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貨幣の需要 取引需要L1:日常の取引に必要とされる貨幣の需要である。 資産需要L2:資産保有手段としての貨幣需要である。
貨幣の取引需要の大きさはGDP水準Yに比例すると考えられる。所得が大きいほど,この需要は大きくなる。 L1=L1(Y) 資産需要L2:資産保有手段としての貨幣需要である。 所有している資産を貨幣の形で保有するか,それとも債券の形で保有するか 将来の予想された利子率の下で,現行の市場利子率iが低いほど,所有資産を貨幣の形で保有する傾向が強くなり,貨幣の需要が大きくなる。逆に,現行の市場利子率iが高いほど,所有資産を債券の形で保有する傾向が強くなり,貨幣の需要が小さくなる。 貨幣の投機的需要は,予想利子率を所与とすれば現行利子率の減少関数となる。 これはケインズの「流動性選好」の理論として定式化された。 L2=L2(i) マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の需要 資産需要L2:資産保有手段としての貨幣需要である。 所有している資産を貨幣の形で保有するか,それとも債券の形で保有するか
将来の予想された利子率の下で,現行の市場利子率iが低いほど,所有資産を貨幣の形で保有する傾向が強くなり,貨幣の需要が大きくなる。逆に,現行の市場利子率iが高いほど,所有資産を債券の形で保有する傾向が強くなり,貨幣の需要が小さくなる。 貨幣の投機的需要は,予想利子率を所与とすれば現行利子率の減少関数となる。 これはケインズの「流動性選好」の理論として定式化された。 L2=L2(i) 最後に,一国の総資産残高Wが増大すれば,その一部は貨幣需要にまわり,貨幣需要が増加する。 L3=L3(W) マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の需要 取引需要L1:日常の取引に必要とされる貨幣の需要である。 資産需要L2:資産保有手段としての貨幣需要である。
L1=L1(Y) 資産需要L2:資産保有手段としての貨幣需要である。 L2=L2(i) L3=L3(W) 貨幣の需要L: 取引需要+資産需要 L=L(Y,i,W) 貨幣の需要LはGDP,総資産Wの増加関数であり,利子率iの減少関数である。 総資産Wが貨幣需要Lに与える影響は,貨幣需要関数における資産効果(wealth effect)を表す。 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の需要 貨幣の需要L: 取引需要+資産需要 貨幣の需要関数: L=L(Y,i,W)
貨幣の需要LはGDP,総資産Wの増加関数であり,利子率iの減少関数である。 貨幣の需要関数: L=L(Y,i,W) i↑→L↓ , i↓ →L↑ Y↑→L↑, Y↓ →L↓ i L Y0 < Y1 L=L(Y1, i, W) L=L(Y0, i, W)
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貨幣の供給 今日の経済社会においては,貨幣は純然たる名目貨幣(fiat money)であり,財貨・サービスを購入する手段として受容されるから価値を持つのであって,金や銀がその裏づけとなっているから価値を持つのではない。決済手段として現金通貨のみならず,銀行預金も利用されている。マクロ経済学にとって貨幣の定義は厳密な哲学的なものではなく,「貨幣の範囲」についての定義である。 貨幣供給量(マネーサプライMoney Supply)とは、金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量を指す。その統計公表について,具体的には,一般法人,個人,地方公共団体などの通貨保有主体(=金融機関・中央政府以外の経済主体)が保有する通貨量の残高を集計することによって作成している。 貨幣(money)としてどのような金融商品を含めるかについては,国や時代によっても異なり,一義的に決まっているわけではないが,我が国の場合,対象とする貨幣の範囲に応じて,M1,M2+CD,M3+CD,広義流動性といった4つのマネーサプライ指標を作成・公表している。 マクロ経済学(Ⅰ)
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資料: 日本銀行ホームページ「統計・データ 金融経済統計 時系列データ」
貨幣の供給 貨幣供給量(マネーサプライMoney Supply)の指標 日本のマネーサプライ(M2+CD) 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000 1967 1969 1971 1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 億円 5 10 15 20 25 30 % 変化率 資料: 日本銀行ホームページ「統計・データ 金融経済統計 時系列データ」 マクロ経済学(Ⅰ)
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資料: 日本銀行ホームページ「統計・データ 金融経済統計 時系列データ」
貨幣の供給 貨幣供給のおおもとを管理しているのは各国中央銀行である。しかし中央銀行が直接コントロールすることができる貨幣量は,経済全体に出回っている全貨幣量のごく一部にすぎない。 「(M2+CD)/現金通貨」の推移 資料: 日本銀行ホームページ「統計・データ 金融経済統計 時系列データ」 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 ハイパワードマネーのコントロール
中央銀行が直接コントロールできる貨幣量のことをハイパワードマネーHigh-powered Moneyと,もしくはマネタリーベースMonetary Base,ベースマネーBase Moneyと呼ばれている。これは中央銀行が発行する通貨と民間銀行が中央銀行に預ける預金の合計を指す。 ハイパワードマネーの供給に当って,中央銀行が主に三つ方法でコントロールしている。 ①日本銀行貸出政策(公定歩合政策) これまで「公定歩合」として掲載していた統計データのタイトルを「基準割引率および基準貸付利率」に名称変更した。(日本銀行2006年8月11日) ②公開市場操作 ③法定準備率操作 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 中央銀行(日本銀行)の貨幣供給コントロール手段 ①日本銀行貸出政策(公定歩合操作)
中央銀行が民間銀行への貸出金利を操作することによって,貸出量を調節する方策である。 中央銀行の貸出の方式 1.手形再割引方式:民間銀行部分が手持の手形を中央銀行に割引いてもらう方式(金利を差引く形で手形を買い取ってもらう方式)である。 2.手形・証書担保で貸出方式:民間銀行部分が手持の国債・債券・手形などを担保として中央銀行から資金を借りる方式である。 この時の中央銀行の貸出金利や手形割引金利は政策的に決まっているが,これを公定歩合と呼ぶ。 公定歩合を引下げると民間銀行にとって資金調達コストが安くなるので,貨幣需要が上昇する。逆に公定歩合を引上げると,貨幣需要が低下する。中央銀行は政策目的によって,しばしば公定歩合を変更させる。景気が悪いときには公定歩合を引下げ,景気が良くなると公定歩合は引上げられる。 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 中央銀行(日本銀行)の貨幣供給コントロール手段 ②公開市場操作
中央銀行が企業や家計など非銀行部門も参加する公開市場(open market)に出動し,手形や債券などを売買することにより,ハイパワードマネーを増減させよとする政策である。 中央銀行の公開市場操作方式 1.買いオペレーション:中央銀行が公開市場で手形や債券などを買取る。これによって,その分だけ売り手である一般投資家や民間銀行部門の預金準備が増大し,ハイパワードマネーの需要が拡大し,マネーサプライが増加する。 2.売りオペレーション:中央銀行が公開市場で手形や債券などを売出す。これによって,その分だけ買い手である一般投資家や民間銀行部門の預金準備が減少し,マネーサプライが減少する。 例えば,中央銀行は物価の上昇を歯止めをかけようとしたら,売りオペレーションに踏み切ることによって,現金を吸収しハイパワードマネーをコントロールすることができる。 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 中央銀行(日本銀行)の貨幣供給コントロール手段 ③法定預金準備率操作
民間銀行は預金の一定の割合に当る額を支払い準備として中央銀行に預けることを義務付けられている。その割合は法定預金準備率と呼ぶ。この法定預金準備率を政策的に変更して,マネーサプライを調整する政策は法定預金準備率操作である。 法定準備率を引下げると,マネーサプライは増加する 。逆に,中央銀 行が法定準備率を引上げると,マネーサプライは減少する 。 一般に,法定準備率操作は急激なマネーサプライの変化を銀行に強要 することになり,政策効果は非常に大きいが,その変化が頻繁すぎると, 金融界の正常運営を損なうことになる。したがって,法定準備率はマネー サプライの微調整手段とするよりも,金融政策の大きな流れを決定する手 段として適していると考えられる。 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 ハイパワードマネーのコントロール 日本銀行バランスシート(2004年3月末) (兆円) 資産 負債・資本 合計 149.4 金
日本銀行バランスシート(2004年3月末) (兆円) 資産 負債・資本 金 0.4 銀行券 71.4 外貨資産 4.2 金融機関預金 36.4 現先・手形 38.4 政府預金 13.1 国債 100.0 現先 19.9 (長期国債) 65.6 手形 2.6 (短期国債) 34.4 その他 0.8 金銭の信託(株式) 1.9 4.5 自己資本 5.2 合計 149.4 (注1)長期国債の評価方法は、2003 年度までは低価法を採用していた。2004 年度からは償却原価法に変更した。 (注2)短期国債には政府短期証券(FB)を含む。 (注3)自己資本は、資本金、法定準備金(当該事業年度に係る剰余金の処分において積み立てられる金額を含む。),特別準備金、貸倒引当金(特定の債権に係る損失に備えるためのものを除く。)、債券取引損失引当金および外国為替等取引損失引当金の合計額。 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 ハイパワードマネーのコントロール
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貨幣の供給 信用乗数とマネーサプライ ハイパワード・マネー H マネー・サプライ M H=C+R M=C+D
法定準備制度の中心な的眼目は,マネーサプライを中央銀行が管理する際の一つの手段としての役割を担うことにあるのである。 c :現金預金比率(現金保有性向)=C/D r :預金準備率=R/D (1+c)/(c+r):信用乗数 =m > 1 (MとHの関係を表している) マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 信用乗数とマネーサプライ ハイパワード・マネー H マネー・サプライ M H=C+R M=C+D
個々の民間銀行は預かった預金以上の貸出をすることができないが,多数の銀行を一つの組織として見るならば預金以上の貸出を創出することが可能になる。これが銀行の信用創造credit creationと呼ばれる現象である。 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 本源的預金 信用創造のメカニズム(銀行の信用創造) ある企業XがDD0の現金通貨をA銀行に預入れたと仮定しよう。
①A銀行は支払準備金DR0を残し,余分の資金DB0を企業Yに貸出す。企業YはDB0のc/(1+c)割のそれを保有し,残りの部分をB銀行に当座預金して,取引の支払いに備える。 ②B銀行はDD1を受入れ,支払準備金DR1を残し,余分の資金DB1を企業Zに貸出す。企業ZはDB1のc/(1+c)割を保有し,残りの部分をC銀行に当座預金として預ける。 : 資本 A銀行 負債 準備金 DR0 貸 出 DB0 預 金 DD0 企業Y c=DC0/(DB0-DC0) DB0-DC0=DC0/c DB0 =DC0(1+c)/c DC0=c/(1+c)DB0 DB0-DC0=1/(1+c)DB0 現金DC0 1/(1+c)DB0 資本 B銀行 負債 準備金 DR1 貸 出 DB1 預 金 DD1 企業Z DD DB0=(1-r)DD0 DD1=1/(1+c)DB0=(1-r)/(1+c)DD0 DD2=1/(1+c)DB1=(1-r)/(1+c)DD =(1-r)2/(1+c)2DD0 : 現金DC1 1/(1+c)DB1 資本 C銀行 負債 準備金 DR2 貸 出 DB2 預 金 DD2 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 信用創造のメカニズム(銀行の信用創造) ある企業XがDD0の現金通貨をA銀行に預入れたと仮定しよう。
DD DB0=(1-r)DD0 DD1=1/(1+c)DB0=(1-r)/(1+c)DD0 DD2=1/(1+c)DB1=(1-r)/(1+c)DD =(1-r)2/(1+c)2DD0 : 創出された預金総額 本源的預金 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 短期金利市場と日銀の準備総量管理
短期金融市場の金利を上下させ,その波及メカニズムを用いて間接にマネーサプライを調整する方法が日銀によく利用されている。 民間銀行の準備は現金流出入や手形など,銀行間の決済を通じて日々変動している。預金量の動きには銀行間でばらつきがあり,必要準備にも銀行間で違いが出てくる。準備が不足している銀行が,準備に余裕のある銀行から短期の借入れをする。このような金融機関が相互に短期資金の貸し借りを行う市場をコール市場といい,そこで成立する金利をコール・レート(代表的な短期金利)という。 コール市場の需給関係からコール・レートが上下に変動する。日銀は,市場の資金の過不足に対応して債券・手形オペレーションを通じて,信用の供与あるいは回収を行い,操作目標としてのコール・レートを望ましいと思われる水準に誘導するのである。そして,マクロ経済全体における準備の総量は日銀によって決定される。同時にその波及メカニズムを通じて,マネー・サプライに影響するのである。 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 マネーサプライの決定 日本銀行と民間金融機関の双方が,マネーサプライの決定に関して相応の力を持っている。 マネー サプライ
必要準備 現 金 ハイパワード・マネーの需要 準備金制度 マネー サプライ 日本銀行 ハイパワード・マネーの供給 預金量 民間金融機関 貸 出 コール・レート コール市場 マクロ経済学(Ⅰ)
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貨幣の供給 貨幣の需要量: L = L(Y, i, W) 貨幣の供給量: M = mH 貨幣市場の均衡:M/P = L(Y, i, W)
その他の事情の変化がなければ,実質の貨幣供給量M/Pが増加すると,均衡利子率i*は低下する。 M/P↑→ i*↓ その他の事情の変化がなければ,国民所得Yが増えると,均衡利子率i*は上昇する。 Y↑→ i*↑ i L Y0 < Y1 i*' i* L=L(Y1, i, W) i*' L=L(Y0, i, W) M/P M'/P マクロ経済学(Ⅰ)
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