The Plant Cell, vol. 14, , February 2002

Slides:



Advertisements
Similar presentations
・北野 圭介 ・阿手 貴皓 ・杉森 哲也 ・市村 祐樹 ・得野 翔太. はじめに 金沢高等学校科学部の過去の研究 ・高校化学実験におけるホルムアルデヒド汚染と その 除去(東他 2000)。 明らかになったこと HCHO樹脂や銀鏡反応等で高濃度のHCHO の発生 する。還元剤としてブドウ糖を代用するとよい。
Advertisements

オンセットアークの構造化と 背景電場の変化
1. ご高齢の糖尿病患者さんと 若い人との違いはなに? 2. ご高齢の糖尿病患者さんの 治療上の注意点 3.
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
土性を考慮した有効水分量の検討 生産環境整備学講座  灌漑排水学研究室      玉内 翔子.
1
Gene Constellator SystemTM
昼ゼミ Seeing the forest for the trees: long-term exposure to elevated CO2 increases some herbivore density 著者Stiling P., Moon D., Rossi A., Hungate.
J Dermatol Sci ;75(1): Resveratrol inhibition of human keratinocyte proliferation via SIRT1/ARNT/ERK dependent downregulation of AQP3 レスベラトロールによるヒトケラチノサイトの増殖阻害は.
Post Source Decay: PSDとは?
アグリバイオ用照明による 葉菜類の実証栽培
化学的侵食 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
骨格筋のインスリン抵抗性が肥満の引き金 1 参考 最近、エール大学のグループは、骨格筋のインスリン抵抗性がメタボリック症候群を引き起こす最初のステップであることを報告した。BMIが22-24の男性をインスリン感受性度で2グループに分け、食事(55%炭水化物、10%蛋白質、35%脂肪)を摂取してから、筋肉のグリコーゲン量をMRI(核磁気共鳴画像法)で調べたところ、インスリン感受性群に比べて、抵抗性群ではグリコーゲン生成が61%減少していた。肝臓のグリコーゲン量は2群間で有意差はみられなかった。しかし、肝臓の
動物への遺伝子導入 hGH 遺伝子 右:ひと成長ホルモン遺伝子を 導入したラット 左:対照ラット
枯草菌C4-ジカルボン酸輸送体DctPとMaeNの機能解析
人工ゼオライトによる 作物の生育効果に関する研究
緩衝作用.
固体電解コンデンサの耐電圧と漏れ電流 -アノード酸化皮膜の表面欠陥とカソード材料の接触界面-
1. 糖尿病による腎臓の病気 =糖尿病腎症 2. 腎症が進むと、生命維持のために 透析療法が必要になります 3. 糖尿病腎症の予防法・治療法
女性のための栄養マカ根粉末の5健康上の利点
「ヘモグロビンA1cについて」 赤血球 お答えします ヘモグロビンA1cという言葉をよく耳にするようになりました。
8章 食と健康 今日のポイント 1.食べるとは 何のために食べるのか? 食べたものはどうなるのか? 2.消化と吸収 3.代謝の基本経路
糖質摂取が及ぼす運動中の 反応時間への影響
3)たんぱく質中に存在するアミノ酸のほとんどが(L-α-アミノ酸)である。
中性シイステインプロテアーゼブレオマイシン水解酵素は、脱イミノ化されたフィラグリンをアミノ酸へと分解するのに不可欠である
福岡市内の公共用水域におけるLASの調査結果について
生物統計学・第2回 注目要素を決める まず木を見る、各種グラフ、ウェブツール
化学的侵食 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
* 研究テーマ 1.(抗)甲状腺ホルモン様作用を評価するバイオアッセイ系の確立 2.各種化学物質による(抗)甲状腺ホルモン様作用の検討
微粒子合成化学・講義 村松淳司
静止膜電位の成り立ちと活動電位の発生 等価回路 モデル ゴールドマン の式
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
使用限界状態 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
緩衝液-buffer solution-.
コレステロール その生合成の調節について 家政学部 通信教育課程 食物学科 4年 大橋 万里子 佐藤 由美子 鷲見 由紀子 堀田 晴 子
PDGF-Bのretention motifを欠損させると、 pericyteが血管内皮へ誘引されにくくなる
一分子で出来た回転モーター、F1-ATPaseの動作機構 ーたんぱく質の物理ー
第19回 HiHA Seminar Hiroshima Research Center for Healthy Aging (HiHA)
旭川医科大学教育研究推進センター 阿久津 弘明 化学 中村 正雄、津村 直美
塩害促進条件の違いがRC床版の材料劣化に及ぼす影響
灌漑強度の違いに着目した 被覆灌漑の有効性の検討
DNAメチル化とクロマチン構造の変化による転写制御のモデル
Auto2Dデモ事前アンケートご協力のお願い
酸欠状態におかれた森林土壌の強熱減量および撥水性 ○ 小渕敦子・溝口勝・西村拓・井本博美・宮崎毅 東京大学大学院農学生命科学研究科
ランダムグラフ エルデシュとレーニイによって研究された.→ER-model p:辺連結確率 N:ノード総数 分布:
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
化学的侵食 コンクリート工学研究室 岩城一郎.
Central Dogma Epigenetics
1月19日 シグナル分子による情報伝達 シグナル伝達の種類 ホルモンの種類 ホルモン受容体 内分泌腺 ホルモンの働き.
Environment Risk Analysis
n型熱電変換材料Nd2-xCexCuO4の結晶構造と熱電特性
ノニの血圧上昇抑制のメカニズムに関する研究
2019年1月22日 生命環境科学域 応用生命科学類 尾形 善之
コチョウランのクローン増殖 まとめ.
メッシュ付きμ-PICの メッシュ構造の最適化のシミュレーション Maxwell3DとGarfield
液中通電法を用いたAu, Pt, Pdナノ粒子の作成
化学生命理工学実験 II アフィニティークロマトグラフィー (1)
1.細胞の構造と機能の理解 2.核,細胞膜,細胞内小器官の構造と機能の理解 3.細胞の機能,物質輸送の理解 4.細胞分裂過程の理解
酵素表層発現酵母を用いた有機リン農薬検出法の構築
ギャップ結合の機能評価 H27.8.1 体験学習.
Monitoring the Expression Pattern of 1300 Arabidopsis Genes under Drought and Cold Stresses by Using a Full-Length cDNA Microarray The Plant Cell, Vol.13,
Department of Neurogenomics
水ジェットキャビテーションによる 有機物分解効率の向上に向けた基礎研究 2002年12月26日
La及びY添加した層状熱電変換酸化物Ca349の結晶構造と熱電特性 H.Nakatsugawa and G.Kametani
μーTASへの応用を目指した ユリ花弁の吸水に関する研究
1. 糖尿病による腎臓の病気 =糖尿病腎症 2. 腎症が進むと、生命維持のために 透析療法が必要になります 3. 糖尿病腎症の予防法・治療法
Pb添加された[Ca2CoO3]0.62CoO2の結晶構造と熱電特性
MD計算による血小板細胞膜蛋白とリガンド結合の立体構造および結合の力学特性の解明(loss of function 型変異体に関して)
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第12回 次世代シーケンシング・RNA
<PC48> エゾマツ・トドマツ稚樹群の動態に 環境条件が与える影響
Presentation transcript:

Arabidopsis Basic Leucine Zipper Proteins That Mediate Stress-Responsive Abscisic Acid Signaling The Plant Cell, vol. 14,343-357, February 2002 Joung-youn Kang, Hyung-in Choi, Min-young im, and Soo Young Kim

ABA(アブシジン酸)について 植物は不利な環境に適応する能力を 持っている。 Introduction ABA(アブシジン酸)について 植物は不利な環境に適応する能力を 持っている。 このような環境応答のプロセスの1つに、 ABAが介在する経路がある。 例えば、乾燥ストレス条件下ではABAの量が増加することで、気孔の閉鎖が誘導される。 →蒸散の抑制、水分消失の防止

ABAに関連する遺伝子 ABAは様々なストレス応答に関与している。 ストレス誘導性の遺伝子の大部分が、 ABAによって発現を制御されている。 Introduction ABAに関連する遺伝子 ABAは様々なストレス応答に関与している。 ストレス誘導性の遺伝子の大部分が、 ABAによって発現を制御されている。 ABREは、ABAやストレスに関連する配列で、以前の研究で明らかになってきている。

ABF(ABRE-binding factor)とは Introduction ABF(ABRE-binding factor)とは ABREに結合して機能するタンパク質。 または、そのタンパク質を合成する遺伝子。 ABAやストレスに誘導される。 今回の研究では、ABF3とABF4に着目して、 遺伝子を過剰発現させた。

植物材料 シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) Methods 植物材料 シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) 22℃、長日条件(明期16時間、暗期8時間)、 土壌または無菌状態で生育 土壌条件 バーミキュライト:パーライト:ピートモス=1:1:1 無菌条件・・・MS培地上で生育 1%スクロースとABA、食塩、グルコース、マンニトールを 条件に合わせて添加

実験方法 ABF3、ABF4をそれぞれ過剰発現させた。 →それぞれ、以後ABF3植物、ABF4植物とする。 Methods 実験方法 ABF3、ABF4をそれぞれ過剰発現させた。 →それぞれ、以後ABF3植物、ABF4植物とする。 野生型、ABF3植物、ABF4植物を様々な 条件で生育させたものを比較・検討した。 発現解析はRNAゲルブロット解析を用いた。  →今回は少し出てくるだけなので、省略させていただきます。

Methods 実験方法 乾燥処理 土壌で生育させた3週間生のものを用いた。 ABF3植物と野生型を比較する際には11日間、 ABF4植物と野生型を比較する際には12日間、 水を与えずにおき、その後再び水を与えた。 蒸散速度の測定 葉を切り取って、その生体重量を測定し、 時間経過による重量の減少を蒸散速度とした。

トランスジェニック植物の成長 ABF3植物 ABF4植物 Results (Figure 1) ABF3植物   少し成長の遅れが見られたが、 成長パターンは野生型と 同様であった。 (A) 発芽も数時間遅れた。(C) ABF4植物   著しい成長の遅れが見られた。(A) ↑発現量に依存している。(B) 発芽に遅れは見られなかった。 通常条件においての、野生型と比較した状況を記述。 ABF4の発芽についてはデータ無し。

ABAに対する応答 濃度に関して Results ABA濃度が0.5μM以上 (A) 成長が阻害され、本葉が出るまで 発達しなかった。 (Figure 2) 濃度に関して ABA濃度が0.5μM以上 (A) 成長が阻害され、本葉が出るまで 発達しなかった。 ABA濃度が0.25μM (B) 影響を受けたものの、 本葉が出るまで成長した。 様々なABA濃度で生育させた。 ちなみに、 ABA 0.5μM以上 で育てた野生型は、成長速度の低下が見られたものの、成長を続けた。 0.25μMについて、本葉が出たデータは無し。

ABAに対する応答 →発芽段階とその次の段階の 双方において、影響を受けている。 Results 成長段階における特異性に関して (Figure 2) 成長段階における特異性に関して 発芽率 (C) 根の成長 (D) →発芽段階とその次の段階の  双方において、影響を受けている。 野生型 80% ABF3 8% ABF4 28% ABA 0.5μM条件。 野生型 84% ABF3 51% ABF4 35%

塩濃度が高いと発芽が抑制されることが分かっており、 ABAはその制御過程においての役割を担っている。 Results 塩に対する応答 (Figure 3) 塩濃度が高いと発芽が抑制されることが分かっており、  ABAはその制御過程においての役割を担っている。 濃度に関して NaCl 100mMのとき (A) 野生型などは抑制されていない。 ABF3植物、ABF4植物ともに 完全に抑制されていた。    KCl 100mM、 マンニトール100mMのとき(B) KClではNaClと同様の応答 マンニトールでは通常の応答   → 塩に対して影響を受けやすい 浸透圧よりもイオンが関連 abaとかabiはABAに影響されにくい。塩にも影響されにくい。 NaCl 150mMのときは、野生型も発芽しなくなっている。

糖でも高濃度の場合は成長を阻害する。 この場合でも、ABAは重要な役割を担っている。 Results 糖に対する応答 (Figure 3) 糖でも高濃度の場合は成長を阻害する。 この場合でも、ABAは重要な役割を担っている。 3%グルコース ABF3植物とABF4植物は、 完全に阻害されている。   3%マンニトール 明らかに阻害されているが、 その程度は野生型と同程度である。 →糖に対しても影響を受けやすいが、グルコースに特異的なものである。

Results その他の植物ホルモンに関して (Figure 4) ABF3植物には影響が無かった。 ABF4植物にも明確な影響は無かったが、 下記のようなことが見られた。 エチレンに関して (A) 上偏成長により、 葉が屈曲する傾向を持つ。   →一般的に、ストレス条件で  エチレンの効果であるとされている。 オーキシンに関して (B) 根の成長パターンに変化が見られた。   →オーキシンシグナリング経路に、  変化が見られたことを示している。 エチレンの前駆物質(ACA)やインドール酢酸(IAA)の効果は、野生型と明確な差が無かった。 上偏成長・・・葉や花弁の上側が下側よりも成長すること。屈曲する。

乾燥抵抗に関して 結果 ABF3植物(A)、ABF4植物(B)ともに、 乾燥ストレス条件下での生残率は、 野生型よりもかなり高かった。 Results 乾燥抵抗に関して (Figure 5) ABAの役割の1つとして、 乾燥条件において、気孔を閉鎖させることにより、 蒸散による水分の消失を防止する働きがある。 ABF3植物やABF4植物は、乾燥ストレスを受けた ときの応答と、同様の応答をすると予想される。 結果 ABF3植物(A)、ABF4植物(B)ともに、 乾燥ストレス条件下での生残率は、 野生型よりもかなり高かった。 →気孔の閉鎖による 蒸散速度の低下のため 野生型16%に対し、ABF3は100%。 野生型33%に対し、ABF4はかなり高かった。

ABF3植物やABF4植物は、乾燥ストレスを受けた ときの応答と、同様の応答をすると予想される。 Results 乾燥抵抗に関して (Figure 5) 結果 という予想に矛盾のない結果が 得られた。   先程の生残率は、ABF3植物や ABF4植物は乾燥に対して、   素早く応答できたため  もしくは 始めから気孔を閉じていたため   と考えられる。 ABF3植物やABF4植物は、乾燥ストレスを受けた ときの応答と、同様の応答をすると予想される。 ただし、この結果は通常条件によるもので、野生型も乾燥条件では気孔を閉じて蒸散を抑える。

Discussion 成長に与える影響 (Figure 1,2) ABF3 発芽段階やその後の成長段階において抑制効果が見られた。 しかし、その効果は外因性ABAの存在条件に比べると小さかった。   →ABF3単独では、大きな抑制効果は無い。   ABF4 発芽段階では効果が無く、 その後の成長段階において明確な抑制効果が見られた。   →ABF4単独で、発芽後の段階においては抑制効果がある。   共通していたこと どちらも成長の遅れは見られたものの、通常通りに成長した。   →成長速度には影響を与えたが、成長不可能ではない。

環境条件に対する応答 Discussion 野生型と比較して、塩や糖に強く影響を受けていた。 (Figure 3) 野生型と比較して、塩や糖に強く影響を受けていた。 →主に浸透圧に関する反応性の高まりによるものである。 しかし、マンニトールにおいては通常であった。 →浸透圧とは別の経路が 存在し、 ABF3やABF4は 塩やグルコースに特異的な経路に関係している。

気孔の開閉に与える影響 ABF3、ABF4ともに気孔の閉鎖に関連していた。 →結果、蒸散速度が低下し、乾燥耐性が高まった。 Discussion 気孔の開閉に与える影響 (Figure 5) ABF3、ABF4ともに気孔の閉鎖に関連していた。   →結果、蒸散速度が低下し、乾燥耐性が高まった。 逆に、通常条件でも気孔の開口部は小さい。   →ガス交換などが妨げられ、光合成機能の低下など、成長の阻害要因の1つになっている。

まとめ ABF3とABF4は、ABAシグナリングに 関連することが確認できた。 Discussion まとめ ABF3とABF4は、ABAシグナリングに 関連することが確認できた。 同じABFというグループの中でも、 細かく見ると機能の違いがある。 (成長段階の違いなど) 今回の実験では、過剰発現させたことにより、機能的な余剰が発生した。 →結果としては、ほとんど悪い結果となった。