hubble Space Teltescope が撮影した土星 UV オーロラ [Cowley et al., 2004a]

考察とまとめ オーロラ粒子 夜明け領域にプラズマが集中 2000 年 12 月 8 日のオーロラ観測 今後の課題 沿磁力線電流源は極冠境界 プラズマ圏界面付近 夜明け領域にプラズマが集中 夜明け領域でのオーロラ放射の増大を示唆 2000 年 12 月 8 日のオーロラ観測 磁気緯度 75 度付近にオーバル オーロラ粒子源はプラズマ圏界面付近 今後の課題 対流電場の変化を考慮 → プラズマ圏の計算 磁気勾配ドリフト,湾曲ドリフトを考慮 → プラズマ分布計算 太陽風の影響の比較 → 土星オーロラの観測

参考文献 Arridge, C. S., et al., 2006, Modeling the size and shape of Saturn’s magnetosphere with variable dynamic pressure, J. Geophys. Rev., 111, A11227. Bagnal, F., 1992, Giant planet magnetospheres, Annu. Rev. Earth Planet. Sci., 22, 289-328. Baumjohann, W., and Treumann, R. A., 1997, Basic Space Plasma Physics, Imperial College Press, London, UK, 329pp. Brice, N. M., 1967, Bulk motion of the magnetosphere, J. Geophys. Rev., 72, 5193-5211. Cowley, S. W. H., et al., 2004a, Saturn's polar ionospheric flows and their relation to the main auroral oval, Ann. Geophys., 22, 1379-1394. Cowley, S. W. H., et al., 2004b, A simple quantitative model of plasma flows and currents in Saturn’s poalr ionosphere, J. Geophys. Rev., 109, A05212. Jackman, C. M., and Cowley, S. W. H., 2006, A model of the plasma flow and current in Saturn's polar ionosphere under conditions of strong Dungey cycle driving, Ann. Geophys., 24, 1029-1055. Kliore, A. J., et al., 1980, Structure of the ionosphere and atmosphere of Saturn from Pioneer 11 Saturn radio occultation, J. Geophys. Res., 85 (A11), 5857-5870. 恩藤忠典, 丸橋克英 編著, 2000, ウェーブサミット講座 宇宙環境科学, オーム社, 302pp. Vasyliunas, V. M., 1983, Plasma distribution and flow, in Physics of the Jovian Magnetosphere, Ed. Dessler, A. J., Cambridge Univ. Press, Cambridge, UK, 395pp. NASA http://nasa.gov/

地球電離圏と磁気圏