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フッ化物の働き 国際小児歯科学会教育委員会作成

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1 フッ化物の働き 国際小児歯科学会教育委員会作成
このフログラムは、国際小児歯科学会(International Association of Dentistry for Children)教育委員会によって作られました。 Developed by The Education Committee of the international Association of Dentistry for Children 国際小児歯科学会教育委員会作成

2 先進国でのう蝕の減少 平均年齢 12歳 ここ20年間にわたって、先進国では、子供一人当りのむし歯の数が減り続けています。ところか日本では必ずしも同じ傾向がみられません。 These children are smiling. And they have good reason to be. For nearly two decades, not only has the number of cavities per child declined in many industrialized countries around the world. <こどもたちが微笑んでいますね。笑顔のわけは何でしょう。このほぼ20年間に、工業先進諸国では12歳児の一人当り平均う蝕歯数が劇的に減少してきました(ところが、日本のこどもたちのう蝕の減少傾向はなだらかです)>

3 う蝕のない小児の増加 ー本もむし歯のない子供たちも、世界中でどんどん増え続けています。しかし、やはり日本ではむし歯のない子供たちは、あまり増加していません。 but there has also been a sharp increase in the number of children worldwide who reach their totally caries free. <それだけでなく、う蝕のないこどもたち(カリエスフリー)の割合が急激に増加してきています。(これに比べて、カリエスフリーの日本の12歳児の割合は1978年3%であったのが1980年代の後半に7%に増えたにとどまっています)>

4 デンマーク、フィンランド、フランス、アイルランド、ノルウェ一、スウェ−デン、イギリスなどのヨーロッパの国々で、急激なむし歯の減少が報告されています。さらに、オーストラリア、香港、シンガポール、アメリカ合衆国でも同様に、急激なむし歯の減少が、報告されています。 In Europe...Denmark, Finland, France, Ireland, Norway,Sweden, and the United Kingdom a rapid caries decline has been reported. In addition, Australia, Hong Kong, Singapore, and the United States, have also reported a rapid drop in caries prevalence.

5 これらの国々では、フッ素入りの歯磨剤が、広く日常的に使われていることが、最近の調査で明らかになりました。このスライドと文章は、どうやって、フッ素イオンがエナメル質をむし歯から守り、強くするか、について説明します。フッ素のはたらきについて理解することは、個人、または、集団に対する効果的なフッ素利用を考えるうえで大切なことです。 Recent studies confirm that the single factor common to all countries showing a caries decline, is the widespread dally use of dentifrices containing fluoride. This presentation was created to facilitate a better understanding into the mechanism of how fluoride lions maintain enamel integrity, favor its maturation, and simultaneously inhibit the metabolism of oral bacteria.. Such an understanding can provide a basis for designing effective fluoride programs for both individuals and community groups. <う蝕の減少が認められる国々に共通している要因として、フッ化物配合歯磨き剤を日常的に広範に使っていることであると最近の調査で確かめられています。このスライドとその説明はどのようにしてフッ化物イオンがエナメル質の結晶構造を整え、エナメル質の成熟に与り、同時に口腔最近の代謝を抑制するメカニズムを理解しやすいように作成されました。このようなフッ化物のメカニズムについての理解によって、個人と地域集団を対象として効果的なフッ化物プログラムを選定する基礎となります。>

6 飲料水や歯麿剤などに含まれているフッ素にむし歯予防のはたらきがあることをご存じのことと思います。最新の研究で、フッ素が、初期のむし歯の進行を止め、そのうえ、ときには“治療”さえしてしまうことのしくみが、明らかになりました。 We have all heard that fluoride present in drinking water, dentifrices, mouthrinses, and gels leads to fewer cavities. New research offers clearer explanations of how fluoride acts to prevent the progression of, and in some cases even "heal," early carious lesions. <みなさん御存知のように、飲料水、歯磨剤、洗口剤、ゲルんい含まれているフッ化物にはう蝕予防の働きがあります。最新の研究では、初期のう蝕病変を防いだり、場合によっては”修復”さえするというフッ化物の働きを明らかにしています。>

7 当初は、歯のできはじめの時期にエナメル質のアバタイト結晶にフッ素が取り込まれることで、むし歯予防のはたらきが発揮されると考えられていました。それで、体内にフッ素を吸収すると、エナメル質は酸に強くなると考えられていました。一方、フッ素を歯に直接作用させた場合の強力なむし歯予防の効果については、充分に評価されていませんでした。 Scientists initially believed that fluoride's principal mechanism of action was its incorporation into the enamel apatite crystals during early tooth formation. Systemic ingestion of fluoride during tooth formation was believed to make the enamel more resistant to acid. However, the early scientists failed to recognize the strong topical benefits 0f fluoride in inhibiting the development of caries. <当初には、研究者たちは歯の形成期にエナメル質のアパタイト結晶にフッ化物が取り込まれることがフッ化物の主な作用メカニズムであると信じていました。それで、歯の形成期に全身的なフッ化物の摂取をすることがエナメル質の耐酸性を高めると確信していました。しかしながら、初期の頃の研究者たちはう蝕予防の際の強力なフッ化物の局所的な効果については認識していませんでした。>

8 唾液がエナメル質に接触すると 現在では、エナメル質表面のフッ素イオンがむし歯予防の鍵であり、歯のできはじめの時期のエナメル質への取り込みよりも、もっと重要であることかわかってきました。 Today we realize that the presence of fluoride ions in and just below the enamel surface is a key to its effectiveness. Fluoride ions at the tooth surface are believed by many to be more important than the incorporation of fluoride into enamel during early tooth formation. <現在では、私たちはエナメル質界面にフッ化物イオンが存在することがフッ化物の効果を発揮する鍵であると理解しています。それで、多くの研究者は歯表面の存在するフッ化物イオンが歯の形成期にエナメル質に取り込まれて結合したフッ化物よりもさらに重要であると信じています。>

9 唾液 唾液がエナメル質に接触すると 最近の研究によれば、むし歯にならないためには、歯かできるときだけでなく、歯がはえてからもずっとフッ素イオンに接していることが重要です。そして、歯のはえる前でも後でも、フッ素イオンはエナメル質表面の結晶に入り込むことができます。 Recent studies suggest that to keep teeth caries free requires continuous daily exposure to fluoride ions during early enamel formation as well as when the teeth are in the mouth When available in ionic form, fluoride becomes incorporated into the enamel crystals on and near the surface. This occurs both before and after tooth eruption. <最近の研究によれば、う蝕予防のためには、歯の形成期だけでなく歯が口腔内にある限りフッ化物イオンに接していることが必要であると示唆しています。イオンの形態で利用される際には、フッ化物はエナメル質表面とその周辺の結晶中に入り込みます。これは歯の萌出前後で起こります。>

10 エナメル質中のフッ化物濃度 顎の中に歯が作られて、口の中にはえてくるまで、歯の周囲の組織液からエナメル質表面にフッ素イオンが取り込まれます。このように、歯がはえる前のフッ素の取り込みを“萌出前成熟”と言います。エナメル質の内部に比べて表面の万にたくさんフッ素があるのは、このためです。 はえたばかりの乳歯には、永久歯に比べて少ししかフッ素が含まれません。これは、永久歯に比べて萌出前成熟の時期が短かいためです。 Just after crown formation and prior to tooth eruption, fluoride ions contained in the tissue fluid surrounding the crown enter the surface enamel. Such fluoride uptake is part of what is known as pre-eruptive maturation. This is why assays show that the greatest quantity of fluoride is located at or near the enamel surface. When primary teeth erupt, they contain less fluoride in their enamel surfaces than do permanent teeth when they erupt. This is because primary teeth have a briefer pre-eruptive maturation period. <顎の中で歯冠が形成されて萌出に至る間に、歯冠の周囲の組織液からエナメル質表面にフッ化物イオンが取り込まれます。このように、萌出前のフッ化物の取込みを萌出前成熟と言われています。これがエナメル質のフッ化物量を分析した際に、エナメル質表層に最大のフッ化物量が局在している理由です。乳歯の萌出直後のフッ化物量は永久歯のそれに比べて少量しか含まれていません。これは永久歯に比べて乳歯の萌出前成熟期間が短いことによるのです。>

11 歯がはえる前後とも、エナメル質の内部よりも表面の万に多くのフッ素が分布します。また、内部のフッ素濃度は組織液や睡液に触れることガないので、歯がはえる前後で変化はありません。それに対して、表面では睡液から取り込まれるフッ素イオンのため、歯がはえた後には、フッ素濃度が増加します。フッ素が、どのようにしてむし歯を防ぐかを正しく理解するには、エナメル質の結晶構造がどうなっているか、さらに、むし歯ができるときにフッ素、睡液、歯垢がどのように関わっているかについて知っておくと良いでしょう。 Notice how both pre- and post-eruptively, more fluoride is located in the enamel's outer surface than in the enamel at the dentino-enamel junction. The fluoride levels at the dentino-enamel junction remain the same because that part of the tooth is not in contact with tissue fluid or saliva. The increase of fluoride in the surface after eruption is due to uptake of fluoride ions from oral fluids.(l,2) To achieve a clearer understanding of fluoride’s mechanisms of action, it is helpful to examine the crystalline structure of enamel and the manner in which fluoride, saliva, and plaque interact during caries formation. <萌出前も後も、フッ化物は象牙-エナメル質境界のエナメル質よりも最表層により多く分布していることに注目して下さい。象牙-エナメル質境界のエナメル質のフッ化物の水準は、その部分が組織液や唾液に接していないので、歯の萌出前後で変わりはありません。これに対して、萌出後のエナメル質表層のフッ化物は唾液を介して取り込まれるフッ化物イオンのために、萌出後にフッ化物濃度が高まります。フッ化物の作用メカニズムを明確に把握するためにはエナメル質の結晶構造、並びにう蝕発生の過程でのフッ化物、唾液、プラークの相互作用を調べることが役に立ちます。>

12 これは、エナメル小柱の電子顕微鏡写真です。
This electron microscope photograph enables us to visualize the organization and shape of the enamel rods. <この電子顕微鏡写真から、エナメル小柱の構成と形態がわかります。>

13 これは、エナメル小柱の横断面を図示したものです。鍵穴状のものが、エナメル小柱です。小柱の間のすきまは物質の通り道になっています。エナメル質は、体積の約90%がカルシウムやリン酸基などの無機質であり、残り10%は、エナメル小柱間にある水やタンパク質や脂質です。むし歯ができるときには、小柱間のすきまを通ってフッ素や無機質や酸が移動します。エナメル質は身体の中で一番硬い組織で、棒を束ねたような構造になっており、そして、その棒の中にはアバタイト状の無機質がぎっしり詰まっています。 This diagram of enamel rods that has been cut in cross sections reveals the ''keyhole'' shape of the rod. The spaces between the individual rods are known as diffusion channels.(3,4) By volume, about 90% of the enamel is mineral. The remaining 10% consists of water, proteins, and lipids which are located in the spaces between the enamel rods. During caries formation, it is through the diffusion channels that fluorides, minerals, and organic acids move. Enamel, which is the hardest body tissue, is arranged in rod-like structures. Each rod is filled with crystals of apatite-like material. <これは、エナメル小柱の横断面を図示したもので、エナメル小柱は鍵穴状の形を示しています。各小柱の間のすきまは物質の通り道になっています。エナメル質は、体積の約90%がカルシウムやリン酸基などの無機質であり、残り10%は、エナメル小柱間にある水やタンパク質や脂質です。う蝕の発生の際には、小柱間のすきまを通ってフッ化物や無機質や酸が移動します。エナメル質は身体の中で一番硬い組織で、小柱を束ねたような配列構造になっており、そして、その小柱の中にはアバタイト状の無機質がぎっしり詰まっています。>   >

14 ヒトのエナメル質は、できたてのときはまだ純粋なハイドロキシアバタイトになっていません。炭酸基やマグネシウムのような不純物が混さっています。エナメル質が、酸に触れるとこの不純物のところから溶けてしまいます。しかしこのとき、フッ素イオンがあれば表面の結晶は、不純物がないようにつくりかえられます。 When first formed, many of the crystals in human enamel are not pure hydroxyapatite. Human enamel crystals contain impurities such as carbonate and magnesium. These impurities make the enamel more soluble in acid than if the y were pure hydroxyapatite. Following eruption, acid conditions in the mouth can cause surface crystals to dissolve and reform. The most soluble crystals dissolve first. When fluoride ions are present, the surface crystals will reform without the impurities. <ヒトのエナメル質の大部分は、できたてのときはまだ純粋なヒドロキシアバタイトになっていません。ヒトのエナメル質結晶には、炭酸基やマグネシウムのような不純物が混さっています。これらの不純物があるために、エナメル質は純粋なヒドロキシアパタイトよりも酸に溶けやすいのです。そして、この部分が最も酸に溶けやすい結晶として、まっ先に溶解されます。しかしこのとき、フッ化物イオンがあれば、表面の結晶は不純物がないようにつくりかえられます。>

15 炭酸基とマグネシウムは、カルシウムやリン酸基やフッ素と置き換わり、エナメル質表面の結晶は元の結晶より酸に強くなります。
Carbonate and magnesium are replaced by phosphate, fluoride, and calcium and the new crystals are more like hydroxyapatite, fluorohydroxyapatite and fluoroapatite. All of these forms of enamel apatite are more acid resistant than the original carbonated apatite. <炭酸基とマグネシウムは、リン酸基、フッ化物やカルシウムと置き換わり、新生結晶はヒドロキシアパタイト、フロロヒドロキシアパタイトとフロロアパタイト様の結晶に置換します。これらの形態のエナメルアパタイトはすべて元の炭酸基を含んだ結晶より耐酸性の結晶となります。>

16 この図は、炭酸基とマクネシウムがアバタイト結晶から除かれたあとの状態を示しています。
As shown here, the replacement of carbonate and magnesium leave hydroxyapatite. <このスライドでは、炭酸基とマクネシウムがアバタイト結晶内で各々リン酸基とカルシウムに置換したあとの状態を示しています。>

17 水酸基がフッ素で置き換わり、フッ素が八イドロキシアバタイトと結合しています。アバタイト結晶が、マグネシウムと炭酸基を追い出してより酸に強くなることを“萌出後成熟”と言います。これは、歯が唾液に触れている限り続きます。 When a hydroxyl is replaced by a fluoride ion, fluoridated hydroxyapatite is formed. The process of the apatite crystals losing magnesium and carbonate and changing into more acid resistant forms, is called post-eruptive maturation. This maturation continues as long as the tooth is in the mouth and is in contact with saliva. <水酸基がフッ化物イオンで置き換わり、フッ化物がヒイドロキシアバタイトと結合しています。アバタイト結晶が、マグネシウムと炭酸基を追い出してより酸に強くなることを“萌出後成熟”と言います。この過程は、歯が口腔内に存在して唾液に触れている限り続きます。>

18 このことは、はえてからの時間が長い程、むし歯になりにくくなるという臨床的な経験を裏付けています。唾液中にはカルシウムイオンとリン酸イオンが、過剰な状態になっています。そして、この二つのイオンは、エナメル質のアバタイトの中にもたくさん含まれています。 This phenomenon of maturation can be used to explain the clinical observation that the longer a tooth remains in the mouth, the more resistant it becomes to caries formation. Saliva is supersaturated with calcium and phosphate ions. These are also the major ions found in the enamel apatite. <この成熟現象によって、萌出後の時間が長い程、う蝕になりにくくなるという臨床的な経験を裏付けています。唾液にはカルシウムイオンとリン酸イオンが過飽和な状態になっています。そして、これらのイオンは、エナメル質のアバタイトの中にもたくさん含まれています。>

19 自然な状態では、睡液とエナメル質と歯垢の間をカルシウムイオンとリン酸イオンが行ったり来たりしてバランスがとれています。
While the enamel surface is bathed in saliva, a continuous interchange of calcium and phosphate ions occurs between the saliva and the enamel surface. An equilibrium is established between the minerals in the tooth surface and those minerals present in the plaque fluid and saliva. (5). <エナメル質表面が唾液に浴した、自然な状態では、唾液とエナメル質表面でカルシウムとリン酸イオンの間断ない交換が起こります。そして、歯表面の無機質と歯垢と唾液中の無機質との間で平衡が保たれます。>

20 このバランスのとれた状態も、細菌が砂糖を分解するときにつくる酸が歯垢中に溜ると、崩れてしまいます。つまり、歯垢の下のエナメル質からカルシウムイオンとリン酸イオンか、一方的に出て行ってしまうのです。
This equilibrium is disturbed by organic acids which are produced as by-products of bacterial metabolism of carbohydrates. It is these organic acids that cause the enamel surface below plaque to dissolve and lose mineral. Minerals from the dissolved enamel crystals, particularly calcium and phosphate, leave the enamel in ionic form and enter the plaque fluid and eventually go into the saliva. <このバランスのとれた状態も、細菌が炭水化物を代謝して分解するときにつくる有機酸を歯垢中に溜らすと、崩れてしまいます。これらの産生された有機酸によって、歯垢に覆われたエナメル質内の無機質を溶解してこれを損失させるのです。すなわち、エナメル質結晶内の無機質、ことにカルシウムとリン酸がエナメル質内でイオン化してプラーク中に入り込み、ついには、唾液の中に移行します。>

21 この過程が、“脱灰”です。時間がたつにつれて、歯垢の下のエナメル質からカルシウムイオンとリン酸イオンがどんどん逃げていきます。
The process is called "demineralization". A carious lesion begins to form in a particular area of the enamel where, over time, there is a net loss of calcium and phosphate. <この過程が、“脱灰”です。時間が立つにつれて、歯垢の下のエナメル質からカルシウムイオンとリン酸イオンが溶出して、エナメル質の特定の部位にう蝕病変を作り始めます。>

22 むし歯になりはじめのエナメル質を着色液に浸して、色素か浸み込んだ深さと形を偏光顕微鏡で観察すると、そこは4つの層に分れていることがわかります。
By immersing the same histologic section of an early enamel carious lesion in liquid media of different molecular size, and with polarized light, examining the pattern and depth of penetration of the liquid into the enamel, one is able to discover that the early lesion has four distinct zones. <初期う蝕病変のある歯の同一の組織切片を分子量の異なる溶媒に浸漬して、エナメル質への溶媒の浸入の深さと形を偏光顕微鏡で観察すると、そこは4つの層に分れていることがわかります。>

23 水に浸すと“表層エナメル質”と“むし歯の病巣”の2つの層が見えます。
This section is immersed in water and reveals two zones,the surface zone and the body of the lesion. <切片を水に浸すと“表層エナメル質”と“むし歯の病巣”の2つの層が見えます。>

24 キノリンという色素に浸すと、さらに“透明層”と“不透明層”の2つの層が見えてきます。
The section shown here is immersed in quinoline. The molecules of quindine are different in size than the water molecules. They penetrate the carious lesion differently and reveal an additional two zones, the translucent and the dark zone. <この切片標本はキノリンという色素に浸したものである。キノリンの分子量は水のそれとは異なります。キノリンは不同にう蝕病巣を通過して、さらに“透明層”と“不透明層”の2つの層が見えてきます。>

25 調べてみると4つの層の石灰化の程度は、異なっていることがわかりました。つまり、むし歯の病巣と透明層では脱灰が起こっているのに対し、表層エナメル質と不透明層では再石灰化が起こっています。また、再石灰化がおこっている部位のそばにフッ素があると、再形成された結晶の大きさが元の状態よりも大きくなることがわかりました。 Using similar research techniques, scientists have determined that within and below the surface of the lesion, the enamel has undergone various degrees of mineral loss. In the early white spot lesion, certain zones are undergoing demineralization while others are undergoing remineralization. The surface and the dark zones are present in areas of remineralization. 1n the presence of fluoride, the reformed crystal’s size is larger in all of the zones of the lesion.(6,7) <同じ研究方法を用いて、研究者たちはう蝕病巣内と表層下では、エナメル質の無機質の損失量(脱灰の程度)に違いがあることを明らかにしました。初期の白濁斑では、脱灰が起こったり、再石灰化が起こったりしています。表層エナメル質と透明層では再石灰化が起こっています。(これらの層の周辺に)フッ化物が存在すれば、再形成された結晶の大きさはう蝕病巣の4層の中でより大きいことがわかりました。>

26 脱灰が起こっているとき、むし歯の病巣と透明帯から溶け出たカルシウムイオンやリン酸イオンなどを、表層エナメル質と不透明層が吸収しています。
During demineralization, the surface zone and the dark zone absorb and hold those minerals which have dissolved from the body of the lesion and from the translucent zone. <脱灰の最中に、表層エナメル質と不透明層には、う蝕病巣本体と透明層から溶け出たカルシウムイオンやリン酸イオンなどを吸収して保持しています。>

27 楕円のなかは、むし歯になっているときの結晶の溶解と再形成の様子を示しています。右側に緑色で示す部分は、フッ素イオンがある場合を示しており、アバタイト結晶は、より大きく、より酸に強くなります。
These four zones demonstrate that in a carious lesion, there is a continuous process of crystals dissolving and reforming. The green color of the crystals on the right illustrates that when fluoride ions are present in any zone they favor the development of larger, more acid-resistant apatite crystals. <スライドの4つの楕円のなかには、う蝕形成の際にエナメル質結晶の脱灰(溶解)と再石灰化(修復)の絶え間ない連続した過程を示しています。スライドの右側に緑色で示す部分は、これらの層にフッ化物イオンが存在する場合には、フッ化物イオンがより大きく、またより耐酸性のアパタイト結晶として成長する手助けとなることを示しています。>

28 むし歯のなりはじめの部分は白い斑点として現れることが多く、これを“白斑”と言います。
This white spot lesion is often the first clinical evidence of a developing carious lesion. The relatively high concentration of minerals at the surface and the loss of minerals in the body of the lesion have caused light to refract, creating the opacity, and giving the clinical appearance of a white spot. <この白濁病変は臨床でう蝕の進行をうかがわせる第一の症状としてよく見られます。白濁斑の表層の無機質は相対的に高濃度であり、またう蝕病巣本体では無機質が失われているので、光が複屈折して不透明な状態を呈し、肉眼的には白濁の症状として認められます。>

29 フッ素イオンがあると白斑の表面に再石灰化が起こって、滑らかでつやのある状態になります。、また、フッ素イオンがないと脱灰が進行して、表面はでこぽこで脆くなります。
In the presence of fluoride ions, the surface of the white spot lesion may take on a smooth and shiny appearance indicating that remineralization is taking place. In the absence of fluoride, the lesion can often appear rough and chalky, most likely indicating that the lesion is continuing to undergo demineralization. <フッ化物イオンの存在下では、白濁斑の表面が滑らかで光沢のある外観を呈するのは再石灰化が起こっていることを示しています。一方、フッ化物イオンがないと、う蝕病変部表面には粗造感があってチョーク様を呈しており、大抵の場合、病巣部は脱灰が進行中であることを示しています。>

30 白斑の表面は、しっかりしているように見えますが、下層には歯の成分が溶け出てしまった弱い部分があるので、鋭い探針で強く引掻くと欠けて穴があいてしまいます。つまり、口の中の診査に探針を使う場合には、あまり強い力を入れないような配慮が必要です。 Although the Surface of a white spot lesion appears to be intact, pushing too hard with the point of an explorer during clinical examination may result in cavitation, due to the weakened, mineral-deficient layers underneath. From this, we can better understand why particular care must be taken during clinical examination to avoid too much pressure With the point of a sharp explorer. <白濁斑の表面は実質欠損のない連続した状態にみえますが、表層下には脆弱な無機質の溶出した部分があるので、臨床診査の際に先端の鋭利な探針で強く引掻くと欠損してう窩となってしまうことがあります。このことから、臨床的な診査にあたっては、鋭利な探針の先端に過大に加圧しないように、特段の注意を払うという理由をよく理解することができます。>

31 白斑の表面に歯垢が付かないようきれいにし、さらにエナメル質中にいつもフッ素があるようにすれば、むし歯はそれ以上進行しないと言われています。
Today it is believed that keeping the white spot’s surface plaque-free and maintaining fluoride at and within the enamel can be an important factor in determining whether a white spot lesion will progress to cavitation or become arrested.(8) <今日では、白濁斑がう窩に進行するか、あるいはそのまま停在するかどうかの決め手になるのは、白濁斑の表面の歯垢を除去し、さらにエナメル質界面ならびにエナメル質内にいつもフッ化物を保持することであると信じられています。>

32 フッ素イオンがエナメル質の表面にあれば、脱灰は進行しません。さらにフッ素がエナメル質の再石灰化を促進する能力は、脱灰の進行を止める力よりも強力です。
The process of demineralization is inhibited when fluoride ions are present in solution at the enamel surface. Fluoride’s ability to facilitate remineralization may be even more significant than its ability to inhibit demineralization. <フッ化物イオンがエナメル質の表面にあれば、脱灰は抑制されます。さらに、フッ化物がエナメル質の再石灰化を促進する力の方が脱灰の進行を抑制する力よりも重要な意味を持っています。>

33 白斑が再石灰化すると周囲の健全なエナメル質は、より酸に強くむし歯になりにくくなることが、臨床的に知られています。つまり、フッ素には、結晶を新たに形成すると同時に、ある程度分解して小さくなった結晶を再び大きくする作用もあるので、その結果、反応性が低くなるわけです。 There is a clinical observation that white spot lesions which have been arrested by remineralization are more acid resistant and less susceptible to further caries than adjacent, unaffected enamel. This observation is better understood if one remembers that fluoride ions enhance the re-growth of partially dissolved crystals, while encouraging formation of new crystals. The newly formed crystals are larger and less reactive than the original crystals. <再石灰化によってう蝕が停止した白濁斑部位は、その周囲の健全エナメル質よりも酸抵抗性で、かつう蝕感受性が低いという臨床的観察が認められます。フッ化物イオンは新たな結晶の生成を促す一方で、部分的に溶解した結晶を再度成長させて修復する作用があることを覚えているならば理解しやすい現象なのです。すなわち、新たに生成された結晶は元の結晶に比べて大きく、また反応性がか低くなります。>

34 白斑を治療するには、フッ素入り歯麿剤を毎日使うのが良いと言われています。
Modern clinicians often recommend daily use of fluoride-containing dentifrices or mouthrinses a highly effective treatments for white spot lesions. This is because when used frequently,low concentration fluoride products enhance lesion remineralization and cause new crystals to form on the surface and deeper into the lesion. <近ごろの歯科臨床家は白濁斑に対する極めて効果的な処置として、毎日フッ化物歯磨剤やフッ化物洗口剤を使うことを推奨しています。この理由は、低濃度のフッ化物製品を頻回に使う際に、再石灰化を促進してう蝕病巣表面とその深部に新たな結晶を形成させるからです。>

35 低濃度のフッ化物を 頻回に用いると フッ素入り歯麿剤のような低い濃度のフッ素をたびたび用いると、小さいアバタイト結晶が、できやすいとされています。そのおかげで、エナメル小柱とエナメル小柱の間に隙間が残り、カルシウムイオンとリン酸イオンが、むし歯の病巣まで到達することができます。 During remineralization, low concentrations of fluoride ions applied frequently such as with a fluoride dentifrice are thought to favor the development of apatite crystals that are relatively small. Thus they leave spaces between the enamel rods for calcium and phosphate ions to penetrate into the body of the lesion. <フッ化物配合歯麿剤のような低い濃度のフッ物イオンを頻回に用いると、相対的に小さいアバタイト結晶の生長を促しやすいと考えられています。そこで、各エナメル小柱の間に隙間が生じてカルシウムイオンとリン酸イオンが、う蝕病巣本体まで浸透することができます。>

36 これに対して、高い濃度のフッ素をときどき用いると、表層エナメル質に大きな結晶ができます。この大きな結晶は、カルシウムイオンと、リン酸イオンの通路をふさいでしまうので、むし歯の病巣は、石灰化の程度が低いまま残されてしまいます。しかし、白斑を再石灰化させるのに低い濃度のフッ素をたびたび用いた方がいいのか、高い濃度をときどき用いた方がいいのか、または、両方を組み合せたほうがいいのか、まだよくわかっていません。 In contrast, the high concentrations of fluoride ions applied frequently such as topical treatments in the dental office, favor rapid buildup of large calcium fluoride crystals in the surface zone. These large crystals close the diffusion channels and can leave the body of the lesion relatively unmineralized. Sufficient clinical experience is not yet available to determine whether one of these alternatives, or a combination of the two, more effectively promotes enamel ''healing".(11) <これに対して、歯科医院でフッ化物歯面塗布のような高濃度のフッ化物をときどき用いると、表層エナメル質に大きなフッ化カルシウム結晶を急速に生成するのに好都合なのです。この大きな結晶は、カルシウムイオンとリン酸イオンの通路をふさいでしまうので、う蝕病巣は相対的に石灰化の程度が低いまま残されてしまいます。しかし、白濁斑を効果的に再石灰化させるのに、低濃度のフッ化物を頻回に用いた方がいいのか、高濃度のフッ化物をときどき用いた方がいいのか、または、両方を組み合せた方がいいのか、まだ臨床的にはよくわかっていません。>

37 エナメル質と唾液との界面 唾液中のタンパク質は、エナメル質にくっついて薄い膜を作ります。この膜を“獲得被膜(べリクル)”といいます。フッ素があると、この被膜は歯の表面での物質の出入りに影響を与えます。 Saliva is the main component of oral fluid. Proteins absorbed from saliva form a thin protective coating on the enamel surface. This coating or membrane is called the "acquired pellicle.'' In the presence of fluoride, the pellicle may act to affect the transport in and out of ions between the enamel and the oral fluid. (9,10) <唾液は主要な口腔内液性成分です。唾液中のタンパク質は、エナメル質表面に付着して薄い保護膜を作ります。この薄い膜を“獲得薄膜(べリクル)”といいます。フッ化物が存在すると、このぺリクルはエナメル質表面と唾液との間でのイオンの出入りの際の輸送に影響を与えるように作用します。>

38 唾液中には、カルシウムイオンやリン酸イオンが過剰にありますが、通常の状態では結晶になりません。それは、唾液のある種のタンパク質が、カルシウムイオンやリン酸イオンと反応して結晶化させないからなのです。
Although saliva is supersaturated with respect to enamel mineral, under normal conditions the minerals in it do not precipitate. The reason calcium and phosphate can remain in saliva and not precipitate has been attributed to several specific salivary proteins which interact with them and prevent their crystallization. (l2,13,l5) <唾液中には、カルシウムイオンやリン酸イオンのミネラルに関して過飽和状態であるけれども、通常の状態では沈澱しません。そのわけは数種の特異的な唾液タンパク質が、カルシウムイオンやリン酸イオンと反応して結晶化させない からなのです。>

39 唾液中のフッ素濃度は、フッ素の使用状況に応じて人によってまちまちです。
The normal fluoride lion concentration in an individual’s saliva ranges from an almost undetectable amount up to 20 parts per million, depending on that individual’s recent exposure to fluoride. <個人の唾液中のフッ化物濃度の正常値は、検出限界ぎりぎりの濃度から20ppmまでの範囲で、個人の近時のフッ化物の使用状況に応じて人によります。>

40 食べ物や水を通して体に吸収されたフッ素の一部は、唾液中に戻って来ます。そして、その濃度は、再石灰化を促すのに充分なのです。
Fluoride ingested in food, water, or through supplements i5 partially returned to the mouth in the saliva, in concentrations high enough to promote remineralization.(l2, 1 3) <食べ物、水と補助剤を介して体内に吸収されたフッ化物の一部は、唾液中に戻って来ます。そして、その濃度は、再石灰化を促すのに充分な濃度なのです。>

41 最近の研究によれば、たった0.01から0.02ppmのフッ素が唾液中にあるかないかで、子供がむし歯になりやすいか、なりにくいかが決まるのだそうです。いずれ将来には唾液中のフッ素濃度を調べることで、むし歯になりやすいか、なりにくいかが判定できるようになるかも知れません。 Most children have resting salivary fluoride levels ranging from 0.01 parts per million to 0.l parts per million, with the average ambient level occurring in the range of 0.02 to 0.03 ppm. A recent study by Dr. Leverett at the Eastman Dental Center in Rochester, New York suggested that a difference of only parts per million of fluoride present in saliva might be the reason why one child is caries-active while another is caries-resistant. In the future, salivary fluoride levels may be used to predict caries susceptIibility. <たいていの小児の安静時唾液のフッ化物濃度は0.01〜0.1ppmで、平均すると0.02から0.03ppmである。ニューヨーク州イーストマン歯科センターのレベレット博士の最近の研究によれば、たった0.01から0.02ppmのフッ化物が唾液中にあるかないかで、小児がう蝕になりやすいか、なりにくいかの要因になるのではないかと示唆しています。将来的には、唾液中のフッ化物濃度を調べることで、う蝕感受性の判定をできるようになるかも知れません。>

42 フッ素は、歯垢という“貯蔵庫”の中にフッ化カルシウムのかたちで貯えられます。歯垢中には、唾液中よりも多くのフッ素やカルシウム、やリン酸基が含まれています。
Fluoride is stored in a plaque "reservoir" as Calcium fluoride-like precipitates. Plaque fluid has higher fluoride levels than the saliva and like saliva is also supersaturated with calcium and phosphate. <フッ化物は、歯垢という“貯蔵庫”の中にフッ化カルシウム様の沈殿物として貯えられます。歯垢中には、唾液中よりも高濃度のフッ化物が含まれており、唾液と同様にカルシウムとリン酸で過飽和状態になっています。>

43 歯垢の中には、食べ物、フッ素入り歯麿剤、水、唾液、さらに脱灰中のエナメル質からのフッ素が貯えられます。歯垢がフッ素の貯蔵庫になるというのは、ちょっと意外な感じがします。
Fluoride accumulates in plaque from diet, fluoride dentifrice, fluoridated water, saliva, and also from fluoride released from enamel during demineralization. It is interesting to note that dental plaque acts as an intraoral ”reservoir" for fluoride. <歯垢の中には、食べ物、フッ化物配合歯麿剤、フッ化物濃度が調整された水、唾液、さらに脱灰中のエナメル質から遊離しフッ化物が貯えられます。歯垢がフッ化物の口腔内貯蔵庫としての役目をするのは、ちょっと意外な感じがします。>

44 歯垢が少し酸性になると、エナメル質が溶け出す前に歯垢中のカルシウムからフッ素イオンが放出されます。すると、このフッ素のおかげで細菌の成長と酸の産生が妨害され、脱灰の進行が止まり再石灰化が起こります。
Approximately two percent of fluoride in plaque fluid is stored as free ions. This small amount is sufficient to directly inhibit demineralization. When plaque becomes slightly acidic and before enamel starts to dissolve, fluoride ions are released from the calcium fluoride-like precipitates, thereby raising the amount of ionic fluoride in plaque fluid. This amount of fluoride is sufficient to inhibit bacterial- growth, acid formation and enhance remineralization. <歯垢中のフッ化物の約2%は遊離イオンとして貯えられています。この少量のフッ化物があれば、脱灰を直接的に抑制します。歯垢がやや酸性に傾いてエナメル質が溶け出す前に歯垢中のフッ化カルシウム様の沈殿物からフッ化物イオンが遊離します。すると、歯垢中のイオン型フッ化物の量が高まります。このフッ化物量があれば、細菌の生育と酸の産生が抑制されて、再石灰化が促進されます。>

45 いろいろなものからのフッ素が、歯垢の貯蔵庫にフッ化カルシウムとして貯えられます。そして、ゆっくり溶けながら数日間は歯の表面にとどまります。
Fluoride ions from dentifrices, mouthrinses and gels help create and maintain the "reservoir". Fluoride ions combine with calcium to form calcium fluoride-like precipitates on and in the enamel surface as well as within the plaque. Once formed, because of the concentration of phosphate ions in the saliva, calcium fluoride has been found to dissolve slowly and can be stored on the tooth for days. (l4) <歯磨剤、洗口剤とゲルから供給されたフッ化物イオンが歯垢という貯蔵庫を作り、これを維持することになります。フッ化物イオンはカルシウムと化学的に結合してエナメル質表面と内部ならびに歯垢中にフッ化カルシウム様の沈殿物を生成します。いったんフッ化カルシウム様の沈殿物が生成されても、唾液中のリン酸イオン濃度に左右されて、フッ化カルシウムは徐々に溶解しながら、数日間はフッ化物イオンはエナメル質表面にとどまっています。>

46 歯垢が酸性になってエナメル質が溶けはじめると、歯垢中のフッ化カルシウムは分解されてフッ素を放出します。このようにして、必要なときに必要なところへ、フッ素イオンは直接送り込まれます。
The calcium fluoride-like precipitates in plaque release fluoride at a pH level well above that at which enamel dissolution takes place. In this way, fluoride ions are released directly onto the enamel surface where and when they are needed. <歯垢中のフッ化カルシウム様沈殿物はエナメル質の溶解が起こりはじめるpHレベルで、解離してフッ化物イオンを遊離します。このようにして、フッ化物イオンは必要なときに必要なエナメル質界面に直接に遊離されます。>

47 この2つの写真は、2%フッ化ナトリウムを作用させる前後のエナメル質の表面を示しています。フッ化ナトリウムを24時間作用させた後の右側の写真には、フッ化カルシウムの粒子ができているのがわかります。
This demonstrates the formation on the enamel of globular materials identified by Gunnar RoIIa of Oslo University as calcium fluoride-like precipitates. These two screens Show an enamel surface before and after it has been exposed to a 24-hour top1'Cal treatment with 2% sodium fluoride. The picture on the right shows the formation of numerous calcium fluoride-like granules. <このスライドにはオスロ大学のグナーローラ博士がエナメル質表面にフッ化カルシウム様沈殿物として同定した小球状の物質の生成を示したものです。このスライド内の左右の写真は2%フッ化ナトリウム溶液で24時間のフッ化物局所塗布する前後のエナメル質の表面を示しています。右側の写真に、フッ化カルシウム様の顆粒が生成されていることを示しています。>

48 子供の口の中のフッ素イオン濃度を、一定の低い濃度に保つには、フッ素入り歯磨剤で朝食後と寝る前に歯磨きをするのがよいでしょう。眠っている間は、口の中の活動性が低くなるからです。さて、これから先は、フッ素のはたらきのしくみの要点についてまとめてみましょう。 To maintain high levels of intraoral fluoride ions for as long as possible, it would be best for children to brush with fluoride dentifrice after breakfast and just before bedtime, since these are times of least intraoral activity. In review, we will now summarize the key mechanisms of fluoride action. <できる限り長いあいだ口腔内のフッ化物イオン濃度を一定に保つためには、こどもたちは朝食後と就寝前にフッ化物配合歯磨剤で歯磨きをするのがよいでしょう。そうすれば、朝食後や就寝時に口の中のう蝕活性を低くできるからです。 さて、これから先は、フッ化物のはたらきのしくみの要点についてまとめてみましょう。>

49 毎日低い濃度のフッ素を使うことが、フッ素の効果を発揮させるのに重要です。歯のできはじめはもちろんのこと、その後もいつも歯の表面にフッ素イオンがあることが大切です。
The continuous use of daily low levels of fluoride is the key to fluoride'5 effectiveness. Not only is fluoride'5 incorporation into developing enamel critical, but the continuing presence of fluoride ions at and in the enamel surface may be even more important. <毎日低濃度のフッ化物をこまめに使うことが、フッ化物の効果を発揮させる鍵です。エナメル質の石灰化の際のフッ化物の結合だけでなく、萌出後のエナメル質表面とその内部に常にフッ化物イオンが存在することの方がずっと重要である。 >

50 初期のむし歯は、歯の表面の白斑として現れます。ごく初期の段階であれば、フッ素イオンで“治す”(専門的には、再石灰化と言います)ことができます。この治った部分は、もとの歯よりも酸に強くなっています。
Early caries development is clinically identifiable as a white spot lesion in the enamel. When detected at an early stage, a white spot lesion can be "healed" or more technically, remineralized with the use of fluoride ions. This "healed" lesion will be more acid-resistant than the original tooth surface. <臨床的には、初期う蝕症状としてはエナメル質の表面の白濁斑として認められます。ごく初期の段階での検出の際には“修復する” ことができるし、あるいは技術的にはフッ化物イオンの使用によって再石灰化できます。この修復された部位は、元の歯質より酸抵抗性(耐酸性)を兼ね備えます。>

51 脱灰してしまった場合は、フッ素は表層エナメル質とむし歯の病巣のエナメル質の結晶を不純物なしに大きくし、よりむし歯になりにくいように作り直すのを助けます。
After demineralization, fluoride helps the enamel crystals on the tooth surface and in the body of the lesion to reform, lose impurities and become larger and more resistant to caries. <脱灰が生じた後には、フッ化物は表層エナメル質とう蝕病巣のエナメル質の結晶の再石灰化を促進させ、不純物をなくして、より大きく、またよりう蝕抵抗性の結晶化に寄与します。>

52 細菌の酸によりエナメル質と睡液の間のバランスが崩れるのが、初期のむし歯です。このとき、フッ素イオンは、カルシウムイオンやリン酸イオンか歯から出て行くことを防ぎます。
Early caries is understood to be caused by microbial acid production, a disturbance in the equilibrium of the continuous mineral exchange that goes on naturally between enamel and saliva. The presence of fluoride ions can inhibit and reverse mineral loss. <初期う蝕は細菌による酸産生によって誘発されるものと理解され、エナメル質と睡液の間で間断なく行われている無機イオン交換で保たれている平衡状態の崩れなのです。このとき、フッ化物イオンが存在すれば、脱灰を抑制して再石灰化(修復)を促進します。>

53 食べ物や飲料水などのいろいろなものから体に吸収されたフッ素は、むし歯を防ぎ再石灰化を促すのに充分な濃度で唾液の中に戻ってきます。
Fluoride ions in drinking water or fluoride supplements return to the mouth in concentrations sufficient to inhibit caries formation, and to promote remineralization. <飲料水中のフッ化物イオンやフッ化物補充剤は、う蝕発生を抑えて再石灰化を促すのに充分な濃度で唾液の中に戻ってきます。>

54 唾液中のたった0.01ppmのフッ素が、子供たちがむし歯になりやすいかどうかの分れ目となります。
Small differences in ambient salivary fluoride levels, as low as 0.01 parts per million, may account for variations in caries experience among children. <唾液中のたった0.01ppmという極めて低い濃度のフッ化物は、小児がう蝕になりやすいかどうかの分れ目を説明できるかも知れません。>

55 フッ素は、フッ化カルシウムとして歯垢中に貯えられます。そして、フッ化カルシウムは簡単には溶けず、しばらくは歯の表面に残っています。
Fluoride is stored in plaque and on the enamel surface as calcium fluoride-like precipitates. Because of the concentration of phosphate ions in saliva, the calcium fluoride precipitates do not easily dissolve and often remain for relatively long periods of time. <フッ化物は、フッ化カルシウム様沈殿物として歯垢中とエナメル質表層に貯えられます。唾液中のリン酸イオン濃度に依存して、フッ化カルシウム沈殿物は簡単には溶けず、しばらくは歯の表面に残っています。>

56 酸が攻撃してくるとフッ化カルシウムは、フッ素イオンを必要に応じて歯の表面の必要なところへ放出します。
During acid attack, the calcium fluoride precipitates release fluoride ions on to the enamel surface when and where they are most needed. <酸の侵襲の間中、フッ化カルシウム沈殿物は必要に応じて歯の表面の必要なところへフッ化物イオンを遊離します。>

57 フッ素入り歯麿剤や飲料水などから、歯の表面にフッ素をたびたび補給してやると、初期のむし歯を治療し脱灰を防ぎます。
Frequent delivery of fluoride to the tooth surface through fluoride containing dentifrices, drinking water, and fluoride mouthrinse enhances the healing of early carious lesions and inhibits demineralization. <フッ化物配合歯麿剤、フッ化物調整した飲料水とフッ化物洗口から、歯の表面にフッ化物を頻回 に供給すると、初期う蝕を修復(再石灰化)して脱灰を抑制します。>

58 フッ素をうまく使うと歯と歯の間や平滑面のむし歯を減らすことができます。また、シーラントは、歯の溝のむし歯を防ぎます。この2つを上手に組み合わせて使えば、実際に多くの子供たちのむし歯を防ぐことができるでしょう. Knowledgeable use of fluoride. products will reduce smooth surface caries and proximal caries. Sealants protect the occlusal pit and fissures from caries attack. The combination can lead, in practice, not just in theory, towards a desired caries free generation. <フッ化物をうまく使うと平滑面う蝕と隣接面う蝕を減らすことができます。また、シーラントは、咬合面小窩裂溝う蝕を防ぎます。フッ化物とシーラントを上手に組み合わせて使えば、まさに理論ではなくて、実際にう蝕のない世代を招来することになるでしょう。>


Download ppt "フッ化物の働き 国際小児歯科学会教育委員会作成"

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