過敏性肺炎 Hypersensitivity pneumonitis

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過敏性肺炎 Hypersensitivity pneumonitis The Japanese Respiratory Society 社団法人日本呼吸器学会 教育用DVD - DVDで学ぶ実践呼吸器病学 - Ⅱ-16 過敏性肺炎 Hypersensitivity pneumonitis 済生会 熊本病院 呼吸器センター 菅 守隆

内容 概念 疫学 病型 発症機構(免疫学的機序・宿主要因) 診断基準 症状 検査所見 画像所見 病理組織像 予防と治療 参考文献

概 念

真菌胞子,細菌,異種蛋白,イソシアネートなどの有機あるいは無機塵埃を反復吸入することによって起こるアレルギー性肺炎の総称. 概念 【過敏性肺炎とは】 真菌胞子,細菌,異種蛋白,イソシアネートなどの有機あるいは無機塵埃を反復吸入することによって起こるアレルギー性肺炎の総称. 別名,外因性アレルギー性胞隔炎とも呼ばれている. 過敏性肺炎は真菌胞子,細菌,鳥類の蛋白,イソシアネートなどの有機あるいは無機塵埃を反復吸入しているうちにこれに感作されて,Ⅲ型およびIV型アレルギー反応が細気管支から肺胞にかけて起こる結果発症するびまん性肉芽腫性間質性肺炎(extrinsic allergic alveolitis)の総称で,別名,外因性アレルギー性胞隔炎とも呼ばれている.

疫 学 5

【わが国における過敏性肺炎の原因別頻度】 疫学 【わが国における過敏性肺炎の原因別頻度】 1980~1989 1990~1999 夏型過敏性肺炎 (74.4%) 夏型過敏性肺炎 (69.8%) 本症には病気が発生する生活環境や病気の原因となる塵埃(抗原)の種類などによって30以上の疾患が含まれるが,わが国では夏型過敏性肺炎,農夫肺,換気装置肺(空調肺,加湿器肺),鳥飼病などが主なものである1). n=835 n=894 夏型過敏性肺炎 鳥飼病 農夫肺 換気装置肺 その他 原因不明 6

疫学 【わが国の主要な過敏性肺炎】 夏型過敏性肺炎 換気装置肺(空調肺,加湿器肺) 農夫肺 鳥飼病 その他の過敏性肺炎 (7.6%) 7

【わが国の主要な過敏性肺炎】 夏型過敏性肺炎 疫学 わが国に特有で,かつ最も多い過敏性肺炎で69.8%を占める. 高温多湿な夏季に関東から西日本にみられる.冬季は消滅する. 原因抗原 Trichosporon asahii,T. mucoides 発症環境 家屋.特に風通し日当たりが悪く,湿気の多い,カビの生えやすい場所(風呂場,洗面所,台所)で働く主婦に多い. 診断 帰宅誘発試験,血清中抗T. asahii,T. mucoides 抗体陽性                   (%は全国集計による1990~1999年の発生頻度,n=894) 8

【わが国の主要な過敏性肺炎】 換気装置肺(空調肺,加湿器肺) 疫学 過敏性肺炎の5.9%.地域差はない. 原因抗原 好熱性放線菌,Penicillium,Cephalosporium など. 発症環境 空調施設,加湿器の使用場所. 診断 機器の使用,原因抗原に対する血清中特異抗体陽性. (%は全国集計による1990~1999年の発生頻度,n=894) 9

【わが国の主要な過敏性肺炎】 農夫肺 疫学 過敏性肺炎の4.4%.北海道,岩手県など北に多い. 原因抗原 好熱性放線菌,特に Micropolyspora faeni, Thermoactinomyces vulgaris 発症環境 農場.特にカビた枯草を取り扱う農夫,畜産業者,グリーンハウス従事者に多い. 診断 職歴,血清中抗Micropolyspora faeni 抗体,あるいは 抗Thermoactinomyces vulgaris 抗体陽性. (%は全国集計による1990~1999年の発生頻度,n=894) 10

【わが国の主要な過敏性肺炎】 鳥飼病 疫学 過敏性肺炎の4.0%.地域差はない. 原因抗原 鳥類の排泄物(糞,尿,唾液など). 発症環境 鳥の飼育や羽毛を取り扱う職業. 診断 職歴,鳥血清蛋白や排泄物抽出抗原に対する特異抗体陽性. (%は全国集計による1990~1999年の発生頻度,n=894) 11

【わが国の主要な過敏性肺炎】 その他の過敏性肺炎 (7.6%) 疫学 【わが国の主要な過敏性肺炎】 その他の過敏性肺炎 (7.6%) イソシアネート(ポリウレタン製造ならびに加工工場),砂糖キビ肺, 楓皮病,養蚕従事者肺,シイタケ栽培者肺,ナメコ栽培者肺, 畳製造業者肺,象嵌製造者肺,鰹節製造業者肺,貝細工製造業者肺,豚飼育者肺など. 原因抗原不明の症例 (8.3%)も少なくない. (%は全国集計による1990~1999年の発生頻度,n=894) 12

病 型 13

大量の抗原に間欠的に曝露された場合でインフルエンザ様の症状を呈する. [例:農夫肺] 病型 【病型】 急性型 : 大量の抗原に間欠的に曝露された場合でインフルエンザ様の症状を呈する. [例:農夫肺] 亜急性型 少量の抗原に間欠的に曝露された場合で発熱,咳嗽,息切れがしだいに増強する. [例:夏型過敏性肺炎] 慢性型 抗原に持続的に曝露された場合で慢性の経過をとり肺の線維化をきたす. [例:鳥飼病] 過敏性肺炎の病理所見は病型,すなわち,急性型,亜急性型,慢性型による差異は認められるが,疾患による差異は少なく,したがって,過敏性肺炎の症候や検査所見は疾患の種類を問わずよく類似している. 14

発症機構 (免疫学的機序・宿主要因) 15

【免疫学的発症機序】 発症機構 (免疫学的機序・宿主要因) 免疫複合体性免疫反応 (4~18時間) T細胞性免疫反応(24~48時間) 抗原 肺胞 マクロファージ Th 0 B細胞の活性化 RANTES Th 1 活性化Th1細胞 (ICAM-1, LFA-1a ) (IL-2, IFN-γ ) monocyte 特異抗体 IFN-γ MIF 免疫複合体 ケモカイン MCP-1 MAF 本症の病態にはⅢ型およびIV型アレルギーが共に関与していることが明らかになっている.Ⅲ型の関与を示唆する所見としては,症状が抗原曝露後4~6時間して出現し6~8時間持続して消失すること,皮内反応がアルサス型反応を示すこと,気管支肺胞洗浄液 (BALF) および血清中に特異IgG,IgA抗体が認められること,急性期のBALF中に好中球の滲出ならびに補体の増加を認めること,などが挙げられる.これらの所見から,経気道的に侵入した抗原が特異抗体と免疫複合体を形成し,これが補体の関与により肺局所に炎症を惹起すると考えられる2). 一方,IV型の関与を示唆する所見としてTリンパ球による肉芽腫性胞隔炎の形成がある2).この病変形成には抗原に感作されたTリンパ球が関与していることがヒトならびに実験モデルで証明されている. 補体の活性化 PMN , MO, T cell 急性肺傷害 マクロファージの 活性化 T細胞性 肉芽腫形成 (Suga M et al: Mechanisms accounting for granulomatous responses in hypersensitivity pneumonitis. Sarcoidosis 1997; 14:131-8より一部改変) 16

【発症における遺伝的素因】 −HLA-DQ抗原の頻度(夏型)− * DQw1 DQw2 DQw3 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 発症機構 (免疫学的機序・宿主要因) 【発症における遺伝的素因】 −HLA-DQ抗原の頻度(夏型)− DQw1 患者(n=66) DQw2 正常者(n=472) *p < 0.018 * DQw3 抗原に曝露された場合に発症する人としない人がいることから,本症の発症には個体の遺伝的要因が関与していることが強く示唆されている.本症の発症とHLA抗原のハプロタイプとの相関性については否定的な成績が多いが,相関するとの成績もあり3),今後さらに検討する必要がある. 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 HLA-DQ抗原の頻度 17

【発症における修飾因子】 −過敏性肺炎患者の喫煙率(夏型)− * * 60 喫煙率(%) 40 20 男性 女性 発症機構 (免疫学的機序・宿主要因) 【発症における修飾因子】 −過敏性肺炎患者の喫煙率(夏型)− 60 喫煙率(%) *p < 0.01 患者 正常者 40 * 20 本症の発症を修飾する外的因子として喫煙の影響が知られている.鳥飼病,農夫肺,夏型過敏性肺炎患者の喫煙率は健常対照者の喫煙率に比べて低く,喫煙は発症に抑制的に作用することが明らかにされている4). * 男性 女性 18

診断基準 19

【診断の手引と診断基準】 診断基準 【手引き】 (厚生省特定疾患「びまん性肺疾患」調査研究班,1990年) 【手引き】 Ⅰ. 臨床像 <臨床症状・所見1)~4)のうちいずれか2つ以上と,検査所見1)~6)のうち1)を含む2つ以上の両者を同時に満足するもの> 1. 臨床症状・所見 1)せき,2)息切れ,3)発熱,4)捻髪音ないし小水泡性ラ音 2. 検査所見 1)胸部X線像にてびまん性散布性粒状陰影(注:病初期には異常陰影を認めないことがある), 2)拘束性換気機能障害,3)PaO2の低下,4)赤沈値促進,好中球増多,CRP陽性のいずれか1つ, 5)気管支肺胞洗浄液のリンパ球の増加,6)ツ反応の陰性化 Ⅱ.発症環境 <1~5のいずれか1つを満足するもの> 1. 夏型過敏性肺炎は夏期(4~10月)に,高温多湿の住宅で起こる 2. 鳥飼病は鳥の飼育や羽毛と関連して起こる 3. 農夫病はカビた枯れ草の取り扱いと関連して起こる 4. 空調病,加湿器肺はこれらの機器の使用と関連して起こる 5. 有機塵挨抗原に曝露される環境での生活歴 注:症状は抗原曝露4~8時間して起こることが多く,環境から離れると自然に軽快する Ⅲ.免疫学的所見 <1),2)のうち1つ以上を満足するもの> 1)抗原に対する特異抗体陽性 2)特異抗原によるリンパ球幼若反応陽性 Ⅳ.吸入誘発試験 <1),2)のうち1つ以上を満足するもの> 1)特異抗原吸入による臨床像の再現,2)環境曝露による臨床像の再現 Ⅴ.病理学的所見 <1)~3)のうちいずれか2つ以上を満足するもの> 1)肉芽腫形成,2)胞隔炎,3)マッソン体 【診断基準】 確実 : Ⅰ,Ⅱ, Ⅳまたは Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳを満たすもの 強い疑い : Ⅰを含む 3項目を満たすもの 疑い : Ⅰを含む 2項目を満たすもの 過敏性肺炎の診断手順は,まず咳嗽,発熱,呼吸困難などの臨床症状から過敏性肺炎を疑ったら,胸部X線写真(可能であればHRCT)を撮影してびまん性陰影の有無を調べる.次いで気管支肺洗浄(BAL)を施行し,同時に経気管支的肺生検(TBLB) を行う.発症環境を考慮に入れて原因抗原を推定して血清診断を行い,また疑わしい場所を問診で推定し,環境誘発試験を行う.陽性であればその環境に存在する原因抗原を検索する.上掲は1990年に改訂された診断手引ならびに診断基準である. 20

症 状 21

−過敏性肺炎の症状(夏型)− 症状 発症時の症状 (n=621) 入院時の症状 100 50 % 50 100 咳 呼吸困難 発熱 痰 悪寒 症候は抗原曝露の量と期間ならびに個体の感受性により軽重さまざまである.急性型では,通常,抗原曝露後4~6時間して発熱,咳嗽,呼吸困難などインフルエンザ様の症状をきたし,重症例ではチアノーゼを認める. 図に示すように,最も頻度の高い夏型過敏性肺炎のような亜急性型では,咳嗽で始まることが多く,しだいに発熱,労作時の息切れを覚えるようになり,これらがさらに顕著になる1).喀痰,咽頭違和感,体重減少,倦怠感,頭痛などをきたすこともある.慢性型では,抗原曝露と臨床症状との関連性は失われ,病変はしだいに慢性化し,抗原を回避しても病変はもはや不可逆性となり,上記症候は残存ないし進行する. 体重減少 頭痛 22

検査所見 23

【各種検査値異常の発症頻度】 −過敏性肺炎の臨床検査成績(夏型)1) − 検査所見 50 100% 好中球増多 (>9,000)  好中球増多 (>9,000) 検査成績 (n=554)  CRP 陽性  赤沈亢進 (20/H)  PPD陰性 胸部X線 (n=621)  間質性陰影  %VC減少 (<80%) 肺機能 (n=544)  %DLCO減少 (<80%)  PaO2減少 (<80torr)  肉芽腫形成 組織学的所見 (n=475)  胞隔炎  マッソン体 BAL (n=271)  リンパ球増多 抗Trichosporon 抗体 (n=262)  陽性 (>1: 32)

【BALF所見】 疾患名 症例数 回収細胞数 (X104/mL) リンパ球 (%) T細胞サブセット CD3 (%) CD4/CD8 検査所見 【BALF所見】 疾患名 症例数 回収細胞数 (X104/mL) リンパ球 (%) T細胞サブセット CD3 (%) CD4/CD8 夏型過敏性肺炎 非喫煙者 喫煙者 197 44 103±10 81±8 69±1 63±3 85±2 88±3 0.6±0.1 0.5±0.1 農夫肺 非喫煙者 喫煙者 16 6 55±11 28±2 67±4 53±8 86±3 82±10 3.4±0.7 6.2±1.9* 換気装置肺 非喫煙者 喫煙者 6 7 140±90* 26±6 61±5 50±10 84±9 74±11 1.0±0.2 2.3±0.5* 鳥飼病 非喫煙者 喫煙者 11 5 53±11 85±30 75±5 70±11 89±4 91±3 1.8±0.6 2.8±1.5 過敏性肺炎患者のBALFの細胞組成はBALが施行される時期によって異なる.抗原吸入後24時間以内のきわめて早期には多核白血球が30~60%と一時的に著増するが,その後はリンパ球が増加する.表に示すように,通常,診断のためにBALが施行される有症期の回収細胞数は健常非喫煙者の4~6倍に達し,細胞組成ではリンパ球が50~90%と大半を占める.BALFリンパ球の増加は主としてCD3陽性細胞(T細胞)で全リンパ球の80~90%を占める.このBALF T細胞の増加は過敏性肺炎に比較的特徴的な所見で,夏型過敏性肺炎,農夫肺,換気装置肺(空調肺,加湿器肺),鳥飼病のいずれにも共通してみられる.CD4/CD8比は夏型過敏性肺炎では0.6と低値を示し,農夫肺では4.4と高値を示し,さらに換気装置肺炎,鳥飼病ではそれぞれ1.6,2.0と正常値を示してい る5).

画像所見 26

【胸部X線・HRCT像】 −小葉中心性粒状影とすりガラス陰影− 画像所見 急性型のHRCT像ではすりガラス陰影,肺胞充実性陰影,空気気管支像 (air bronchogram) が認められる.亜急性型のHRCT像は肺野濃度の上昇と2~4mm大の境界不鮮明な小円形の粒状影が小葉中心性に多数散布するのが特徴である.慢性型のHRCT像では辺縁不整な線状影が特徴で,輪状影もみられるようになる. 27

画像所見 【胸部X線写真】 −びまん性粒状陰影− 発症時 改善時 28

画像所見 【胸部CT像-1】 −びまん性小葉中心性粒状陰影− 発症時 29

−小葉中心性粒状陰影+汎小葉性すりガラス状陰影− 画像所見 【胸部CT像-2】 −小葉中心性粒状陰影+汎小葉性すりガラス状陰影− 30

病理組織像 31

−非乾酪性肉芽腫性肺胞炎+閉塞性細気管支炎− 病理組織像 【肺生検所見-1】 −非乾酪性肉芽腫性肺胞炎+閉塞性細気管支炎− 過敏性肺炎における肺生検は通常TBLBを用いて行われることが多く,この場合,採取標本が小さいために胞隔炎は全症例に認められるが,肉芽腫は60~70%前後,マッソン体は約30%に認められる. 32

終末細気管支周辺の肺胞領域に病変がみられる 病理組織像 【肺生検所見-2】 終末細気管支周辺の肺胞領域に病変がみられる 33

予防と治療 34

栄養源となる腐木,寝具,畳,カーペットを除去ないし取り替える 農夫肺 防塵マスクの使用,転職 鳥飼病 鳥飼育の禁止,環境を清潔にする 予防と治療 1. 抗原からの隔離 原則として入院させる 2. ステロイド療法 中等症:20~30 mg 重症:40~60 mg 急性呼吸不全:パルス療法 3. 環境からの抗原の除去 夏型過敏性肺炎 気密性,換気,排水を改善し,湿気を防止 栄養源となる腐木,寝具,畳,カーペットを除去ないし取り替える 農夫肺 防塵マスクの使用,転職 鳥飼病 鳥飼育の禁止,環境を清潔にする 換気装置肺 フィルターの交換や機材を清潔にする 過敏性肺炎の治療と予防の三原則は,(1)原因抗原からの患者隔離,(2)生活環境から原因抗原を除去するための環境改善対策,(3)薬物療法としてのステロイド剤の投与である. (1)抗原からの患者隔離:本症が疑われたらまず入院させるのが原則である.典型例では発熱,咳嗽,呼吸困難があるために環境から離れざるを得ないのが通例である.一般に入院後数日から10日前後で症状の改善がみられる. (2) 薬物療法:過敏性肺炎にはステロイド剤が著効を示す.投与量は症状ならびに検査所見を参考に重症度に応じて決める.  軽度の臨床症状ならびに検査値異常は認めるが,日常の動作にさしたる支障がない軽症の場合,無治療にて経過観察のみで良いと思われる.37℃台の発熱,労作時の息切れは認めるが,安静時の息切れは認めない中等症の場合,プレドニゾロン20mgを経口投与する.38℃以上の発熱が持続的に認められるか,あるいは安静時にも呼吸困難を認める重症の場合,プレドニゾロン40~60mgを経口投与し,臨床症状ならびに検査成績の推移をみながら漸減する.著明な低酸素血やチアノーゼなどの高度の呼吸不全状態がある場合にはメチルプレドニゾロン1,000 mgの点滴静注を3日間行い(パルス療法),症状,検査所見を参考に効果を判定しながら漸減する. 35

夏型過敏性肺炎患者の発症環境におけるトリコスポロンの 増殖場所と除去による予防効果 予防と治療 【環境改善対策】 夏型過敏性肺炎患者の発症環境におけるトリコスポロンの 増殖場所と除去による予防効果 患者家庭 トリコスポロンの除去 患者 家庭数 再発(%) 完全除去 (翌年陰性) 除去不良 (翌年陽性) 施行せず 10 3 2 0 ( 0%) 3 (100%) 2 (100%) 小鳥の糞 寝具 腐木 古い畳 治療と予防上最も重要なことは患者の生活環境から原因抗原を除去するための環境改善対策である.夏型過敏性肺炎では原因抗原であるTrichosporonは日当りや風通しが悪く湿気の多い場所(台所,洗面所,風呂場など)にあるカビた腐木,マット,畳,寝具,さらには室内飼育の小鳥の糞などから分離されている6).したがって,これらの場所を中心に大掃除を行い,日当り通気を良くするように部屋を改築して除湿を行えば,多くの場合Trichosporon の除去に成功する6).農夫肺のように環境から抗原を除去できない場合には防塵マスクを使用するように指導するが,ときには転職をせざるを得ない場合もある.空調肺や加湿器肺などの換気装置肺炎の場合には装置が真菌や細菌で汚染されていることが多いのでフィルターの交換や機材を清潔にする.鳥飼病では鳥の飼育を止めさせるか,環境を清潔にするように指導する. 36

参考文献

参考文献 Ando M et al: Japanese summer-type hypersensitivity pneumonitis. Geographic distribution, home environment, and clinical characteristics of 621 cases. Am Rev Respir Dis 1991; 144:765-9. Suga M et al: Mechanisms accounting for granulomatous responses in hypersensitivity pneumonitis. Sarcoidosis 1997; 14:131-8. Ando M et al: HLA-DQw3 in Japanese summer-type hypersensitivity pneumonitis induced by Trichosporon cutaneum. Am Rev Respir Dis 1989; 140:948-50. Arima K et al: Effect of cigarette smoking on prevalence of summer-type hypersensitivity pneumonitis caused by Trichosporon cutaneum. Arch Environ Health 1992; 47:274. Ando M et al: Difference in the phenotypes of bronchoalveolar lavage lymphocytes in patients with summer-type hypersensitivity pneumonitis, farmer's lung, ventilation pneumonitis, and bird fancier's lung: report of a nationwide epidemiologic study in Japan. J Allergy Clin Immunol 1991; 87:1002-9. Yoshida K et al: Prevention of summer-type hypersensitivity pneumonitis: effect of elimination of Trichosporon cutaneum from the patients' homes. Arch Environ Health 1989; 44:317-22. 38