時系列データの季節調整 経済データ解析 2008年度
(経済)データの種類 時系列データ クロスセクションデータ データを時間の順序に並べたもの 将来の予測などに用いる ⇒ (例)2030年の山口県の人口は? データの発生間隔により、年次データ、四半期データ、月次データなどがある ※ 四半期データ - 1年を1月~3月、4月~6月、7月~9月、10月~12月の4つに分けたもので、それぞれを第Ⅰ四半期、第Ⅱ四半期、第Ⅲ四半期、第Ⅳ四半期という。 クロスセクションデータ 1時点におけるデータ 現状把握に用いる ⇒ (例)都道府県の人口格差はどの程度か? 都道府県別データ、世帯の収入階級別データ、企業の従業員規模別データなどがある。
交通事故死亡者数の推移(中国地方5県) 鳥取県の交通事故死亡者数の年次推移 → 時系列データ 2007年の県別交通事故死亡者数 (単位:人) 鳥取県の交通事故死亡者数の年次推移 → 時系列データ 2007年の県別交通事故死亡者数 → クロスセクションデータ
分析目的と利用する時系列データ 日本経済の長期的な変動を分析したい 株式投資をおこなうためにその変動をみたい ⇒ 実質GDPの年次データなどの発生間隔の長いデータを用いる 株式投資をおこなうためにその変動をみたい ⇒ 日経平均株価の日次データなどの発生間隔の短いデータを用いる
季節性を含むデータ 毎年同様の変動パターン ⇒ 季節性 季節性を含むデータ ⇒ 前期と単純比較すると誤った結論を導く 毎年同様の変動パターン ⇒ 季節性 四半期データや月次データなどに見られる 季節性を含むデータ ⇒ 前期と単純比較すると誤った結論を導く
季節性を含むデータの簡単な分析 前年同期比 四半期データの場合 今期のデータ 前年同期比 四半期データの場合 前年の同じ時期を100としたとき、今期がどれぐらいの大きさとなるかをあらわしたものである。 月次データの場合には、 となる。これは前年同月比ともいわれる。 前年の同じ時期のデータ
<前年同期比の問題点> 1. 不規則変動の影響 ある期のデータが平年と異なった値をとったとき、前年同期比は影響をうける。 1. 不規則変動の影響 ある期のデータが平年と異なった値をとったとき、前年同期比は影響をうける。 (例)1997年の第Ⅰ四半期(第Ⅱ四半期も同様) 1997年第Ⅰ四半期が平年より高い値をとったので 1997年第Ⅰ四半期の前年同期比は通常より高めになる。 1998年第Ⅰ四半期は、反対に通常より低めになる。 この場合は、1997年第Ⅱ四半期も平年より低い値をとったので 1997年第Ⅱ四半期の前年同期比は通常より低めになる。 1998年第Ⅱ四半期は、反対に通常より高めになる。
2. タイミングの問題 経済時系列データは景気変動などにより、循環的な変動をすることがある。(詳しくは後述) 景気判断をおこなう場合などには、「どこが底か」を知りたいのであるが、前年同期比にはタイミングのずれがある。 この仮想の月次データについて前年同月比を取ると、転換点から若干の遅れが出るのがわかる。 そのため、データから季節性のみをとり除くための方法が必要となる。 ⇒ その方法は季節調整法といわれる方法で、古典的時系列分析の応用例の1つである。
時系列データの成分 古典的時系列分析では、時系列データは次の4つのものが組み合わさったものと想定する。 1.トレンド(Trend) 経済成長などの長期的な変動 2.サイクル(Cycle) 景気循環などの周期的な変動 3.季節変動(Seasonal variation) 季節による変動 4.不規則変動(Irregular variation) 上の3つに含まれない変動
トレンドとサイクル 1990年までの日本の経済データの多くは、周期的な上昇下降をくり返しながら、右上がりの傾向を示している。(実質GDPのグラフを参照) これは、トレンドとサイクルが組み合わさったものと考えられる。
不規則変動 不規則変動は2種類のものを含んでいる。 1.比較的小さなランダムな変動 2.戦争、天災、制度の変更などによる突発的 な変動 不規則変動は2種類のものを含んでいる。 1.比較的小さなランダムな変動 2.戦争、天災、制度の変更などによる突発的 な変動 (例) 百貨店売上高 1997年4月に消費税が3%から5%に引き上げられた。 → この年の第Ⅰ四半期に「駆け込み需要」、第Ⅱ四半期に「買い控え」の傾向がみられる これは不規則変動の2番目の種類である。
時系列データの4つの成分は直接観測することはできない どのように組み合わさっているかは分からない → モデルを仮定する → モデルを仮定する (1) 加法モデル yt=Tt+Ct+St+It (2) 乗法モデル yt=Tt×Ct×St×It 季節調整法 原系列から季節変動Stをとり除くこと。加法モデルを仮定した場合は yt-St 、乗法モデルを仮定した場合には yt/St が季節調整値となる。季節調整値をもとめるには、 1.トレンドTCtをとり除く 2.不規則変動Itをとり除く 3.このようにしてもとめた季節変動Stを原系列ytからとり除く yt SIt St TCt It yt-St または yt/St
トレンドの抽出 系列の大局的な変動をトレンドと考える。 トレンドを抽出する1つの方法として移動平均法を用いる方法がある。 (トレンドとサイクルを分離することは困難なので、この2つをあわせたものを、以下ではトレンドとよぶ) トレンドを抽出する1つの方法として移動平均法を用いる方法がある。 移動平均法はその期と前後k期の値の平均を、1期ずつ移動しながら平均する手法であり、k=1のとするなら、3項移動平均である。 移動平均には系列の大幅な上下変動を「ならす」効果がある。
下の表のようなデータについて3項移動平均をとると、変動の幅は小さくなる。
移動平均をとることによって、変動の激しいデータの大局的な動きを見ることができる。 たとえば、株価の変動などは移動平均をとることによって、今後のトレンドの予想をおこなう。 日経平均株価 出典: Yahooサイトより
四半期データの場合、移動平均としては4項移動平均をとる。 ← すべての季節の影響を「ならす」ため 移動平均の項数が偶数の場合、どの期に対応するデータか判断することが困難である。 → 中心化系列の利用 1996年第Ⅲ四半期の中心化系列は前後同数の期の影響を受けている。
不規則変動の除去 原系列からトレンドをとり除いたものは、季節変動と不規則変動の和となる。(SItとあらわす) さらに、この平均値の合計が0になるように調整したものが季節変動となる。
季節調整値 原系列から季節変動を除いた系列が季節調整値(または季節調整済み系列)となる。 季節調整値を用いれば、前期との比較をおこなうことができる。