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通訳理論への導入 獨協大学 国際教養学部言語文化学科 永田小絵
通訳翻訳論 通訳理論への導入 獨協大学 国際教養学部言語文化学科 永田小絵
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今でもある固有名詞の翻訳の問題 アニメの登場人物などは現在でも異なる名前を 付けられることがある
とくに名前の音自体に意味がある場合は音訳が 適切でない場合も たとえば、ドラえもんの登場人物は以下のとお り のび太:康夫または大雄 スネ夫:小夫 ジャイアン:胖虎
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ドラえもん ピカチュウ 「多啦A梦」 と「皮卡丘」
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ドラえもんの名前 《哆啦A夢》(日語:ドラえもん),港译《多啦A夢》, 舊譯《叮噹》、《小叮噹》、《机器猫》等,此漫畫主人 翁是一隻來自22世紀的機械貓,名为哆啦A梦。
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日本でも時代による変遷 こぶた コプタ ピグレット
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ポケモンの海外問題 日本以外でポケットモンスターと呼ばない理由 海外の一部の国で商標登録されていた事 や、英語圏(特にアメリカ合衆国)にお いては、「ポケット」は男性器の隠語で もあるため、「ポケットの化け物」では 子供の遊ぶ健全なゲームのタイトルとし ては不適切であると言う判断から、日本 国外ではタイトルの省略形「ポケモン (POKÉMON)」を採用した。なおÉの上の アクセント記号はこのEが黙字でなく発音 をもつEであることを表す。
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書き換えられたカード (卍とハーケンクロイツ)
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再び、ドラえもんの名前…… 「小叮噹」って? ドラ猫、ドラ焼き…… なぜ「ドラえもん」なのか 連想されるもの 猫型ロボット
「哆啦A夢」:「DORAEMON」音の重要性? ドラ猫、ドラ焼き…… なぜ「ドラえもん」なのか 連想されるもの 「機器猫」 猫型ロボット 「小叮噹」って? ドラえもんがもしも中国で生まれていた ら
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さらに、 固有名詞の翻訳が生んだ新たな問題
のび太、またの名 は 野比康夫 中国で 「のび太」が 大人になって総理 になった、 と話題に……
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形式が意味である場合 意味と形式のどちらも保存することは不可 能 実例: 説明することは可能 形式だけ示すことは可能 (意味は伝わらない)
実例: アジアの「てつじん」政治家 哲人/鉄人 我が社の「きょうさい組合」 共済/恐妻 説明することは可能 形式だけ示すことは可能 (意味は伝わらない)
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翻訳と受け手の関係 翻訳には理想的な翻訳や模範的な翻訳は 存在しない。
ある時代の、ある社会の、ある読者に とって、より望ましい翻訳が存在するだ けである 翻訳は読み手によって評価される 児童書、とくにアニメやマンガの翻訳に おいて説明や注釈を加えることは望まし くない 原作の力が言語あるいは翻訳における制 約を超えて読み手に訴えることが重要
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アニメキャラクターの名前をどう訳しますか? どうしてそのように訳そうと思いますか?
音を保存する ドラえもん DORAEMON 哆啦A夢 ピカチュウ PIKACHU 皮卡丘 意味内容を伝える ドラえもん ROBO-CAT 機器猫 Piglet コブタ 小猪 新しい名前をつける ドラえもん 小叮噹 鉄腕アトム Astroboy
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二つの実体を指し示す記号表現 目標言語の世界にないもの テクスト外参照、パロディ 多義的な文
訳せないもの 二つの実体を指し示す記号表現 目標言語の世界にないもの テクスト外参照、パロディ 多義的な文
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訳せないものを訳す工夫 翻訳可能で翻訳必要→訳す 翻訳可能で翻訳不要→訳さない 翻訳不可能で翻訳不要→訳さない
翻訳不可能で翻訳不要→訳さない 翻訳不可能で翻訳必要→ どうにかする!! 翻訳には理論的には限界があるが 翻訳行為(翻訳技術)には限界がない。
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二つの実体を指し示す記号表現 かけことば、だじゃれ 「パンダの食事は?」 パンダ パンだ 「パンだ」 記号表現(形式) 記号内容(実体)
「パンダの食事は?」 パンダ パンだ 「パンだ」 記号表現(形式) 記号内容(実体) 一形式(音声・文字)が二つの実体を指し示して いるが、 翻訳・通訳では二つの実体のうちのひとつしか 保持できない。
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アジアの「てつじん」政治家 国際会議アジア経済人会議 ゲスト:中曽根元首相、リー・クアンユー 元首相 司会:竹村健一
ゲスト紹介で 「お二人ともアジアの“てつじん”政治家で す」 「鉄人であるばかりでなく、哲人でもあり ます」 同時通訳ブースには舌打ちとため息 「鉄人政治家としての哲学をお持ちです」
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訳せないものを訳す工夫(例) (ある薬品を添加して)「これを加える と、納豆のように糸を引くようになりま す」 翻訳のコンテクスト
聞き手の属する社会に「納豆」はない。 話し手のメッセージは粘りを生じて糸を引く ようになる様子を視覚的なイメージで聞き手 に伝えること。 製薬会社の実験室での通訳業務であり、ここ で「納豆」について説明しても無意味である。 聞き手の目の前に実物があり、可視である。
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訳せないものを訳す工夫(例) 納豆 抜糸地瓜 〓>> 視覚的な効果で糸を引いている様子を説明する効果を保持
納豆 抜糸地瓜 〓>> 視覚的な効果で糸を引いている様子を説明する効果を保持 一般によく知られている食品を用いた説明であることも同様
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訳した結果が原文を超えた例 原文(中国語)「私たちの会社には “惧内協会”があって……」
惧内:「妻(内人)を恐れる(恐惧)」 訳文(日本語)「我が社には『きょう さい組合』がありまして……」 きょうさい 恐妻/共済 聞き手は日本の会社員。最初に聞いたと きは当然「共済組合」と理解。徐々に 「恐妻組合」であったことが明らかにな り、原文より面白さが際だつ結果に。
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テクスト外参照の例 晩餐会で純米吟醸酒が供された 外国の賓客:「一口飲んですっか り気に入りました」 日本側ホスト:「まさに、ひとめ ぼれですね」 「ひとめぼれ」が米の銘柄である こと、この日本酒が「ひとめぼ れ」という銘柄米から作られたこ と、そのためホストが「一口で気 に入った」と言ったゲストにしゃ れた受け答えをしたことを説明す るしかない→面白さ台無し!
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女性雑誌の車内広告で見かけた例 みんな欲しいシャネル 翻訳の難しさ 多義的な文章の解釈
誰もが欲しがるシャネルの製品? シャネルの製品なら何でも欲しい? どちらか片方の意味だけを訳すなら可 能、両方の意味を保持した翻訳は困難
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わが社のモットー 「人をつくり、物をつくり、富 をつくる」
翻訳の難しさ 多義的な文章の言い換え わが社のモットー 「人をつくり、物をつくり、富 をつくる」 意味を訳すのは可能 同じ動詞の繰り返しを再現する のは不可能。
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「人をつくり、物をつくり、富をつくる」 通訳翻訳ではどう処理すべきか 通訳翻訳とは解釈と言い換えである
言語内翻訳してみよう 「人材を育成し、製品を生産し、利益を 創出する」 言い換えから言語間翻訳を可能にする 言い換えの方法は個別言語によって工夫 が必要となる
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翻通訳者の取りうる手段 等価置き換え 補足説明
学術用語など一義的定訳がある場合 例: 電泳,電気泳動, electrophoresis 粒腺体,ミトコンドリア,mitochondria 補足説明 最終受容者に理解されにくい概念 例:地域に独特な食べ物などは説明が必要 お好み焼き Japanese-style pancake containing vegetables and other foodstuff 24
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翻通訳者の取りうる手段 変容適合 同様、類似の連想を喚起する記号表現を充当 白足袋 → 白い手袋(『斜陽』の翻訳) ドナルド・キーン氏が『斜陽』の翻訳で、白 足袋を white gloves と訳した(中略)。白足 袋が礼装であるのに対し、white socks はテニ スにでも出かけそうなカジュアルな服装です。 儀式ばった礼装というなら white gloves が ぴったり。別宮貞徳『翻訳読本』 類似代用 近接する意味を持つ語句で代用 包子 → まんじゅう 龍 → dragon 25
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類似代用の危険性 龍とドラゴン 26
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翻通訳者の取りうる手段 模倣 文体や詩の形式のスタイルを真似る 例:俳句の中国語訳 音の数を合わせる試み (芭蕉原文):古池や 蛙飛び込む水の音 (林林訳文):古池塘呀, 青蛙跳入水声響 不変換 語による語の説明では変換しない 例:台湾ではパンダを猫熊といい、中国では 熊猫と言います。 (猫熊と熊猫はそのま ま保持) 形式自体に意味がある(固有名詞が典型的) Mr.Brown≠「茶色さん」 27
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翻通訳者の取りうる手段 新語の創作 統合と展開 新しい表現と概念の創造 解体新書の「義訳」、明治時代に作られた多くの翻 訳語
新しい表現と概念の創造 解体新書の「義訳」、明治時代に作られた多くの翻 訳語 統合と展開 二語以上の表現を一語で表す、またはその逆 姉と妹 → sisters (日→英) an elder sister and a younger sister →特に強調している感じを与えてしまうので不適切。 孫 → 外孫女 (日→中) hot water → 湯 (英→日) 28
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翻通訳者の取りうる手段 削除、省略 メッセージに関わらないまたは受容不可能な語句 英日翻訳・通訳における人称代名詞、指示詞 TLの文章表現中に潜在させることが可能な情報 再帰代名詞、仮主語など翻訳不要な文法事項 再編成 テクスト構成の変更、情報提示順序の整理 必要に応じて結論から先に言うなどの操作 29
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翻訳通訳のプロセス(2)転換 目標言語の視聴覚記号として表出 テクスト周辺情報の参照 伝達可能性と伝達必要性の検討
もっとも受容しやすい形式を選択 T/I Fil ter M:message・伝達内容 R:relevance ・関連性 C:code・記号形式 M R C M R C 30
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翻訳通訳のプロセス (2)転換 翻訳通訳行為における情報の取捨選択
翻訳通訳のプロセス (2)転換 翻訳通訳行為における情報の取捨選択 起点言語のテクストに含まれる指示対象(何について 語っているか)と、テクストの意義(何のために語っ ているのか)は目標言語においても保持される。 翻通訳者は指示対象と意義の保存のために 記号表現を捨て去る。 記号表現はSL内部でのみ機能するため、 翻通訳者によって閉め出される。 TL変換後に潜在情報となる記号表現がある。 SLで潜在している情報が顕在化することがある。 SLのコンテクスト依存情報がTLにおいて顕在化す る、または翻通者によって引き出され、説明される。 31
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翻通訳の評価 特定のテクスト、特定の相手、特定の目的、特 定の歴史的状況、特定の文化背景、特定の場所 における、最良の翻訳と通訳
社会通念としての最適な記号表現 標準的な国語表記と音声表出 言語使用域に照らして適切なスタイル 訳出表現の芸術性 翻訳、通訳における知名度の問題 出版社、エージェンシーの信頼性 翻通訳者個人の知名度 32
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翻訳・通訳における技術 語学力と翻訳通訳の熟練技術の違い 語学力:ある個別言語内の運用力を問題にする
翻通訳技術:二つの個別言語間を自由に行き来す る能力 高い語学力を前提とする 翻訳・通訳行為 起点言語 目標言語 受容・理解 再構成・表 出 言語の四技能 言語の四技能 33
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