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海上輸送への モーダルシフト推進に おける規制緩和効果の検討
流通情報工学課程 検﨑 朴郎 指導教官 鶴田 三郎教授 黒川 久幸助教授 鶴田・黒川研究室のけんざきです。 これから発表をさせていただきます。 研究の題目は「海上輸送へのモーダルシフト推進における規制緩和効果の検討」です。
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研究の背景 世界規模での地球温暖化に対する懸念 京都議定書の発効に伴う各国の排出量削減目標 日本における運輸部門での排出量の増加 目標排出量
近年、温室効果ガスによる地球温暖化が懸念され、世界規模での抑制対策が実施されています。 また、昨年2月に発効された京都議定書に伴い各国でのCO2の削減目標が掲げられ、日本においても同様のことが言えます。 日本では1990年度比で6%の削減目標が掲げられ、各産業別にも目標が設定されています。運輸部門でのCO2の排出量は1990年に比べて増加傾向にあり、近年では抑制傾向を示しています。削減目標は2003年度の2億6000万トンに比べて1000万トン削減の2億5000万トンを運輸部門での目標にしています。 図1.運輸部門でのCo2排出量の推移
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運輸部門における排出量削減対策 大きな期待を寄せている モーダルシフトによる削減効果:440万トン 対象分野 対策技術 概要 自動車 旅客
単体燃費改善 省エネ法目標による燃費向上+低公害車導入 エコドライブ アイドリングストップの実施 渋滞緩和 自転車徒歩利用 大都市圏の通勤通学で自動車利用者が自転車へシフト 公共交通機関へのシフト 人流のバス、鉄道へのシフト 貨物 積載率向上 モーダルシフト 船舶、鉄道への自動車貨物のシフト 鉄道 車両のエネルギー効率の向上 輸送量増減 モーダルシフトによる輸送量増加 船舶 航空機 旅客輸送効率の向上 そこで運輸部門の中でも様々な排出量抑制対策を実施し、削減しようとしています。まずは自動車自身の改善策として自動車の燃費の改善やエコドライブの実施などがあります。 これらの対策の中でも特に期待を集めているのが幹線輸送をトラックから鉄道や船舶へ転換するモーダルシフトです。このモーダルシフトの推進によって鉄道へ70万トン、海運へ370万トン、合計440万トンの削減を目指しています。削減目標1000万トンの約半分にあたることからモーダルシフトに大きな期待を寄せていることが分かります。 大きな期待を寄せている モーダルシフトによる削減効果:440万トン
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研究目的 積極的に推進しようとしているモーダルシフトだが実際は進んでいない。 規制緩和による効果について定量的な検討が十分されていない。
法律・規制緩和という視点からのモーダルシフトを捉え、その効果を輸送費用、CO2排出量からの定量的な分析によって明らかにする。 しかしながら分担率はトンキロベースで自動車が55%近くを占めている状況であり、モーダルシフトが推進されているとはいえません。またモーダルシフトへの注目の高さから過去多くのモーダルシフトに関する研究がなされてきましたが、従来の研究ではモーダルシフト推進のための規制緩和等について言及している文献は少なく、その効果について定量的な分析をしている文献はさらに少ない状況です。 そこで私は規制緩和という視点からモーダルシフト問題を捉え、その効果を輸送費用とCO2の削減量の2つの定量的な検討を行い、今まで困難と言われてきた中距離におけるモーダルシフトの可能性を示すことを目的とします。
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物流段階による適用法律の分類 物流 段階 発地 トラック 港湾 船舶 着地 主要 業務 荷役 陸上 輸送 港湾運送 海上 陸上輸送 港湾荷役
1 2 3 4 5 6 7 物流 段階 発地 トラック 港湾 船舶 着地 主要 業務 荷役 陸上 輸送 港湾運送 海上 陸上輸送 港湾荷役 主体者 発荷主 陸運業者 港湾運送事業者 船会社 受荷主 法令 貨物自 動車運 送事業法 港湾運送事業法 運送法 事業法 貨物自動 車運送事 業法 海上輸送では複数の輸送機関を利用することから物流の段階においても適用される法律が変わります。 また、運輸だけでなく極めて多様な分野にわたって関連する法律が存在します。 この表は発地から着地までの物流の段階で行う主要業務とその業務の主体者、同時に適用される主要な法律によって分類した表です。 関連する法令を含めるとさらに多様な法律が存在することが分かります。
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物流段階による適用法律の分類 1 2 3 4 5 6 7 荷役 陸上輸送 港湾運送 海上輸送 港湾荷役 発荷 主 陸運業者 港湾運送事業者
発地 トラック 港湾 船舶 着地 主要業務 荷役 陸上輸送 港湾運送 海上輸送 港湾荷役 主体者 発荷 主 陸運業者 港湾運送事業者 船会社 受荷主 主要法令 貨物自動車運送事業法 港湾運送事業法 海上運送法 道路交通法 港湾労働法 石油石炭税法 自動車損害賠償保障法 内航海運業法 自動車損害買収保障法 交通安全対策法 内航海運組合法 道路法 水先法 自動車ターミナル法 船舶法 海上交通安全法 国税・地方税法、労働基準法 維持に関する法令 道路運送車両法 船舶安全法 車庫法
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各業界からの規制緩和要望 維持費 5件 建造費 3件 運航費 3件 経済活動 3件 維持費 建造費 運航費 経済活動 緩和項目 分野 要望元
モーダルシフトに資する内航船舶の固定資産税の軽減 維持費 日本経済団体連合会・日本物流団体連合会 船舶の検査機関の延長及び検査内容の簡素化 シャーシの車検制度 シャーシの自動車税に関する規制 シャーシの車庫に関する規制 石油化学工業協会・日本化学工業協会・ モーダルシフト船の建造納付金単価 建造費 内航海運組合総連合会 モーダルシフト船の認定条件である距離、寄港地数、積荷条件の緩和 モーダルシフト船の適用範囲として、対象トン数等船型、構造条件 モーダルシフトに資する内航船舶の石油税の特例措置 運航費 日本物流団体連合会・内航海運組合総連合会 岸壁使用時間基準の見直し 日本物流団体連合会 埠頭の岸壁使用料・荷役費等の軽減 港湾運送事業に係る規制 経済活動 日本船主協会・全日本船舶職員協会 荷主企業物流業者へのインセンティブ付与や啓蒙活動 全日本船舶職員協会 環境保全制度を活用した地方運輸局によるモーダルシフト実案の表彰など 維持費 5件 建造費 3件 過去、法律に対する考え方の変化や物流の近代化に対応していくつかの規制が緩和されてきましたが未だに規制緩和の要望が多いことも事実です。 この表はその要望内容の一覧です。 要望の分野で分類するとほとんどの要望が維持費や建造費等の費用に関わる規制であることが分かります。 運航費 3件 経済活動 3件
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検討した項目とその効果・懸念される問題点
規制内容 担当省庁 緩和の効果 懸念される問題 シャーシの車検制度 国土交通省 維持費低減 ・内航海運だけの優遇措置として(長距離トラックやタクシー業界等)から批判 シャーシの自動車税 各地方自治体 ・海上輸送用シャーシの区別ができるか シャーシの車庫 ・違法駐車 船舶の固定資産税 内航船舶の石油税 経済産業省 運航費低減 ・内航海運だけの優遇措置として批判 認定条件関係 建造納付金低減 ・暫定措置事業終了の遅延 港湾運送事業関係 国土交通省 競争的市場の促進 ・悪質事業者の参入 参入規制 ・過度なダンピング 価格規制 ・労働環境の悪化 港湾使用料の見直し 港湾使用者の利便性向上 該当港湾との格差の拡大 先ほどの要望の中からこれらの規制についての検討を行い、その効果と同時に発生しうる問題点をまとめました。 とくに港湾運送事業は主要港で先行して実施されている状況であり、港湾使用料については協議がされていると供に競争的市場の形成を促進する効果が期待できるのでこの規制緩和を優先的に行うべきではないかと考えます。 これらの要望が実際に緩和されるとどの程度輸送費用削減、CO2排出量の削減量に効果があるのかを定量的に試算します。
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需要予測結果から海上輸送運賃が27,641円であれば十分シフトする。
前提条件 モデル航路:東京ー名古屋間 16トンシャーシ195台積みのRORO船 トラック一貫輸送での費用:8万円/台 海上経由一貫輸送 トラックでの集配費用5万円+海上輸送費用 需要予測結果から海上輸送運賃が27,641円であれば十分シフトする。 今回の検討は平成17年9月に発表された日本内航海運組合総連合会 基本政策推進小委員会著の「新規物流に関する報告」を基に設定しています。 前提条件は次の通りです。 東京ー名古屋航路をモデルに16トンシャーシ195台積みのRORO船を使用します。トラックからのシフトと言う意味で、流動量はトラックの流動量を使用します。 この区間でのトラック一貫輸送費は8万円台、海上経由遺憾輸送は末端での集配費5万円と海上輸送費となります。 先ほど紹介した報告書を元に海上輸送運賃が27,641円ならば195台の船舶での運航が十分可能であるとします。するという結果が得られているので その運賃を基準に輸送経費が規制緩和によってどの程度まで削減できるかを検討します。
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規制緩和の3つのケース ケース2 ケース1 ケース3 規制緩和のない 場合の輸送費用 30,968円 実現可能性を考慮した場合① 固定資産税
標準税率の1/10 建造納付金 対象トン当たり2万円 石油税 緩和なし シャーシコスト 貨物取扱費 2割削減 港費 3割削減 実現可能性を考慮した場合② 固定資産税 標準税率の1/10 建造納付金 対象トン当たり2万円 石油税 半額免除 シャーシコスト 500円削減 貨物取扱費 1.5割削減 港費 3割削減 ケース3 規制緩和の内容は船舶の固定資産税、建造納付金、石油税、シャーシに関わる規制、貨物取扱費、港湾使用料でついてです。 規制緩和のない場合を現状とすると運賃より高い30,968円となります。 緩和できる規制とそうでないのもあるので 3つのケースに分けて検討します。ケース1では固定資産税、建造納付金、貨物取扱費、港湾使用料について、ケース2ではそれに石油税、シャーシコストを加え、ケース3ではすべて緩和された場合です。 金額の根拠は様々な文献を参考にしたり、石油税を実際に計算して導きました。 すべて緩和された場合 固定資産税 標準税率の1/15 建造納付金 対象トン当たり1万5千円 石油税 免税油の使用 シャーシコスト 1,000円削減 貨物取扱費 3割削減 港費 規制緩和のない 場合の輸送費用 30,968円
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検討結果 5,411円削減 現状 ケース1 ケース2 ケース3 費用 比率 削減金額 固定費 22,574 72.9% 19,637
結果がこちらのグラフです。すべての規制が緩和された場合5,411円の削減ができ、目標運賃である27,641円を下回ることができました。費用削減に大きく影響した要因は貨物取扱費でした。次いでシャーシコスト、港湾使用料となりました。 削減できた費用を貨物取扱費や港湾使用料を固定費に、燃料費を変動費というようにさらに大きく分けた場合、中距離ということもあり、現状では距離に関係しない固定費の割合が高いことが分かります。 そして規制緩和を実施することにより距離に依存しない固定費を中心に削減でき、固定費の影響が大きい短い距離での規制緩和の効果は大きくなると考えることができます。 現状 ケース1 ケース2 ケース3 費用 比率 削減金額 固定費 22,574 72.9% 19,637 2,937 17,566 5,009 変動費 8,394 27.1% 8,193 201 7,991 402 合計 30,968 100.0% 28,031 27,830 3,138 25,557 5,411
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費用削減によるモーダルシフト量の変化 次にモーダルシフト推進に伴うCo2排出量削減効果の検討です。輸送費用削減金額からモーダルシフト量を推計すると次の通りになります。運賃が27,641円の場合一日のモーダルシフト量は4,680トンになり、年間での16トンシャーシに換算すると年間輸送台数は87,750台となります。
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地域間流動の概念 排出量の試算においては地域間での輸送なので各県にどの程度の量が輸送されるか決めなければなりません。従って県間流動量を比で表し、それぞれの配分を次のように設定しました。海上輸送では地域間流動を基に、トラック一貫輸送では県間流動量をもとに各県の流動量比を設定しました。これを基に排出量を求めたのが次のスライドです。
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海運へのモーダルシフトによる排出量の変化
5万トンの削減 運賃が27,641円の場合、現状より約5万のトン削減できることが分かります。 国土交通省の実施している実証実験は企業間の物流で一概に比べることはできませんが実証実験では多くて5000トン削減できたというものがあったので今回の検討航路ではその10倍近くの削減量であります。 また5万トンは船舶へのモーダルシフトによる削減量である370万トンの1.4%にあたるので1隻の投入による CO2排出量削減の効果としては十分評価できる値であると判断しました。
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規制を緩和することにより、東京ー名古屋航路では最大5,411円の海上輸送費用が削減できる。
まとめ① 規制を緩和することにより、東京ー名古屋航路では最大5,411円の海上輸送費用が削減できる。 海上輸送へのモーダルシフトによるCO2削減効果は最大5万トンとなる。 本研究では規制緩和という視点から費用・CO2削減量という2つ効果について定量的に検討しました。 規制緩和を実施することで東京ー名古屋航路では最大5,411円の海上輸送費が削減できることが分かりました。 また、規制緩和による輸送費用削減によって生じるモーダルシフト量の増加に伴うCO2排出量は最大5万トン削減できることが分かりました。
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今回の削減費用は固定費であることから固定費の割合の高い中距離では規制緩和の効果がより期待できる。
まとめ② 今回の削減費用は固定費であることから固定費の割合の高い中距離では規制緩和の効果がより期待できる。 他の中距離間での輸送でも同様のことが言え、中距離でのモーダルシフトの可能性があることが示すことができる。 さらに今回削減できた費用は固定費であることから固定費割合の高い中距離では規制緩和の効果がより期待できると判断しました。これらのことから費用的・環境的にも海上輸送の優位性が上昇し、中距離間での海上輸送の可能性を示すことができました。 従って長距離航路の推進以外にも中距離での推進にも力をいれるべきであるといえます。
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市場の活性化の影響を考慮した費用の変化を分析に取り入れる。 具体的なルートに対しての調査をし、必要な要件等と考慮した検討をする必要
今後の課題 市場の活性化の影響を考慮した費用の変化を分析に取り入れる。 具体的なルートに対しての調査をし、必要な要件等と考慮した検討をする必要 輸送費用についても一貫した料金体系の検討が必要である。 排出量の算出に関してトンキロ法でなく消費燃料から算出する必要がある。 今後の課題として以下の点が挙げられます。 輸送費用についてもモーダルシフトという考えから一歩進んで複合一貫輸送という観点から料金体系についても末端のトラック輸送も含めた料金体系の検討が必要であると考えます。 また、今回の排出量の算出はトンキロ法を用いましたが精度があまりよくないとのことから燃料消費量から排出量を算出する必要があると考えました。
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規制緩和による海上輸送費用削減効果の検討
東京ー名古屋航路 検討モデル航路の設定 東京ー名古屋間は高速道路が完備され、中距離である事からモーダルシフトは困難であると判断できる。 厳しい条件の下で検討を行うことは目標達成のための課題を明確にし、可能性を示せれば他の地域でも推進しやすくなるとの考えを元にあえて同区間を選択した。 輸送費用とCO2の排出量を検討する際にモデル航路を設定して検討することにしました。検討航路は東京ー名古屋間です。 この航路は・・・困難ですが・・・・あえて選択しました。
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関東ー中京間の地域間流動量(全国との比較)
・国内でも上位の地域間流動量である。 ・定期航路の就航がない区間 さらに地域間流動量をみると国内でも屈指の流動量を誇っています。モーダルシフトを国の必要施策と掲げている以上流動量の多い地位を対象としようと判断したからです。 モーダルシフトを国の必要施策と掲げている以上、 流動量の多い地域を対象するべきだと判断した。
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現状での輸送経費 ○需要予測から導かれた運賃よりはるかに高い 現状 固定費 22,574 72.9% 変動費 8,394 27.1% 合計
費用 現状 船舶コスト 9,010 29% 船員費 2,170 7% 減価償却費 4,444 14% その他1 2,395 8% 運航コスト 21,958 71% 燃料費 4,920 16% 港費 2,051 貨物取扱費 10,000 32% 運航店費 684 2% シャーシコスト 3,000 10% その他2 1,303 4% 合計 30,968 100% 現状 固定費 22,574 72.9% 変動費 8,394 27.1% 合計 30,968 100.0% 現状での海上輸送にかかる経費は30,968円となります。従って、十分な貨物量が見込める運賃よりはるかに高額です。 またこれらの費用を変動費と固定費に分けた場合、固定費の割合が非常に大きいことが分かります。 ○需要予測から導かれた運賃よりはるかに高い
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港湾運送事業の移り変わり これから各業界の規制の移り変わりを説明します。
まずは港湾運送事業です。港湾運送事業は戦後無規制になったことから港湾荷役の混乱が生じ、規制を設けました。 そして荷役量の増加、近代荷役に対応して徐々に規制が緩和されてきました。 そして平成12年に国際競争力の強化を目的として主要9港で先行して事業の許可制、料金の事前届出制を実施しています。
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海上輸送事業活性化三法の概要 内航海運については海上輸送事業活性化三法によって船員法、内航海運、船舶職業安定法の一部が改正されました。
これによって事業区分が廃止され、参入要件が登録制になり、実質船腹調整事業が廃止されました。
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改正省エネ法の概要と目的 これらの規制緩和と同時に省エネ法が改正され、運輸部門に対しても一定の規制が敷かれ事業者だけでなく荷主に対しても削減が義務づけられました。この省エネ法の改正によってさらにモーダルシフトが加速するという可能性が出てきました。
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