遅れのある変数(ラグ変数) 被説明変数に時間的な遅れがある場合の対処方法

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遅れのある変数(ラグ変数) 被説明変数に時間的な遅れがある場合の対処方法 計量経済学Ⅱ 4章後期分 4章 多重回帰 ③ラグ変数 遅れのある変数(ラグ変数) 被説明変数に時間的な遅れがある場合の対処方法 今回の内容は以下の参考書の内容を元にしています 山本拓・竹内明香『入門計量経済学』新世社、2013年11月 7章 多重回帰分析の拡張 7.3 遅れのある変数(ラグ変数) p.160-163

これまでの推計式では、(実は)被説明変数と説明変数 が同時に変化すると仮定していた 1.遅れのある変数とは ラグ (遅れ)とは これまでの推計式では、(実は)被説明変数と説明変数 が同時に変化すると仮定していた 被説明変数Yと説明変数X2, X3は下付の記号が「i」で同じ 時系列データならば、時点は同じことを意味する 消費関数で考えると、ある時点の所得の増加が、同じ時点の消費に どの程度影響を与えるか、という定式化になっている しかし、経済活動には、「ラグ(時間的な遅れ)」が発生す ることが考えられる 消費関数で考えると、①今月の所得の増加が、今月の消費に与え る影響、とともに、②前月の所得の増加が今月の消費に与える影響 もあるだろう (所得増加の影響はすぐに現れない部分がある) そこで、経済活動の時間的な遅れ(ラグ)を、推計式に取り込 んでいきたい→ラグ変数を利用

1.遅れのある変数とは ラグ変数(遅れのある変数)とは ラグ変数とは、時点をずらしたデータのこと 1979年のデータはないので、RYDのラグ変数は、1981年から 始まる ラグ変数を説明変数に用いると、ラグを取った期間の分、推計期間 も短くなるので、データ数の少ない場合は注意

1.遅れのある変数とは ラグ変数(遅れのある変数)を用いた定式化 ラグ変数(遅れのある変数)を用いない定式化 ラグ変数(遅れのある変数)を用いた定式化 ラグ変数(遅れのある変数) ラグなし変数とラグあり変数の係数から、短期効果と長 期効果を計算できる 短期効果  当期のX2が被説明変数に与える効果 限界効果 当期のX2が1単位変化した時の、当期の被説明変数の 変化量に与える効果 長期効果 過去から当期までのX2が被説明変数に与える効 果 X2 1単位の変化が長期にわたって持続した時に、被説明変数に対 して最終的にどれだけの変化をもたらすか

1.遅れのある変数とは ラグ変数(遅れのある変数)を用いた推計結果 ラグ変数(遅れのある変数)を用いない消費関数の推計 所得のラグ変数を用いた消費関数の推計 比較 決定係数は同じだが、ラグありのほうが、撹乱項の標準誤差s が1割ほど減少→ラグ変数を加えたほうが式として有効 今期の消費RCiには、   今期の所得RYDiが影響を与える 今期の消費RCiには、   今期の所得RYDiに加えて、前期の所得RYDi-1も影響を与える

ラグ変数を用いる意義は。。 推計結果のパフォーマンス(決定係数、t値・p値等)を上 げる、というよりは、理論への対応が主な目的 例)消費は、今年の所得だけでなく昨年の所得の影響もある 例)マクロの輸入は、原油等で長期契約が行われることから、 昨年の所得の影響もある 例えば、消費と所得の散布図をみてみると、ラグなし・ラ グありで、あまり違いはみられない 5枚目のスライドのように、ラグをとることで、攪乱項の標準誤 差が減少するといった「マイナーな」改善がある場合もある 散布図:所得(ラグなし)と消費 散布図:所得(ラグあり)と消費

ラグ付き内生変数とは、被説明変数のラグをとったもの を、説明変数のひとつとして用いていく 2.ラグ付き内生変数 ラグ付き内生変数とは まず、内生変数とは、被説明変数のこと cf 外生変数:説明変数(原因)  ラグ付き内生変数とは、被説明変数のラグをとったもの を、説明変数のひとつとして用いていく 消費関数の例  ラグ付き内生変数

2.ラグ付き内生変数 ラグ付き内生変数を用いた推計式 ラグ付き内生変数を用いた推計式(一般形) 時間を追った影響関係を分析するためには、説明変数 にラグ変数を加えていく(        )ことが理想的→× 多重共線性→ラグ付き内生変数で代替 短期効果と長期効果を計算できる 説明変数すべてについて計算可能 被説明変数 説明変数 説明変数 (ラグ付き内生変数)

2.ラグ付き内生変数 ラグ付き内生変数を用いた推計の例 消費関数にラグ付き内生変数を用いた推計結果 この場合は、ラグ付き内生変数なしの推計結果と比べると、決定係 数等はあまり変わらないが、sが15%程度低下→ラグ付き内生変数 をいれた効果はある では、推計結果のパフォーマンスを上げるために、ラグ付き内 生変数は基本的に入れたほうがいいか?→そうとは限らない →→多重共線性 短期効果と長期効果の計算 ラグ付き内生変数を入れると推計のパフォーマンスが非常に上がることがある 劇薬?