アジア都市圏における水問題解決のための適応策に関する研究

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アジア都市圏における水問題解決のための適応策に関する研究 平成22年度成果報告 2011年8月3日(水)      都市環境科学研究科 代  表:教  授 河村  明 分担者:教  授 小泉  明       教  授 梅山 元彦       教  授 松本 淳      教  授 稲員 とよの       准教授 横山 勝英       准教授 荒井 康裕       助  教 山崎 公子       助  教 新谷 哲也       助  教 天口 英雄    特任准教授 中川直子

水循環系の激変による甚大な水問題の発生 特に,アジアの諸都市 激甚な水災害の発生 水問題の解決が都市存続 に関わる最重要課題 森林伐採や人口集中による 急激な都市化の進展 産業の発展と高度化 温室効果ガスの増加による 気候変動の影響を強く受け 激甚な水災害の発生  ・都市水害  ・著しい水域の汚染  ・安全な飲料水へのアクセス不足  ・厳しい水不足  ・地下水障害  ・激しい海岸侵食 などなど 水問題の解決が都市存続 に関わる最重要課題

アジア都市圏における水問題解決のための適応策に関する研究 アジア都市圏における様々な水問題の内 2 安全な飲料水の配水問題 3 貯水池や河川の水質汚濁問題 1 アジア都市圏の水資源問題 水環境問題 5 都市豪雨洪水災害問題 4 海岸侵食問題 水災害問題 ☆実践的で応用性の高い適応策や政策シナリオを提示する

平成22年度研究成果一覧 査読付き学術論文:26編 国際会議論文:  36編 講演論文:      61編 総説など:    26編

平成22年度研究費使用 総額:35,000千円  設備備品費:      13,141千円  研究消耗品費:     6,883千円  研究調査・成果発表旅費,招聘旅費:            8,071千円  研究支援者雇用経費: 4,728千円  その他(学会参加費,英文校正費,論文掲載料など):                  2,176千円

地下水資源データの収集とGISデータベース化 テーマ1 アジア都市圏の水資源問題 ベトナム・ハノイ市の 地下水資源問題 ハノイ市の時空間 地下水資源データの収集とGISデータベース化 = 現状の課題 = 生活用水のほとんどを  地下水に頼っている 地下水過剰汲み上げ等による  ・急激な地下水位低下  ・井戸枯れ  ・地盤沈下  ・地下水汚染 地下帯水層の空間分布同定 地下水位データの時空間解析 地下水汲み上げ量による 地下水流動シミュレーション 総合的な地下水資源管理 技術の構築・提案 ハノイ市地下水低下の空間分布図

テーマ1 アジア都市圏の水資源問題 1.ハノイ市における地下帯水層の空間的な水文地質構造を初めて明らかにした. テーマ1 アジア都市圏の水資源問題 1.ハノイ市における地下帯水層の空間的な水文地質構造を初めて明らかにした. 2.ハノイ市の過去15年間分の地下水位データを抽出し,更新世被圧帯水層および完新世不圧帯水層の地下水位低下・上昇トレンドを量的に評価した. 3.ハノイ市の被圧・不圧帯水層の地下水位変動の空間分布を明らかにした. ハノイ市不圧地下水位の 低下・上昇トレンドの空間分布

テーマ2 安全な飲料水の配水問題 ◆ 中小規模浄水場の維持管理 中小規模浄水場を対象とする 水道原水水質に対応した浄水処理の構築 テーマ2 安全な飲料水の配水問題 ◆ 中小規模浄水場の維持管理 Legend Dam Direct, Dam Effluence Lake, Surface Stream, Underflow Shallow Well Deep Well 中小規模浄水場を対象とする 水道原水水質に対応した浄水処理の構築 中小規模浄水場 ↓ 原水水質の変動が大きい 処理対象物質に適した浄水処理プロセス 水源の規模も小さい 日本全国の浄水場の水道原水マンガン濃度に着目  ☆高濃度マンガン原水の水源種類及び分布特性  ☆原水マンガン濃度と浄水処理プロセスの関連分析 を行った. 原水マンガン濃度は高いが除去率は高く安定 特別なマンガン処理を行わない『凝集沈殿処理+急速ろ過』プロセスにおいても安定した処理が可能であることが判明。

テーマ2 安全な飲料水の配水問題 データマイニング ◆配水管網の維持管理 都市生活を支える水道システム (Data mining) テーマ2 安全な飲料水の配水問題 データマイニング (Data mining) 都市生活を支える水道システム ◆配水管網の維持管理 ・統計的手法を援用 ・多変量データの中から有用な  関係性や情報を抽出する 管路事故のリスク評価 ・管路の経年的な劣化に着目 ・PS被覆の効果,埋設環境等  の影響を可視化(見える化) 研究成果②:将来の経年劣化を予測し,         更新すべき時期を判定 研究成果①:事故リスクを評価し,管路更新の優先         順位を定量化 事故リスク 硬質塩化 ビニル管 鋼管 ダクタイル 鋳鉄管

貯水池の富栄養化に関わる水質・流動の現地調査 テーマ3  貯水池や河川の水質汚濁問題 = 現状の課題 = 水源貯水池の富栄養化と 植物プランクトンの異常増殖,濁水長期化 浄水場における濾過障害, カビ臭,有害物質の発生 貯水池の富栄養化に関わる水質・流動の現地調査 富栄養化現象の解析 シミュレーション技術の開発 水質制御施設(選択取水・ 分画フェンス)の効果検証 総合的な貯水池管理技術の構築・提案

テーマ3  貯水池や河川の水質汚濁問題 1.貯水池の分画フェンス付近で,洪水時の濁質移動状況を計測したところ,河川から流入した濁質は分画フェンスを通過すると約8割が沈降していた. 2.別途,流入水と放流水の濁度に関する統計的マクロモデルを構築したところ,貯水池での濁質沈降量は約9割となり,現地観測結果と整合した. 3.分画フェンスは流入濁質を沈降させる効果があることが判明した. 0.03mm 0.005mm 6月4日 13:50~15:00 風速 500m 10 m/s 4.貯水池で湖上風と吹送流の平面分布を計測し,これらが湾曲や川幅の影響を受けて変化していることを明らかにした. 5.流動と水質に関する三次元シミュレーションモデルの枠組みを作成した.

テーマ4 海岸侵食問題 = 現状の課題 = 観測データの収集・分析 学術文献調査 ■ホン河の塩水遡上問題 と淡水流量予測 テーマ4  海岸侵食問題 = 現状の課題 = ■ホン河の塩水遡上問題 と淡水流量予測 ■ハイフォン沿岸域の土砂輸送問題 観測データの収集・分析   学術文献調査 解析的予測手法の開発   数値計算手法の改良  再現性の検証 水質,土砂の堆積・浸食問題の原因究明 改善策の提案

テーマ4 海岸侵食問題 ホン河の塩水遡上・淡水流量解析 ハイフォン沿岸域の潮流解析 テーマ4  海岸侵食問題 Low tidal level: ホン河の塩水遡上・淡水流量解析 1.塩水遡上現象に関して,潮汐変化に伴う流水断面積変化の影響を考慮した解析モデルを開発した. 2.ホン河エスチュアリーにおける各支流への淡水分配率を理論的に予測し,流量経験式と合理的な一致を得た. High tidal level: ホン河エスチュアリーの全体図 淡水流量の分配率 (干潮時(上),満潮時(下) ハイフォン沿岸域の潮流解析 1.潮位差4mのハイフォン沿岸域における 3次元シミュレーションを可能とした. 2.計算結果は流速に関して河口付近で観測された結果と良好な一致を示した. 3.河川流量の変化に伴う濁質の輸送形態の違いを明らかにした. 流動計算結果(上げ潮最大(左),下げ潮最大(右)) 濁質輸送計算結果(河川流量10m3/s(左),1,000m3/s(右))

豪雨発生の原因となる台風活動の季節変化・長期変化解明 テーマ5 都市豪雨洪水災害問題  降水量他長期気候資料の   整備 平均的季節変化の解明 豪雨発生の原因となる台風活動の季節変化・長期変化解明 都市型豪雨・洪水災害の発生状況の解明 都市型豪雨の発生予測手法の構築・提案 = 現状の課題 = 気候変動および都市化の進行に伴う豪雨洪水災害の激化・都市型洪水の頻発 未曾有の大洪水被害を受けた世界遺産フエ 1999年11月3日 水没した首都ハノイ 2008年10月31日

中部ベトナムの10-11月に台風による降雨が発生が集中 中部ベトナムにエルニーニュによる影響が特に顕著に現われる テーマ5 都市豪雨洪水災害問題 1.ベトナムにおける長期間の日単位での降水量観測データを利用して、豪雨の主原因となる台風に着目し、ベトナム海岸の15地点に台風が600km以内に存在した日を台風降雨日と認定し、台風降雨日の出現頻度、台風による降雨の全降雨量に占める割合、日降水量50mm以上の大雨に対する割合を調査した。 2.中部ベトナムの10・11月に台風による降雨が多くなり、その割合が25%程度になるが、南部・北部では台風の降雨への影響は小さいことが判明した。 3.中部ベトナムにおける台風による降雨は、エルニーニョ年では9月にのみ平年より増加、8、10、11月にはラニーニャ年で増加し、エルニーニョの影響が中部ベトナムで特に大きく現れることを解明した。 ベトナム北部(左)、中部(中)、南部(右)における月降水量(青)と台風降雨量(青)、非台風降雨量(緑)の年変化 中部ベトナムの10-11月に台風による降雨が発生が集中 ベトナム海岸に沿う15地点における台風による降雨の全降水量に占める割合の年変化の南北断面 中部ベトナムにエルニーニュによる影響が特に顕著に現われる エルニーニョ年(左)とラニーニャ年(右)における台風による降雨の全降水量に占める割合の年変化の南北断面の平年からの偏差 観測地点位置(黒丸)

アジアからの留学生の受入実績・予定 平成20年度実績 0.ベトナム・ハノイ水利大学 Duong Du Bui (ジュン・ジュ・ブイ)     「ベトナム紅河デルタにおける帯水層構造および地下水位トレンドの特性評価」 平成21年度実績   1.ベトナム・ハノイ水利大学 Nguyen Hoang Duc(グゥエン・ホァン・ドゥック)     「ベトナム・ホン河における塩水遡上距離と淡水流入量の予測」   2.韓国・ソウル市立大學校 Min Byung-dae(ミン・ビョン・ディ)     「浄水プロセス,水質管理,下水汚泥処理に関する研究」 平成22年度実績   3.フィリピン・Woodfields Consultants, Inc. 研究員,フィリピン大学社会人ドクター      Romeo L. Gilbuena, Jr. (ロメオ・ヒルブエナ)     「フィリピン・メトロマニラ市における洪水減災対策の評価」   4.韓国・ソウル市立大學校 Kim Min Cheol(キム・ミン・チェル)     「安定給水のための配水管網における最適維持管理計画に関する研究」   5.ベトナム・ベトナム国家大学 Nguyen Kim Cuong(グエン・キム・クゥン)     「ベトナム・ハイフォン沿岸域の土砂輸送に関する数値解析」   6.ベトナム・ハノイ大学 Nguyen Thi Hoang Ahn (グエン・チ・ホアンアン)     「ベトナムにおける豪雨の気候変動に関する研究」

アジアからの留学生の受入実績・予定 平成23年度予定 7.ベトナム・ハノイ水利大学 Nguyen Thanh Thuy(グエン・タン・ツイ)  「アジア都市圏の水資源問題」   8.インドネシア・ハサヌディン大学 Bambang Bakri(バムバン・バクリ)     「安全な飲料水の配水問題」   9.フィリピン・フィリピン気象庁 Marcelino Q. Villafuerte(マーセリノ・ヴィラフェルテ)     「都市豪雨洪水災害問題」    10.インド・インド工科大学 Gubash Azhikodan(グバッシュ・アジコダン)     「アジア都市圏の水環境問題」

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