弱電離気体プラズマの解析(LII) 大気圧コロナ放電によるベンゼン分解 ―分解生成物の調査―

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弱電離気体プラズマの解析(LII) 大気圧コロナ放電によるベンゼン分解 ―分解生成物の調査― 平成15年度電気関係学会北海道支部連合大会 平成15年10月18日(土) 9:45~10:00 No.50 北海学園大学工学部 弱電離気体プラズマの解析(LII) 大気圧コロナ放電によるベンゼン分解  ―分解生成物の調査― Studies on weakly ionized gas plasmas (LII) Decomposition of benzene using corona discharge at atmospheric pressure ―Investigation of by-products― 吉澤 宣幸 佐藤 孝紀 伊藤 秀範 田頭 博昭(室蘭工業大学) 下妻 光夫(北海道大学) N.Yoshizawa, K.Satoh, H.Itoh and H.Tagashira (Muroran Institute of Technology) M.Shimozuma (Hokkaido University) はじめに 実験装置・条件 実験結果 分解生成物の調査 酸素濃度とベンゼン分解の関係 まとめ

はじめに コロナ放電による,大気圧下でのベンゼンの分解特性を明らかにする ○目的 ○背景 工場の排ガスに含まれるベンゼンは発ガン性や催奇形性を持ち,白血病との因果関係がある コロナ放電による,大気圧下でのベンゼンの分解特性を明らかにする ○背景 煙道の排ガスを処理するには、広く安定した放電が必要である NOX分解除去の主流 (安定した放電が可能) バリア放電 放電領域が小さい パルス放電 電源構成が複雑・ノイズの発生 直流コロナ放電 放電領域を大きくとることができ,大量のガス流の処理に適用できる[1] 電源構成が簡単 放電の安定化も可能 剣山状の複数針電極を用いることで放電を安定させることができる[2] ○今回の報告 FTIRをもちいて分解生成物を調査した結果を報告する [1] 吉岡 芳夫 :電学論A ,Vol.122-A pp.676-682 (2002) [2] 吉澤他:平成14年度 電気学会 基礎・材料・共通部門大会 予稿集 Ⅶ-31(2002)

実験装置 針電極形状 針電極数:13本 放電チェンバー (ステンレス製) マクセレック(株)製 LS40-10R1 平板電極(ステンレス製) 内径 :f197mm 高さ :300mm 針電極形状 針電極数:13本 針電極 :ステンレス製 直径f4mm 台座 :真鍮製 直径f50mm 針密度 :0.66本/cm2 高圧側 マクセレック(株)製 LS40-10R1 Vmax±40kV, Imax±10mA 平板電極(ステンレス製) 直径 :f80mm 厚さ :10mm グランド側 VACUUBRAND DVR2 測定範囲 :1~1100hPa 測定精度 :<1hPa 許容圧力 :0.2MPa 測定周期時間 :1sec Infrared Analysis, Inc. ,10-PA 光路長 :10m 日本MKS(株)製 622A12TCE フルスケールレンジ :1.33×104Pa 分解能 :1×10-5F.S. 精度 :0.25% 島津製作所製 FTIR-8900 干渉計 :30°入射マイケルソン 干渉計 光学系 :シングルビーム方式 波数範囲 :7800cm-1~350cm-1 波数精度 :±0.125 S/N :20000:1 データサンプリング :He-Neレーザー エア・ウォーター(株)製 日本酸素(株)製 Benzene濃度:382ppm 純度:99.5% 純度:99.999%

実験条件 電極構成 :複数針対平板電極 電極間隔 :2.5cm 針電極極性 :正極性 放電電圧 :19.0kV 酸素混合比 [%] ガス圧 電極構成 :複数針対平板電極 電極間隔 :2.5cm 針電極極性 :正極性 放電電圧 :19.0kV (約300~1200mA ストリーマコロナが発生) 酸素混合比 [%] ガス圧 全圧[hPa] 窒素分圧[hPa] 酸素分圧[hPa] ベンゼン濃度[ppm](分圧) 0.2 1013 1011 2 300 0.5 1008 5 0,300 (0hPa,0.30hPa) 993 20 962 50 10 912 101 810 203

測定内容 FTIRを用いた、ベンゼン分解率および分解生成物の測定 注入電力量の測定(放電電流の時間変化) 放電後のベンゼン濃度 初期ベンゼン濃度 = ×100[%] 1- FTIRによる赤外吸収スペクトルの測定 Lambert-Berrの法則[3] k=吸光係数 I0=入射光強度 I=透過光強度 c=試料濃度[g/l] d=ガスセルの光路長[cm] 透過率%T 吸光度A 吸光度はガス濃度に比例する [3] A.D.Cross,R.A.Jones,赤外吸収スペクトル入門(第3版),東京化学同人 (1971)

吸光度スペクトル O2:N2=2:98 C6H6, 300ppm * National Institute of Standards and Technology(http://webbook.nist.gov/chemistry/form-ser.html) のデータを用いて同定

吸光度スペクトル C6H6(CH str, 3068cm-1)の吸収ピークが減少 ベンゼンの濃度が減少 O2:N2=2:98 C6H6, 300ppm C6H6の減少 C6H6(CH str, 3068cm-1)の吸収ピークが減少 ベンゼンの濃度が減少 ベンゼンが放電により分解されていることが確認できる * National Institute of Standards and Technology(http://webbook.nist.gov/chemistry/form-ser.html) のデータを用いて同定

吸光度スペクトル CO,CO2 , O3 ,N2O HCOOH ,CH,C2H2 分解生成物 O2:N2=2:98 C6H6, 300ppm HCOOH の増加 COの増加 C6H6の減少 O3の増加 N2Oの増加 分解生成物 CO,CO2 , O3 ,N2O HCOOH ,CH,C2H2 CHの増加 C2H2の増加 後藤らの報告ではCO,CO2 , O3 ,N2O,NOX , HCN,C2N2が観測されている (後藤他 :電学論A ,Vol.123-A pp.900-906 (2003)) * National Institute of Standards and Technology(http://webbook.nist.gov/chemistry/form-ser.html) のデータを用いて同定

酸素濃度を変化させた時のベンゼン分解率 ベンゼンの分解率は注入電力量に比例して増加する 初期酸素濃度による分解率の変化はない T.Yamamotoら[4]によるベンゼンの分解 酸素濃度が多い方が分解率がよい 後藤ら[5]によるバリア放電によるベンゼン分解 酸素濃度が低い方が分解率がよい [4] T.Yamamoto et al. Decomposition of eoluene, o-xylene, triclorotylene, and their mixture using a ButiO3 paacked-bed.plasma reactor,J.Adv. Oxid. Technol., 1,pp.67-78(1996) [5] 後藤他 :電学論A ,Vol.123-A pp.900-906 (2003)

初期酸素濃度に対する分解生成物の生成量 C2H2 CH N2O HCOOH C6H6, 300ppm

初期酸素濃度に対する分解生成物の生成量 CO2 O3 CO オゾンの発生量は注入電力量に対し飽和傾向を示した C6H6, 300ppm CO2 O3 O2が0.5%以上の時、酸素濃度による変化がない CO オゾンの発生量は注入電力量に対し飽和傾向を示した 初期酸素濃度が増加するとオゾン発生量も増加する O2が0.5%以上の時、酸素濃度による変化がない

初期ベンゼン濃度とオゾン生成量 オゾンとベンゼンは化学的な反応をしない 放電により発生するO単原子は ベンゼンがないとオゾンになる 初期ベンゼン濃度に対するオゾン発生量の変化 オゾンとベンゼンは化学的な反応をしない 放電により発生するO単原子は ベンゼンがないとオゾンになる ベンゼンがあると,分解されたベンゼンと反応し分解生成物を酸化する (後藤他 :電学論A ,Vol.123-A pp.900-906 (2003)) オゾンの発生[6] O2 + e → O + O + e O + O2 + M → O3 + M O2 + e → O + O + e O + O2 + M → O3 + M ベンゼンを封入するとオゾン発生量が減少する 分解されたベンゼンと結合 HCOOH, CO2, CO, N2O オゾン生成に関わるO原子が分解生成物との反応に使われる [6] J.Kitayama and M.Kuzumoto:”Analysis of ozone generation form air in silent discharge” ,J.Phys.D, Vol32, No23,

酸素濃度と分解生成物の関係 HCOOHが多い C2H2, CHが少ない C2H2, CHが多い HCOOHが少ない 酸素濃度に依存しない CO, CO2, N2O 高酸素濃度 低酸素濃度 HCOOHが多い C2H2, CHが少ない C2H2, CHが多い HCOOHが少ない 酸素濃度に依存しない

堆積物の吸光度スペクトル O2, 20% O2, 0.5% 酸素濃度が低下すると電極上の堆積が厚くなり、 吸光度スペクトルのピークが深くなる 1 2 3 O2, 0.5% 1 2 3 酸素濃度が低下すると電極上の堆積が厚くなり、 吸光度スペクトルのピークが深くなる

まとめ ベンゼンの分解率 注入電力量に比例して分解率が上昇した 酸素濃度に依存しない ベンゼンの分解生成物 針対平板間にコロナ放電を発生させベンゼンの分解をおこない,その分解率と分解生成物の観測を行った ベンゼンの分解率 注入電力量に比例して分解率が上昇した 酸素濃度に依存しない ベンゼンの分解生成物 CO,CO2, O3, HCOOH,N2O,CH,C2H2 が生成される 酸素濃度と分解生成物の関係 CO,CO2 ,N2Oの生成量は酸素濃度に依存しない 高酸素濃度 HCOOHの生成量が多い 低酸素濃度 CH,C2H2の生成量が多い