国際会議成果報告 Structure Formation in the Universe 物理学第二教室 天体核研究室 D3 井上 剛志
会議の概要 テーマ:宇宙の構造形成全般 場所:フランス、シャモニー(モンブランの麓) 開催期間:5月27日~6月1日 口頭発表はすべて招待講演 1.宇宙の大規模構造、初代天体 2.星形成 3.天体物理における数値計算法 4.惑星形成
星形成研究のこれまで1 星はどこで生まれるか? ・・・分子雲(CNM: T ~ 10 K, n ~ 103cm-3) WNM: T ~ 8000 K, n ~ 0.5 cm-3 10 pc 星形成率( SFE = Mstar / MCNM ) 重力だけで全てが決まっているとすると SFE ~ 100% 観測では a few % 何者かが星形成を阻んでいる!! 容疑者 ・・・ すぐに疑われるのは乱流と磁場 乱流:乱流圧で重力を支える(実際に分子雲では超音速乱流が観測される) 磁場:磁気圧で重力を支える
星形成研究のこれまで2 乱流星形成 (E. Vazquez-Semadeni のトーク) (なにも考えずに)分子雲 (T~10 K の等温ガス)を置いて超音速乱流(人工的掻き混ぜ) 媒質のSRE を計る Decaying turbulence か Driving turbulence かとかで細かい違いはあるけど SFE ~ 数十 % は依然として大きすぎる 磁気乱流星形成(Z-Y. Li のトーク) 磁場を(fine tune して)入れると(当然)SFE は観測と同程度になる。 結局分子雲の物理状態(乱流の起源、磁場強度、等温近似の妥当性)が分からなければ何も解決しない!
星形成研究のこれから n P 分子雲の物理状態は分子雲がどのように形成されるのかが分かれば自然と明らかになる。 分子雲形成メカニズムの最有力候補:Thermal Instability P CNM WNM 冷却優勢 加熱優勢 n 熱的不安定が作る分子雲(P. Hennebelleのトーク:我々の仕事も沢山紹介してくれた) CNM, WNM が混在する2相系、(自然な)超音速乱流、 磁場は初期条件に依らない(Inoue et al. 2007)
会議で発表してきたこと 星間媒質の弱電離性を考慮した熱的不安定によるCNMの形成過程に関する研究(Inoue et al. 2007) 以前からあった議論 CNMはWNMが集まってできる 密度は約100倍上昇 ⇒ 磁場も流体と共に凝縮され増幅 観測:CNMとWNMで磁場強度は同程度 ~ マイクロガウス これは不自然だ(Troland & Heiles 1986) 弱電離媒質(磁気拡散が起きる)で熱的不安定が起きると磁場はどう進化するか? 問題は解決可能か?
弱電離プラズマ中の磁気拡散 星間媒質の電離度: 中性ガス ⇒ 熱不安定で凝縮していく 電離ガス ⇒ 中性ガスに引きずられるが磁気圧が抵抗 WNM CNM 星間媒質の電離度: 中性ガス ⇒ 熱不安定で凝縮していく 電離ガス ⇒ 中性ガスに引きずられるが磁気圧が抵抗 互いに摩擦を感じながらすり抜けていく 中性ガスと電離ガスの運動方程式 Drag coefficient :
熱的不安定が作るCNMの磁場強度 Drift speed イオン化率が小さくければ L:不安定の空間 スケール 一方 TI の collapse speed は なら 形成より早く磁場が抜ける なら磁場は圧縮される 形成されるCNMの磁場は で決まる
星間弱電離プラズマの基礎方程式 Neutral gas(H) ionized gas(H+) EOC EOM EE IE Sources: H+H+ 衝突摩擦力 熱伝導、輻射冷却,過熱 H+H+ 衝突摩擦加熱 Shapiro & Kang (1987), Wolfire et al. (1995), Glassgold (2005), Parker (1953), Koyama & Inutsuka (2000), Draine (1986).
数値実験のSetting P 冷却優勢 TI WNM CNM 加熱優勢
Simulation: Bini = 0.1μG 2流体計算:初期に 0.1μG の縦磁場を置く 中性ガスの数密度 磁場強度 |B| CNMの内部では磁場は約1μGに増幅されたまま乱流状態になる
感想、成果 そろそろみんな熱的不安定による分子雲形成の研究が星形成の理解に critical であることを理解しだした。 今まで京都グループとパリグループが中心だった業界に新規参入組が流入してくるようになった。 新規参入組: Vazquez-Semadeni グループ、Heitsch グループ、Blundenburgグループ、Li グループ(参入すると言っていた) 優位を保つ為にパリグループと合併? とにかくP.Hennebelle氏と共同研究することになり、会議中にこれからどんな計算をするか詰めてきた。