特発性間質性肺炎 Idiopathic interstitial pneumonias : IIPs

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特発性間質性肺炎 Idiopathic interstitial pneumonias : IIPs The Japanese Respiratory Society 社団法人日本呼吸器学会 教育用DVD - DVDで学ぶ実践呼吸器病学 - Ⅱ-15 特発性間質性肺炎 Idiopathic interstitial pneumonias : IIPs 公立陶生病院 呼吸器・アレルギー内科 近藤 康博 谷口 博之

内容 総論 びまん性肺疾患 特発性間質性肺炎とは 診断のためのフローチャート 各種検査 画像検査 呼吸機能検査 血液検査 気管支肺胞洗浄(BAL) 経気管支肺生検(TBLB) 各論 特発性肺線維症 非特異性間質性肺炎 急性間質性肺炎 特発性肺線維症の急性増悪 特発性器質化肺炎 参考文献 《補遺》 IPFの治療 気腫合併肺線維症

総 論

びまん性肺疾患 特発性間質性肺炎とは 診断のためのフローチャート 各種検査 画像検査 呼吸機能検査 血液検査 気管支肺胞洗浄(BAL) 総論 びまん性肺疾患 特発性間質性肺炎とは 診断のためのフローチャート 各種検査 画像検査 呼吸機能検査 血液検査 気管支肺胞洗浄(BAL) 経気管支肺生検(TBLB) 4

総論 びまん性肺疾患 5

総論 びまん性肺疾患 原因不明の間質性肺炎(IIPs) その他の原因不明疾患 肉芽腫性肺疾患 じん肺および関連性疾患 膠原病および関連疾患 特発性肺線維症(IPF) 非特異性間質性肺炎(NSIP) 特発性器質化肺炎(COP/BOOP) 急性間質性肺炎(AIP) 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患(RB-ILD) 剥離性間質性肺炎(DIP) リンパ球性間質性肺炎(LIP) その他の原因不明疾患 慢性好酸球性肺炎 急性好酸球性肺炎 肺リンパ脈管筋腫症(LAM) 肺胞蛋白症 Hermansky-Pudlak症候群 Langerhans細胞組織球症 ヘモジデローシス 肺胞微石症 肉芽腫性肺疾患 サルコイドーシス 過敏性肺炎 じん肺および関連性疾患 珪肺 石綿肺 慢性ベリリウム症 アルミニウム肺 超硬合金肺(GIP) 膠原病および関連疾患 関節リウマチ 皮膚筋炎/多発性筋炎 全身性エリテマトーデス 強皮症(全身性硬化症) 混合性結合組織病 Sjögren症候群 Behçet病 Wegener肉芽腫症 結節性多発動脈炎 顕微鏡的多発血管炎 Churg-Strauss症候群 薬剤誘起性肺疾患 抗菌薬 ニトロフラントイン 抗不整脈薬 消炎薬 金製剤 ペニシラミン インターフェロン 小柴胡湯 抗腫瘍薬 放射線 パラコート 腫瘍性肺疾患 細気管支肺胞上皮癌 癌性リンパ管症 癌血行性肺転移 悪性リンパ腫 リンパ腫様肉芽腫症 Kaposi肉腫 感染性肺疾患 細菌性肺炎 ウイルス性肺炎 ニューモシスチス肺炎 クラミジア肺炎 マイコプラズマ肺炎 粟粒結核 真菌性肺炎 気道系が関与する肺疾患 びまん性汎細気管支炎(DPB) immotile cilia症候群 嚢胞性線維症 その他のびまん性肺疾患 高地肺水腫 HIV合併びまん性肺病変 HTLV-1感染合併肺病変

総論 特発性間質性肺炎とは 7

【特発性間質性肺炎とは1)】 各疾患の 組織 パターン は ? 総論 特発性間質性肺炎とは 特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias; IIPs)は原因を特定しえない間質性肺炎の総称であり,2002年の国際的多分野合意による臨床・画像・病理学的分類で7疾患に分類される. 臨床病理学的疾患名 病理組織パターン 1) 特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)    2) 非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia:NSIP) 3) 特発性器質化肺炎 (cryptogenic organizing pneumonia:COP=idiopathic bronchiolitis obliterans organizing pneumonia:idiopathic BOOP) 4) 急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia:AIP) 5) 剥離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia:DIP)  6) 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患 (respiratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease:RB-ILD)    7) リンパ球性間質性肺炎(lymphocytic interstitial pneumonia:LIP) 各疾患の 組織 パターン は ? UIP NSIP OP DAD DIP RB-ILD LIP 通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia:UIP ),びまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage:DAD) 器質化肺炎(organizing pneumonia:OP)

【特発性間質性肺炎の各病理組織 パターンの特徴2)】 総論 特発性間質性肺炎とは UIP NSIP OP DAD DIP/RB-ILD 分布 斑状,不均質, 胸膜下,小葉辺縁 びまん性,均質 小葉中心性 線維化の時相 多彩 一様 間質への細胞浸潤 少ない 通常多い やや多い 膠原線維増生を伴う線維化 あり,斑状 さまざま, びまん性 なし 器質化期以降であり さまざま,びまん性(DIP), 部分的,軽度(RB-ILD) 線維芽細胞の増生 線維芽細胞巣著明 時々,びまん性 (線維芽細胞巣は稀) 時々,部分的 (線維芽細胞巣はなし) 器質化期以降でびまん性 時々(DIP), なし(RB-ILD) ポリープ型腔内 器質線維化 多い (小葉中心性) 蜂巣肺 あり 稀 あり(終末期) 気腔内肺胞マクロ ファージ集簇 時々,局所 時々,斑状 斑状(泡沫状) びまん性(DIP), 細気管支周囲(RB-ILD) 硝子膜形成 あり(滲出期) 9

IPF/UIPが最も多く,ついでNSIPが多い 総論 特発性間質性肺炎とは 【特発性間質性肺炎における各疾患の頻度 (外科的肺生検例)3,4)】 IPF/UIPが最も多く,ついでNSIPが多い IIPで頻度が多い2つは? 病理組織所見 欧米での頻度 (n=102) 本邦での頻度 (n=606) IPF/UIP NSIP COP/BOOP AIP DIP,RB-ILD LIP others 63 (62%) 14 (14%) 4 (4%) 2 (2%) 10 (10%) ― 9 (8%) 313 (52.6%) 107 (17.2%) 57 (9.4%) 9 (1.5%) 29 (4.8%) 14 (2.5%) 72 (12.2%) 10

臨床病理学的疾患名を下記に入れてください 総論 特発性間質性肺炎とは 【臨床病理学的疾患名と治療反応性】 臨床病理学的疾患名を下記に入れてください COP 良 RB-ILD /DIP NSIP 治療反応性 AIP IPF/UIP IPF 急性増悪 不良 急性 慢性 経過 11

総論 診断のためのフローチャート 12

【臨床病理学的疾患名と治療反応性1)】 non-IIPs non-IIPs non-IIPs 総論 診断のためのフローチャート 詳細な問診,身体所見 胸部XP 呼吸機能,血液検査 びまん性肺疾患 原因の明らかなびまん性肺疾患疑い (感染症,じん肺,薬剤性肺炎, サルコイドーシス,膠原病など) non-IIPs IIPs 疑い HRCT 典型的IPF像 専門施設での診断が望ましい 典型的IPF像とはいえない 肺底部 胸膜直下優位 蜂巣肺 non-IIPs 気管支鏡検査 (BAL/TBLB) 以下の4項目中3項目を満たす 50歳以上 緩徐な発症 3か月以上の経過 両側肺野の捻髪音 臨床診断IIPs non-IIPs 外科的肺生検 (VATS/OLB) IPF/UIP, NSIP, COP, AIP, DIP, RB-ILD, LIP… IPF 13

総論 各種検査 14

総論/各種検査 画像検査 呼吸機能検査 血液検査 気管支肺胞洗浄(BAL) 経気管支肺生検(TBLB) 15

総論/各種検査 1. 画像検査 16

【びまん性肺疾患における胸部単純X線写真】 総論/各種検査 1.画像検査 【びまん性肺疾患における胸部単純X線写真】 画像診断の第一歩 陰影の性状・肺容量の評価: IIPsの初期変化は一般的に背側尾側のわずかなすりガラス陰影もしくは浸潤影 肺血管影のボケ像や若干の容積減少を読みとる 病変の進行に従って線状影や網状影が目立つ 陰影の分布: 上肺野優位:好酸球性肉芽腫症,結核,じん肺症,上肺野優位型肺線維症など 中肺野優位:サルコイドーシスや肺水腫など 下肺野優位:誤嚥性変化,びまん性汎細気管支炎,間質性肺炎,膠原病肺など びまん性の分布:粟粒結核,リンパ脈管筋腫症(LAM),ニューモシスチス肺炎や サイトメガロウイルス感染症など バタフライ陰影:肺水腫 肺外側優位や移動する浸潤影: もしくは など 経過: 所見の経時変化の把握:急性,亜急性,慢性 特発性器質化肺炎(COP) 慢性好酸球性肺炎

総論/各種検査 2. 呼吸機能検査 18

拡散障害(DLCOの低下)は,肺容量の低下に先行して認められることもある 総論/各種検査 2.呼吸機能検査 【びまん性肺疾患における呼吸機能検査】 IIPsは通常, 障害, 障害を認める 拡散障害(DLCOの低下)は,肺容量の低下に先行して認められることもある 閉塞性障害を認める場合: 喫煙による気腫化の合併,リンパ脈管筋腫症(LAM),じん肺の一部,関節リウマチの一部,気管支喘息の合併の可能性のある好酸球性肺炎など 拘束性 拡散 19

総論/各種検査 3. 血液検査 20

【びまん性肺疾患における血液検査】 IIPs:特異的な検査所見はない. 総論/各種検査 3.血液検査 【びまん性肺疾患における血液検査】 IIPs:特異的な検査所見はない. IPF:通常,炎症反応(CRP)は陰性あるいは陽性でも軽微.強陽性の場合は感染症の合併,他疾患あるいは を考慮. 血清LDH:上昇を認めることあり. IPFの で抗核抗体(ANA)やリウマチ因子が陽性.高い抗体価(>1:160)を認めた場合は膠原病を考慮. ANA陽性の場合:特異抗核抗体(抗ds-DNA抗体,抗Sm抗体,抗RNP抗体,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体,抗centromere抗体,抗Scl-70抗体)を検索する. 必要に応じ,他の自己抗体( , , , 抗GBM抗体など)も検査する. , , は,種々の間質性肺炎において高値を示す. ただし,疾患特異性はない. IPFの急性増悪 10~20% 抗Jo-1抗体 MPO-ANCA PR3-ANCA KL-6 SP-A SP-D 21

総論/各種検査 4. 気管支肺胞洗浄(BAL) 22

【びまん性肺疾患におけるBALの意義1)】 総論/各種検査 4.BAL 【びまん性肺疾患におけるBALの意義1)】 1.感染性疾患 (1)BALからの病原体検出により診断が確定   する感染症 ニューモシスチス レジオネラ 結核菌 マイコプラズマ インフルエンザウイルス RSウイルス (2)BALによる病原体検出が診断や管理に   有用な疾患 サイトメガロウイルス 単純ヘルペスウイルス 一般細菌 非結核性抗酸菌症 アスペルギルス カンジダ クリプトコッカス 2.非感染性疾患 (1)BALにより診断が確定する疾患 肺胞蛋白症 悪性腫瘍(癌性リンパ管症,白血病,悪性リンパ腫) (2)BALが診断に有用な疾患 肺胞出血 好酸球性肺炎 ベリリウム肺 過敏性肺炎 石綿肺 硅肺 サルコイドーシス 肺Langerhans細胞組織球症 (3)BALが鑑別に有用な可能性のある疾患 IIPs(IPF,NSIP,COP,AIPほか) 膠原病に伴う間質性肺炎 23

総論/各種検査 5. 経気管支肺生検(TBLB) 24

【びまん性肺疾患におけるTBLBの診断的意義1)】 総論/各種検査 5.TBLB 【びまん性肺疾患におけるTBLBの診断的意義1)】 1. 診断が確定する疾患 悪性腫瘍(特に癌) 肺感染症 クリプトコッカス症 アスペルギルス症 ノカルジア症 ニューモシスチス肺炎 肺結核症 CMV肺炎など リンパ脈管筋腫症 肺胞蛋白症 肺胞微石症 2. 臨床所見と合わせ診断 可能な疾患 サルコイドーシス 慢性ベリリウム肺 過敏性肺炎 じん肺 石綿肺 珪肺 ヘモジデローシス 好酸球性肺炎 AIP* COP* 3. 診断確定ができない疾患 (SLB(surgical lung biopsy)が必要) IIPs(IPF, NSIP, RB-ILD, DIPほか) 膠原病に伴う間質性肺炎 肺Langerhans細胞組織球症 閉塞性細気管支炎群の疾患 びまん性汎細気管支炎 Wegener肉芽腫症 リンパ球系増殖性肺疾患 *:従来は診断にはSLB(surgical lung biopsy)が必要とされてきたが,AIPにおけるDADパターンでは が示唆された場合,COPでは を認めた場合で,臨床上, 画像上も診断に矛盾しない場合にTBLBで診断可能. 硝子膜 器質化肺炎パターン 25

各 論 26

各論 特発性肺線維症 非特異性間質性肺炎 急性間質性肺炎 特発性肺線維症の急性増悪 特発性器質化肺炎 27

特発性肺線維症 Idiopathic pulmonary fibrosis:IPF 各論 特発性肺線維症 Idiopathic pulmonary fibrosis:IPF 28

中間生存期間が と予後不良の慢性疾患であり, 各論 特発性肺線維症(IPF) 中間生存期間が と予後不良の慢性疾患であり, 他の間質性肺疾患との鑑別が重要である 3~5年 臨床所見 総合的な判断が必要 画像所見 病理所見 29

症状は? 乾性咳嗽・労作時呼吸困難 身体所見は? ばち指・捻髪音 【臨床所見-1】 各論 特発性肺線維症(IPF) 30 (日本呼吸器学会びまん性肺疾患 診断・治療ガイドライン作成委員会(編):特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き.南江堂,東京,2005.より許可を得て転載) 30

【臨床所見-2】 IPFの発症は通常緩徐で, や を主症状とする. 乾性咳嗽は鎮咳薬ではおさまりにくいこともある.聴診上,ベルクロ様の は90%前後に認める.ばち指は 前後に認められる. 進行すればチアノーゼ,肺性心,末梢性浮腫などがみられる. 肺以外の症状はみられない場合も多いが,体重減少,倦怠感,疲労が認められることがある.発熱はない場合が多い.発熱している場合は感染症併発,急性増悪あるいはIPF以外の間質性肺炎が示唆される. 膠原病に伴う間質性肺炎を除外するため,膠原病を示唆するような症状や徴候は慎重に聴取するべきである. 乾性咳嗽 労作時呼吸困難 捻髪音 30~60% 31

CEAやCA19-9,SLXの上昇は,IPFでもみるが, 肺癌など合併の除外が必要 【検査所見】 血液検査は? KL-6,SP-A,SP-D: . LDH: . 抗核抗体やリウマチ因子: . 腫瘍マーカー: . 高率に陽性 しばしば高値 10~20%に陽性 CEAやCA19-9,SLXの上昇は,IPFでもみるが, 肺癌など合併の除外が必要 呼吸機能検査は? 障害(肺活量[VC]と全肺気量[TLC]の減少) は初期より低下することが多い. 拘束性 肺拡散能(DLCO) 32

【胸部X線所見】 代表的所見は? びまん性網状影が両側中下肺野,外側優位に広がり,多くは肺の縮小を認める. 蜂巣肺は としてみられる. 各論 特発性肺線維症(IPF) 【胸部X線所見】 代表的所見は? びまん性網状影が両側中下肺野,外側優位に広がり,多くは肺の縮小を認める. 蜂巣肺は としてみられる. 融合性の肺胞陰影は稀. 肺気腫とIPFが合併すると肺容量減少がみられないことあり.   小輪状~粗大輪状陰影 両下肺野主体に網状影と一部に 小輪状影を認める 33

【高分解能CT(HRCT)】 代表的所見は? 下葉背側胸膜直下に優位に分布する線状影と . の存在は診断確定に重要 各論 特発性肺線維症(IPF) 【高分解能CT(HRCT)】 代表的所見は? 下葉背側胸膜直下に優位に分布する線状影と . の存在は診断確定に重要 不均一な所見の分布(蜂巣肺に隣接した正常肺胞構造の存在など)も特徴 牽引性気管支・細気管支拡張像 蜂巣肺 HRCTにおける蜂巣肺所見 胸膜直下に壁を共有する にわたる嚢胞状陰影(蜂巣肺)を認める 数層 蜂の巣 34

【組織所見-1】 組織所見は? UIPパターン 各論 特発性肺線維症(IPF) 胸膜下優位に密な線維化病変がみられ,蜂巣肺形成(honeycombing)を伴っている.臓側胸膜(P)には病変は目立たない.肺胞構造の消失を伴う密な線維化病変が正常な肺胞構造を挟んで繰り返してみられる(HE染色,2×2.5). 中等度の拡大では肺胞構造の消失を伴う線維化病変の辺縁部には, (★)が上皮細胞に被覆されて散見され,正常肺胞壁(→)も この拡大で認められる(HE染色,10×2.5). 線維芽細胞巣* * 線維芽細胞巣:次頁参照 ( 日本呼吸器学会びまん性肺疾患 診断・治療ガイドライン作成委員会(編):特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き.南江堂,東京,2005.より許可を得て転載) 35

線維芽細胞巣:fibroblastic foci (FF)とは? 各論 特発性肺線維症(IPF) 【組織所見-2】 線維芽細胞巣:fibroblastic foci (FF)とは? 線維芽細胞巣:fibroblastic foci (FF)は線維化部位と正常部位との境界部位に存在し, 電子顕微鏡所見では肺胞上皮傷害と肺胞の虚脱を示し,UIP病変が高度の線維化に進行する活動的な病巣と考えられている. 現在ではUIPが終末期の線維症にいたる重要な機序は,胞隔炎ではなく,持続的な線維芽細胞の増殖を伴う進行性の上皮傷害と 修復機転であると認識されている. FFは,UIPの特徴的所見で,予後因子となること, すなわちFFが 多いほど予後不良と報告されている. 以上より,IPFの治療は,抗炎症から抗線維化に主眼が向けられるようになった. 36

【外科的肺生検を行った場合のIPF/UIPの 確定診断基準1)】 IPFの確定診断は外科的肺生検(SLB)にてUIP所見が確認され,以下の 基準を満たす場合である. 薬剤性,環境曝露, など,原因が既知の間質性肺疾患の除外 拘束性障害(VCの低下)やガス交換障害(安静時や運動時のAaDO2の 増大,安静時または運動時のPaO2の低下,あるいはDLCOの低下)などの呼吸機能検査異常 HRCTで両側肺底部の網状陰影とわずかなすりガラス陰影 注:蜂巣肺は必ずしも認めなくともよい 膠原病 37

【特発性肺線維症(IPF)の臨床診断基準1)】 主診断基準 薬剤性,環境曝露,膠原病など,原因が既知の間質性肺疾患の除外 拘束性障害(VCの低下)やガス交換障害(安静時や運動時のAaDO2の増大,安静時または運動時のPaO2の低下,あるいはDLCOの低下)などの呼吸機能検査異常 HRCTで両側肺底部・胸膜直下優位に明らかな蜂巣肺所見を伴う網状影とわずかなすりガラス陰影 副診断基準 年齢> 歳 他の原因では説明しがたい労作性呼吸困難の潜伏性の進行 罹病期間≧ . 両側肺低部に吸気時捻髪音(fine crackles)を聴取 50 3か月 注:経気管支肺生検(TBLB)や気管支肺胞洗浄(BAL)を行った場合は,その所見が他疾患の診断を支持しないこと 38

【治療における留意点】 現時点において,IPFの予後を明らかに改善した薬物治療法はない.治療目標は, . 過去に試みられてきたステロイド(corticosteroid:CS)の単独療法は典型的なIPFでは有効性に乏しい. 治療薬としては抗線維化薬(ピレスパⓇ)の適応について検討する. CSの単独療法に比べ,シクロホスファミド(cyclophosphamide)やアザチオプリン(azathioprine)などの免疫抑制薬の併用療法が有効であった,との報告に基づき,ATS/ERSの合意声明ではCSと免疫抑制薬の併用療法を暫定的に推奨している.本邦の「特発性間質性肺炎-診断と治療の手引き」ではこの2剤に加え,シクロスポリン(ciclosporin)併用療法も記載しているが,有効性の根拠は乏しいのが現状である. なお,わが国では,CS減量時にIPFの急性増悪が生じうることが知られており,CSの減量は慎重であるべきとされる. 基本的に改善は期待できないので悪化が阻止できればよしとする 39

特発性肺線維症 (IPF) に対して世界で初めて承認を取得した抗線維化剤 【新しい治療法:抗線維化薬】 ピレスパ® pirfenidone 特発性肺線維症 (IPF) に対して世界で初めて承認を取得した抗線維化剤 抗線維化作用 線維芽細胞増殖抑制,コラーゲン生合成抑制作用 TGF-β 産生抑制作用 抗炎症作用 TNF-α 産生抑制作用 抗酸化作用 ヒドロキシラジカル抑制作用 N O H3C 有効性:軽症から中等症を対象とした治験で以下の有効性が確認された.  肺活量の低下を抑制する.52週の投与で,プラセボ群でVCの低下が160mLであったのに対し,ピレスパ投与群の低下が80~90mLであった.また,無増悪生存期間の検討では,ピレスパ投与群はプラセボ群に比べて無増悪率の低下を抑制した. 40

① ピルフェニドン(ピレスパⓇ錠 200mg:)3錠~9錠/分3 食後 各論 特発性肺線維症(IPF) 【IPFの治療例-11)】 ① ピルフェニドン(ピレスパⓇ錠 200mg:)3錠~9錠/分3 食後 2008年10月に希少疾病用医薬品として承認された本薬剤であり,特発性肺線維症の治療に精通している医師のもとで使用する警告がなされている. 初期用量として1回200mg(1日3回,計600mg)から開始し,2週間毎をめやすに1回200mgずつ漸増し,1回600mg(1日3回,計1,800mg)で維持するのが望ましい.胃腸障害の出現時には必要に応じて減量または休薬を検討する.胃腸症状軽快後は,漸増し1回400mg(1日1,200mg)以上とすることが望ましい. 副作用:半数以上に光線過敏症が認められる.その他には,食欲不振,胃部不快感,胸やけ,嘔気,倦怠感,眠気,γ-GTPの上昇がある.光線過敏症の対策には,紫外線対策が重要である. 紫外線対策:長時間の外出は控え,「日光に当たらない」,「可能な限り日光を防御 する」ことが重要.外出の際には紫外線を防御する服装をし,日焼け止めクリームを使用する. 41

【治療における留意点6)改変】 ステロイド薬と免疫抑制薬の併用療法 ステロイド薬と免疫抑制薬の併用療法は,下記の点を考慮して 各論 特発性肺線維症(IPF) 【治療における留意点6)改変】 ステロイド薬と免疫抑制薬の併用療法 ステロイド薬と免疫抑制薬の併用療法は,下記の点を考慮して 治療適応を検討する. 治療適応を考える状態 副作用のリスクが高くない 症状や画像の悪化 HRCT上蜂巣肺所見が目立たない BALF中のリンパ球増加 確定しないが膠原病が疑われる 生検所見がNSIPと紛らわしい 副作用のリスクが高い条件 70歳以上 著明な肥満 心疾患など重篤な合併症 糖尿病 骨粗鬆症 重篤な肺機能障害 画像上の広範な蜂巣肺所見 42

【IPFの治療例-21)】 ②ステロイド漸減 + 免疫抑制薬療法 ③ステロイド隔日 + 免疫抑制薬療法 PSL 0.5 mg/kg/日 +免疫抑制薬(#1,#2,#3) ↓ PSLは 2~4週毎に5mg 減量+免疫抑制薬 計 3か月後効果判定 PSL 10mg/日 あるいは20mg/隔日 +免疫抑制薬 PSL 20mg/隔日 +免疫抑制薬(#1,#2,#3) ↓ 減量せず 上記を継続 計 3か月後効果判定 同量で維持 #1 アザチオプリン 2~3 mg/kg/日 #2 シクロホスファミド 1~2mg/kg/日 #3 シクロスポリン 3.0mg/kg/日~ 43

【治療効果判定基準1)】 治療開始後3~6か月後に評価する 各論 特発性肺線維症(IPF) 改善:以下の3項目のうち2項目以上を満たす場合 症状の改善: 特に呼吸困難,あるいは咳嗽 画像所見の改善: 胸部X線あるいはHRCTでの陰影の減少 呼吸機能の改善(以下の2項目以上) TLCあるいはVCの10%以上の改善(あるいは200mL以上の改善)✻ DLCOの15%以上の改善(あるいは3mL/分/mmHg以上の改善) 運動負荷試験時の酸素飽和度4%以上,あるいはPaO2 4mmHg以上の改善あるいは正常化 安定:以下の3項目のうち2項目以上を満たす場合(6か月後に評価) TLCあるいは肺活量VCの変化10%未満,あるいは200mL未満✻ DLCOの15%未満,あるいは3mL/分/mmHg未満 運動負荷試験時の酸素飽和度の変化4%未満,あるいはPaO2 の変化4mmHg未満 悪化:以下の3項目のうち2項目以上を満たす場合(6か月後に評価) 症状の悪化: 特に呼吸困難,あるいは咳嗽 画像所見の悪化(特に蜂巣肺への進行)あるいは肺高血圧の徴候 呼吸機能の悪化(以下の2項目以上) TLCあるいはVCの10%以上の悪化,あるいは200mL以上の悪化✻ DLCOの15%以上の悪化,あるいは3mL/分/mmHg以上の悪化 安静時あるいは運動負荷時の酸素飽和度の4%以上,あるいはPaO2 4mmHg以上の悪化 ✻:予後推定に有効と報告されている. 44

非特異性間質性肺炎 Nonspecific interstitial pneumonia : NSIP 各論 非特異性間質性肺炎 Nonspecific interstitial pneumonia : NSIP 45

種々の程度の間質のinflammationとfibrosis Group1~3あるいはcellular,fibroticなどの分類あり 各論 非特異性間質性肺炎(NSIP) UIP, OP (器質化肺炎), DAD (びまん性肺胞傷害)などの既存の組織所見に分類できない疾患群の検討から明らかとなり,最近,独立した疾患概念と認定された1,7). 病理所見 種々の程度の間質のinflammationとfibrosis Group1~3あるいはcellular,fibroticなどの分類あり ただし,病理学的な時相は均一(temporal uniformity)でUIPとは区別される 平均年齢は40~50歳代で,男女比はほぼ同数 臨床症状 数か月にわたる咳,呼吸困難 身体所見 ばち指は稀.稔髪音を認める 胸部X線 両側性の間質性陰影,多くは下肺野主体 予後 5年生存率80%程度と,IPFと比べ予後良好 (予後は線維化の程度に依存) 原因 定義上原因不明.種々の病因が関与? (膠原病,有機粉塵の吸入,先行する急性肺傷害) 病理診断でもUIP,OP,DADなどと鑑別困難な場合あり 46

【胸部X線所見】 分布はIPFと同様に両側下肺野背側に優位. 各論 非特異性間質性肺炎(NSIP) 【胸部X線所見】 分布はIPFと同様に両側下肺野背側に優位. 陰影は,IPFと異なり網状陰影ではなく,すりガラス陰影から浸潤影を示す場合が多い. 容積減少を伴うことが多い. 蜂巣肺は ,陰影は均一な 印象. 稀 両下肺野主体にすりガラス状陰影を認める 47

【HRCT所見】 両側・下肺野主体のすりガラス陰影~濃い浸潤影, 網状陰影 各論 非特異性間質性肺炎(NSIP) 【HRCT所見】 両側・下肺野主体のすりガラス陰影~濃い浸潤影, 網状陰影 病変は気管支血管束に沿って,あるいは,びまん性に分布する場合が多い 牽引性気管支拡張(traction bronchiectasis)は,fibrotic NSIPではよく みられる所見 一般的に蜂巣肺は . 牽引性気管支拡張 稀 48

【cellular NSIPの病理像】 A B 小葉内には一様に細胞浸潤と軽度の線維化病変が観察される. 拡大像で,肺胞壁にはリンパ球主体の細胞浸潤,軽度の線維化,肺胞上皮の再生像を認める.一部に幼若なポリープ型腔内線維化(*)もみられる. (日本呼吸器学会びまん性肺疾患 診断・治療ガイドライン作成委員会(編):特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き.南江堂,東京,2005.より許可を得て転載) 49

【fibrotic NSIPの病理像】 A B 小葉内には一様に細胞浸潤と中等度から高度の線維化病変が観察される. ときに顕微鏡単位の小型の嚢胞性変化,蜂巣肺(*)がみられる.一部は細気管支化した上皮に覆われている.UIPと比べ,細気管支化した上皮や平滑筋の増生は乏しい. (日本呼吸器学会びまん性肺疾患 診断・治療ガイドライン作成委員会(編):特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き.南江堂,東京,2005.より許可を得て転載) 50

【NSIPの治療例1)】 cellular なら①, fibrotic なら②,③を基本とする ①ステロイド単独療法 ②ステロイド漸減 + 免疫抑制薬療法 ③ステロイド隔日 + 免疫抑制薬療法  PSL 0.5~1mg/kg/日 ↓ PSLは 2~4週毎に5mg減量 1か月毎に効果判定 病状改善すれば治療終了 PSL 0.5 mg/kg/日 +免疫抑制薬(#1,#2,#3) ↓ PSLは 2~4週毎に5mg減量   +免疫抑制薬 計 3か月後効果判定 PSL 10mg/日 あるいは20mg/隔日 +免疫抑制薬  PSL 20mg/隔日 +免疫抑制薬(#1,#2,#3) ↓ 減量せず 上記を継続 計 3か月後効果判定 同量で維持 治療反応性が不良であれば ②,③へ変更 #1 アザチオプリン 2~3 mg/kg/日,#2 シクロホスファミド 1~2mg/kg/日,#3 シクロスポリン 3.0mg/kg/日~ 51

急性間質性肺炎 Acute interstitial pneumonia : AIP 各論 急性間質性肺炎 Acute interstitial pneumonia : AIP 52

AIPは 従来のHamman-Rich syndromeと同一疾患である 臨床像は? : 原因不明のALI/ARDS ALI : acute lung injury ARDS : acute respiratory distress syndrome 病理所見は? : びまん性肺胞傷害の器質化期 (organizing diffuse alveolar damage: organizing DAD) 身体所見は? : ばち指は認めない.捻髪音を認める. AIPは 従来のHamman-Rich syndromeと同一疾患である 53

【ALI/ARDSの定義】 ALI / ARDSには通常 が存在する 誘因 acute onset chest X-P: 両側浸潤影 各論 急性間質性肺炎(AIP) 【ALI/ARDSの定義】 acute onset chest X-P: 両側浸潤影 Ppaw: ≦ 18 mmHg あるいは左心房圧上昇の臨床所見を呈しない oxygenation: PaO2/FIO2 ≦ 300 : ALI PaO2/FIO2 ≦ 200 : ARDS ALI / ARDSには通常    が存在する 誘因 直接傷害 胃内容物の誤嚥 肺挫傷 中毒ガス吸入 溺水 重症肺感染症 再灌流性肺傷害 間接傷害 severe sepsis hypovolemic shock 重症外傷 大量輸血 薬物中毒 心臓バイパス手術後 54

種々の検査で,ARDS/ALIをきたす疾患の除外が必要 各論 急性間質性肺炎(AIP) 胸部X線 ガス交換障害 両側性のすりガラス影・浸潤影 通常PaO2/ FIO2<300 除外診断 種々の検査で,ARDS/ALIをきたす疾患の除外が必要 外科的肺生検 organizing DAD 胸部HRCT 両側性のすりガラス影・浸潤影 55

各論 特発性肺線維症の急性増悪 56

【診断基準1)】 IPFの経過中に, 以内の経過で, 呼吸困難の増強 HRCT所見で蜂巣肺所見+新たに生じた , 各論 特発性肺線維症の急性増悪 【診断基準1)】 IPFの経過中に,    以内の経過で, 呼吸困難の増強 HRCT所見で蜂巣肺所見+新たに生じた                , 動脈血酸素分圧の有意な低下(同一条件下でPaO2 10mmHg以上) のすべてがみられる場合を「急性増悪」とする. 明らかな       ,気胸,悪性腫瘍,肺塞栓や心不全を除外する. 参考所見: (1) CRP,LDHの上昇 (2) KL-6,SP-A,SP-Dなどの上昇 病理所見: IPFの急性増悪時の外科的肺生検の報告では一般に UIP+DADを示す. 1か月 すりガラス陰影・浸潤影 肺感染症 57

各論 特発性肺線維症の急性増悪 【IPFの急性増悪(胸部X線所見)】 急性増悪前 急性増悪後 58

各論 特発性肺線維症の急性増悪 【IPFの急性増悪(HRCT所見)】 すりガラス陰影 急性増悪前 蜂巣肺 急性増悪後 59

安定期の治療(例:IPFの治療),あるいは,治療終了へ 各論 特発性肺線維症の急性増悪 【AIPあるいはIPFの急性増悪の治療例1)】 ①ステロイドパルス療法 ②ステロイド持続静注法  メチルプレドニゾロン(mPSL)1,000mg/日,  3日間,点滴静注  反応をみながら1週毎に繰り返す(1~4回)  メチルプレドニゾロン2 mg/kg/日,2週,  →1 mg/kg/日,1週  →0.5mg/kg/日,1週 安定期の治療(例:IPFの治療),あるいは,治療終了へ 1) ①の場合,パルス療法非施行日にプレドニン60mg/日の経口投与を併用してもよい. 2) ①,②の治療共に免疫抑制薬(#1,#2,#3)をはじめから併用してもよい. 3) 反応性が乏しい場合,シクロホスファミドパルス療法( 500mg/日,1~2週毎静注)を 試みてよい. #1 アザチオプリン 2~3 mg/kg/日 #2 シクロホスファミド 1~2mg/kg/日 #3 シクロスポリン 3.0mg/kg/日~ 60

特発性器質化肺炎 Cryptogenic organizing pneumonia : COP 各論 特発性器質化肺炎 Cryptogenic organizing pneumonia : COP 61

急性から の経過で,発症時は両側性の と 診断され抗生物質を投与されるが,効果のない症例として発見される場合が多い. 各論 特発性器質化肺炎(COP) COPは従来の特発性BOOP (bronchiolitis obliterans organizing pneumonia) と同じ疾患 臨床像は? 急性から     の経過で,発症時は両側性の        と 診断され抗生物質を投与されるが,効果のない症例として発見される場合が多い.   , , , といった全身症状が認められる 場合が多い. 亜急性 細菌性肺炎 体重減少 発汗 発熱 筋肉痛 身体所見は? 胸部聴診上は     を聴取する. ばち指は      . 捻髪音 認めない 62

【COPの画像所見】 HRCTでは, を伴う濃い濃度上昇域を,胸膜直下や気管支血管束主体に認める. air-bronchogram 胸部X線上,両側性の     を 呈し,陰影が    することがある. 浸潤影 移動 63

【COPの組織所見】 A B 主に小葉の中心領域の肺胞腔内にポリープ型腔内線維化,肺胞壁のリンパ球浸潤を認める. 中拡大でみるとポリープ型腔内線維化巣(*),肺胞壁のリンパ球浸潤,肺胞腔内の泡沫状マクロファージ(矢頭)が認められる. (日本呼吸器学会びまん性肺疾患 診断・治療ガイドライン作成委員会(編):特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き.南江堂,東京,2005.より許可を得て転載) 64

確定診断には,外科的肺生検による病理組織学的所見の確認が必要. 各論 特発性器質化肺炎(COP) BALF所見は? : リンパ球増加,CD4/8の低下. 診断は? : 確定診断には,外科的肺生検による病理組織学的所見の確認が必要. ただし,特徴的な臨床所見,検査所見に加えてTBLBにて の所見が認められれば, 臨床的にCOPと診断してよい. 器質化肺炎 注意点! : TBLBでの器質化肺炎の所見は,COP以外にも, , , , などでも認める. 他のタイプの間質性肺炎 結核などの感染症 肺癌の周囲 Wegener肉芽腫症 65

ステロイド治療に反応不良の場合,免疫抑制薬(#1,#2,#3)を併用してもよい. 各論 特発性器質化肺炎(COP) 【COPの治療1)】 治療反応性は? : 一般にステロイド薬への治療反応性良好 ①ステロイド単独療法 ② 呼吸不全を伴う場合 PSL 0.5~1.0 mg/kg/日 4~8週 ↓ 以後2~4週毎に5mgずつ減量 (a)ステロイドパルス療法 (b)ステロイド持続静注法 (IPF急性増悪の項参照) ステロイド治療に反応不良の場合,免疫抑制薬(#1,#2,#3)を併用してもよい. #1 アザチオプリン 2~3 mg/kg/日 #2 シクロホスファミド 1~2mg/kg/日 #3 シクロスポリン  3.0mg/kg/日~ 66

参考文献 67

参考文献 日本呼吸器学会びまん性肺疾患 診断・治療ガイドライン作成委員会(編):特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き.南江堂,東京,2005. Katzenstein AL et al: Idiopathic pulmonary fibrosis: clinical relevance of pathologic classification. Am J Respir Crit Care Med 1988; 157:1301-15. Bjoraker JA et al : Prognostic significance of histopathologic subsets in idiopathic pulmonary fibrosis. Am J Respir Crit Care Med 1998; 157:199-203. 千田金吾ほか:本邦における特発性間質性肺炎(Iips)の実際.厚生科学研究特定疾患対策研究事業びまん性肺疾患研究班 平成13年度報告書.2002,106-8. King TE Jr et al: Idiopathic pulmonary fibrosis: relationship between histopathologic features and mortality. Am J Respir Crit Care Med 2001; 164:1025-32. American Thoracic Society: ATS/ERS International Multidisciplinary Consensus Classification of the Idiopathic Interstitial Pneumonias. Am J Respir Crit Care Med 2002; 165:277–304. Travis WD et al: Idiopathic nonspecific interstitial pneumonia : report of an American Thoracic Society project. Am J Respir Crit Care Med 2008; 177:1338-47.

《補遺》 IPFの治療 特発性間質性肺炎診断と治療の手引き 改訂第2版(2011年3月発行)より主な追加分 69

背景 肺活量の低下を抑制し,無増悪生存期間を延長することが 報告されている. 《補遺》IPFの治療 【ピルフェニドン】 (本文40~41頁参照) 背景 肺活量の低下を抑制し,無増悪生存期間を延長することが 報告されている. 投薬方法 200mg×3回/日から開始する. 400~600mg×3回/日まで増量,継続する. 有害事象 光線過敏症(約50%),消化器症状(約30%) 有効性と有害事象のバランスをみながら治療する必要がある. 70

【N-アセチルシステイン (N-acetylcysteine:NAC)吸入療法】 《補遺》IPFの治療 【N-アセチルシステイン (N-acetylcysteine:NAC)吸入療法】 背景 欧州を中心としたNAC経口薬の臨床試験結果から,VC,DLCO の低下抑制が期待される.わが国では吸入療法のみ入手可 能であるが保険適用外である. 投薬方法 NAC(ムコフィリンⓇ液)1アンプルを生理食塩水2~6mLで 希釈し,ネブライザーにて1日2回(1回の所要時間約20分) 吸入が推奨される.生理食塩水の量は適宜調節する. 有害事象 吸入時の刺激症状以外はとくに報告されていない. 71

《補遺》 気腫合併肺線維症 特発性間質性肺炎診断と治療の手引き 改訂第2版(2011年3月発行)より主な追加分 72

【気腫合併肺線維症 (combined pulmonary fibrosis and emphysema:CPFE)】 《補遺》気腫合併肺線維症 【気腫合併肺線維症 (combined pulmonary fibrosis and emphysema:CPFE)】 上葉の気腫性変化と下葉の線維化を伴った病態 喫煙歴のある男性に多い 呼吸機能検査ではVCがしばしば正常ないし正常下限 DLCOが低下しており運動時の低酸素が著明 HRCTで上肺野に小葉中心型肺気腫病変,下肺野に線維化病変 肺高血圧の合併が多い 肺がんを合併しやすい 73