<PC48> エゾマツ・トドマツ稚樹群の動態に 環境条件が与える影響

Slides:



Advertisements
Similar presentations
東京大学医学系研究科 特任助教 倉橋一成 1.  背理法を使った理論展開 1. 帰無仮説( H0 、差がない)が真であると仮定 2. H0 の下で「今回得られたデータ」以上の値が観測でき る確率( P 値)を計算 3. P 値が 5% 未満:「 H0 の下で今回のデータが得られる可 能性が低い」
Advertisements

第6回 適合度の検定 問題例1 サイコロを 60 回振って、各目の出た度数は次の通りであった。 目の出方は一様と考えてよいか。 サイコロの目 (i) 観測度数 : 実験値 (O i ) 帰無仮説:サイコロの目は一様に出る =>それぞれの目の出る確率 p.
衛星画像とセンサスデータを用 いたQOLのマッピング 筑波大学生命環境系 松下文経 2011年10月13日.
配偶者選択による グッピー (Poecilia reticulata) の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究 生物多様性進化分野 A1BM3035 吉田 卓司.
1 徹底討論「主成分分析 vs 因子分析」 主成分分析は因子分析ではない ! 狩野裕 (大阪大学) 日本行動計量学会第 30 回大会 於:多摩大学.
●母集団と標本 母集団 標本 母数 母平均、母分散 無作為抽出 標本データの分析(記述統計学) 母集団における状態の推測(推測統計学)
J班 高取千佳 大村朋之 斎藤いつみ 瀧口洋平 植村恵里
No.2 実用部材の疲労強度           に関する研究 鹿島 巌 酒井 徹.
データ分析入門(12) 第12章 単回帰分析 廣野元久.
5 弾力性とその応用.
Ibaraki Univ. Dept of Electrical & Electronic Eng.
点対応の外れ値除去の最適化によるカメラの動的校正手法の精度向上
地理情報システム論 第14回 GISによる処理技法と応用(3) ラスタ形式による空間的演算 ~土地利用の予測
落葉層の厚さと実生サイズの違いが 実生の発生・定着に及ぼす影響 北畠 琢郎
背景と目的 結論と展望 材料と方法 結果と考察
統計学第9回 「2群の差に関するノンパラメトリックな検定」 中澤 港
確率・統計Ⅰ 第12回 統計学の基礎1 ここです! 確率論とは 確率変数、確率分布 確率変数の独立性 / 確率変数の平均
第7回 独立多群の差の検定 問題例1 出産までの週数によって新生児を3群に分け、新生児期黄疸の
分散分析マスターへの道.
  個人投資家向け株式分析   と予測システム A1グループ  劉 チュン.
配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究
検定 P.137.
男性の育児が肥満に与える影響 富山大学 経済学部 経済学科 孫田 篤 専門ゼミ-報告会.
実証分析の手順 経済データ解析 2011年度.
プロ野球観客動員数の 要因分析.
アジア開発銀行(ADB)の 融資による途上国の経済成長への影響
疫学概論 現代生命表 Lesson 7. 生命表 §B. 現代生命表 S.Harano,MD,PhD,MPH.
土木計画学 第5回(11月2日) 調査データの統計処理と分析3 担当:榊原 弘之.
外来生物が在来生物へ及ぼす影響 中内健伍.
高分子電気絶縁材料の撥水性の画像診断に関する研究
ソシオン理論における 三者関係のシミュレーション
イシガイ類幼生の魚類への寄生状況 魚類を介した移動に関する研究
メタボリック症候群(MetS)の有無と、成人以降の体重増加とCKDの関連
H25年5月22日(水) 中央水研 「水産資源のデータ解析入門」 Terrapub
確率・統計Ⅱ 第7回.
貧困と出産の関係.
計算値が表の値より小さいので「異なるとは言えない」。
3章 Analysing averages and frequencies (前半 p )
オオクチバス・ブルーギルの生息場所に 水の透視度が及ぼす影響
対応のあるデータの時のt検定 重さの測定値(g) 例:
徳山ダム建設が タコノアシ個体群に及ぼす影響
土木計画学 第6回(11月9日) 調査データの統計処理と分析4 担当:榊原 弘之.
analysis of survey data 第3回 香川大学経済学部 堀 啓造
離婚が出生数に与える影響 -都道府県データを用いた計量分析
Fuzzy c-Means法による クラスター分析に関する研究
灌漑強度の違いに着目した 被覆灌漑の有効性の検討
第11回授業(12/11)の学習目標 第8章 分散分析 (ANOVA) の学習 分散分析の例からその目的を理解する 分散分析の各種のデザイン
GISを用いた 『日向』『日影』地名の 立地の解析
シラタマホシクサの地域文化の検証とフェノロジーの年変動
配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究
母音[i]のF1, F2平均値の分析.
No.4 三春ダムにおけるヤナギ類の生態調査プロジェクト
<JP3-079> 光環境の違いに対するエゾマツとトドマツの生理・形態・器官量配分反応
周辺圃場の土地利用変化が 水田の水需要に与える影響
院内の回復期リハ病棟間の成果比較  -予後因子(入院時年齢・FIM・発症後日数)の階層化による測定法を用いて-
早稲田大学大学院商学研究科 2014年12月10日 大塚忠義
データの型 量的データ 質的データ 数字で表現されるデータ 身長、年収、得点 カテゴリで表現されるデータ 性別、職種、学歴
断熱Low-Eガラスが冬期の自然室温に及ぼす効果
風害後50年間の落葉広葉樹林の林分回復過程 主要12樹種について個体数動態、胸高直径と樹高の頻度分布、 考察 はじめに 調査地と方法 結果
クロス表とχ2検定.
第3日目第4時限の学習目標 第1日目第3時限のスライドによる、名義尺度2変数間の連関のカイ2乗統計量についての復習
配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究
N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Cas No
藤田保健衛生大学医学部 公衆衛生学 柿崎 真沙子
2019/5/27 大学での課題研究とは 教育実習生 平成23年度卒 和久井彬実.
太陽光の分配1(直接光) 木本 葉群を垂直10センチ間隔のレイヤーに区切り、各葉群レイヤーの南中時における直接光を左図の要領で算出する。この南中時における光量を元に、1日の積算入射光量を推定する。 下の方の葉群レイヤーほど自己被陰の効果が強くなる。また仮想林分の境界を越えた光線は反対から方向に入射されるとした。
確率と統計 年1月7日(木) Version 3.
Ibaraki Univ. Dept of Electrical & Electronic Eng.
エゾマツの定着に適した 倒木の条件の検討 ~4年間の生残動態による評価~
各種荷重を受ける 中空押出形成材の構造最適化
Presentation transcript:

<PC48> エゾマツ・トドマツ稚樹群の動態に 環境条件が与える影響 060403 第117回日本森林学会大会@東京農業大学 <PC48> エゾマツ・トドマツ稚樹群の動態に 環境条件が与える影響 飯島勇人1)・渋谷正人・斎藤秀之・高橋邦秀(北大院農・造林学) 1) E-mail: hayato-i@for.agr.hokudai.ac.jp, Tel: 011-706-3346 1. 研究背景と目的 ・エゾマツ(Picea jezoensis)とトドマツ(Abies sachalinensis)実生の更新:主に倒木上に多い ・しかし、更新密度は倒木によってかなりばらつき、全ての倒木が更新に適しているわけではない ・なぜばらつくのか?→コケの高さや倒木の硬度、すでに定着している個体のサイズといった倒木上の微環境が局所的に異なり、これらが発芽や生残に悪影響を及ぼすと考えられる。 ・光環境も局所的に異なり、暗い環境では生残率が低下する ・倒木の微環境や光環境が実生の生残に与える影響を明らかにすることで、これら2種の更新に必要な環境条件を明確にできる 本研究の目的 エゾマツとトドマツ実生の更新に倒木の微環境と光環境が与える影響を検討する 2. 材料と方法 調査地 ・北海道沙流郡日高町 日高北部森林管理署 110林班(42º 55’ N, 142º 45’ E, a.s.l. 1038m) 調査林分 ・エゾマツ(胸高断面積合計BAで50%)とトドマツ(BAで30%)を主体とする針葉樹天然林 調査方法(右図参照) ・2004年秋に林内の29本の倒木上の全針葉樹の樹高と根元直径を測定(当年生実生は数のみ)。2005年秋に各個体で樹高のみ再測。 ・環境条件として、各倒木1m(ブロック)ごとにrPPFD(最上層)、コケの高さ、倒木の硬度、倒木の面積、ブロック内の最高個体の樹高を測定。 ・各個体のrPPFD:17のブロックで最高個体の上と倒木表面のrPPFDの差を取り、最上層からの距離と光の減衰率の関係を回帰で構築した。各個体と最高個体の樹高差をこの関係に当てはめて算出した。 全個体の樹高・ 根元直径 rPPFD・倒木の硬度・ 倒木の面積・コケの高さ 1m (ブロック) 統計解析 ・当年生実生数:rPPFD、倒木の面積、倒木の硬さ、コケの高さ、最高個体の樹高を独立変数、ブロック内の当年生実生数を従属変数としたGLM(Generalized Linear Model)で検討した。 ・実生の生残:各個体のrPPFD、倒木の硬さ、コケの高さ、最高個体の樹高、2004年時点での樹高を独立変数、各個体の生残を従属変数としたGLMで検討した。 ・rPPFD < 10%を被陰下と定義し、被陰下における生残率の種間差を、生残個体と死亡個体の割合の違いをFisherの正確確率検定で検定することで検討した。 統計解析にはフリーウェアのRを用いた。 3. 結果と考察 3-1. 当年生実生の定着 3-2. 定着した実生の生残 表 エゾマツとトドマツの当年生実生数に影響する環境要因. n.s.はモデル選択の結果選択され なかったことを示す. 表1. エゾマツとトドマツの稚樹の生残に影響する環境要因. n.s.はモデル選択の結果選択 されなかったことを示す. ・トドマツ:2年間で共通して当年生実生数に影響していたのは倒木の面積と倒木の硬度のみであった。硬い倒木ではトドマツの発芽は妨げられる傾向にあった。 ・エゾマツ:2年間で全ての環境条件の影響を受けており、暗いほど、倒木の面積が小さいほど、倒木が硬いほど、コケが高いほど、周辺個体の樹高が大きいほど当年生実生は少なかった。倒木は腐朽に伴い柔らかくなるが、同時にコケ群落も発達し、また侵入個体数が増加するため、エゾマツの定着可能な期間は短いと考えられる。 表2. 被陰下(rPPFD < 10%)におけるエゾマツとトドマツの生残率の違い. ***は0.1%水準で有意差があることを示す(Fisherの正確確率検定). ・2種の生残に共通して影響していたのはrPPFDと元々の樹高であった。小さい個体ほど死亡率が高く、また暗いほど死亡率が高い傾向が見られた。 ・被陰下での生残率はトドマツの方が大きかった。 ・エゾマツ実生の定着はトドマツよりも倒木の微環境の影響が大きかった ・エゾマツ実生の定着は、発生した倒木が柔らかくなり始めるわずかな期間に限定されていると考えられた ・2種とも明るいほど生残率はよい傾向が見られた ・被陰下における生残率はエゾマツのほうが小さく、エゾマツのほうが耐陰性が低いと考えられた