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Published byTheophiel de Groot Modified 約 6 年前
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滋賀医科大学医学部附属 病院精神科思春期外来に おける不登校に対する 治療成績の開示と、 そこから得られる知見
滋賀医科大学医学部附属 病院精神科思春期外来に おける不登校に対する 治療成績の開示と、 そこから得られる知見 稲垣貴彦1)2)・田中恒彦2)3)・栗山健一2)・山田尚登2) 1) 滋賀県立精神医療センター 2) 滋賀医科大学精神医学講座 3) 新潟大学教育学部 第57回日本児童青年精神医学会総会 At 岡山コンベンションセンター
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利益相反の開示 及び 倫理的配慮 演者は以下の団体からの資金提供を受けている。 滋賀県(寄附講座所属) 本発表と直接関係はないが、演者は以下の団体からの資金提供を 受けている。 塩野義製薬(受託研究) JA共済(研究助成) 大塚製薬(奨学寄附) 滋賀医学国際協力会(研究助成) 本研究は観察研究であり、倫理委員会の承認を得る必要 がない。また、発表にあたっては個人を特定できる情報を 使用しない。
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文部科学省(2015)によると 平成26年度「児童生徒の問題行動など生徒指導上の諸問題に関する調査」 平成27年9月16日 文部科学省
文部科学省(2015)によると 平成26年度「児童生徒の問題行動など生徒指導上の諸問題に関する調査」 平成27年9月16日 文部科学省 平成26年度間に不登校であった高校生 約53,000人 全高校生の1.59% 平成26年度間に不登校であった中学生 約97,000人 全中学生の2.76% 平成26年度間に不登校であった小学生 約26,000人 全小学生の0.39% 文部科学省は不登校の定義に 「病気」による者を除く と定めている 従って これらの児童生徒は 全員医療サービスを受けていない
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文部科学省(2014)によると 「不登校に関する実態調査」~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~ 平成26年7月9日文部科学省
文部科学省(2014)によると 「不登校に関する実態調査」~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~ 平成26年7月9日文部科学省 多数の児童が1年を超える不登校の状態にありながら 受診をしていない 一度、欠席状態が長期化すれば、回復が困難と言うのが 文部科学省の見解 そのうち既に不登校が1年を超える児童 68.4% 約28,000人 平成18年に中学校3年生で不登校であった児童 約41,000人
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文部科学省(2014)によると 「不登校担ったきっかけと考えられる状況」~平成25年度児童生徒の問題行動など生徒指導上の諸問題に関する調査~ 平成26年10 月16日文部科学省
高校生最多は 無気力
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先行研究 著者(発表年) 対象 経過 診断 亀谷(2008) 入院歴のある患者のある時点における断面調査
平均900日の経過観察後、64.8%が再登校 PDD 35.1% 神経症性障害22.7% 斎藤(2000) 病院内学級卒業生の卒業10年後の調査 社会適応しているのは73% 不安障害35% 適応障害22% 星野(2003) 通院歴のある不登校児の ある時点における断面調査 平均7年(3年ー13年8ヶ月)の経過観察の後社会適応しているのは28.6% 神経症圏の者のみを不登校と判定 土岐(2012) 通院歴のある不登校時のある時点における断面調査 平均治療期間13.7ヶ月の後、再登校+卒業+転校37.8% 恐怖症性不安障害35.1% PDD16.2%
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先行研究 「治療に難渋される病態」 と認識されている不登校であるが、 先行研究で呈示された疾患割合は、文部科学省の呈示した不登校の原因を説明できない 先行研究の示した診断では、 不登校の原因で最多の 「無気力」を説明できない 例:ICD-10によると 恐怖症性不安はしばしば抑うつと合併し、うつ病エピソードの併発中に更に増悪する。つまり、不登校に至るほど重篤な恐怖症性不安を有する場合、うつ病エピソードを鑑別しなくてはならない。先行研究ではされた形跡がない。
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基礎解析 対象:平成24年1月から平成26年9月にかけて 滋賀医科大学医学附属病院精神科思春期青年期外来を受診した 不登校の学童生徒(18歳以下)
不登校の 患者数 120名 (男子58名 女子62名) 年齢 平均14.8歳(SD=2.16、中央値15.0) 対象年齢を10歳以上としているため10歳未満の児童はほとんどいない。10歳までの適応が保たれていた患者が多い。 初診時GAF 平均31.3(SD=6.33、中央値32.0) 治療途中の 転医 あるいは中断 30例
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診断の内訳(重複診断あり) 注:診断の定義 DSM-IV-TRの各章毎に分類(例:1章 発達障害、5章 精神病性障害)
ただし6章気分障害に関してはうつ病性障害と双極性障害に細分化
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不登校の原因と考えられる診断の内訳 注:診断の定義 DSM-IV-TRの各章毎に分類(例:1章 発達障害、5章 精神病性障害)
ただし6章気分障害に関してはうつ病性障害と双極性障害に細分化
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不登校離脱に影響を与える因子の探索 Cox比例ハッザード回帰分析(ステップワイズ法) 結果 対象:120例全例
目的変数:不登校離脱と最終診断からそれまでにかかった時間 説明変数:年齢・性別・初診時GAF・最終診断 結果 有意な説明変数 β SE(β) p 相対リスク(95% 信頼区間) 初診時GAF 0.033 0.020 N.S. 1.034(0.994~1.075) 年齢、性別、診断内容は不登校の経過に有意な連関を認めなかった AIC=551.0 単回帰分析:N.S. 不登校離脱率 発達障害なし:71.3% 発達障害あり:64.0% 観察期間 平均69.5% どのような重症度であったとしても、 どのような診断であったとしても、 その診断に基づく適切な治療が 行われれば、約70%の患者は 8ヶ月以内に不登校から離脱する。
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発達障害を有する群の経過 MR 発達障害の種別 合併症 不登校離脱 不登校離脱あるいはDrop Outまでの期間 PDD+MR 双極性障害
4 MR うつ病性障害 1 素行障害+双極性障害 5 3 6 2 離脱せず - 解離性障害 Drop Out
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発達障害を有する群の経過 PDD 発達障害の種別 合併症 不登校離脱 不登校離脱あるいはDrop Outまでの期間 PDD+MR 双極性障害
4 PDD 不安障害 7 うつ病性障害 離脱せず - Drop Out 1 2
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発達障害を有する群の経過 その他 発達障害の種別 合併症 不登校離脱 不登校離脱あるいはDrop Outまでの期間 ADHD うつ病性障害
発達障害を有する群の経過 その他 発達障害の種別 合併症 不登校離脱 不登校離脱あるいはDrop Outまでの期間 ADHD うつ病性障害 離脱 3 双極性障害 12 Drop Out 2 5 チック 11
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考察1 本邦の不登校の児童に対して、 うつ病の診断が適切にされていないのではないか 当科の診断は先行研究で呈示された疾患割合と大きく異なる。
しかし先行研究で呈示された疾患割合は、 文部科学省の呈示した不登校の原因で最多の「無気力」を説明で きない。 当科での疾患割合は文部科学省の呈示した不登校の原因を 説明するのに矛盾がない。 うつ病の主要症状に「興味・喜びの著しい減退」や「思考力・集中力の減退」がある。これは文部科学省の呈示した不登校の原因のうち「無気力」「学業不振」そして「対人関係の問題」を説明するのに十分である。 我々は危惧する 本邦の不登校の児童に対して、 うつ病の診断が適切にされていないのではないか 児童のうつ病は、96%に寛解が期待できる疾患であり(IACAPAP 2015)、これを適切に診断し治療を適正化することは不登校の治 療において必須である。
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発達障害が治療抵抗因子として 過剰評価されているのではないか
考察2 当科では20名の患者に対して発達障害と診断している。 しかし、そのうち発達障害が直接不登校の原因になっていたのは たったの2名であった。 当科での治療経過において、発達障害を有していた患者は、有さ ない患者と比較して有意差がなかった。 したがって、 発達障害は治療抵抗因子ではないと考える。 我々は危惧する。 発達障害が治療抵抗因子として 過剰評価されているのではないか
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考察3 全中学生のうち97,000人(2.76%)もが不登校で、うち1年以 上も不登校の状態にありながら受診しない児童が1学年に 28,000人もいる現状について 精神医療が不登校の患者を救っていない 可能性⇒受診しても無駄だと思われている? 適切な診断がなされていない可能性は指摘したとおり 適切な診断がなければ適切な治療もありえない しかしそれだけか? 市民に対して精神障害に関する 適切な情報が開示されていない 適切な医療介入がなされれば、8ヶ月で 約70%の児童生徒が不登校を離脱する。 治療が遅れれば治療成績が低下するのは 他の種々の疾患同様である。 治療の遅れ →治癒率の低下 間違った知識 Stigma to MH Hostility to MHS
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結語 不登校に関しては、適切な医療介入がなされれば、 およそ8ヶ月で約70%の児童生徒が不登校を離脱する。
不登校に関しては、適切な医療介入がなされれば、 およそ8ヶ月で約70%の児童生徒が不登校を離脱する。 不登校の原因疾患で最も多いのがうつ病性障害である。 不登校の児童に発達障害を認める割合は、約17%で 少なくはないが、そのほとんどはその合併症が不登校の 原因であり、発達障害の有無はその後の不登校離脱に 関する経過に影響を与えない。 受診しない不登校の児童生徒の多さは精神医療に対する 不信の現れと考えられ、これを解消するためには適切な 情報の市民に対する開示が必要である。
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