Arabidopsis Basic Leucine Zipper Proteins That Mediate Stress-Responsive Abscisic Acid Signaling The Plant Cell, vol. 14,343-357, February 2002 Joung-youn Kang, Hyung-in Choi, Min-young im, and Soo Young Kim
ABA(アブシジン酸)について 植物は不利な環境に適応する能力を 持っている。 Introduction ABA(アブシジン酸)について 植物は不利な環境に適応する能力を 持っている。 このような環境応答のプロセスの1つに、 ABAが介在する経路がある。 例えば、乾燥ストレス条件下ではABAの量が増加することで、気孔の閉鎖が誘導される。 →蒸散の抑制、水分消失の防止
ABAに関連する遺伝子 ABAは様々なストレス応答に関与している。 ストレス誘導性の遺伝子の大部分が、 ABAによって発現を制御されている。 Introduction ABAに関連する遺伝子 ABAは様々なストレス応答に関与している。 ストレス誘導性の遺伝子の大部分が、 ABAによって発現を制御されている。 ABREは、ABAやストレスに関連する配列で、以前の研究で明らかになってきている。
ABF(ABRE-binding factor)とは Introduction ABF(ABRE-binding factor)とは ABREに結合して機能するタンパク質。 または、そのタンパク質を合成する遺伝子。 ABAやストレスに誘導される。 今回の研究では、ABF3とABF4に着目して、 遺伝子を過剰発現させた。
植物材料 シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) Methods 植物材料 シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) 22℃、長日条件(明期16時間、暗期8時間)、 土壌または無菌状態で生育 土壌条件 バーミキュライト:パーライト:ピートモス=1:1:1 無菌条件・・・MS培地上で生育 1%スクロースとABA、食塩、グルコース、マンニトールを 条件に合わせて添加
実験方法 ABF3、ABF4をそれぞれ過剰発現させた。 →それぞれ、以後ABF3植物、ABF4植物とする。 Methods 実験方法 ABF3、ABF4をそれぞれ過剰発現させた。 →それぞれ、以後ABF3植物、ABF4植物とする。 野生型、ABF3植物、ABF4植物を様々な 条件で生育させたものを比較・検討した。 発現解析はRNAゲルブロット解析を用いた。 →今回は少し出てくるだけなので、省略させていただきます。
Methods 実験方法 乾燥処理 土壌で生育させた3週間生のものを用いた。 ABF3植物と野生型を比較する際には11日間、 ABF4植物と野生型を比較する際には12日間、 水を与えずにおき、その後再び水を与えた。 蒸散速度の測定 葉を切り取って、その生体重量を測定し、 時間経過による重量の減少を蒸散速度とした。
トランスジェニック植物の成長 ABF3植物 ABF4植物 Results (Figure 1) ABF3植物 少し成長の遅れが見られたが、 成長パターンは野生型と 同様であった。 (A) 発芽も数時間遅れた。(C) ABF4植物 著しい成長の遅れが見られた。(A) ↑発現量に依存している。(B) 発芽に遅れは見られなかった。 通常条件においての、野生型と比較した状況を記述。 ABF4の発芽についてはデータ無し。
ABAに対する応答 濃度に関して Results ABA濃度が0.5μM以上 (A) 成長が阻害され、本葉が出るまで 発達しなかった。 (Figure 2) 濃度に関して ABA濃度が0.5μM以上 (A) 成長が阻害され、本葉が出るまで 発達しなかった。 ABA濃度が0.25μM (B) 影響を受けたものの、 本葉が出るまで成長した。 様々なABA濃度で生育させた。 ちなみに、 ABA 0.5μM以上 で育てた野生型は、成長速度の低下が見られたものの、成長を続けた。 0.25μMについて、本葉が出たデータは無し。
ABAに対する応答 →発芽段階とその次の段階の 双方において、影響を受けている。 Results 成長段階における特異性に関して (Figure 2) 成長段階における特異性に関して 発芽率 (C) 根の成長 (D) →発芽段階とその次の段階の 双方において、影響を受けている。 野生型 80% ABF3 8% ABF4 28% ABA 0.5μM条件。 野生型 84% ABF3 51% ABF4 35%
塩濃度が高いと発芽が抑制されることが分かっており、 ABAはその制御過程においての役割を担っている。 Results 塩に対する応答 (Figure 3) 塩濃度が高いと発芽が抑制されることが分かっており、 ABAはその制御過程においての役割を担っている。 濃度に関して NaCl 100mMのとき (A) 野生型などは抑制されていない。 ABF3植物、ABF4植物ともに 完全に抑制されていた。 KCl 100mM、 マンニトール100mMのとき(B) KClではNaClと同様の応答 マンニトールでは通常の応答 → 塩に対して影響を受けやすい 浸透圧よりもイオンが関連 abaとかabiはABAに影響されにくい。塩にも影響されにくい。 NaCl 150mMのときは、野生型も発芽しなくなっている。
糖でも高濃度の場合は成長を阻害する。 この場合でも、ABAは重要な役割を担っている。 Results 糖に対する応答 (Figure 3) 糖でも高濃度の場合は成長を阻害する。 この場合でも、ABAは重要な役割を担っている。 3%グルコース ABF3植物とABF4植物は、 完全に阻害されている。 3%マンニトール 明らかに阻害されているが、 その程度は野生型と同程度である。 →糖に対しても影響を受けやすいが、グルコースに特異的なものである。
Results その他の植物ホルモンに関して (Figure 4) ABF3植物には影響が無かった。 ABF4植物にも明確な影響は無かったが、 下記のようなことが見られた。 エチレンに関して (A) 上偏成長により、 葉が屈曲する傾向を持つ。 →一般的に、ストレス条件で エチレンの効果であるとされている。 オーキシンに関して (B) 根の成長パターンに変化が見られた。 →オーキシンシグナリング経路に、 変化が見られたことを示している。 エチレンの前駆物質(ACA)やインドール酢酸(IAA)の効果は、野生型と明確な差が無かった。 上偏成長・・・葉や花弁の上側が下側よりも成長すること。屈曲する。
乾燥抵抗に関して 結果 ABF3植物(A)、ABF4植物(B)ともに、 乾燥ストレス条件下での生残率は、 野生型よりもかなり高かった。 Results 乾燥抵抗に関して (Figure 5) ABAの役割の1つとして、 乾燥条件において、気孔を閉鎖させることにより、 蒸散による水分の消失を防止する働きがある。 ABF3植物やABF4植物は、乾燥ストレスを受けた ときの応答と、同様の応答をすると予想される。 結果 ABF3植物(A)、ABF4植物(B)ともに、 乾燥ストレス条件下での生残率は、 野生型よりもかなり高かった。 →気孔の閉鎖による 蒸散速度の低下のため 野生型16%に対し、ABF3は100%。 野生型33%に対し、ABF4はかなり高かった。
ABF3植物やABF4植物は、乾燥ストレスを受けた ときの応答と、同様の応答をすると予想される。 Results 乾燥抵抗に関して (Figure 5) 結果 という予想に矛盾のない結果が 得られた。 先程の生残率は、ABF3植物や ABF4植物は乾燥に対して、 素早く応答できたため もしくは 始めから気孔を閉じていたため と考えられる。 ABF3植物やABF4植物は、乾燥ストレスを受けた ときの応答と、同様の応答をすると予想される。 ただし、この結果は通常条件によるもので、野生型も乾燥条件では気孔を閉じて蒸散を抑える。
Discussion 成長に与える影響 (Figure 1,2) ABF3 発芽段階やその後の成長段階において抑制効果が見られた。 しかし、その効果は外因性ABAの存在条件に比べると小さかった。 →ABF3単独では、大きな抑制効果は無い。 ABF4 発芽段階では効果が無く、 その後の成長段階において明確な抑制効果が見られた。 →ABF4単独で、発芽後の段階においては抑制効果がある。 共通していたこと どちらも成長の遅れは見られたものの、通常通りに成長した。 →成長速度には影響を与えたが、成長不可能ではない。
環境条件に対する応答 Discussion 野生型と比較して、塩や糖に強く影響を受けていた。 (Figure 3) 野生型と比較して、塩や糖に強く影響を受けていた。 →主に浸透圧に関する反応性の高まりによるものである。 しかし、マンニトールにおいては通常であった。 →浸透圧とは別の経路が 存在し、 ABF3やABF4は 塩やグルコースに特異的な経路に関係している。
気孔の開閉に与える影響 ABF3、ABF4ともに気孔の閉鎖に関連していた。 →結果、蒸散速度が低下し、乾燥耐性が高まった。 Discussion 気孔の開閉に与える影響 (Figure 5) ABF3、ABF4ともに気孔の閉鎖に関連していた。 →結果、蒸散速度が低下し、乾燥耐性が高まった。 逆に、通常条件でも気孔の開口部は小さい。 →ガス交換などが妨げられ、光合成機能の低下など、成長の阻害要因の1つになっている。
まとめ ABF3とABF4は、ABAシグナリングに 関連することが確認できた。 Discussion まとめ ABF3とABF4は、ABAシグナリングに 関連することが確認できた。 同じABFというグループの中でも、 細かく見ると機能の違いがある。 (成長段階の違いなど) 今回の実験では、過剰発現させたことにより、機能的な余剰が発生した。 →結果としては、ほとんど悪い結果となった。