[2] 超対称性理論(SuperSymmetry, SUSY) [4] ヒッグス粒子の階層性(微調整・不自然さ)問題

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[2] 超対称性理論(SuperSymmetry, SUSY) [4] ヒッグス粒子の階層性(微調整・不自然さ)問題 http://atlas.kek.jp/sub/poster/LHCPhysics-poster/SUSY_JA0v3.pdf(pptx) 2015.9.7 T. Kondo 超対称性粒子と暗黒物質 [1] フェルミ粒子とボーズ粒子 全ての素粒子は2種類に大別されます: 暗黒物質の候補 フェルミ粒子(フェルミオン) ボーズ粒子(ボゾン) 素粒子 電子・ニュートリノ・ ミューオン・クォークなど 光子・W/Zボゾン・ グルーオン・ヒッグス粒子 スピン    半整数     整数 性質 1つの量子状態には 1粒子しか入れない。 何粒子でも入れる。 発見済 未発見 超対称性粒子            スピン ス電子    スクォーク グルイーノ      標準模型の粒子             スピン 電子    クォーク グルーオン 1 フェルミ粒子の性質はパウリの排他原理と呼ばれ、おかげで H, He, C, N, O, Feなど多種の原子が形成されます。他方、光は同じ状態に多く入れるため(例)強力なレーザー光線が作れます。 [2] 超対称性理論(SuperSymmetry, SUSY) 1960-70年代に宮沢やWess/Zumino, Fayetらが考え出した。 1980年代にヒッグス粒子の階層性問題の解決になるとWitten, Dimopoulos/Georgi, 坂井らが指摘してから急に流行した。 時空がもつ対称性を拡張した理論でボソンとフェルミオンを入れ替えても自然法則は変わらないとする。同じ種類のボゾンとフェルミオンが対になって存在するはずである。しかし超対称性粒子はまだ一個も発見されてないため、厳密な超対称性は成り立たない。一方、1 TeV付近に超対称性粒子が存在すれば[3],[4],[5]の問題が解決するという大きな魅力がある。 ・ MSSMモデル(最小超対称性標準模型):超対称性粒子数を最小にしヒッグス粒子の質量の二次発散をキャンセルするようにした一般理論。フリーパラメターが124個もある。 ・ mSUGRAモデル : 超対称性の破れは隠れた所で起こり重力を媒介して伝わるとした。5個のパラメター で記述できる。ここで m0, m1/2 は大統一点(2×1016GeV)でのspin 0, ½ 粒子の共通質量である(左図)。 [3] 大統一理論 3つの力の強さ a1, a2, a3 は反応エネルギーとともに 変化する。標準理論のみ では高いエネルギーまで 外挿しても3つの力は一点 では交わらない(緑)。もし 1 TeV付近にSUSY粒子が存在すれば傾きが変わり10 25eV(1016GeV)付近で1点に交わり、3つの力の大統一が可能になる(赤)。   EWSB [4] ヒッグス粒子の階層性(微調整・不自然さ)問題 h h ヒッグス粒子の質量はスカラー(spin=0)粒子特有の二次発散(赤○)の量子補正を受ける。プランクエネルギー(Λ=1019GeV)まで標準理論のままだと、この質量補正量がヒッグス粒子自身の質量より何十桁も大きくなる。Λに比べヒッグス粒子の質量125GeVはあまりにも小さすぎる。これをゲージ階層性問題などと呼ぶ。提案されている主な解決策は以下の3種に大別される:  ① すぐ近くの1~10TeV付近で新しい物理が存在する(テクニカラー、余剰次元理論など)  ② 超対称性粒子が存在すれば二次発散項を完全にキャンセルすることが可能である(青○)  ③ 色々な物理法則や基本定数をもつ多くの宇宙が存在する(多元宇宙論・人間原理論など) h h [5] 暗黒物質(ダークマター) ・ 暗黒物質は光を発せず(殆ど)重力しか感じない。 ・ 銀河内の星やガスの回転速度分布から暗黒物質が約10倍あるはず。 ・ 宇宙発達モデルによると暗黒物質は重く非相対論的である。 宇宙背景マイクロ波 中心から遠いほどスピードは 遅いはずなのにそうではない 宇宙の大規模構造は暗黒 物質がないと形成できない 観測された温度のゆらぎの角相関は標準宇宙モデル (LCDM , 6パラメーター)によく一致して、結果として   (1) 宇宙の年齢 137.98±0.37 億年   (2) 全宇宙のエネルギー・物質分布は 68 % 27 % 暗黒物質 暗黒エネルギー 光を出す通常物質  5 % !! 超対称性粒子は暗黒物質の最有力候補 !! (1) 超対称性理論ではRパリティが保存し、SUSY粒子群はマイナス、通常粒子群は+のRパリティをもつ。このため最も軽いSUSY粒子(LSP)は通常の粒子には崩壊できず安定で宇宙に存在できる。 (2) 宇宙膨張中に反応率と膨張率が等しくなる温度で対生成・対消滅反応の凍結が起こり暗黒物質が残る。暗黒物質の密度から対反応断面積を逆算すると約 1 pb で、これは質量 1 TeV 程度のSUSY粒子の反応断面積と同程度であり、暗黒物質を定量的にも説明できる。 プランク衛星による測定(2013年) ビッグバンから38万年後に宇宙は晴れ上がり、その時の光は冷えて全天に残っている。光の温度には10万分の1程度のゆらぎが見える。