第5章 伝送理論と伝送技術 5.1 電気通信設備の概要 5.2 アナログ伝送方式 5.3 ディジタル伝送方式 5.4 データ伝送方式

Slides:



Advertisements
Similar presentations
ネットワークとコミュニケーション技法 第 2 回 -アナログ通信とディジタル通信-. 2 講義資料 URL etcom/2011/
Advertisements

授業展開#3 アナログとデジタル.
量子化(Mid-riser型) 出力y 入力x 通信ネットワーク特論(量子化・符号化).
Signal Masterによる フィルタバンクの実装

第四章 情報源符号化の基礎 4・1 情報量とエントロピー 4・2 エントロピー符号化 4・3 音声符号化 4・4 画像符号化.
前時の確認 身のまわりで電波が使われているものは?
第1章 第1節 情報のディジタル化のしくみ 4 音の表現 5 画像の表現
第五章 ディジタル変復調の基礎 5・1 ディジタル振幅変調・ASK 5・2 ディジタル周波数変調・FSK 5・3 ディジタル位相変調・PSK
第1章 第1節 情報のディジタル化のしくみ 4 音の表現 5 画像の表現
アナログとディジタル 五感 視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚 埼玉県立越ヶ谷高等学校・情報科.
インターネットにおける オーケストラ演奏同期機構の 設計と実装
経営情報 #1 デジタル表現 / 2003 (春) 安田豊 1.
情253 「ディジタルシステム設計 」 (2)modem2
第三章 ディジタル符号変換の基礎 3・1PCMパルス符号変換 3・2符号変換 3・3通信路符号形式 3・4スクランブル.
デジタル信号処理①
PSOLA法を用いた極低ビットレート音声符号化に関する検討
ASKの時間波形 Unipolar NRZ ASK キャリア8kHz 通信ネットワーク特論(ディジタル変調)
第六章 信号の多重化と多元接続 6・1 信号の多重化 6・2 多元接続 周波数分割多重(FDM) 時分割多重(TDM) FDMA TDMA
ワイヤレス通信におけるMIMO伝送技術.
第10回 Dフリップフロップ ディジタル回路で特に重要な D-FF 仕組みを理解する タイミング図を読み書きできるようにする 瀬戸
アナログとディジタル 教科書 P8~30,資料8,12 埼玉県立大宮武蔵野高等学校・情報科.
ディジタル回路 1. アナログ と ディジタル 五島 正裕.
1. アナログ と ディジタル 五島 正裕.
電子回路Ⅰ 第11回(2009/1/19) 電力増幅.
イーサネットについて 飯塚務.
第3回: 今日の目標 平均情報量を説明し、計算できる シャノンの通信モデルを説明できる 情報源符号化の条件を示せる
ディジタル信号処理 Digital Signal Processing
大阪大学 大学院工学研究科 極限光通信工学領域 井上研究室 欅田 直也・橘 遼太郎・隅田 拓也・高 祥史
計測工学 ブリッジ・フィルタ・ノイズ・AD変換
情報機器の発達とディジタル化 第2節 情報のディジタル化②
CDMA (IS-95) 松下 温 (慶應義塾大学 理工学部).
音信号表現 音声波形のデジタル化(PCM) サンプリング、標本化定理、量子化 ソースフィルタモデル
授業展開#3 アナログとデジタル.
メカトロニクス 12/8 OPアンプ回路 メカトロニクス 12/8.
コンピュータを知る 1E16M009-1 梅津たくみ 1E16M017-8 小沢あきら 1E16M035-0 柴田かいと
画像情報特論 (5) - ディジタル圧縮 (2) 音声・オーディオ圧縮 電子情報通信学科 甲藤二郎
動画ファイル形式 コンピュータでは、文字や画像、動画、音声といった様々な種類の情報を扱うことができるが、記憶装置に記録されるデータそのものは0と1の情報でしかない。動画ファイルの形式としてはMPEGやAVIです。
電波の伝わり方
P4 通信システム P4.1 ディジタルフィルタの設計とその応用 P4.2 伝送線路のFDTD解析 P4.2 H4.1 P4.1 H4.1
第4回 信号表現とエリアシング.
サウンドファイルの紹介 wave, aiff, MP3 参考: 御池鮎樹著,2004. 裏口からのDTM. 工学社.
 1オーム系 Z0 = 1Ω (1)  オームの法則 (V:電圧,I:電流,R:抵抗orインピーダンス) V = IR (2)   1オーム系では,
ディジタル信号処理 Digital Signal Processing
音・音楽の設計と表現Ⅱ キーワード : サンプリング(標本化)、周波数、量子化 音は空気を伝わる波 → 音をデジタル(0と1の数値)にする。
Simulink で NXT を 動かしてみよう Simulink で NXT を動かす 微分値算出とフィルタ処理 ノーマルモード
2012年度 情報数理 ~ 様々なデジタル情報(1) ~.
ディジタル信号処理 Digital Signal Processing
音声のディジタル化 Copyright(C)2004 Tsutomu Ohara All rights reserved.
                                                                   平成20年10月                       工学科   年生 学籍番号(          ) 氏名(                 ) □ フーリエ級数 □ フーリエ変換 □ SN比 □ 波長
アナログ と ディジタル アナログ,ディジタル: 情報処理の過程: 記録/伝送 と 処理 において, 媒体(メディア)の持つ物理量 と
電子回路Ⅰ 第10回(2008/1/7) 電力増幅.
情報A 第15回授業 04情報のディジタル化 対応ファイル:12exp15.xls
音声合成.
2010年度 情報数理 ~ 様々なデジタル情報(1) ~.
アナログとデジタル.
第2回 標本化と量子化.
マイコンプログラムの実際.
音声のディジタル化 Copyright(C)2004 Tsutomu Ohara All rights reserved.
モバイル通信システム(9) 「変調と復調」 水野.
第四級アマチュア無線技士 養成課程模擬試験(工学)問題4
第四級アマチュア無線技士 養成課程模擬試験(工学)問題2
第四級アマチュア無線技士 養成課程模擬試験(工学)問題3
第3回 標本化定理.
2019年度 情報数理特論B ~ 様々なデジタル情報(1) ~.
アナログ と ディジタル アナログ,ディジタル: 情報処理の過程: 記録/伝送 と 処理 において, 媒体(メディア)の持つ物理量 と
第5章 伝送理論と伝送技術 5.1 電気通信設備の概要 5.2 アナログ伝送方式 5.3 ディジタル伝送方式 5.4 データ伝送方式
2.5 変調と多重化 でも,その前にアナログ信号の変調についての復習
2.2 伝送方式 アナログ伝送とデジタル伝送 ■アナログ回線でデジタルデータを転送する場合, デジタル to アナログ変換
コンピュータと音 B3 入野仁志(irino).
Presentation transcript:

第5章 伝送理論と伝送技術 5.1 電気通信設備の概要 5.2 アナログ伝送方式 5.3 ディジタル伝送方式 5.4 データ伝送方式 第5章 伝送理論と伝送技術 5.1 電気通信設備の概要 5.2 アナログ伝送方式 5.3 ディジタル伝送方式 5.4 データ伝送方式 5.5 伝送線路 5.6 漏話・雑音など

5.3 ディジタル伝送方式 5.3.1 パルス符号変調方式(PCM) 5.3.2 時分割多重化方式(TDM) 5.3.3 同期方式

5.3.1 パルス符号変調方式 (1)各種のディジタル変調方式 5.3.1 パルス符号変調方式 (1)各種のディジタル変調方式 ①ディジタル信号 (変調信号) 1 0 1 1 0 1 ②搬送波 ③振幅変調(AM) (伝送ではあまり使われない) ④周波数変調(FM) f1 f0 f1 f1 f0 f1 ⑤位相変調(PM) (2相位相変調の場合) 0 π 0 0 π 0

受信側では,どれが基準波の位相かを判断できない 先行する搬送波の位相との差によって判定する。 差動位相変調方式 受信側では,どれが基準波の位相かを判断できない 先行する搬送波の位相との差によって判定する。 これを差動位相変調方式と呼ぶ

APM(Amplitude Phase Modulation) 位相変位 振幅位相変調 APM(Amplitude Phase Modulation) 4相 8相 1010 01 00 011 010 000 1011 0010 1000 0011 111 001 0000 基準 0111 0001 基準 1001 1111 基準 11 10 110 100 101 0110 0101 0100 2,400 bps 1110 1101 4,800 bps 1100 9,600 bps

(2)音声信号のディジタル化 ①パルス振幅変調(PAM:Pulse Amplitude Modulation) 音声信号をパルスの振幅変化に変換。雑音やひずみによって振幅が変化し伝送品質が劣化する。 ②パルス幅変調(PWM:Pulse Wide Modulation) 雑音の影響は受けにくいが,パルス波形のひずみが伝送品質に直接影響する。 ③パルス位相変調(PPM:Pulse Phase Modulation) パルス幅を変えないで一定の高さと幅を持ったパルスを基準時点からパルス幅に相当する時間だけ伝送する。パルスの位置が伝送路の雑音やひずみを受ける。 ④パルス符号変調(PCM:Pulse Code Modulation) パルスの有無の組合せによる符号で伝送する。伝送路による伝送品質に対する影響が少ない。

(3)アナログ信号と比較した ディジタル信号の優位性 ①位相のずれや振幅ひずみの影響を受けにくく,雑音妨害に強い。 ②漏話(cross talk)がなく,時分割が可能である。 ③画質劣化や音質劣化を意識せず複写が可能である。 ④コンピュータ処理が可能である。 [注] 画像・動画をディジタルデータとして転送するには, 広い伝送帯域が必要であり,コストも高いが, IC技術,光通信技術などのディジタル技術, 帯域圧縮技術等の進歩・発展が著しい。

(4) 標本化・量子化・符号化 (a)PCM方式の流れ (4) 標本化・量子化・符号化 (a)PCM方式の流れ パルス符号変調(PCM:Pulse Code Modulation)方式の例 (入力) ① ② ③ 標本化 量子化 符号化 (あるいはサンプリング) 伝送路 (出力) ④ ⑤ 復号化 補間ろ波

(b)標本化 ① 一定の時間間隔でアナログ信号の振幅値を抽出すること。 1秒間をいくつに分割するかをサンプリング周波数という。 ① 一定の時間間隔でアナログ信号の振幅値を抽出すること。 1秒間をいくつに分割するかをサンプリング周波数という。 ② 振幅に応じて変化するパルスを PAM(Pulse Amplitude Modulation)という。 ③ 標本化定理   「原信号に含まれている最高周波数の2倍以上で標本化すれば, 原信号を完全に復元できる」    周波数帯域は 0.3~3.4 kHz であるから 余裕をもって最高周波数を約 4 kHzとすると, 標本化周波数は,8 kHz以上となる。    パルス間隔は 1/8,000=125μ秒以下となる。

(c)量子化・符号化 ① 標本値は無限個の実数値であるが, これを有限個の値にする。すなわち整数化を行う。 ① 標本値は無限個の実数値であるが, これを有限個の値にする。すなわち整数化を行う。 ② 区切られたステップ数を量子化ステップという。 ③ 量子化によって区切られた値を 0,1の符号(2進数)の信号に変換することを符号化といい, 信号が何ビットで表現されるかを量子化ビットという。 ④ 量子化の際の丸め誤差による雑音を量子化雑音という。 ⑤ サンプリング周波数が高く,量子化ビットが多いと 量子化雑音が少なくなり,音質が良くなる。

(d)復号化・補間ろ波 ① デジタル伝送路より受け取ったパルスを 受信側とは逆の操作でPAMパルスに戻すことを復号化という。 ① デジタル伝送路より受け取ったパルスを 受信側とは逆の操作でPAMパルスに戻すことを復号化という。 ② PAMパルスを滑らかに結ぶことで 送信前のアナログ信号に戻すことを補間ろ波という。 ③ 補間ろ波は低域フィルタと同じである。 音声信号の場合,4 kHz以下の周波数だけを取り出すことで 実現される。 サンプリング 間隔 PAMパルス 間隔 音声波形 PAMパルス 補間ろ波

(e)音声のビットレート ① 電話伝送では,PAMパルスをパルス8で符号化する。 これを「符号化ビット数が8である」という。 ② 秒あたりのパルス数をビットレート(単位:bits/sまたはbps)と いう。標準的には,符号化ビット数が8であるため    8bits×8,000回/秒 = 64,000 bits/s = 64 kbps となる。

(5)音楽等のデータについての補足 ①人間が耳で感じることができる周波数範囲は,音声信号より広く, 20 Hz ~ 16 kHz 程度である。 ②特に感度が良いのは, 1,200~4,000 Hz のあたりである。 ③音として感じる強さの限界を最低可聴値という。

5.3.2 時分割多重化方式 (1)パルス符号変調の多重化方式 TDMの構成モデル 5.3.2 時分割多重化方式 (1)パルス符号変調の多重化方式 TDMの構成モデル スイッチSおよびRは同一速度でなければならない CH1 CH1 CH2 CH2 CH3 CH3 CH4 CH4 伝送路 送信 受信 ロータリースイッチS ロータリースイッチR

条件 ①送信側のすべてのパルスの速度は同じである。 ②両回転スイッチは常に同一速度で回転する。 受信された多重化信号からタイミング信号を抽出する(クロック同期) ③ロータリスイッチの接点位置を同じ位置に合わせなければならない。 ロータリスイッチの回転ごとに特定のパターンを挿入する(フレーム同期)

ビットデータの多重化の様子 ビットデータの多重化する例を示す 1 1 1 1 1 1 1 1 1 多重化 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 CH1 1 1 CH2 1 1 1 CH3 1 1 CH8 多重化 1 1 1 1 1 1 1 1 1 C H 8 C H 3 C H 2 C H 1 ロータリー スイッチが 1回転する時間 時間 (b) TDMの多重化の様子

PAMデータ多重化の様子 PAMデータの多重化 多重化 C H 4 C H 3 C H 2 C H 1 ロータリー スイッチが 1回転する時間 時間 (b) TDMの多重化の様子

1フレーム ( 8 ビット ×24 チャネル + 1 = 193タイムスロット) PCM波形の多重化の様子 多重化されたPCM波形 1フレーム ( 8 ビット ×24 チャネル + 1 = 193タイムスロット) 1 /8,000秒 = 125 μ秒 CH1 約 5.2 μ秒 CH2 約 5.2 μ秒 CH24 約 5.2 μ秒 (≒ 125/24 μs) 1タイムスロット0.65 μs 0.324 μs 1 2 3 4 5 6 7 8 1 2 3 4 5 6 7 8 1 2 3 4 5 6 7 8 フレーム同期パルス 1タイムスロット = 125μ秒/193 = 0.648μ秒(1.544MHz) 1デューティ = 1タイムスロット/2 =0.324μ秒

PCM信号のS/N比 ビット数と信号対雑音比 ビット数N レベル数2N Sp/Nf 4 16 35 [dB] 5 32 41 6 64 47  4 16 35 [dB]  5 32 41  6 64 47  7 128 53  8 256 59  9 512 65 10 1,024 71 11 2,048 77 12 4,096 83 13 8,192 89 14 16,384 95 15 32,768 101 16 65,536 107 Sp/Nf bit数 Sp/Nf=6.02×N+10.8 [dB] Sp:信号の最大振幅値, Nf:雑音の実効値

5.3.3 同期方式 (1)クロック同期(またはビット同期) 5.3.3 同期方式 (1)クロック同期(またはビット同期) ビット同期の2つの方法 ①スタッフ同期 ダミーのパルス(スタッフパルスという)を挿入することで同期化し, 受信側でそのパルスを除去する。 多重化する信号相互の周波数が一致しないので非同期多重とも呼ぶ。 ②網同期 全国各地にまったく同一の周波数を分配し, これに基づいて伝送装置,ディジタル交換機,ディジタル端末等に 必要なクロックを供給する。 スタッフ同期のStuffとは「詰める」という意味の英語。 Staff(職員)の意味ではないので気をつけたい。

(2)スタッフ同期 スタッフ同期の原理 同期がとれていない 同期がとれている 入力信号1 出力信号1 読み出し クロック 出力信号2 入力信号2 スタッフビット

スタッフ同期多重 スタッフ同期多重の原理 スタッフ 挿入 回路 フレーム パルス 挿入回路 多重化 スタッフ 挿入 回路 スタッフ パルス 6 5 4 3 2 1 6 5 4 3 2 1 フレーム 同期信号 スタッフ 挿入 回路 スタッフ パルス 6’6 5’5 4’4 3’3 2’2 1’1 同期が 取れていない 同期が 取れている フレーム パルス 挿入回路 多重化 多重出力信号 6’5’4’3’2’1’ 6’5’4’ 3’2’1’ スタッフ 挿入 回路 高速側 低速側

(3)網同期 通信網内の各装置の基本周波数を一致させることで同期をとる方法。 [網同期の種類」(従属同期方式が最も用いられている) ① 独立同期方式 それぞれの交換局に高精度の発振機を独立に設置して, 同一周波数で動作させるもので国際間の通信に用いられる. ② 従属同期方式 特定の交換局に主発振機を置き, 分配器を通じて基本周波数(クロック)を分配する. 必然的に基本周波数が一致することになるので,容易に多重化することができる. ③ 相互同期方式 各交換局が制御発振機を設置し,接続される他局の発振機と相互に同期を取る方法.   それぞれの交換局に高精度の発振機を独立に設置して,同一周波数で動作させる.

同期多重 同期多重:網同期を用いて多重化すること。 [同期多重の種類] ①周波数同期多重  [同期多重の種類] ①周波数同期多重 多重化しようとする信号のビット位置だけを合わせて多重化する。 ②位相同期多重方式 フレーム位相も正しく合わせる

スタッフ同期と網同期多重 同期方式 スタッフ同期多重 (非同期多重) フレームパルスの挿入 網同期多重 (同期多重) スタッフ同期多重 (非同期多重) フレームパルスの挿入 網同期多重 (同期多重) ビット同期多重(位相のみを合わせる) (周波数同期多重) 位相同期多重 (フレーム位相までを合わせる)