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鹿児島大学農学部獣医学科病態・予防獣医学講座
鹿児島経済同友会 3月例会 食の安全性向上の枠組み 安全と費用便益: 衛生費用の負担方法は? 鹿児島大学農学部獣医学科病態・予防獣医学講座 獣医公衆衛生学分野教授 岡本嘉六 国民の健全な食生活に係わる課題 安全性(Safety): 健康障害を起こさない 品質(Quality): 栄養価・風味・食感 自給(Security): 食料不足による健康障害の防止 防犯(Defense): 犯罪やテロによる意図的汚染の防止 食育(Education): 生命倫理の向上=命をいただく感謝
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「岡本嘉六」でネット検索し、一番上のものをクリック
自給(Security): 食料不足による健康障害の防止 「岡本嘉六」でネット検索し、一番上のものをクリック ● 公衆衛生に関する各国の法令等一覧 衛生管理責任者等講習会 最終更新 2006年9月25日 パート1:食品を取り巻く世界と日本の情勢 1.1:国際的食料事情、WTO体制、Codex委員会 (スライド、ナレーション)28枚 1.2:国際獣疫局(OIE)、米国の政策 (スライド、ナレーション)35枚 1.3:日本の動向、「食育基本法」、「食品安全基本法」、「食料・農業・農村基本法」 (スライド、ナレーション)47枚
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● 国際的食料事情 新世紀の発展目標に関する報告 2005 目標 1: 極度の貧困と飢餓の克服 目標 2: 一般的な初等教育の達成
● 国際的食料事情 新世紀の発展目標に関する報告 2005 国際連合 目標 1: 極度の貧困と飢餓の克服 目標 2: 一般的な初等教育の達成 目標 3: 男女平等の推進と女性への公的権限の付与 目標 4 : 小児死亡率の低減 目標 5 : 母体の健康増進 目標 6 : HIV/AIDS, マラリアおよびその他の疾病の克服 目標 7 : 環境の持続性を確保 目標 8: 発展のための地球的規模での提携の推進
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Goal 1. Eradicate extreme poverty & hunger 不十分な食事で生活している人口の割合(%)
新世紀の発展目標に関する報告 2005 国際連合 サハラ以南のアフリカ サハラ以南のアフリカ 南アジア 東南アジア 東アジア ラテンアメリカとカリブ海沿岸 西アジア 北アフリカ 発展途上地域 体重が足りない5歳以下の子供の割合(%) 目標 1. 極度の貧困と飢餓の 克服 世界の貧困率は低下しており、それはアジアがもたらした。しかし、サハラ以南のアフリカだけで100万人以上が貧困に喘いでおり、しかも貧困が更なる貧困を生んでいる。 飢餓対策は進展してきたが、農業生産高の成長が遅く、ある地域では増大する人口が後戻りさせている。1990年以降、サハラ以南のアフリカと南アジアにおいて数100万人が恒常的な飢餓状態にあり、それらの地域では5歳以下の子供達の半数が栄養失調に陥っている。 Goal 1. Eradicate extreme poverty & hunger Global poverty rates are falling, led by Asia. But millions more people have sunk deep into poverty in sub-Saharan Africa, where the poor are getting poorer. Progress has been made against hunger, but slow growth of agricultural output and expanding populations have led to setbacks in some regions. Since 1990, millions more people are chronically hungry in sub-Saharan Africa and in Southern Asia, where half the children under age 5 are malnourished. 南アジア 東南アジア 東アジア ラテンアメリカとカリブ海沿岸 西アジア 2015年の目標 北アフリカ 不十分な食事で生活している人口の割合(%) 発展途上地域
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Dietary Energy Consumption (2000 - 2002)
1日当りカロリー摂取量 ( ) Dietary Energy Consumption ( ) 92.8 127.0 169.0 196.6 2001-3 206.2 サハラ以南のアフリカにおける栄養不足人口(100万人)
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カロリー供給量の食品別割合の比較 (2002年) 穀類 砂糖類 芋・豆・野菜 肉類 卵類 乳製品 魚介類 その他 インド 中国 エジプト
日本 イギリス ドイツ フランス 米国 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 1人1日当たりKcal カロリー供給量の食品別割合の比較 (2002年) (総務省統計局)
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The Next Food Revolution
-5 10 20 30 40 50 60 牛肉 豚肉 鶏肉 乳 先進国 途上国 100 200 300 400 500 600 Live stock to 2020 The Next Food Revolution 1999, FAO 肉(kg)、伸び率(%) 乳(kg) 一人当たり年間摂取量の予測 :1993年、 :2020年(推定)、 :伸び率=2020年/1993年
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世界人口の推移と予測 牛肉 豚肉 鶏肉 鶏卵 大豆油 菜種油
食品1kgを生産するために必要な穀物量 (農水省試算) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 1950 1960 1970 1980 1990 2000 世界 先進国 発展途上国 世界人口の推移と予測 (総務省統計局) 億人 牛肉 豚肉 鶏肉 鶏卵 大豆油 菜種油 11 kg 7 kg 4 kg 3 kg 5 kg 2 kg 2010 2020 2030 2040 2050 食肉については、可食部の生産に必要なとうもろこし量。 油については、各原料の量。 食事内容が改善され、動物性蛋白や油脂の摂取量が増えると、そのまま食べる穀物量は相対的に少なくなる。かつては穀物輸出国であった中国が輸入国に転じた理由は、経済的発展による食事内容の改善であった(日本も同様)。 飼料摂取量 飼料要求率= 増体量 鶏肉の飼料要求率=約2
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リスク解析: リスク査定、リスク管理、リスク・コミュニケーション
リスク解析: リスク査定、リスク管理、リスク・コミュニケーション 1996 堺市学校給食事故
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リスク解析: リスク査定、リスク管理、リスク・コミュニケーション
リスク解析: リスク査定、リスク管理、リスク・コミュニケーション 1996 堺市学校給食事故
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食中毒患者数の推移 細菌 40,000 自然毒 35,000 化学物質 細菌 100 200 300 400 500 600 30,000
100 200 300 400 500 600 30,000 25,000 自然毒 20,000 15,000 化学物質 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 食中毒患者数の推移
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原因物質別にみた食中毒による死者数の推移
20 :総数 18 :細菌 16 :自然毒 14 化学物質による死亡者はいない 年間死亡数 12 10 8 6 4 2 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 原因物質別にみた食中毒による死者数の推移
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原因食品別にみた食中毒死亡者数 25 20 累積死亡者数 15 10 5 卵 フグ 貝類 不明 キノコ その他 野菜及び その加工品
卵 フグ 貝類 不明 キノコ その他 野菜及び その加工品 複合調理食品 原因食品別にみた食中毒死亡者数 (1996~2002)
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40 7年間で67名の死亡者が発生したが、その中の36名が家庭の食事を原因としており、自分で取ってきたフグ、キノコを自分で調理して起きた事故である。 30 累積死亡者数 20 10 家庭 病院 学校 旅館 飲食店 事業所 その他 老人ホーム 食事場所別にみた食中毒死亡者数 (1996~2002)
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フグ14名、キノコ9名、グロリオサ2名、トリカブト1名、細菌7名
死亡者の大半は家庭の食事 (2003~2008) 年 死亡数 内家庭 その他 植物性 動物性 細菌性 2003 6 4 販売店 仕出屋 2 キノコ イヌサフラン 3 フグ3 1 2004 5 3 販売店 不明 1 キノコ 2 フグ2 2005 7 6 飲食店 4 キノコ3 トリカブト 2 フグ2 1 2006 5 4 仕出屋 3 キノコ2 グロリオサ 1 フグ 2 2007 7 6 その他 4 キノコ2 グロリオサ 3 フグ3 2008 4 3 販売店 フグ3 1 34名中26名が家庭の食事で死亡! フグ14名、キノコ9名、グロリオサ2名、トリカブト1名、細菌7名
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主な毒成分はアルカロイドの一種、アコニチンで、全草(特に根)に含まれる。食べると嘔吐・呼吸困難などから、摂取後数十分で死亡する。即効性で、解毒剤はない。トリカブトによる死因は、心室細動ないし心停止である。 1986年には「トリカブト保険金殺人事件」が起きている。 トリカブト グロリオサ きれいな花には棘(毒)がある。 美人には手を出すな! 英語でGlory Lily(栄光のユリ)、Flame Lily(炎のユリ)。和名で、ユリグルマ、キツネユリとも言い、観賞用栽培が広がっている。 球根はヤマノイモやナガイモに似ているが、コルヒチンやグロリオシンという毒がある。
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あら何ともなや 昨日は過ぎて 河豚汁(フクトシル)
てっぽう その毒に「当たる」ことがあることから、昔からさまざまな言い伝えがある。このため関西では「滅多に当たらないが、当たれば命が危ない」という意味で「てっぽう」という。「てっさ」、「てっちり」という料理名はここから来ている。 がんば 長崎県島原地方でフグを指す方言「がんば」は、「がんば置いてでん食わんば(棺桶を置いてでも食べなくちゃ)」の略とされている。 町人出の俳人一茶 フグ食わぬ 奴には見せな 不二の山 出自が侍の芭蕉 あら何ともなや 昨日は過ぎて 河豚汁(フクトシル) 八代目 坂東 三津五郎 1975年(昭和50年)1月16日、京都南座の初春公演に出演、滞在中に食したトラフグの肝4人前によるフグ中毒により急逝。享年68歳。 てっさ (フグ刺し)
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安全性(Safety): 健康障害を起こさない
日本人の安全性意識 ウメーモノ 食って死ねれば 本望テ モンジャ ネーカ 「安全性}は生産者の義務ダロガー どんな食い方しようが ソリャー 俺の勝手だ! 「安全性}テナー 生産者をヤリコメテ 楽しむ コッタロー 「安全性に金を払え?」 ソンナ アホナコト ホザクナー ドコノドイツダ ドンデモネーヤローダ 一発カマシタロカ! 「安全性」は 食品添加物 と 農薬 の問題でしょ 無農薬の ナチュラル 製品しか買わないのよ 銘柄品 しか買わないから、食中毒とは関係ないわ
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中高年への衛生教育 年齢・死亡原因物質別にみた死亡者数
4 2 0~4 5~9 10~14 15~19 20~29 累積死亡者数 12 :動物性自然毒 :植物性自然毒 :大腸菌 :サルモネラ :ぶどう球菌 :腸炎ビブリオ 中高年への衛生教育 10 8 6 4 2 30~39 40~49 50~59 60~69 70~ 年齢 年齢・死亡原因物質別にみた死亡者数 (1996~2002)
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食中毒患者数および死者数の年齢別割合 死者数 人口 患者数 20 40 60 80 100% 50歳 15歳 :0~4 :5~9
20 40 60 80 100% 食中毒患者数および死者数の年齢別割合 :0~4 :5~9 :10~14 :15~19 :20~29 :30~39 :40~49 :50~59 :60~69 :70~
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米国の食品規格コード(Food Code ) 日本においても、ハイリスク集団(健康弱者)に関する法的根拠を設けることが重要である
1-201 用語の定義と適用範囲 (44)高感受性集団(Highly susceptible population)とは、次の理由で、一般集団の人より食品媒介性疾患に罹りやすい人をいう。 (i) 免疫低下者、就学前児童、老人 (ii) デイケア施設、腎臓透析センター、病院または療養所、看護付老人ホームなどの健康管理または補助生活を受けている人。 日本においても、ハイリスク集団(健康弱者)に関する法的根拠を設けることが重要である
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食品の安全性に関わる社会システム:食品工場
健康弱者 (ハイリスク集団) HACCP (食肉処理場・食品工場) 農場でのQAP 一般的衛生管理 一般衛生基準 (PP;Prerequisite Program) 適性製造規範 (GMP;Good Manufacturing Practice) 衛生標準作業手順 (SSOP;Sanitation Standard Operation Procedure) 自主衛生管理 免疫低下者(HIV、糖尿病、 癌、重度の疾患など) 子供、老人、妊婦、病弱者 に対する特別措置 高度の安全性 = 付加価値 第三者認証 ISO SQF Global GAP HACCP (食肉処理場・食品工場) 一般的衛生管理 一般健康成人 法律による規制 食品衛生法 衛生基準 営業許可 営業停止 衛生教育 食品の安全性に関わる社会システム:食品工場
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HACCPと衛生水準 永続的改善システム 再吟味 検証 記録 重要管理点 危害分析 再吟味 検証 記録 重要管理点 危害分析
衛生標準作業手順 SSOP 再吟味 検証 記録 重要管理点 危害分析 衛生標準作業手順 SSOP 再吟味 検証 記録 重要管理点 危害分析 衛生標準作業手順 SSOP HACCPは定まった衛生水準を規定するものではなく、衛生水準を向上させる永続的システムであり、そのシステムの可否を認証するものである。 標準作業手順 SOP 一般的衛生管理 PP HACCPと衛生水準
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2. 標準作業(SOP)手順書 分類 SOP No. タイトル 0001 0002 0003 0004 0005 0006 0007
0008 0009 0010 0011 0012 0013 0016 抗生物質/化学物質の運搬及び保管 化学物質使用と土質試験 散布 家畜の購入 家畜の特定 淘汰 家畜の取扱い、販売と移動 家畜の検疫 発注と納入 飼料の保管 飼料の配合 飲水 注射 経口薬、ワクチン接種と寄生虫制御 成長促進ホルモン剤の使用 技術の見直し 農業用化学物質: 使用と安全性 放牧場に散布した農薬が残留基準値以下 感染症の持込みと持ち出しを防ぐ 家畜の取扱い 有害物質等による 飼料や水の汚染防止 飼料 薬物の 適正使用 家畜衛生 人工授精 自分で行う場合の研修
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酪農に関しては、繁殖、保育・育成、搾乳など、畜産分野において最も複雑な作業工程があり、特別の項が設けられている。
出産管理 0017 0018 0019 0020 0021 0022 0023 0024 0025 0026 0027 0028 0030 0031 0032 0033 0034 0035 0036 分娩手順 子牛育成 出産後の乳熱 薬剤投与した牛の搾乳手順 乳房炎の監視 病原体の防除 搾乳手順 畜舎環境 畜舎の管理と清掃 廃水処理 廃乳の処分 生乳の冷却と保管 従業員の雇用、技術の点検と訓練 内部監査 HACCPの再検討 顧客の苦情 保守 在庫調査 機器の校正 事故に際しての対処法の訓練 酪農に関しては、繁殖、保育・育成、搾乳など、畜産分野において最も複雑な作業工程があり、特別の項が設けられている。 乳牛の管理 訓練 SQF認証に先立って、 農場自らが整備しておかなければならない項目 一般
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農業用化学物質: 使用と安全性 抗生物質/化学物質の運搬及び保管 SOP No. 0001
目的:適切な方法で化学物質及び抗生物質を運搬及び保管するよう徹底するため 背景:化学物質及び医薬品は、畜産物製品の完全性を保ち、家畜や子供等による偶発的な汚染や摂取を避けるために、安全で適切な方法で運搬・保管されなければならない。 担当 場所 時期 作業・処置 参照 記録 全ての従業員 必要に応じて ● 低温で安定した温度で運搬するよう要求されている化学物質や抗生物質については携帯用クーラーを使用する ● 冷蔵庫の温度を毎週点検・記録し、2 ~8℃の範囲外であった場合は温度調整する ● 大量貯蔵庫は、抗生物質や化学物質に対する適切な防御状態であるよう保証すること ● 製品の偶発的汚染は、経口投薬器、注入器、注射針、試験用バケツ等の機材を完全に洗浄することによって防ぐことができる 獣医師用薬剤の安全な使用 冷蔵庫温度記録 作業員 農場/搾乳室 使用前後及び使用中 ● 農場において使用許可登録されている承認製品を使用すること ● 鍵付きの倉庫に化学物質や医薬品を保管すること 国の規制当局 農場化学物質一覧
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家畜の取扱い 家畜の購入 SOP No. 0004 目的:適切な家畜の取扱い手順に従い、家畜の健康と安全を確保するための計画を実施し継続するため。抗生物質/化学物質の残留状況が不明である家畜の購入を避け、病気や寄生虫の既存の群への持ち込みを防ぐため。 背景:家畜の健康は、乳製品と肉製品の品質を決める決定的要素である。病気の家畜は、品質の低下と生産の非効率の原因となる。全ての家畜を信頼できる供給業者から購入することが重要である。これには、育成牛、種雄牛/未去勢牛の入替えを含む。 担当 場所 時期 作業・処置 参照 記録 監督者 家畜市場 売買時 ● 売り手から納入業者申告書を入手すること ● 病気のない家畜を購入すること Farmnotes No. 44/91 Agdex 415/28 Guidelines for a Dairy Farm HACCP System: Reference Manual Fact Sheets 2-1 – 2-7. 家畜購入受領書 飼育係 作業場 敷地内に家畜が到着した時 ● 家畜に寄生虫に対する処置をすること 家畜治療記録 監督者/助監督者 農場 家畜の購入時 ● 購入前に家畜の治療標識札を検査すること。「家畜処置記録票」によって確認すること ● 保留期間の確認 ● 不明または汚染された残留状態の家畜の販売を保留すること(42日間) 家畜を農場に移動する前 ● 保留期間を必要とする化学物質の使用についてパドック記録を点検する パドック記録および穀物保管記録 家畜を農場から移動する前 ● 有害残留物およびヨーネ病について、移動する家畜がいた土地を査定する ● 西オーストラリア農務省/DPIおよび獣医師に連絡する 農場外放牧記録
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卵を買う時に、何を考えなければならないか? What should I consider when buying eggs?
Buy uncracked Grade AA or A eggs from refrigerated cases only. Then, get them home quickly and refrigerate them immediately. If it’s hot outside or the distance is great, pack 冷蔵されている、ひび割れのないグレードAAまたはAの卵のみを購入しなさい。 そして、速やかに帰宅し即座に冷蔵庫に eggs and other perishable foods with ice or commercial coolant in an insulted bag or cooler in your car, rather than the trunk. Keep eggs refrigerated until you’re ready to use them. しまいなさい。暑い日や道のりが遠い場合は、パック卵とその他の腐り易い食品は、車のトランクではなくクーラーに入れるか、氷を入れた携帯クーラーで運びなさい。卵は、使うまで冷蔵しなさい。 市販鶏卵に表示されている「品質・安全性規格」
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食肉の安全性に関わる社会システム(1) リスクが減るのは2箇所だけ リスク・レベルのモデル 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜
調理時の加熱は細菌を殺滅する。 しかし、食材や料理を室温での放置すれば、菌は増殖する。 輸送距離が延びるにつれ、細菌増殖に必要な時間も長くなる。 温度管理等の法的基準もない。 病気 動物薬残留 食中毒菌 薬剤耐性菌 獣医師による法律に基づく検査 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(1)
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? ? 食肉の安全性に関わる社会システム(2) リスク・レベルのモデル GAP QAP HACCP リスクは 残る! 農場 食肉センター
農場における 適正な衛生管理 病原体低減/HACCP Pathogen Reduction / HACCP リスク・レベルのモデル 解体処理工程など 食肉センターの 衛生管理 GAP QAP 消費者は ? ? HACCP リスクは 残る! 流通過程が 変わらなければ 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(2)
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「農場から食卓まで」の、全ての段階で安全性確保対策を実施することによって、初めてリスクが小さくなる。
食品輸送衛生法 (米国、1990) Sanitary Food Transportation Act リスク・レベルのモデル GAP QAP 消費者 教育 流通過程の 衛生基準 ? ? HACCP 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 「農場から食卓まで」の、全ての段階で安全性確保対策を実施することによって、初めてリスクが小さくなる。 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(3)
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カンピロバクターとサルモネラ食中毒の発生率
0.25 100 :カンピロバクター、 :サルモネラ 0.2 80 10万人当り死亡率 10万人当り罹患率 0.15 60 0.1 40 0.05 20 0.0014 日本 英国 米国 日本 英国 米国 カンピロバクターとサルモネラ食中毒の発生率
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日誌が適していない非製造部門における記録管理
2004年に英国が行った 「EU食品衛生規則を統合する提案に対する全面的な法令影響査定(Full Regulatory Impact Assessment on proposals to consolidate EU food hygiene legislation)」における費用便益解析: 設備投資を含まない記録に要する費用。 食品産業における実施費用の要約 要件/費用の要素 影響を受ける企業数/企業当りの費用 1度限りの業界費用 企業の年間費用 SFBBモデルの採用 210,000/30,000円 63億円 SFBB情報―印刷資料 105,000/8,000円 8.4億円 SFBB日誌 413,250/6,000円 24.6億円 製造部門における記録管理 7,000/131,200円 9.2億円 日誌が適していない非製造部門における記録管理 61,750/131,200円 80.5億円 SFBB日誌の完成 413,250/17,600円 35.8億円 第一次生産部門の費用 160,000/26,000円 42億円) 60万食品企業の費用総額 71.4億円 192.2億円
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便益は食中毒事故に伴う費用がHACCP導入によって減少するとして計算された。「痛み、悲しみおよび社会的苦痛に対する追加的金銭価値」は、交通事故による死亡や傷害等に支払われた慰謝料等を参考に試算された。
2000年における病気の費用の計算 (イングランドとウェールズ) (i) 病気の実際の価格/費用 = 328億円 食品媒介性疾患の総症例数 一般開業医を受診した数 一般開業医を受診しなかった数 1,338,772症例 368,516症例 970,256症例 (ii) 食品媒介性疾患による痛み、悲しみおよび社会的苦痛に対する貨幣価値 死亡: 480症例×213,100,800円 =1022.8億円 永久の障害: 480症例×377,740,00円 =181.4億円 一般開業医を受診せず7日以内の症例: 941,148症例×31000円=291.8億円 一般開業医を受診せず7日を超える症例: 29,108症例×392,000円=114.2億円 一般開業医を受診した7日以内の症例: 221,110症例×31000円=68.6億円 一般開業医を受診した7日を超える症例: 146,446症例×392,000円=574億円 = 億円 (iii) 生産活動停止費用: = 151.2億円 328億円+ 億円+151.2億円=2732億円
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食品衛生規則: 費用と便益に関する証拠の要約
食品衛生規則: 費用と便益に関する証拠の要約 年 費用 便益(年3%) 1 264億円 90億円 2 192億円 180億円 3 272億円 4 352億円 5 456億円 6~10 イングランドとウェールズの2732億円からスコットランドと北アイルランドを含めた英国全体の費用を推定すると、3,016億円。 3,016億円 ×0.03 = 90.48億円 消費者による「返済意志(WTP:willingness to pay)」が調査されたが、それは購入する食品が改善された食品安全手順に従うものとする保証に対して割増金を払う意思があるかどうかというものであり、その結果として3%の割合で費用が減るという根拠が作られた。
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リスク管理と経費負担のモデル 法的規制 衛生教育に掛かる費用 低 リスク・レベル 高 商品価格 国民経済として 無駄な経費 税金
個人衛生 低 リスク・レベル 高 衛生教育に掛かる費用 法的規制の水準を上げると、その分、衛生対策費と監視業務の経費を税金で賄わねばならない。赤字国債が問題となっている現状で、実行できますか? 法的規制 自主衛生管理 商品価格 HACCP等の費用 国民経済として 無駄な経費 法的規制 税金 一般健康成人 ハイリスク集団 リスク管理と経費負担のモデル
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英国におけるBSEとvCJDの発生の推移
(千頭、人) 英国におけるBSEとvCJDの発生の推移 40 1992年 37,280頭 免疫学的検査法(エライザ法、 ウエスタン・ブロッティング法)の確立 35 30 2000年 28人 23年間で わずか164名の 患者に留まった。 25 この間に英国民は、 70~100万頭の 未発症感染牛を食べた。 20 15 BSE vCJD 10 5 -1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
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国際基準: 30ヶ月齢以上の牛について1万頭当り1頭
日本のBSE検査状況 食肉センター 家畜保健衛生所 年度 検査頭数 確定 2001 523,591 2 1,137 1 2002 1,253,811 4 4,315 2003 1,252,630 3 48,416 2004 1,265,620 98,656 2005 1,232,252 5 95,244 2006 1,218,285 94,749 2007 1,228,256 90,829 2008 834,962 56,352 計 8,809,407 21 489,698 14 100万頭当り陽性率 2.4 28.6 検査費用概算(億円) 880.9 48.9 国際基準: 30ヶ月齢以上の牛について1万頭当り1頭
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安心立命 安全性 宗教 科学 世界観 生命観 科学と宗教は 車の両輪 生 き る 仏教 キリスト教 自然科学 イスラム教 社会科学 人文科学
仏陀釈迦牟尼の教え キリスト教 イエスの教え 自然科学 生物学、医学、農学、工学、・・・ 宗教 科学 イスラム教 マホメットの教え 社会科学 法学、経済学、・・・ 人文科学 歴史、心理学、文学、・・・ 現実によって動く心の世界の解明と導き 2000年変わらぬ世界 世界観 現実にある事象の解析と解決方法の提示 日進月歩の世界 生命観
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危害(Hazard)とリスク(Risk)
「危害とは、ヒトに障害を起す可能性のある食品の、生物学的、化学的、あるいは物理学的因子、もしくは状態をいう。 他方、リスクとは、食品中の危害の結果として起こる、暴露集団の健康に対する悪影響の発生確率と重篤度の推定値である。」 「危害を減らすこととリスクを減らすことの関係を理解することは、適切な食品の安全性制御を発展させる上でとくに重要である。 不幸なことに、食品について『ゼロ・リスク』のような事態はありえない(その他の何についても言えることだが)。」 「食品の品質と安全性システム」 FAO: Food Quality and Safety Systems - A Training Manual on Food Hygiene and the Hazard Analysis and Critical Control Point (HACCP) System
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化学物質の用量・反応関係 閾値がない 化学物質 ▲ 栄養素 閾値がある 化学物質 健康への悪影響 ● ● NOAEL LOAEL
無有害作用濃度 LOAEL 最小有害作用濃度 用量(摂取量) 化学物質の用量・反応関係 WHO: Hazardous chemicals in human and environmental health - A resource book for school, college and university students. 2000
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一日摂取許容量と残留許容濃度(一般毒性)
一日摂取許容量(ADI )= 無有害作用濃度 100 生体反応の強度 食品中の残留許容濃度 致死量 無有害作用濃度 中毒量 閾値がある 化学物質 閾値 薬効 用量 一日摂取許容量と残留許容濃度(一般毒性)
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Ames法による突然変異原性の強さ(変異コロニー数/μg)
(μg/ Kg/ day) AFB1 1 1O 2 3 4 5 6 カビ毒 癌原性の強さ(動物に癌を作る用量) アフラトキシン ニトロソアミン (魚の二級アミン + 野菜の硝酸塩) STRC 4NQO BP BNU MNU 3MCA DMBA DBNA 魚の焼け焦げ Trp-P2 TOX DBA Trp-P1 AF2 DAN TCE ~ ~ -3 -2 -1 1 10 2 3 4 5 6 Ames法による突然変異原性の強さ(変異コロニー数/μg) 生活環境中物質の発癌性と突然変異原性
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DNA 障害性物質の安全性基準 10-6 一生の間に100万人に1人以下でしか起きない確率 発癌率 低濃度直線性 用量 実質的安全量
日常的に暴露されているリスク、避けることのできないリスクより十分に低いことをもって安全とする。 一生の間に100万人に1人以下でしか起きない確率 発癌率 閾値がない 化学物質 10-6 低濃度直線性 用量 実質的安全量 DNA 障害性物質の安全性基準
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食料の輸出入における安全性確保と関わる国際的枠組み
1930年代の世界不況 関税引き上げ 貿易数量制限 為替制限 自国の産業保護 第二次世界大戦 国際復興開発銀行( IBRD ;1945) 1944年 ブレトン・ウッズ会議(米国) 国際通貨基金( IMF ;1947) 世界戦争の回避策 ガット体制(GATT; 1948 ) 「関税及び貿易に関する一般協定」 1947年 第1回関税交渉妥結 → ガット採択 経済紛争の元となる貿易障壁をなくし、自由貿易を確保する基本原則 (i)貿易制限措置の削減 (ii)貿易の無差別待遇(最恵国待遇、内国民待遇) GATT 第20条 一般的例外: 動植物防疫に係る検疫等の措置 「衛生植物検疫措置の適用に関する(SPS)協定」 ケネディ・ラウンド(1967) 、東京ラウンド(1979 )妥結 ウルグアイ・ラウンド(1986 ~1994)妥結: 農産物貿易の原則自由化 1995年 世界貿易機関( WTO ) ← ガット体制 「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(通称:WTO設立協定)」 「農業に関する協定」 食料の輸出入における安全性確保と関わる国際的枠組み
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自由貿易の枠組み(WTO)と衛生基準の関係概念図
危害因子についての国の衛生基準 B国 A国 非関税障壁 (WTO訴訟) 国 際 基 準 E国 C国 D国 自由貿易の枠組み(WTO)と衛生基準の関係概念図 衛生および食物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定) 貿易の技術的障壁に関する協定(TBT協定)
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コーデックス委員会の組織図 コーデックス委員会 執行委員会 事務局 一般問題部会(9) 個別食品部会(11) 特別部会(2) 一般原則
( FAO/WHO 合同食品規格委員会) ( ):部会数、 〔 〕:休会中 執行委員会 事務局 一般問題部会(9) 個別食品部会(11) 特別部会(2) 一般原則 食品衛生 食品表示 分析・サンプリング 食品輸出入検査証明制度 食品添加物・汚染物質 栄養・特殊用途食品 残留農薬部会 残留動物用医薬品 乳及び乳製品 食肉・食鳥肉衛生 魚類・水産製品 生鮮果実・野菜 加工果実・野菜 油脂 〔ココア製品・チョコレート〕 〔糖類〕 〔穀物・豆類〕 〔植物タンパク質〕 〔ナチュラル・ミネラル・ウォーター〕 果実・野菜ジュース 動物用飼料 地域調整部会(6) アジア アフリカ ヨーロッパ ラテンアメリカ・カリブ海 近東 北アメリカ・南西太平洋 専門家会議 食品添加物(JECFA) 残留農薬(JMPR) コーデックス委員会の組織図
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リスク・アナリシスの構図 リスク・アセスメント リスク管理 リスクの情報交換 危害の特定 危害の特性解明 暴露査定 危険性の特性解明
Risk Assessment 危害の特定 Hazard Identification 危害の特性解明 Hazard Characteristics 暴露査定 Exposure Assessment 危険性の特性解明 Risk Characterization リスク管理 Risk Management 危険性の評価 Risk Evaluation 管理措置の査定 Management Option Assessment 管理措置の実行 Option Implementation 監視と再吟味 Monitoring and Review リスクの情報交換 Risk Communication リスク・アナリシスの構図 Structure of Risk Analysis. Risk Management and Food Safety. FAO, Rome, 1997
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澤村ほか: 「食品衛生学」、南江堂を基に改変
● 生物学的・化学的実験データ: 性状、純度、 規格、分解性、代謝、薬理作用、変異原性など 演繹的資料 毒性評価 (毒性の把握と 認識) ● 動物実験データ: 一般毒性、特殊毒性 ● 臨床データ: 有効性、副作用など ● ヒト・他の生物の接触経験: 食品成分、 環境物質、代謝物質 帰納法的資料 安全性の 科学的評価 ● 疫学調査データ: 外国および国内での 使用経験 ● 類推される間接科学知見: 化学構造からの類推 意思決定の科学 (行政基準値等) ● 暴露レベル: 生産量、流通、用途、使用法、 一般人との接触度 ヒトとの関係 ● 規制の評価: 規制が可能か、規制の効果があるか ● 有用性・有益性 再評価 ● その他: 分析技術、感度 化学物質の安全性評価チャート 澤村ほか: 「食品衛生学」、南江堂を基に改変
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