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資本市場論 (11) オプション 三隅隆司
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オプション (Option) ある商品を、あらかじめ決められた特定の価格で、一定量、一定期限(あるいは一定期限内)に、売買する権利。
はじめに オプション (Option) ある商品を、あらかじめ決められた特定の価格で、一定量、一定期限(あるいは一定期限内)に、売買する権利。 「買う権利」 = コール・オプション (Call Option) 「売る権利」 = プット・オプション (Put Option) 売買される商品 = 原資産 (underlying asset) あらかじめ決められた特定の価格 = 行使価格 (exercise price; striking price) 一定期限 = 満期日 (maturity, expiration date, exercise date) 権利行使が満期日のみに限定 = ヨーロピアン・オプション (European option) 満期までの期間内であればいつでも行使可能 = アメリカン・オプション (American option) オプションの価格 = プレミアム (premium)
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コール・オプション (Call option)
コール・オプション (1) コール・オプション (Call option) ある商品を、あらかじめ決められた特定の価格で、一定量、一定期限(あるいは 一定期限内)に、購入する権利。 - 買い手にとっては権利であるが、売り手にとっては義務である。 「権利」であることの意味: 自身の利益になる場合にのみ権利行使することができる。 A社株を、権利行使価格500円で購入することのできるヨーロピアン・オプションを考える。 満期日におけるA社株の価格が700円 → コールオプションは、700円のA社株を500円で購入できる権利を意味する → 権利行使によって利益 満期日におけるA社株の価格が300円 → 権利行使によって損失 コール・オプションの保有者は、満期日の原資産価格が権利行使価格より高い場合のみ権利を行使する。
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コール・オプションのペイオフ S* > K → イン・ザ・マネー (in-the-money) S* < K →
コール・オプション (2) コール・オプションのペイオフ or C* : コール・オプションの満期日のペイオフ S *: 原資産の満期日における市場価格 K : 権利行使価格 S* > K → イン・ザ・マネー (in-the-money) 直ちにオプションを行使した場合、オプション保有者に正のキャッシュフローが生じる状況 (一般的な定義) S* < K → アウト・オブ・ザ・マネー (out-of-the-money) 直ちにオプションを行使した場合、オプション保有者に負のキャッシュフローが生じる状況 (一般的な定義) S* = K → アット・ザ・マネー (at-the-money)
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オプション市場はゼロ・サム・ゲームである。 買い手の利益(損失)は、売り手の損失(利益)となる。
コール・オプション (3) ペイオフ ペイオフ コールの買い手 コールの売り手 C 0 0 S* K S* K - C C : オプション・プレミアム オプション市場はゼロ・サム・ゲームである。 買い手の利益(損失)は、売り手の損失(利益)となる。
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FG株100株を、権利行使価格550,000円で購入することのできるヨーロピア ン・コール・オプション 満期日は、6ヶ月後
コール・オプション (4) コール・オプションの例 FG株100株を、権利行使価格550,000円で購入することのできるヨーロピア ン・コール・オプション 満期日は、6ヶ月後 1株を購入するためのオプション・プレミアムが30,000円 FG株の現在価格は500,000円 ★ 初期投資額 = 100(株)×30,000(円)=3,000,000(円) ▼ 満期日におけるFG株の価格が400,000円の場合 ◆ 権利行使をしない → 投資家は、初期投資額(3,000,000円)を全額失う ▼ 満期日におけるFG株の価格が1,000,000円の場合 ◆ 権利行使 → 投資家は、(1,000,000 – 550,000) ×100 = 45,000,000(円) の利益 初期投資を考慮すると、純利益は42,000,000(円) 300万円の投資額に対して、4,200万円の利益 現物売買: 5,000万円の投資額に対して、5,000万円の利益
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プット・オプション (Put option)
プット・オプション (1) プット・オプション (Put option) ある商品を、あらかじめ決められた特定の価格で、一定量、一定期限(あるいは一定期限内)に、売却する権利。 プット・オプションのペイオフ or S* < K → イン・ザ・マネー (in-the-money) S* > K → アウト・オブ・ザ・マネー (out-of-the-money) S* = K → アット・ザ・マネー (at-the-money)
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プットの買い手 プットの売り手 プット・オプション (2) P : オプション・プレミアム ペイオフ ペイオフ P 0 0 S* K S*
プット・オプション (2) ペイオフ ペイオフ プットの買い手 プットの売り手 P 0 0 S* K S* K - P P : オプション・プレミアム
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コンビネーション (combination)
オプションを利用した投資戦略 (1) ヘッジ (hedge) 原資産とオプションとの組み合わせ。原資産の損失をオプションによって防御したり、オプションの損失を原資産で防御したりする。 スプレッド (spead) 権利行使価格や満期日の異なる同一タイプのオプションの組み合わせ。一方を購入し、他方を売却する。権利行使価格が異なるオプションの組み合わせの場合をバーティカル・スプレッド(vertical spread)、満期日の異なるオプションの組み合わせの場合をホリゾンタル・スプレッド(horizontal spread)という。 コンビネーション (combination) 同一の原資産に対する異なったタイプのオプションの組み合わせ。
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オプションを利用した投資戦略 (2) ; ヘッジ (1)
カバード・コール (covered call) 現物の売り + コール・オプションの買い 現物の買い + コール・オプションの売り ペイオフ コールの買い ペイオフ 現物の買い K 0 原資産価格 0 K 原資産価格 コールの売り 現物の売り 原資産価格の急激な上昇の可能性から投資家を守る投資戦略
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オプションを利用した投資戦略 (3) ヘッジ (2)
オプションを利用した投資戦略 (3) ヘッジ (2) プロテクティブ・プット (Protective Put) 現物の売り + プット・オプションの売り 現物の買い + プット・オプションの買い ペイオフ ペイオフ 現物の買い プットの売り 0 K 原資産価格 K 原資産価格 0 プットの買い 現物の売り 原資産価格の急激な下落の可能性から投資家を守る投資戦略
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オプションを利用した投資戦略 (4) スプレッド (1) : ブル・スプレッド
ブル・スプレッド (bull spread) コール・オプションをある行使価格 (K1 ) で買い、原資産が同一のコール・オプションをそれより高い行使価格 (K2 )で売る。 ブル・スプレッドを組む投資家 は、株価の上昇を期待。 ブル・スプレッドは、原資産価格 の上昇による収益の可能性に上 限をつける一方で、下落リスクを 限定。 原資産価格 買いコール 売りコール 総ペイオフ K2 ≦ S S - K1 K2 - S K2 - K1 K1 ≦ S < K2 0 S ≦ K1 ペイオフ ブル・スプレッドは、低い行使価格のプット・オプションを買い、高い行使価格のプット・オプションを売ることによっても作成できる。 C2 0 K1 K2 原資産価格(S) - C1
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オプションを利用した投資戦略 (5) スプレッド (2) : ベア・スプレッド
ベア・スプレッド (bear spread) コール・オプションをある行使価格 (K1 ) で売り、原資産が同一のコール・オプションをそれより高い行使価格 (K2 )で買う。 原資産価格 買いコール 売りコール 総ペイオフ K2 ≦ S S - K2 K1 - S -(K2 - K1) K1 ≦ S < K2 0 -(S - K1) S ≦ K1 ベア・スプレッドを組む投資家は、 株価の下落を期待。 ベア・スプレッドも、収益に上限 をつける一方で、損失のリスク を限定。 ペイオフ ベア・スプレッドは、高い行使価格のプット・オプションを買い、安い行使価格のプット・オプションを売ることによっても作成できる。 C1 K2 0 K1 原資産価格(S) -C2
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オプションを利用した投資戦略 (6) スプレッド (3) : バタフライ・スプレッド
バタフライ・スプレッド (butterfly spread) 低い行使価格 (K1) のコール・オプション1単位と高い行使価格 (K3)のコール・オプションを1単位購入し、行使価格K2 (K1 < K2< K3) のコール・オプション2単位を売却 原資産価格が、K2 からあまり離れた動きをする可能性は少ないと考えている投資家にとって適切な投資戦略 ペイオフ バタフライ・スプレッドは、低い価格と高い行使価格のプット・オプションをそれぞれ1単位購入し、中間の行使価格のプット・オプションを2単位売却することによっても作成できる。 2C2 K1 K1 0 K2 原資産価格(S) - C3 - C1
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オプションを利用した投資戦略 (7) コンビネーション (1) : ストラドル
ストラドル (straddle) 同じ行使価格で同じ満期日のコール・オプションとプット・オプションを購入。 オプション満期日の原資産価格が行使価格に近い場合、ストラドルは損失をもたらす。 原資産価格が、上昇・下落いずれかの方向に大きく動けば、大きな収益につながる。 ペイオフ コールの買い K 原資産価格(S) ストラドルの「買い」は、原資産価格が上か下かに大きくふれる可能性が強いと思われるものの、どちらの方向になるのか見当がつかない場合に有効な投資戦略。 0 プットの買い 将来の原資産価格がある値の近辺に収束する可能性が高いと思われる場合には、ストラドルの売り(プットのコールの売りによるコンビネーション)が有効。
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オプションを利用した投資戦略 (8)コンビネーション (2) : ストラングル
ストラングル (strangle) 同一満期日で、行使価格の異なるプット・オプションとコール・オプションを購入。 原資産価格の大きな変動を予測しているが、上方・下方のいずれの方向かがわからない場合に有効。 ストラドルをとる場合より、上下方向へのより大きな変動を予測。 権利行使価格 K1 のプット・オプションと K2の コール・オプションを購入した場合: (K1< K2 ) ペイオフ コールの買い 将来の原資産価格がある一定の幅(ストラドルの場合よりは範囲が広い)に収まる可能性が高いと予測している場合には、「ストラングルの売り」が有効。 K1 K2 0 原資産価格(S) プットの買い
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ヨーロピアン・コールとヨーロピアン・プットの価格の間には密接な関係がある。
プット・コール・パリティ (1) ヨーロピアン・コールとヨーロピアン・プットの価格の間には密接な関係がある。 原資産、行使価格および満期日が同じヨーロピアン・コール・オプションとヨーロピアン・プット・オプションを考える。(満期日のキャッシュフローに着目) コールをロング・ポジション、プットをショート・ポジションで保有する。 S - K ペイオフ ↓ 額面価格Kの割引債を安全利子率(r)で発行し、原資産を購入(購入価格S0)するという投資からの収益と同一。 コールの買い 0 K 原資産価格(S) ↓ 両者の投資額は等しくなければならない。(無裁定の条件) プットの売り
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Put-Call Parity 投資戦略 投資額 (時点O) 満期日(T)のペイオフ ST < K ST > K
プット・コール・パリティ (2) 投資戦略 投資額 (時点O) 満期日(T)のペイオフ ST < K ST > K コールの購入+プットの売却 C - P 0 - (K – ST) = ST – K (ST – K) – 0 株式の購入+ 額面Kの割引債発行 S0 – PV(K) ST – K 以上より、以下の関係が成立する。 Put-Call Parity
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コール・オプションの価値 (C )が、原資産価格 (S0) より高くなることはない。
プット・コール・パリティ (3) ヨーロピアン・コール・オプションの下限 プット・コール・パリティより、ヨーロピアン・コール・オプションのプレミアムの下限が導出される。 P≧0 であるから、 コール・オプションの価値 (C )が、原資産価格 (S0) より高くなることはない。 ★ C>S0 の場合、原資産を購入し、オプションを売却するという裁定取引 によって無リスクで利益を上げることが可能。 以上より、以下の関係式が成立。
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2項モデル (Binomial Models)
次期の原資産の価格は、現在価格に比べて上昇・下降のいずれか。 原資産価格は2つの値しか取らない。 2項樹形 (binomial tree) 2項モデルにおける原資産価格の動向を図示したもの。 日経平均の動向(2項樹形) t+1 t+2 t 20,000 (上昇) ・・・・ 18,000 (上昇) (下落) 16,000 ・・・・ 16,000 (上昇) 14,000 (下落) ・・・・ 12,000 (下落)
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オプション(より一般的にデリバティブ)の評価の基本にあるアイディア
オプション評価の基本アイディア オプション(より一般的にデリバティブ)の評価の基本にあるアイディア 原資産および安全資産を組み合わせることによって、当該オプション( or デリバティブ) と同一の将来キャッシュフローを生み出す複製ポートフォリオを作成することができる。 ↓ 裁定機会が存在しない状況においては、当該オプション( or デリバティブ) は、複製ポートフォリオを同一の価値を有するはずである。 オプション評価の手順: 複製ポートフォリオを組成する。 2. 複製ポートフォリオの現在価値を求める。
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安全資産へ B の金額投資し、原資産を Δ 単位購入するというポートフォリオを考える。
複製ポートフォリオの組成 (1) 安全資産へ B の金額投資し、原資産を Δ 単位購入するというポートフォリオを考える。 このポートフォリオがあるオプションの複製ポートフォリオであるとは、次の式が成立していることを意味する。 (11 – 1) Si : 原資産の価値 rf : 安全利子率 Vi : オプションの価値 (11 -1) において、未知数は Δ と B の2変数 (11 -1) は、原資産価格が上昇した場合 (i = u) と下落した場合 (i = d) との2つ の式がある。 与えられた連立方程式を解くと、以下が得られる。 (11 – 2)
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6ヶ月後に株式 A を125万円で購入するというヨーロピアン・コール・オプションを考える。 なお、安全利子率は 8 %であるとする。
複製ポートフォリオの組成 (2) 株式 A を考える。株式 A の株価は現在100万円で、6ヶ月後には200万円に上昇するか、50万円に下落するかのいずれかであるということがわかっているとする。 6ヶ月後に株式 A を125万円で購入するというヨーロピアン・コール・オプションを考える。 なお、安全利子率は 8 %であるとする。 株価 = 200 満期日におけるオプションの価値: オプション=75 ・ 株価= 200万円 株価=100 → 権利行使して、75万円の利益 オプション = ? 株価 = 50 ・ 株価= 50万円 オプション = 0 → 権利行使せず、利得はゼロ 複製ポートフォリオ; Δ = 0.5 B = -23.15 →
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V = ΔS + B オプションの公正価値は、その複製ポートフォリオを購入するのに要する費用と同一でなければならない。
複製ポートフォリオの現在価値 (1) オプションの公正価値は、その複製ポートフォリオを購入するのに要する費用と同一でなければならない。 - 両者が異なっていれば、裁定機会が存在。 複製ポートフォリオ = 原資産に Δ 単位、安全資産に金額 B だけ投資 原資産の現在価格をS とする: 複製ポートフォリオの購入費用 = ΔS + B オプションの価値 : V = ΔS + B (11 – 3) 先の例において、株式 A に対するコール・オプションの価値: 100×0.5 - = (万円)
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(11 – 3)で与えられるオプション評価は、株価の上昇確率 (期待株価) および投資家の危険回避の程度には依存していない。
複製ポートフォリオの現在価値 (2) (11 – 3)で与えられるオプション評価は、株価の上昇確率 (期待株価) および投資家の危険回避の程度には依存していない。 株価を所与とすると、期待株価および投資家の危険回避度に関する情 報は不必要であるということを意味している。 - これらの情報は、すでに現在の株価に織り込まれている。 投資家の危険回避度を所与とすると、将来 株価が上昇(下落) する可能性が高ければ、現在の株価はより高く(低く)なる。 将来の期待株価を所与とすると、投資家の危険回避度が大きく (小さく)なるにつれて、現在の株価は低く(高く)なる。
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危険中立評価 (Risk Neutral Valuation) (1)
2項モデルにおいて、株価の上昇割合は u 、下落割合は d であるとし、この割合は時間を通じて一定であるとする。 複製ポートフォリオを組成すると、(11-2)より、以下が得られる。 株価 = uS オプション = Vu = max {uS-K, 0} 株価 S オプション (11 – 4) 株価 = dS オプション = Vd = max {dS-K, 0} さらに、( )より、オプションの価値は、以下のように与えられる。 (11 – 5)
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(11 -5) 式の右辺第1項のVuの係数を π とすると、次式が成立している。
危険中立評価 (Risk Neutral Valuation) (2) (11 -5) 式の右辺第1項のVuの係数を π とすると、次式が成立している。 (11 – 6) π を危険中立確率 (risk neutral probability ) と呼ぶ。 この確率πのもとでは、原資産の期待収益率が安全資産の収益率と等しくなる。 危険中立的な世界では、全ての資産の期待収益率は安全利子率と等しくなる。 原資産の確率をπと仮定したことは、危険中立的な世界を仮定したことを表し ている。 (11-5) においてオプションの価値は、期待収益を安全利子率で割り引いたもの として与えられている。
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① 時点2における上の2つの枝(Cuu およびCud )の価値を時点1で評価する。(Cu)
2段階の2項モデル (1) 株 価 の 動 向 コール・オプション t = 2 t = 0 t = 1 株価 u2S オプション Cuu Cuu= max {u2S-K, 0} 株価 uS オプションCu 株価 S オプション C 株価 udS オプション Cud Cud= max {udS-K, 0} 株価 dS オプションCd 株価 d2S オプション Cdd Cdd= max {d2S-K, 0} ① 時点2における上の2つの枝(Cuu およびCud )の価値を時点1で評価する。(Cu) ② 時点2における下の2つの枝(Cud およびCdd )の価値を時点1で評価する。(Cd) ③ 時点に1におけるオプション(CuおよびCd)の価値を時点0で評価する。(C)
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いずれの状況においても、危険中立確率は(11-6)式のπで与えられることに注意。
2段階の2項モデル (2) いずれの状況においても、危険中立確率は(11-6)式のπで与えられることに注意。 ステップ①&② 危険中立評価より、以下のように与えられる。 ステップ③
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2項モデルによるオプション評価 (1) uNS max{uNS-K,0} (NC0) π π uN-1dS max{uN-1dS-K,0}
1-π uN-1dS max{uN-1dS-K,0} (NC1) π u2S π 1-π uS uN-2d2S max{uN-2d2S-K,0} (NC2) π π udS S π 1-π 1-π π dS π 1-π d2S udN-1S max{udN-1S-K,0} (NCN-1) 1-π 1-π dNS max{dNS-K,0} (NCN)
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2項モデルによるオプション評価 (2) 2項公式 権利行使価格K、満期までの期間Nの配当支払いのない株式に対するヨーロピアン・コール・オプションを考える。現在の原資産価格(株価)がSであるとするとき、このオプションの価値は、以下のように与えられる。 (11 – 7)
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π= (1+r-df)/(u-d) = (1+0-0.5)/(2-0.5) = 1/3
2項モデルによるオプション評価 (3) 株式 A に対するヨーロピアン・コール・オプションの価値を求めたい。現在、このオプションは、アット・ザ・マネー・オプションである。株式 A の株価動向は、次期の株価が、現在の2倍になる (u=2) か半分になる (d=0.5) かのいずれかであるというパターンにしたがっているとする。現在の株価が32万円、安全利子率をゼロ(rf=0)、満期までの期間を3期間 (N=3)とするとき、このコール・オプションの価値を求めなさい。 危険中立確率πを求める。 π= (1+r-df)/(u-d) = ( )/(2-0.5) = 1/3 よって、求めるオプションの価値は、(11-7)より、 C = (1/3)3(23* )+3(1/3)2(2/3)(22*(1/2)*32 – 32) + 3(1/3)(2/3)2(0)+ (2/3)3(0) = (1/27)*224 + (2/9)*64 = 15.41(万円) (注) アメリカン・オプションの場合には、満期日前における権利行使の可能性も考慮 することが必要。
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Black-Scholes Formula (1) 仮 定
1.資本市場は完全である。 a. 市場は競争的。 b. 取引コストや税金は存在しない。 c. 情報は完全であり、無コストで入手可能。 d. すべての証券は、完全に分割可能 2. 投資家は、安全利子率 r で無限に貸借可能。 3. 安全利子率 r は、時間を通じて一定であり、その値は投資家にとって既知。 4. 原資産価格 S は、期待値と標準偏差が一定という条件の下で、以下のよ うな確率過程にしたがっている。 。 5.原資産に配当はない。 6.無リスクの裁定機会は存在しない。 7.オプションは、契約の満期日においてしか行使できない。 (ヨーロピアン・オプション)
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Black-Scholes Formula (2)
満期日までの間に配当が支払われることのない株式のリターンが、対数正規分布にしたがっているとする。株式は摩擦のない市場で連続的に取引されており、その収益率の標準偏差はσで一定であるとする。このとき、権利行使価格 K 、満期までの期間 T であるヨーロピアン・コール・オプションの価値は以下の式によって与えられる。 (11 - 8) N(.) : 標準正規分布の分布関数
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Black-Scholes Formula (3)
c : コール・オプション・プレミアム (コール・オプションの現在における価値) S : 現在の株価 K : 権利行使価格 r : 安全利子率 e : 自然対数の底 (e = … ) T : 満期までの期間 ln : 自然対数の演算子 σ: 株式収益率の標準偏差
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Black-Scholes Formula (4)
d →、すなわち、N(d) = 1 となる。したがって、Black-Scholes 公式より、 c = S – e-rT K あるいは、次のようにも考えられる: S → のとき、コール・オプションはほぼ確実に権利行使される。 コール・オプションの現在価値は、ST - K の現在価値( S – e-rT K )に等しくなる。 (2) S → 0 の場合 d → - 、すなわち、N(d) = 0 となる。したがって、Black-Scholes 公式より、 c = 0 これについては、次のようにも考えられる: S → 0 のとき、コール・オプションはほぼ確実に権利行使されない。 コール・オプションは無価値 ( 0 ) となる。
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Black-Scholes Formula (5)
以下のようなデータによって特徴づけられるヨーロピアン・コール・オプションの価値を求めなさい。 株価 S = 権利行使価格 K = 安全利子率 r = 0.1 (10%) 満期までの期間 3ヶ月 (0.25年) 株式収益率の標準偏差 σ=0.50 (50%) 正規分布表を用いると、N(0.43) = N(0.18) = 以上より、求めるヨーロピアン・コール・オプションの価値は、 c =100×0. .95e-0.10*0.25 × = 13.70
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} } オプション・プレミアムを決定する要因: ① 原資産の現在の価格水準 ② 原資産の価格変動性
オプション・プレミアムの比較静学 (1) オプション・プレミアムを決定する要因: } ① 原資産の現在の価格水準 ② 原資産の価格変動性 ③ 配 当(アメリカン・オプションの場合) 原資産の価格の動きを 定義する要因 ④ 行使価格 ⑤ 満期までの期間 ⑥ 安全利子率 } オプションの契約内容を定義する要因
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オプションは、イン・ザ・マネーにある (コールの場合)
オプション・プレミアムの比較静学 (2) 原資産価格の水準 (S) 原資産価格が高水準にある → オプションは、イン・ザ・マネーにある (コールの場合) → オプションから利益を得る可能性が大 → オプション・プレミアムは高くなる # プットの場合は逆の効果
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原資産価格の変動性(ボラティリティ) (σ)
オプション・プレミアムの比較静学 (3) 原資産価格の変動性(ボラティリティ) (σ) 原資産価格のボラティリティが大きい → オプションは、イン・ザ・マネーになる可能性も、アウト・オブ・ザ・マネーになる可能性もどちらも高い。 → イン・ザ・マネーから得られる利益が大きくなる一方で、アウト・オブ・ザ・マネーにおける損失は不変 → オプション・プレミアムは高くなる # プットの場合も同じ効果
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オプションは、アウト・オブ・ザ・マネーになる可能性が高い。
オプション・プレミアムの比較静学 (4) 行使価格 (K) 行使価格が高い → オプションは、アウト・オブ・ザ・マネーになる可能性が高い。 → オプションから利益を得る可能性が低い → オプション・プレミアムは低くなる # プットの場合は逆の効果
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満期までの期間 (T) 満期までの期間が長い → 購入コスト(行使価格)の現在価格が低下 → オプションから利益を得る可能性が高まる →
オプション・プレミアムの比較静学 (5) 満期までの期間 (T) 満期までの期間が長い (1) → 購入コスト(行使価格)の現在価格が低下 → オプションから利益を得る可能性が高まる → オプション・プレミアムは高くなる (2) → より多様な可能性がある.(ボラティリティの増大と考えてもよい) → オプション・プレミアムは高くなる # プットの場合,(1) については逆の効果,(2) については同じ効果を有する
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安全利子率 (r) 安全利子率が高い → 購入コスト(行使価格)の現在価格が低下 → オプションから利益を得る可能性が高まる →
オプション・プレミアムの比較静学 (6) 安全利子率 (r) 安全利子率が高い → 購入コスト(行使価格)の現在価格が低下 → オプションから利益を得る可能性が高まる → オプション・プレミアムは高くなる # プットの場合は逆の効果
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基本的要因がオプション・プレミアムに与える影響
オプション・プレミアムの比較静学 (7) 基本的要因がオプション・プレミアムに与える影響 要 因 コール プット 原資産価格の水準 + - 原資産価格の変動性 行使価格 満期までの期間 ? 安全利子率
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価格動向が下図のような2項樹形で表される株式Tを考える(価格の単位
練習問題 価格動向が下図のような2項樹形で表される株式Tを考える(価格の単位 は「万円」です)。このとき、株式 T を原資産、満期までの期間が2期、権利 行使価格27.5万円のアメリカン・プット・オプションのプレミアムを求めなさい。 なお、安全利子率は25%であるとします。 現在 1期後 2期後 80 40 20 20 10 5
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