日本における中規模以上の地震発生タイミングの 衛星画像からの把握について

Slides:



Advertisements
Similar presentations
2004 年新潟県中越地震と スマトラ沖巨大地震の 震源で何が起こったのか? 八木勇治 (建築研究所・国際地震工学セン ター)
Advertisements

防災部会 平成23年度前期総会. The table of contents 1 東日本大震災概要(寺林) 2 被災地現状(下山 SV) 3 トンガでの影響(工藤)
地下天気図 ー RTM 法および関連する技術ー 東海大学 地震予知研究センター 長尾年恭 東海大学 地震予知研究センター 長尾年恭
1 大地形 ( 1 ) 日本は4枚のプレートの会合する【 】境界 」付近に 形成された【 】列島 【 】プレート ・【 】プ レート(海洋プレート) 【 】プレート ・【 】プレー ト(大陸プレート) 狭まる 弧状 太平洋 フィリピン海 ユーラシア 北アメリカ.
静岡市地震災害防衛隊 新潟コンピュータ専門学校 長尾寛治. 制作動機 私は、今までに沢山の地震に遭遇してきました。 新潟県中越地震 能登半島地震 新潟県中越沖地震 岩手・宮城内陸地震 東日本大震災 地震には、 もう散々だ。 地震には、 もう散々だ。
宇宙開発事業団 (NASDA) が開発した、環境観測技術衛星「みど りⅡ」 (ADEOS- Ⅱ ) 搭載の高性能マイクロ波放射計 (AMSR) による オホーツク海の流氷 ( 海氷 ) 画像。左図は 2003 年 1 月 18 日の夜間 (20 時半頃 ) に取得されたデータによる擬似カラー合成画像。
我が国沿岸の想定高潮偏差 九州大学大学院 山城 賢 第 11 回九州地区海岸工学者の集い 平成 13 年 7 月 28 日(土)
CMIP5 気候モデルにおける ヤマセの将来変化: 海面水温変化パターンとの関係 気象研究所 気候研究部 遠藤洋和 第 11 回ヤマセ研究会 1.
下左の図が,最大1時間降水量,下右の図が,最大24時間降水量の分布を示したもの.宮川,海山,紀伊長島で異常な量の降水があったことがわかる.また,津近辺でも大きな降水量があったことがわかる.左の図の+は,AMeDAS観測点,◆は,解析に用いた県の観測点(AMeDAS欠測のため).紀伊長島の観測点が,微妙に強雨域から外れていることがわかる.そのため,あとで示す統計値が,小さく出る.
高精度画像マッチングを用いた SAR衛星画像からの地表変位推定
GLI初画像 冬の低気圧の渦 九州と東シナ海
1 地震の起こる場所 2 地震とは 3 プレートの運動の様子 4 断層の大きさとマグニチュード 5 揺れの長さ 6 マグニチュードと震度
宮城県総合教育センター 平成25年度防災教育グループ
台風22号がやって来た! 2004年10月、台風22号が静岡県に上陸しました!.
私がスイッピーです 水の災害について学ぼう 国土交通省 北海道開発局 事業振興部 防災課.
森林と雨 ~雨と人と自然の関わり~ 発表者 浅川 岳 安東 憲佑 石井 笑子 岩井 悠人.
地震の特徴と 住宅を中心とした被害の特徴 02T3066A 平井 美緒
応用編:地震波形を使って震源を決めてみよう
中央構造線断層帯の深部構造と準静的 すべりに関する測地学的推定
 防災工学 10月5日課題 02T3031H  佐藤 基志.
平成24年8月下旬~9月中旬の 北・東日本の高温について
東京大学地震研究所 地震予知研究センター 平田直
【沖縄県の地理】 沖縄の位置・地勢 日本とアジアを結ぶ沖縄県 面積は全都道府県中44位
◆災害ボランティア・リーダートレーニング◆
水の災害について学ぶ 国土交通省 北海道開発局 事業振興部 防災課.
2013年7月のヤマセについて 仙台管区気象台 須田卓夫 昨年のまとめ(赤字は研究会後の調査)
関東地震 02T3601D 荒木太郎.
バングラデシュにおける対流活動と局地風に関する研究
中越沖地震で発生した 津波のシミュレーション  環境・建設系 犬飼 直之 助教.
※今後、気象台や測候所が発表する最新の防災気象情報に留意してください。
水(?)はプレート間カップリングを 変化させるか? ー 茨城・福島沖の場合 ー 名古屋大学 山中 佳子 昨年度のシンポジウムで
GISを用いた 『日向』『日影』地名の 立地の解析
Chiba campaign MAX-DOAS(2D) day2 2017/11/22
モホロビチッチ不連続面 ――― 地殻とマントルの境界面のこと。ここで地震波の速度が大きく変化する。
長崎半島周辺における 停滞性降雨帯(諫早ライン)の 構造と発達過程に関する研究
ハザードの理解の防災への活用 ~リスクの理解と防災への活用~
反射法構造探査およびトモグラフィーによる関東地方のプレート構造と相似地震活動
地震と火山の分布と プレートテクトニクス.
一人ひとりの避難計画(前編) 資料5 それでは、一人ひとりの避難計画をつくっていきます。
太陽フレアと彩層底部加熱に関する 観測的研究
会場 国際ファッションセンター KFCホール(東京都墨田区)
流速ベクトル.
南海トラフ沿い巨大地震サイクルに おける内陸活断層の破壊応力変化
東京女子大学 現代社会学部 コミュニケーション特論C(社会) 災害情報論 第5回 東海地震・首都圏直下型地震と避難行動
資料: 報道発表資料 気象庁マグニチュード算出方法の改訂について。
地震の基礎知識.
梅雨前線に伴う沖縄島を通過した 線状降水システムの構造の変化
スラブ内地震の震源過程と強震動 神戸大学理学部  筧 楽麿.
2015 年 5 月下旬のインドの熱波について 報 道 発 表 資 料 平成 27 年 6 月 2 日 気 象 庁
2015 年5 月下旬のインドの熱波について 報道発表資料平成27 年6 月2 日気 象 庁
村上 浩(JAXA EORC) SGLI利用WG 2005/01/17
大津波は気象に 影響を与えうるのか? 気象は地震を誘発するか? 地球環境気候学研究室 B4 大西 将雅 2012年 2月14日
首都直下地震の姿と防災対策 日本地震学会 東京大学地震研究所 平田直 Workshop 14:40~16:30(110分間)
地球温暖化実験におけるヤマセ海域のSST変化- CMIP3データの解析(序報)
雲解像モデルCReSSを用いた ヤマセ時の低層雲の構造解析
地球環境気候学研究室 谷口 佳於里 指導教員:立花義裕 教授
夏季日本における前線帯の変動と その天候への影響
LANDSATデータを用いた 佐鳴湖流域の土地被覆分類と 温度分布の分析
C08011:大澤直弥 C08012:太田邦亨 C08013:大場友和 C08014:大矢英雅 C08015:岡井成樹
1891年濃尾地震について 地震概要と建物被害.
防災工学 関東大震災.
東海大学海洋研究所 地震予知研究センター 長尾年恭
2018年7月西日本豪雨広島県呉市の1時間降水量と降り始めからの積算降水量
減災サークル 2019年7月7日 災害 予知 防災 対策 復興 『気象衛星画像 地震予知』 事例.
日本における中規模以上の地震発生タイミングの衛星画像からの把握について
減災サークル 2017年6月25日 災害 予知 防災 対策 復興 『気象衛星画像 地震予知』 事例.
減災サークル 2015年6月28日 災害 予知 防災 対策 復興 『気象衛星画像』 事例.
2018年9月6日胆振地方中東部の地震 (試作版:地震発生から12時間以内の公開を想定)
VLBI観測によって求められたプレートの移動速度
◆平成10年から現在まで約60万コールのご利用!
Presentation transcript:

日本における中規模以上の地震発生タイミングの 衛星画像からの把握について 日本における中規模以上の地震発生タイミングの          衛星画像からの把握について 衛星画像に繰り返し現れる特殊な現象と地震発生の関連について 2011.3.26 湘南・IKU

序論 『宏観観測』による地震発生の予測について 序論 『宏観観測』による地震発生の予測について 我が国では、政府が「東海地震以外の地震予知は不可能」という方針で、地震予知よりも「減災」の観点からの防災対策を行っている。 このため、阪神大震災、両中越地震、今回の東日本大震災など、まったく地震を予期せずに日常生活を送っているさなかに地震災害に襲われる最悪の事態となっている。 宏観観測は、至って普通の市民が、大きな地震の接近を察知する有効な手段である。これから紹介する事例も湘南・IKUの五体とデジカメ、コンパス、そしてインターネットの掲示板、衛星画像などの一般公開情報により行ったものである。

1.はじめに 1 スマトラを含むスンダ列島、ニューギニアを含むソロモン諸島などでマグニチュード(以下Mと略)6以上の地震が発生する場合、衛星画像において震源付近に特徴的な雲の形状が出現することが多く見られる。 この形状は、①直線的な帯状の雲とそれに付随する雲の亀裂形状、②円形の雲の吹き飛ばし形状、③稲妻状の波状雲などである。これらは詳細を後述するが、震源付近に地震に先立ち前兆現象として現れるものと推測される。

1.はじめに 2 ところが日本列島とその周辺でM6以上の地震が発生する場合には、各種宏観現象の解析により、①ある一定の期間内に日本列島とその周辺でM6を超える地震が発生すること、②ある特定の位置で規模不明の地震が発生すること、の両者は予想できるものの、その①と②を結びつけて、M6以上の地震の震源位置、発生規模、発生時期を予測することは困難で、防災上、現実の避難などに結びつく予測には役立たない状態になっていた。 このため、国内に被害をもたらす地震の予測につき、防災に結びつく明瞭な前兆となる現象を探求した。

2-1 日本国内の中規模以上の地震の前兆と見られる事例 2.現在の衛星画像からの予測状況 2-1 日本国内の中規模以上の地震の前兆と見られる事例 ① 2004年9月5日 紀伊半島沖深さ10キロ、M6.9、M7.4  発生20日前の2004年8月16日の可視画像において、震源付近をほぼ東西方向に走る亀裂形状が出現した。この形状については、震源となる断層付近で  温度上昇があり、上昇気流により雲が吹き飛ばされている可能性がある。 ・図2-1 8月16日11時衛星可視画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ② 2004年10月24日 新潟県中越深さ20キロ、M6.8 発生7日前の2004年10月16日の可視画像において、震源付近を円形の形状を持つ雲が通過。この形状については、発生が近づいている震源付近を台風・低気圧が通過することにより、震源付近で発生しているピエゾ電流起因の電磁気力を受け、独特な形状を出現している可能性がある。 ・図2-2 10月16日11時衛星可視画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ③ 2005年3月20日 福岡県西方沖浅い震源、M7.0 発生前日の3月19日、震源付近から雲の吹き出し形状が現れた。この形状は、震源付近の温度上昇があり、その上昇気流により震源周囲では雲が吹き 飛ばされ、吹き飛ばしの周囲に雲が発生している可能性がある。 ・図2-3 3月19日17時衛星可視画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ④ 2006年11月15日 千島列島深さ30キロ、M7.9 (但し9月26日のM5.5から10月13日にかけてM5〜6の前駆活動あり) 前駆活動に先立つ9月3日、震源付近に境界前兆雲。同22日に稲妻状の 波状雲が出現。稲妻状の波状雲は生成要因の詳細が不明であるが、 震源の周囲に発生する。 ・図2-4 9月3日22時 衛星赤外画像、9月22日 可視画像(JAXA提供)

2.現在の衛星画像からの予測状況 ⑤ 2007年7月16日 新潟 上中越沖深さ17キロ、M6.8 発生5日前の7月11日の赤外画像において、震源付近から円弧を描く雲の立ち上がりが見られた。この形状については、2004年の中越地震で記述した雲と同様と思われる。 なお、両度の中越地震はいずれも震源付近に台風接近→急激な減衰後の発生。 ・図2-5 7月11日20時赤外画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ⑥ 2008年5月8日 茨城県沖深さ40キロ、M7.0 発生7日前の5月1日7時全球画像で震源海域を包括する雲のオメガ形状が現れた。日本付近ではあまり見られずこの事例は希である。バヌアツやニュージーランドなどの海域の中規模以上の地震の前兆として出現することが多い。震源付近からの電磁気や温度上昇に起因するものと考えられる。 この地震発生後の6月14日に岩手内陸南部M7.2が発生しており、この前兆も含んでいる可能性がある。 ・図2-6 5月1日7時全球画像(全球画像=クイックルック画像)

2.現在の衛星画像からの予測状況 ⑦ 2008年6月14日 岩手県内陸南部深さ8キロ、M7.2 発生前日の6月13日20時全球画像で震源付近を中心とする雲の円形状が現れた。日本列島やその周辺で中規模地震が発生する場合、このような巨大円形状が発生することがある。発生メカニズムは不明であるが、震源付近から上空に放出される噴水状の電磁力線が関係している可能性がある。 ・図2-7 6月13日20時全球画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ⑧ 2009年8月11日 静岡県駿河湾深さ20キロ、M6.5 発生一ヶ月前後の7月9日、10日、12日、13日に震源上空に東西の雲が連続して発生。震源付近からのピエゾ電流により、電磁力線が発生。そのビームに沿って雲が生成されるなどが考えられる。 ・図2-8 7月9日、10日、12日、13日の合成画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ⑨ 2010年2月27日 沖縄本島近海深さ10キロ、M7.2 発生14日前の2月13日13時画像で、震源付近に東西の雲の亀裂形状。 このような亀裂形状は、震源付近に出現することがある。 ・図2-9 2月13日13時赤外画像

2-2 上記事例からの予測状況 2.現在の衛星画像からの予測状況 2-2 上記事例からの予測状況  以上の事例では、直視の空、雲、光学現象などと衛星画像を併せたチェックにより、震源の位置などは指摘していたものの、規模、発生時期についてははっきりとわからず、防災の観点からは現実の役には立っていない状況だった。  ※ 予測の事例  ・2004年8月31日掲示板へ書き込み「終日、細かい鱗や漣模様を伴う東北ー西南の雲が滞空。(中略)紀伊半島沖 (ひょっとすると南西諸島)に中規模がありそう」→2004年9月5日 紀伊半島沖深さ10キロ、M6.9、M7.4  ・2004年10月16日掲示板へ書き込み「今日の衛星での北東ー南西の円弧状の雲ですが、 エッジの下での紀伊半島沖、浜名湖、北海道南部などのM4から6を疑います」→2004年10月24日 新潟県中越深さ20キロ、M6.8  ・2008年6月12日今日のレポート「【警戒】雨上がりにもかかわらず地気が濃いのには驚きました。強めの地震発生に注意を要する状況と思います。身近な宏観にご注意下さい。(中略)ほぼ南北の赤焼け雲。最近の例では北方向・岩手沖、南方向・南西諸島~フィリピンなどのM5以上が見られました」→2008年6月14日 岩手内陸南部M7.2

2-3 衛星全球画像のスマトラ上空に現れる前兆形状 2.現在の衛星画像からの予測状況 2-3 衛星全球画像のスマトラ上空に現れる前兆形状  「はじめに」で記した、衛星画像においてスマトラ島上空に現れる雲の前兆形状につき、  確認を行った43事例のうち、代表的な事例を記載する。

2-3 衛星全球画像のスマトラ上空に現れる前兆形状 2.現在の衛星画像からの予測状況 2-3 衛星全球画像のスマトラ上空に現れる前兆形状 ① 2004年7月25日 インドネシアのスマトラ南部深さ575キロ、7.2M   発生10日前の7月15日21時全球画像で、震源付近を指向する雲の直線的な  亀裂形状。神奈川上空では遠方の強い震源を示す、入り乱れた雲の   状況が見られた。 ・図2-10 7月15日  21時全球画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ② 2004年12月26日 インドネシアのスマトラ北部西沖深さ10キロ、M9.0 発生前日の12月25日12時全球画像で、震源付近を指向する雲の直線的な 亀裂形状。神奈川上空では海外遠方の強い震源を示す、鈎型巻雲、 ムカデ形状の雲、入り乱れた雲の状況が見られた。 この衛星画像の形状と翌日の地震発生、および、③の8.7Mの事例が以後の スマトラの地震前兆のヒントとなる。 ・図2-11 12月25日  12時全球画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ③ 2005年3月29日 インドネシアのスマトラ北部深さ30キロ、8.7M 発生7日前の2005年3月22日12時全球画像で、震源付近に雲の亀裂形状。 神奈川上空では遠方の強い震源を示す、鈎型巻雲の整列が見られた。 鈎型巻雲の整列はスマトラなどの巨大地震の前兆として出現する。 ・図2-12 3月3日  22時全球画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ④ 2005年7月25日 インドシナ半島付近浅い、M7.3 発生5日前の2005年7月20日9時全球画像で、震源付近に雲の直線形状。 神奈川上空では、方向性の乱れた微細な鱗雲が見られた。この微細な 鱗雲は、2004年12月のスマトラM9.1地震の前にも非常に面積の広い 同種の雲が出現した。 ・図2-13 7月20日  9時全球画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ⑤ 2007年9月12日 インドネシアのスマトラ南部深さ16キロ、7.9M 発生4日前の9月8日0時全球画像で、震源付近に雲の吹き飛ばし形状。 神奈川上空では、方向性の乱れた細かい模様を持つ雲が見られた。 ・図2-14 9月8日  0時全球画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ⑥ 2008年2月20日 インドネシアのスマトラ北部西沖シムルエ深さ34キロ、 7.5M 発生2日前の、2月18日8時、20時全球画像で、震源付近に雲の亀裂形状。 2月18日のレポート「8時可視画像。スマトラ島上空に雲の亀裂」 「20時全球画像では、P.N.Gからスマトラ島にかけて、長大な雲の亀裂」 神奈川上空では、方向性の乱れた雲が見られた。 ・図2-15 2月14日  3時全球画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ⑦ 2008年2月25日 インドネシアのスマトラの西のメンタワイ深さ35キロ、 7.0M(前日に6.4Mも発生) 発生2日前の2月23日22時全球画像で、震源付近に雲の亀裂形状。 2月23日のレポート「P.N.Gからスマトラ中部へうっすらとしたカット ラインが出ています」神奈川上空では、方向性の乱れた鈎型巻雲が 見られた。 ・図2-16 2月23日  22時全球画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ⑧ 2009年9月2日 インドネシア付近 M7.1 発生5日前の8月27日20時全球画像で、震源付近に雲の亀裂形状。 8月27日のレポートで「夕方以降の全球画像、インドシナ半島・ スマトラ・ベンガル湾・中国西部などの広い範囲に前兆形状が見られ ました。M6から7と思われるもの」神奈川上空では、方向性の乱れた 雲が見られた。 ・図2-17 8月27日  20時全球画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ⑨ 2010年5月9日 インドネシアのスマトラ北部深さ45キロ、7.2M 発生7日前の4月23日13時全球画像で、震源付近に雲の直線的な形状。 4月23日のレポートで「インドシナ半島からスマトラ上空に南北の雲の 亀裂ライン」。神奈川上空では、細かい模様を持つ、櫛の歯状の雲が 見られた。 2005年3月の雲の形状に類似している。 ・図2-18 4月23日  13時全球画像

2.現在の衛星画像からの予測状況 ⑩ 2010年10月25日 インドネシアのスマトラの西のメンタワイ深さ23キロ、 7.7M(翌日にも6.1M、6.2M) 発生2日前の10月23日8時全球画像で、震源付近に雲の直線亀裂形状。 10月23日レポートで「インドシナ半島の北からスマトラ中部に雲のカット ラインが走っている」神奈川上空では、方向性の乱れた微細な鱗雲が 見られた。 ・図2-19 10月23日  8時全球画像

2-4 スマトラ上空の前兆について 2.現在の衛星画像からの予測状況 2-4 スマトラ上空の前兆について   2004年12月26日のスマトラM9.0の前兆以降、スマトラでの中規模以上の地震については、衛星画像において同島の上空に複数回の前兆が出現することがわかり始めた。   形状については比較的明瞭なもので、日本列島とその周辺の地震前兆の複雑さ、不明瞭さと比べると対照的なものがある。これは、スンダ海溝がスマトラ島西沖をほぼ一直線に走っている単純な形状であり、日本列島の複雑な形状とは異なるためと推測される。   日本列島とその周辺の地震前兆についても、このように明瞭なものがないか、探索する必要性がある。

3.前兆の調査対象 3-1 対象地域 千島列島を含む日本列島および台湾の地震 3-2 使用衛星画像 ① 日本付近 赤外画像・可視画像 ② 全域 全球画像 画像は、高知大学気象情報頁、気象庁・気象衛星画像を使用した。 3-3 気象条件 気象条件は考慮せず、雲の量、形状と後続の地震発生を対象とする。 3-4 調査期間 2000年から2010年末までの期間とする。

4.調査結果 4-1 空の前兆  中規模以上の地震発生前には、エアロゾルによる光学現象、幾何学的な形状を示す雲など、特徴的な状況が現れる。特に中規模以上の地震の場合、当地からの震源の方位にかかわらず東西方向基調の帯雲などが出現するが、海外の強い地震の前にも出現するため、中規模以上の地震発生の目安にはなるものの震源位置、発生規模、発生時期を特定できるものではなかった。 ・図4-1 2006年 11月10日、東西基調の雲。 5日後の11月15日発生の千島列島M7.9 の前兆雲 今日のレポート「大型の被害地震発生を警戒すべき状況となりました。(中略)M7超級の前兆が姿を現しているのかも知れません。(中略)過去例より千島・北海道・東北および南九州・南西諸島・台湾のM6級、最悪M7級」

4.調査結果 ① 中越地震、中越沖地震などの前兆として、2-1で前述したように、低気圧、台風の雲の北縁が明瞭な円弧、或いは直線形状となり、震源上空を通過する状況が見られた。この形状は、北海道、東北地方周辺の地震発生の前に現れることがあるが、すべての中規模以上の地震の前に出現することはなかった。 ・図4-2 2004年10月16日、2007年7月11日。両中越地震7日前の雲

4.調査結果 ② 千島、台湾周辺の中規模以上の地震の前に、太平洋岸から沖にかけ、主として東北東—西南西の帯状の長大な雲が出現することがあるが、規模の推測はつくものの、震源位置、発生時期の特定はできない。 ・図4-3 2007年1月10日、東北東—西南西の帯状の長大な雲。 3日後発生の1月13日・北西太平洋M7.7の前兆雲

4.調査結果 ③ 岩手内陸地震などの前に、2-1で前述したように、震源を円の円周付近 として巨大な雲の円形状が出現することがあり、震源位置、発生規模、 発生時期の推測はできるものの、推測の域を出ない。 ・図4-4 2010年5月14日17時全球画像。    12日後、5月26日・南大東島近海M6.1

4-2 衛星画像の前兆 4-3 調査結果のまとめ 4.調査結果 ④ その他、震源付近に亀裂、吹き飛ばしなどの現象が出現するが、震源が 4-2 衛星画像の前兆 ④ その他、震源付近に亀裂、吹き飛ばしなどの現象が出現するが、震源が  存在することはわかっても、中規模以上の地震の震源規模、発生時期の  特定はできない。 4-3 調査結果のまとめ  以上より、目視での空や雲の状況と衛星画像での情報(と他の観測者の  情報も含め)を総合し、過去の発生時の前兆現象と照合し、地震の発生に  つき、ある程度の推測を導き出すことは可能であるが、防災に役立つ程度の  正確な予測については難しい状況と言わざるを得ない。

5-1 北米・中米・南米西岸の中規模以上の地震前兆 5.さらなる状況調査 5-1 北米・中米・南米西岸の中規模以上の地震前兆  この難しい状況を受けて、さらに確実な予測につながる前兆現象を調査した。  衛星全球画像において、北米から南米大陸の西岸で中規模以上の地震が発生する場合の調査を行ったところ、日本列島から南東方向の海域に東北東—西南西の帯状の雲が梯子状に出現するらしいことが判明した。  大規模地震11例中、代表的な8事例の状況を以下に記す。

5-2 北米・中米・南米西岸の中規模以上の地震前兆の例 5.さらなる状況調査 5-2 北米・中米・南米西岸の中規模以上の地震前兆の例 ① 2004年11月15日 コロンビア西部深さ10キロ、7.0M   発生1日前の11月14日4時全球画像で、太平洋東部に3段の帯状の雲。 ・図5-1 11月14日  4時全球画像

5.さらなる状況調査 ② 2005年6月14日 南米西部深さ110キロ、M7.9 2005年6月15日 米国西部カリフォルニア北部沖深さ10キロ、7.0M 発生4日前の6月10日12時全球画像で、太平洋東部に3段の帯状の雲。 発生前日の6月13日9時全球画像で、日本列島南側に長大な東北東— 西南西の帯状の雲と、その南側に雲の吹き飛ばし形状。 ・図5-2 6月10日  12時全球画像

5.さらなる状況調査 ③ 2005年9月26日 ペルー北部深さ85キロ、7.5M 発生19日前の2005年9月7日12時全球画像で、太平洋東部に3段の 帯状の雲。 ・図5-3 9月7日  12時全球画像

5.さらなる状況調査 ④ 2007年8月16日 ペルー中部深さ41キロ、7.8M 2007年8月16日 ペルー中部深さ178キロ、7.5M 発生11日前の2007年8月5日12時全球画像で、太平洋東部に3段の帯状の雲。 ・図5-4 8月5日  12時全球画像

5.さらなる状況調査 ⑤ 2007年11月15日 チリ北部深さ60キロ、7.7M 発生8日前の2007年11月7日12時全球画像で、太平洋東部に3段の帯状の雲。 ・図5-5 11月7日  12時全球画像

5.さらなる状況調査 ⑥ 2009年5月28日 ホンジュラス沖深さ10キロ、7.1M 発生7日前の2009年5月21日12時全球画像で、太平洋東部に2段の帯状の雲。 ・図5-6 5月21日  12時全球画像

5.さらなる状況調査 ⑦ 2010年2月27日 チリ中部沖深さ35キロ、8.8M 発生7日前の2010年2月20日18時全球画像で、日本列島南側に長大な 東北東—西南西の帯状の雲と、その南側に雲の吹き飛ばし形状。段状の 帯雲の変形と考えられる。 ・図5-7 2月20日  18時全球画像

5.さらなる状況調査 ⑧ 2010年4月5日 メキシコ北西部深さ10キロ、7.0M 発生2日前の2010年4月3日4時全球画像で、日本列島南側に長大な 東北東—西南西の帯状の雲と、その南側に雲の吹き飛ばし形状。 ・図5-8 4月3日  4時全球画像

5-3 北米・中米・南米西岸の地震前兆の考察 5.さらなる状況調査 5-3 北米・中米・南米西岸の地震前兆の考察  以上の状況より、北米・中米・南米西岸の中規模以上の地震前兆について、日本列島のはるか東から南沖にあたる太平洋東部に前兆が出ていることが 考えられる。

6-1 オーストラリア大陸とその周辺の雲の形状調査 6.全球画像からの全域的な調査 上記の状況から翻って、日本列島とその周辺の前兆が、全球画像のどこかに出現している可能性があり、その視点から調査を行う。 6-1 オーストラリア大陸とその周辺の雲の形状調査  日本列島とその周辺でM6以上の地震が発生する場合、オーストラリア大陸  (以下、豪大陸と省略)とその周辺の雲の形状に特有な変遷が見られるこ  とが判明した。  現象としては次の過程を経過する。  a・豪大陸の南西海域のインド洋に主として南東—北西の長大な雲が出現する。   (以下、横線前兆と呼称)  b・この雲の形状が崩れ始めて消えて行く。  c・豪大陸の上空から南の沖にかけて南北方向を基調とする雲が複数出現    する。   (以下、縦線前兆と呼称)  d・日本列島およびその周辺で当日〜1週間以内に、中規模以上の地震が    発生する。  この経過につき、関係地震203例にて調査を実施したが、この中から典型的 な事例を後述する。(一部、逆転する場合がある)

6-2 代表事例 6.全球画像からの全域的な調査 ① 2004年10月15日 与那国島近海深さ90キロ、M6.6 6-2 代表事例 ① 2004年10月15日 与那国島近海深さ90キロ、M6.6  事例としては、明瞭な事例ではないが、豪大陸南西側にやや長い雲が見られ、11日は少し成長。12日に薄れ、13日には、南西諸島・台湾方面の前兆であることを示す、豪大陸内陸を南東—北西に貫いて走る内陸雲が出現し、発生に至る。  a・10月10日 横線前兆出現  b・10月12日 横線前兆薄れる  c・10月13日 縦線前兆出現  d・10月15日 地震発生    c〜dの経過時間 52時間

6.全球画像からの全域的な調査 ② 2005年3月6日 台湾付近深さ 40キロ、M6.4 やや明瞭な事例。最初から南西諸島・台湾方面の前兆であることを示す、豪大陸内陸を南東—北西に走る内陸雲が見られる。豪大陸西沖に大きめの雲が出現。3日には薄れていき、4日には明瞭さを欠くが、豪大陸東に南北の雲が現れ、発生に至る。 a・3月1日 横線前兆出現 b・3月3日 横線前兆薄れる c・3月4日 縦線前兆出現(画像は3月5日を使用) d・3月6日 地震発生 c〜dの経過時間 51時間

6.全球画像からの全域的な調査 ③ 2005年8月31日 宮城県の東 の三陸沖浅い、M6.2 やや明瞭な事例だが、bとcの逆転が見られる。豪大陸南西に典型的な長大な雲が出現。26日には豪大陸の南側に南北の雲が出現している。 a・8月22日 横線前兆出現 b・8月27日 横線前兆薄れる c・8月26日 縦線前兆出現(画像は8月29日を使用) d・8月31日 地震発生 c〜dの経過時間 107時間

6.全球画像からの全域的な調査 ④ 2006年2月17日 父島近海 深さ210キロ、M6.0 やや明瞭さを欠く事例。11日に豪大陸の南西に雲が出るが、豪大陸の南側には先行のM5程度の震源の発生前形状の混交が見られる。 a・2月11日 横線前兆出現 b・2月15日 横線前兆薄れる c・2月16日 縦線前兆出現 d・2月17日 地震発生 c〜dの経過時間 31時間

6.全球画像からの全域的な調査 ⑤ 2007年7月16日 新潟県上中 越沖深さ17キロ、M6.8 ほぼ典型的な事例。9日に豪大陸の南西に雲が出現。12日に至って崩れ始め、15日には豪大陸南沖の南北基調の雲となる。 a・7月8日 横線前兆出現(画像は7月9日を使用) b・7月12日 横線前兆薄れる c・7月15日 縦線前兆出現 d・7月16日 地震発生 c〜dの経過時間 17時間

6.全球画像からの全域的な調査 ⑥ 2008年3月15日 父島近海 浅い、M6.3 a・3月9日 横線前兆出現(画像は3月11日を使用) b・3月12日 横線前兆薄れる(画像は3月13日を使用) c・3月14日 縦線前兆出現 d・3月15日 地震発生 c〜dの経過時間 27時間

6.全球画像からの全域的な調査 ⑦ 2008年5月19日 日本海北部 深さ590キロ、M6.3 19日の豪大陸南沖の南北雲出現時には、南西側に26日・択捉M5.1の前兆が出現している。 a・5月15日 横線前兆出現(画像は5月16日を使用) b・5月18日 横線前兆薄れる c・5月16日 縦線前兆出現 d・5月19日 地震発生 c〜dの経過時間 45時間

6.全球画像からの全域的な調査 ⑧ 2008年6月14日 岩手県内陸 南部深さ8キロ、M7.2 横線前兆、縦線前兆とも大 きく出ている状況が見られ た。(M7級のためか?) 典型的な事例。 a・6月3日 横線前兆出現 b・6月9日 横線前兆薄れる c・6月10日 縦線前兆出現 d・6月14日 地震発生 c〜dの経過時間 96時間

6.全球画像からの全域的な調査 ⑨ 2008年9月11日 十勝沖深さ 20キロ、M7.0 これもM7級のためか、横線 前兆、縦線前兆ともやや 大きく出ている状況が見ら れた。 a・9月4日 横線前兆出現 b・9月7日 横線前兆薄れる c・9月10日 縦線前兆出現 d・9月11日 地震発生 c〜dの経過時間 17時間

6.全球画像からの全域的な調査 ⑩ 2009年2月15日 与那国島 近海深さ90キロ、M6.6 a・2月10日 横線前兆出現(画像は2月12日を使用) b・2月14日 横線前兆薄れる c・2月14日 縦線前兆出現(画像は2月15日を使用) d・2月15日 地震発生 c〜dの経過時間 27時間

6.全球画像からの全域的な調査 ※ 2011年3月9日 三陸沖 深さ10キロ、M7.3 2011年3月11日 三陸沖 深さ10キロ、M9.0 a・2月19日 横線前兆出現(画像は2月21日を使用) b・2月27日 横線前兆薄れる c・3月1日 縦線前兆出現 d・3月9日 地震発生 c〜dの経過時間 8日間 (3月9日、M7.3発生後、短いサイクルでa〜cらしい形状が見られた)

6.全球画像からの全域的な調査 6-3 考 察 ① 上記に代表事例を記したが、実際には日本列島自体が地震活動の活発な  時期にはいっているため、M5〜7程度の地震が、短い時間の間で発生して  いるケースが多く、前兆が輻輳し、a〜cの過程が明瞭でないケースも  複数見られた。   以下に、明瞭であったケースの詳細について記す。 ② 横線出現から地震発生までが明瞭な114事例につき、発生までの日数の  平均は6日、最大値で15.2日となり、これは、従来の方法に比べて  中規模以上の地震の発生につきタイミングを充分つかめる日数と考える。 ③ また、縦線前兆出現から地震発生までは、明瞭な106事例につき、日数の  平均2.2日、最大値で6.3日で、こちらも地震発生のタイミングをつかめる  日数と考える。

7.まとめ 以上より、今回の雲の形状サイクルの発見により中規模以上の地震発生 タイミングにつき、かなり正確に把握することが出来るものと判断する。 この過程が発生するメカニズムとしては、 a インドプレートにかかる気象的な気圧変化が太平洋プレートに 伝播して地震のトリガーとなっている b 日本付近の地震発生前のプレートストレスが、インドプレートに 伝播している ・・・等のケースが考えられる。 今回の発見においても、国内中規模以上の発生位置については、不明確さが残るが、さらに今後のデータの蓄積により、このサイクルの雲の形状、出現位置から、ある程度の震源位置が判明する可能性はあると考えられる。

7.まとめ 以上より、今回の雲の形状サイクルの発見により中規模以上の地震発生 タイミングにつき、かなり正確に把握することが出来るものと判断する。 この過程が発生するメカニズムとしては、 a インドプレートにかかる気象的な気圧変化が太平洋プレートに 伝播して地震のトリガーとなっている b 日本付近の地震発生前のプレートストレスが、インドプレートに 伝播している ・・・等のケースが考えられる。 今回の発見においても、国内中規模以上の発生位置については、不明確さが残るが、さらに今後のデータの蓄積により、このサイクルの雲の形状、出現位置から、ある程度の震源位置が判明する可能性はあると考えられる。