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インクルージョン・問われている私たち その8 ― 国連・子どもの権利委員会(CRC) 三回の最終所見に何を学ぶ?

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1 インクルージョン・問われている私たち その8 ― 国連・子どもの権利委員会(CRC) 三回の最終所見に何を学ぶ?
                    沼尾 孝平                 (所沢・教育と福祉を問い直す会                      DCI子どもの権利オンブズマン委員)                    所沢・教育と福祉を問い直す会          DCI日本                                         日本発達障害学会 第46回研究大会                                    2011年8月20日   鳥取大学

2 写真 国連・子どもの権利委員会(CRC) 開催会場
流れとして 1998年 最終所見     2004年 最終所見        2010年 最終所見         三回に通底するものは 日本政府の姿勢   国内当事者は そして 現場を荷う我々は 写真 国連・子どもの権利委員会(CRC) 開催会場     ジュネーブ・  パレ ウイルソン 2010,5,28

3 1998年 CRC 第一回 最終所見 7 子どもの権利条約は国内法に優位。 裁判所が援用可能であるにもかかわらず、 20 障害もつ子ども
1998年 CRC  第一回 最終所見 7 子どもの権利条約は国内法に優位。       裁判所が援用可能であるにもかかわらず、                 直接適用していない。 20 障害もつ子ども     教育への効果的なアクセス、     社会への十分なインクルージョンへの                          措置が不十分 CRC委 (2010/5/28・ジュネーブ)政府代表・外務省志野光子人権人道課長「憲法98条2項に条約の位置づけ明確。 いかなる条約についても、(国内法との)整合性確保、十分な配慮」と回答。 クラップマン氏(2010/8/10 ・豊島区) 「1947年法(児童福祉法)そのままにして、89年採択(日本94年批准)の条約に齟齬などありません と どうして言える?」 と、驚きの感想を述べた。

4 2004年 CRC 第二回 最終所見 (1998年最終所見) Lothar Krappmann 6 ・・特に
2004年 CRC 第二回 最終所見  6   ・・特に   差別禁止(パラ35)学校制度の過度に競争的な性格(パラ43)いじめを含む学校における暴力に関する勧告(パラ45)が    十分にフォローアップ        (1998年最終所見)       されていない。 Lothar Krappmann (2010年 CRC日本担当専門報告官・            日本政府への最終所見・起草者) ベルリン自由大学教授(社会学)    1982-現在 マックスブラント教育研究所 研究員 1975-2002

5 2010年 CRC 最終所見 イ 起草者 クラップマン氏 7. 2004年2月に示された懸念および勧告の大部分が、
  十全に実施されていないか、     まったく取り組まれていないことに遺憾の念。   本最終所見でこれらの懸念および勧告を                           重ねて表明する。  注: 1998、2004年の二回と比較すると、2010年は極めて詳細な記述が特徴

6 2010年 CRC 最終所見 ロ 34. (a) 包括的な反差別法の制定を。いかなる理由に基づくものであれ子どもを差別するあらゆる法規を廃止すること。  (b) 差別的慣行、特に、女の子、民族的少数者に属する子ども、日本国籍を持たない子ども、および障害を持つ子どもに対する差別的慣行を減少させ、かつ防止するために、意識向上キャンペーンおよび人権教育を含む、必要とされる措置を。

7 2010年 CRC 最終所見 ハ 障害を持つ子ども 58. 本委員会は、根深い差別が依然として存在すること、および、障害を持つ子どものための措置が注意深く監視されていないことを依然として懸念する。 本委員会は、また、障害を持つ子どもの、必要な施設および設備を整備するための政治的意思や財資源が欠如してることにより、教育へのアクセスが制限され続けていることに留意し、懸念する。

8 2010年 CRC 最終所見 二 59 (a) 障害を持つすべての子どもを十全に保護するために 法改正や法制定を行うこと。
                法改正や法制定を行うこと。 達成された進歩を注意深く記録し、実施における問題点を特定する                 監視システムを設立すること。  (b)  障害を持つ子どもの生活の質の向上、その      基礎的ニーズの充足、および、  インクルージョンと参加の確保に焦点をおいた、          地域を基盤とするサービスを提供すること。 

9 2010年 CRC 最終所見 ホ 59 (c) 既存の差別的態度と闘い、かつ、障害を持つ子どもの権利および特別なニーズを公衆に理解させるために、意識喚起キャンペーンを実施すること。 障害を持つ子どものインクルージョンを助長し、かつ、子どもおよび親の、意見を聞いてもらう権利の尊重を促進すること。  (d) 障害を持つ子どものために、適切な人的、財政的資源を伴うプログラムおよびサービスを提供するためのすべての努力を行うこと。 

10 2010 5月28日   フィラーリ委員 (ジュネーブ) 日本の障害もつ子どもの実態については、よく聞いており、毎回(のCRC最終所見に)しっかり書き込む努力をしているんですよ CRC委員が日本に乗り込んで直接、日本政府を右左することはできないでしょ。あなたたちが、自分たちの手で変えて   いく努力をしなければなりませんよね    フィラーリ委員(アルジェリア)           の ひとこと (懇親会席上にて)

11 クラップマンさん(CRC日本担当専門報告官) 2010年8月10日 豊島区勤労福祉会館にて
クラップマンさん(CRC日本担当専門報告官)  2010年8月10日 豊島区勤労福祉会館にて 不思議な発見でした。面白い経験でした。 日本政府の報告書には 第二回報告(2004)では、      第一回報告(1998)を見よと言い、 第三回報告(2010)では、      第二回報告(2004)を見よと      (沼尾のフロアからの質問への回答)    注:上記が クラップマンさん の回答でしたが、    言外に 政府に前に進めようとの思いは      あるんでしょうか ねえ !     と、言っているように思えました。                                                                              2010年8月10日  豊島区勤労福祉会館にて                                                      

12 2010、2004、1998 CRCの最終所見 障害もつ子 年を追って、詳しくなるも とりわけ、2010年は 詳細な意見が
       障害もつ子 年を追って、詳しくなるも   とりわけ、2010年は  詳細な意見が     書き込まれています 2010年5月27日                       最奥 右から      志野光子・外務省課長  ジュネーブ パレウイルソン                        上田秀明・大使      CRC会議中 傍聴者と共に                 Zermatten議長

13 1994 文部省 改正の必要なし 文初高第一四九号 (次官通知) 平成六年五月二〇日
1994 文部省 改正の必要なし  文初高第一四九号   (次官通知)     平成六年五月二〇日 各都道府県教育委員会、各都道府県知事、各国立学校長、 等々                                        文部事務次官通知 「児童の権利に関する条約」について 平成六年五月一六日 条約・・公布・・、平成六年五月二二日に効力を生ずる・・。 本条約は、世界の多くの児童 (本条約の適用上は、      児童は一八歳未満のすべての者と定義されている。) が、    今日なお貧困、飢餓などの困難な状況に置かれていることにかんがみ、世界的な視野から児童の人権の尊重、保護の促進を目指したもの   であります。

14 1994 文部省 改正の必要なし 文初高第一四九号 (次官通知) 平成六年五月二〇日
1994 文部省 改正の必要なし  文初高第一四九号   (次官通知)     平成六年五月二〇日 本条約は、基本的人権の尊重を基本理念に掲げる日本国憲法、教育基本法(昭和二三年)並びに「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和五四年)」及び「市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五四年)」等と軌を一に・・・・。    したがって、本条約の発効により、教育関係について特に法令等の改正の必要はない    ところでありますが、もとより、児童の人権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育が行わなければならないことは極めて重要なことであり、本条約の発効を契機として、更に一層、教育の充実が図られていくことが肝要であります。・・初等中等教育関係者のみならず、広く周知し、理解・・・   2011年現在なお、この次官通知が実効性もつ。

15 18文科初第446号 平成18年(2006)7月18日 文部科学事務次官 結城章夫
18文科初第446号  平成18年(2006)7月18日 文部科学事務次官  結城章夫 第6  留意事項 (5) ・・・、小中学校等における特別支援教育が明確に位置付けられたことを踏まえ、  すべての教員の特別支援教育に関する理解を促進するため、 各大学においては、  教職課程における特別支援教育に関する内容の充実                               及び適切な単位認定、 各学校の設置者及び任命権者においては、 特別支援教育についての現職研修の充実及び教員採用における内容の適切な取扱いに より一層努められたいこと。 注・教師を目指す学生すべて、そしてすべての学校のすべての教員が「特別支援教育」の理解に努め、理解促進するよう通知が出ていること忘れては居ませんよね。

16 19文科初第125号 平成19(2007)年4 月1 日 文部科学省初等中等教育局長 銭谷眞美
19文科初第125号  平成19(2007)年4 月1 日 文部科学省初等中等教育局長  銭谷眞美         特別支援教育の推進について(通知) 1.特別支援教育の理念 (前略) また、特別支援教育は、これまでの特殊教育の対象の障害だけでなく、知的な遅れのない発達障害も含めて、 特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍する全ての学校において実施されるものである。 さらに、特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるものであり、我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味を持っている。  注・ 特別支援教育は特別支援学校や学級、そして、施設など特別な場で行われるものではありませんこと、忘れては居ませんでしょうか? 2007 某大養護教員養成系・教授 「これは(日本の教育)革命だね」

17 障がい者制度改革推進会議 東 俊裕室長(弁護士) 2010/9/5 本学会自主シンポより
障がい者制度改革推進会議  東 俊裕室長(弁護士)  2010/9/5 本学会自主シンポより                      たとえば、学校教育法施行令によるシステムは     一定の障害とその程度に該当すれば、・・基本的には特別支援学校へという形で、    障害を理由とした振り分け制度・・・・・(これは)               「権利条約が示す差別の定義に該当」        ・・権利条約の批准 として(この差別規定を)残したまま批准できるのか              という  基本的原則的な問題 がある。    やはり、      そこは  変えていかなければならない のではないか                         誰でも理解できることでは・・              注・2010年9月5日 沼尾・曽根・木村 企画 本学会自主シンポ 発言より

18 障害者基本法 改正  イ  2011年8月5日公布 (教育)16条 1 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。

19 障害者基本法 改正 ロ 2011年8月5日公布 (教育)16条  2 国及び地方公共団体は、前項の目的を達成するため、障害者である児童及び生徒並びに保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない。     注: この2は、2011年改正で新設

20 障害者権利条約 2006,12,国連採択 07、9 日本政府署名 08、5 発効 2011年8月 日本政府 未批准
障害者権利条約  2006,12,国連採択     07、9 日本政府署名  08、5 発効   2011年8月  日本政府 未批准 2条 定義     障害を理由とする 差別 とは、障害を理由とするあらゆる              区別、排除、又は 制限 であって・・・ 4条 一般的義務     (b) 障害者に対する差別となる           既存の 法律、規則、慣習及び慣行を                  修正し、又は廃止するための                                   すべての措置をとること プレスリリース 「障害者の権利に関する条約」(仮称)への署名について  平成19年9月28日   我が国政府は、「条約」に署名することを閣議において決定。   この条約は、2006年12月・・採択・・、          障害者の人権及び基本的自由の完全な実現を確保し、促進する上で      重要な意義を有している。

21 障害者の権利条約 (モニタリング) 人権モニターのためのガイダンス 長瀬修 障がい者制度改革推進会議提供資料より 2010,8,9
障害者の権利条約 (モニタリング)  人権モニターのためのガイダンス  長瀬修  障がい者制度改革推進会議提供資料より  2010,8,9    4 教育についての権利        一般的モニタリング質問項目として、             次の項目について質問することとなりますよ  障害のある人、あらゆる段階で インクルーシブ教育 が利用できますか

22 ジャック・ロビンソン・デー 差別根絶への歩み 読売 2009、4、15
ジャック・ロビンソン・デー 差別根絶への歩み   読売 2009、4、15  1947年4月15日デビュー  背番号 42番        黒人初の大リーガー(1919-72) 1947年 新人王、盗塁王、首位打者 獲得。        (黒人故に、人種差別の壁で締め出されるという差別と闘いながら) 1997年(デビュー50年後)背番号42番 永久欠番に 2004年 4月15日を記念日とする 2007年 42番のユニフォーム着てのプレー提案 2008年 330人超の選手が42番を背に プレー 2009年大リーグ選手「全員」が「42番背番号」でプレー。       この記念すべき日、 故人の妻レイチェルさん出席 60年余を経、ようようここまで到達。       しかし、根絶されたわけではない。まだ、差別根絶への歩みつづく

23 差別の禁止 ー 明確な ゴール ー 2010年 「共生社会を創る」 2011年 「専門性の追求」なおす、のばす、つなぐ
差別の禁止  ー 明確な ゴール ー 2010年          「共生社会を創る」 2011年 「専門性の追求」なおす、のばす、つなぐ 全ての「差別禁止」の実現へと流れる歴史の大河  人種差別   ー  人種差別撤廃条約  (1965 国連採択年)  病者差別        ハンセン病問題検証会議報告(日本 2005)  女性差別   ー  女性差別撤廃条約  (1979)  子ども差別  ー  子どもの権利条約   (1989)  障害者差別  ー  障害者権利条約   (2006) 年単位の時間かかり、紆余曲折あれ 「着実、確実な、前進の事実」 あり   その途上の2011年という、いま現在を私たちは歩き、              私たちが、その歴史の一端を創っている     この流れの中で、一人一人が、なすべきは何なのでしょうか        方向性間違えることなく、日々の歩みを進めたいものです

24 2011年改正法(障害者基本法)に CRCの意向反映 されているか?
8月5日施行の障害者基本法(教育)では 1  能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り 2  可能な限りその意向を尊重           可能な限り との 限定が付加されていることの意味は ? 果たして、CRCの最終所見を反映していると言えようか 障害者権利条約モニタリングのクリアは、可能だろうか 1994年批准、これから批准予定 それら国際条約の無視となるのではないか? 無視、黙視、志野課長のように二枚舌を活用しつづけるのであろうか? 問われているのは、私たち自身ではないでしょうか。  今、憲法、条約、国連委員、それぞれの見解を私たち一市民が簡単に入手できる時代。つまり、その齟齬をも一目瞭然、白日の下、明らかに。 その事実を前に、私たちの行動が問われているのでは・・・  望ましい社会を描きつつ、市民主体の社会を意識的に創造できるかが問われていると思います。


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