2.法と社 会 担当 柳川 洋 医の倫理と患者の人権尊重 個人情報の保護. 医の倫理の基本 原則: 基本的人権の尊重 個人の尊重、幸福追求権(憲法 13 条) 法の下の平等(憲法 14 条) 自由権(憲法 18 条~ 22 条) 生存権(憲法 25 条) 財産権(憲法 29 条) な ど.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
家族と法律. 婚姻は のみに基づいて 成立し,夫婦が を有す ることを基本として, ○ により,維持されなければな らない。 配偶者の選択,財産権,相続,住居の選定, 離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の 事項に関しては,法律は と両性の ○ に立脚して,制定 されなければならない。 日本国憲法.
Advertisements

個人情報保護講座 目 次 第1章 はじめに 第2章 個人情報と保有個人情報 第3章 個人情報保護条例に規定されている県の義務 第4章 個人情報の漏えい 第5章 個人情報取扱事務の登録 第6章 保有の制限 第7章 個人情報の取得制限 第8章 利用及び提供の制限 第9章 安全性及び正確性の確保 第 10.
1 個人情報保護について 弁護士法人龍馬 弁護士 舟木 諒,板橋俊幸. 情報化社会 □ 個人情報保護法の概要 2003 年(平成 15 年) 5 月 23 日成立, 2005 年(平成 17 年) 4 月 1 日全面施行。 ◆成立の背景 プライバシー侵害 国際上の問題 住民基本台帳問題 個人情報漏洩問題.
情報の流通の促進と規制 情報社会と情報倫理 第3回. 今回の講義内容 なぜ情報の流れを規制してはいけないのか 情報の流れを保証する体制 しかし,何でもありか 情報の流れを規制する体制 プライバシと個人情報 OECD 勧告( 8 原則)
パーソンセンタードケアの構成要 素 ① アルツハイマー病の人々の Personhood 人 格は、失われるのではなく、次第に隠さ れていく ② すべての場面で、アルツハイマー病の 人々の Personhood 人格を認める ③ ケアと環境を、個人に合わせる ④Shared decision making.
死亡診断書 記入要領. 発 病から死までの期間 15 I a) 直接死因: __________ / ____ __ 16 b) これは右の結果である: b1) _____ / ___ _ 17 b2) _____ / ___ _ 18 c) これの原因となった基礎疾患: ____ / ___ _
終末期医療に関するガイドライ ン ① 患者の意思・事前意思が確認できる場合 はそれを尊重し …… ⇒事前指示 ② (確認できない場合)患者の意思が家族 等の話より推定できる場合は、その推定 意思を尊重し …… ⇒代行判断 ③ (推定できない場合)患者にとっての最 善の利益になる医療を選択する …… ⇒最善の利益判断.
がん患者の意思決定について がん患者の意思決定と、その過 程、要因について知る がん患者の意思決定への支援に ついて考える 先端侵襲緩和ケア 看護学 芦沢 佳津美.
国及び地方公共団体が分担すべき役割の明確化 機関委任事務制度の廃止及びそれに伴う事務区分の再構成
人間福祉学部 准教授 宮嶋 淳 博士(ソーシャルワーク)
第9回(11/20)  立憲制度と戦争.
84A-89 医の倫理に関する記述で誤っているのはどれか。
情報モラル.
これからの 通所リハビリについて 介護保険を利用されている みなさまへ 福岡青洲会病院 通所リハビリ Rink 中島 貴史zc.
生活習慣病の予防.
社会問題 安楽死、尊厳死 (参考)
中部学院大学人間福祉学部 准教授 宮 嶋 淳 博士(ソーシャルワーク)
The seminar of policy science
Artificial Insemination
1 生命倫理学とは何か 倫理学Ethicsは哲学の1部門 善、道徳を追求する学問 規範倫理学normative ethicsとメタ倫理学
 テーマ別解説 情報モラルの5つの領域 岐阜聖徳学園大学 教育学部 准教授 石原 一彦.
平和研究Ⅰ 第2回 積極的平和と消極的平和 2007年4月18日 広島平和研究所 水本和実.
【資料3】 条例検討会議について 平成28年8月30日 福岡市障がい者在宅支援課.
【資料5】 条例の基本的な方向性について 平成28年8月30日 福岡市障がい者在宅支援課.
9.医療制度と医療費 1.医療の供給と医療保険       2.医療費  .
トピック1 患者安全とは 1 1.
障害のある人の相談に関する調整委員会の設置
ドイツの医師職業規則 から学ぶもの 東京医科歯科大学 名誉教授  岡嶋道夫.
出生前診断から考える 人間の在り方生き方を考え続けよう 今まで、子供の体や心の発達について学習してきました。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針の概要
分子医学の急進展:発生分化を中心として 受精、発生がわかってくると すぐ生殖医療が始まった
誕生をめぐる問題 出産への思想と教育思想は同根.
個 人 情 報 保 護 法(2) 情報社会と情報倫理 第5回.
人たるに値する生活を積極的に保障 ○就労の機会の保障 労働能力がある者 労働している者 労働機会を喪失
1.職場における産業保健活動 (1) 産業保健は予防医学
於:大阪弁護士会館 2013年6月22日(土) 介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット 共同代表 弁護士 藤 岡 毅
人権と教育基本法.
ドイツの医師国家試験 口答試験 実施要領 医師試験第3部(学部6年終了時)
脳死について  最近よく取り上げられるニュースのひとつである脳死について考えて行こうと思う。  舘野 友裕.
②不妊に悩む方への支援について 都城保健所における不妊に悩む方への支援についてご説明します。.
健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン(概要)
臨床研究への参加のお願い  当院の呼吸器内科・腫瘍内科では、決められた条件を満たし、「薬や医療機器の候補」の効果が期待できる患者さんには治験への参加を、その他、研究計画書で決められた条件を満たした患者さんに臨床研究への参加をお願いすることがあります。その際には、研究について詳しい説明が書かれた「説明文書」をお渡しします。医師およびコーディネーターから十分な説明を受けた上で、誰からも強制されることなく、自分の意思で治験またはその他の臨床研究に参加するかどうかを決めて下さい。患者さんは納得するまで臨床研究に関
看護現場における 労務管理の法的側面① <労働法と労働契約>
経営情報論B ⑬ 情報技術と社会(第11章).
Med-Sophia   看  護  と  法  律     看護師の地位とその役割          安福法律会計事務所 弁護士 安  福  謙  二.
「“人生の最終段階における医療” の決定プロセスに関するガイドライン」
ソーシャルワークの価値と倫理 ~国際ソーシャルワーカー連盟の議論を踏まえて~
輝いて、自宅で ~終わりよければすべてよし~
個人情報保護法案整備の背景 情報処理の普及 (インターネットの普及) プライバシーの権利 個人情報の保護の必要 脅威 事故
臨床研究への参加のお願い  病気の原因を調べたり、予防、診断、治療などが進歩、発展していくために人を対象として行う、複数の臨床研究が必要となります。  船橋市立医療センターでは臨床研究を開始するにあたり、倫理委員会おいて、研究内容について医学的な面だけでなく患者さんの人権、個人情報、安全に対する配慮も十分検討したうえで、問題がないと考えられた研究のみを行っております。
疫学概論 疾病の自然史と予後の測定 Lesson 6. 疾病の自然史と 予後の測定 S.Harano,MD,PhD,MPH.
疫学概論 ヘルシンキ宣言 Lesson 23. 疫学研究の倫理 §A. ヘルシンキ宣言 S.Harano, MD,PhD,MPH.
2001.12.4 エルティ総合法律事務所所長弁護士 システム監査技術者 藤 谷 護 人
第13回 法律行為の主体②-b(無権代理、表見代理)
 基本的人権 河野亮介.
2013年度 民事訴訟法講義 10 関西大学法学部教授 栗田 隆
肺の構造. 肺の構造 肺の間質とは? IPF(特発性肺線維症)とは? IPF患者さんの肺の画像(胸部X線)
トピック6 臨床におけるリスクの理解と マネジメント 1 1.
優生思想とデフコミュニティ.
オランダ安楽死 寛容とQOL.
アメリカのプロパテント政策 2002.10.11.
緩和ケアチームの立ち上げ (精神科医として)
パート5 意思決定支援 (支援の現場) 台湾の法律における日常生活の介護のための意思決定支援の制度-患者の自己決定権法に焦点をあてて
疫学概論 疫学研究の目的 Lesson 1. 疫学研究 §A. 疫学研究の目的 S.Harano,Md.PhD,MPH.
誕生をめぐる問題 出産への思想と教育思想は同根.
在宅 役割・準備・訪問   在宅における薬剤師の役割
疫学概論 §C. スクリーニングのバイアスと 要件
DI者の権利擁護にかかる相談窓口とソーシャルワーク・ポリシー
健康教育導入について 宮崎県薬剤師会 健康教育推進委員会  鈴木 啓子.
安楽死の是非  賛成派  3班 川村・柴田・藤井.
Presentation transcript:

2.法と社 会 担当 柳川 洋 医の倫理と患者の人権尊重 個人情報の保護

医の倫理の基本 原則: 基本的人権の尊重 個人の尊重、幸福追求権(憲法 13 条) 法の下の平等(憲法 14 条) 自由権(憲法 18 条~ 22 条) 生存権(憲法 25 条) 財産権(憲法 29 条) な ど

患者の人権尊重に関する宣言 (1) ヒポクラテスの誓い 患者の利益優先(能力と判断の及ぶ限 り) 危害や不正目的の治療の排除 致死薬不投与 堕胎禁止 情欲の禁止 守秘義務 ナイチンゲールの誓い 有毒物、有害物の排除 守秘義務

患者の人権尊重に関する宣言 (2) ニュールンベルグ綱領 (1948) ニュールンベルグ綱領 (1948) ドイツ・ナチスの「生物医学実験を裁いたニュールンベ ルグ裁判の判決の一部」 – 綱領の内容 1.被験者の自発的同意が絶対的要件 (今日のインフォームド・コンセントに相当) 2.社会的に利益をもたらす実験 3.疾病の自然史、動物実験に関する知識に基づくもの 4.不必要な負担の除去 5.死や障害のおそれがある場合は中止 6.リスクへの同意(問題が解決する範囲内) 7.対象保護のための適切な措置 8.能力のある研究者 9.撤退する被験者の権利 10.障害発生の可能性がある場合は中止

患者の人権尊重に関する宣言 (3) ヘルシンキ宣言 (1948) ヘルシンキ宣言 (1948) 世界医師会が採択、医師のためのものだが、 すべての医療領域に適用可能 すべての医学研究における基本原則 すべての医学研究における基本原則 1.生命、健康、プライバシー、尊厳を保護する義 務 2.既存の知識に基づく実施 3.環境、実験動物への配慮 4.倫理委員会で承認(倫理に関する明確な記述) 5.質の保証された研究者による実施 6~9.利益とリスクのバランス 10.自由意志による参加と十分な情報提供 11.人権の尊重、プライバシー保護、負担の最小化 12.いつでも参加を取り消す権利、インフォーム ド・コン セントがとれない場合の配慮 13.公表の責任、著者と出版社の倫理的義務

倫理的問題をはらむ医療 不妊治療 胎児診断 遺伝子医療 臓器移植 死の判定 安楽死・尊厳死

不妊治療 不妊の現状 わが国では10組に1組の夫婦は不妊 人工授精 1949 年 わが国の人工授精第1号 現在まで1万人以上出生 問題点 冷凍保存精子・受精卵の死後の使用 体外受精 1983 年 わが国の体外受精第1号 2002 年まで 10 万人の出生(うち顕微受精 31,000 人)(全出生の 1.2% ) 問題点 第3者の精子・卵子、死後の使用 代理母 不妊の妻を持つ夫の精子を第三者に人工授精 (Surrogate mother) 夫婦間の体外受精卵を第三者に移植 (Host mother) 問題点 出生児の親権、営利の代理母斡旋 減胎(減数)手術 排卵誘発剤、体外受精により3胎以上の場合実施 (人為的に生命を作り、人為的に破壊する)

胎児(出生前)診断 診断の目的 出生後の治療の準備 障害(先天異常)を発見したときの人工妊娠中絶 診断方法 超音波診断、絨毛検査、羊水検査、胎児組織検査 遺伝子診断 保険加入、就職の場合の差別扱い 問題点 障害者差別の助長(障害者の生存権) 第1子が遺伝病の場合の親の心情 女性の自己決定権と医療現場の判断に任せていいか 母体血清マーカー試験の普及により、ダウン症児の出生 減 着床前診断の可能性(生育の安全性、確実性が不確定)

遺伝子医療 個人遺伝情報の特質 個人情報と家族、・血縁者情報との共通性 インフォームド・コンセントの原則 患者のプライバシー権 疾病概念の変容 診断と治療の乖離 治療・予防のできない疾病の診断 未成年者に対する発症前診断 誰が決めるか、いつ検査するか 遺伝的資質に対するスティグマ 社会生活での偏見、差別、不利益 個人の遺伝情報に対する第三者のアクセス 個人情報の保護

臓器移植 問題点を考えましょう 生体からの移植 死体からの移植

毎日新聞

死の判定 脳死状態(脳幹を含む全脳の機能が不 可逆的に停止したと判定)をヒトの死 と考えていいか

安楽死、尊厳死 尊厳死 最終的な回復の見込みのない患者に対して、生命維持医 療(人工呼吸、経管栄養)を断念または中止し、人間とし ての品位(尊厳)を保たせながら死を迎えさせる行為 安楽死 死期が切迫している患者の耐え難い肉体的苦痛を緩和ま たは除去して、患者に安らかな死を迎えさせる行為 純粋型 苦痛除去・緩和の治療で死期に影響を及ばさな い 間接型 苦痛除去・緩和の治療の副作用により生命の短 縮を伴う 消極的 延命医療を実施しない、中断することにより、 死期が早まる 積極的 耐え難い苦痛の除去を目的として、致死性の薬 剤を投与し、患者の死期を早める

患者の人権と インフォームド・コンセント 原則: 原則: 権利の尊重と主体的な医療参加 これから行う医療行為についての説明 患者の納得と同意 患者の自覚的な医療への参加 医療者と患者の相互尊重 共同意志決定 医療父権主義 (Medical Paternalism) ↓ 患者主権主義 (Patient Sovereignty)

インフォームド・コンセントの 内容 言葉の由来 Informed (知らされた)+ consent (同意)の合成語 説明義務と同意が一体に 自律の尊重と個人の福利の増進という倫理的基盤 その根底には人格の尊厳性がある 患者の有効な同意を得るための説明 説明不足(説明義務違反)による同意は価値がない 治療行為の内容としての説明 病状の理解、治療・療養上の注意事項 転医勧告としての説明 適切な医療水準が保てない場合の対応 遺族等に対する死亡についての説明 当事者でない遺族への説明 事情により死因解明義務

インフォームド・コンセント における説明義務 対象となる医療行為 説明すべき事項の内容 遺族等に対する死亡についての説明 当事者でない遺族への説明 事情により死因解明義務

対象となる医療行為 インフォームド・コンセント 対象となる医療行為 基本 基本 医学的侵襲を伴う医療行為 生命、身体に影響を及ぼす可能性のある医療 行為 患者の自己決定にゆだねることに相当するか 緊急の場合 緊急の場合 救命のため説明と同意の時間的余裕がない 緊急の程度によっては最小限の説明と同意が 必要 法律に規定がある場合 法律に規定がある場合 危険、判断能力、社会防衛

説明すべき事項の内容 インフォームド・コンセント 説明すべき事項の内容 診断 実施しようとする医療行為の目的(必要性) 医療行為の必要な期間 付随する危険 重大な結果発生の可能性、副作用、合併症、 ショック死 予後 代替可能な医療行為 実施しなかった場合の予後

プライバシーの権利と個人情報保護 プライバシーの概念 プライバシーの概念 基本的人権の1つ 憲法13条の幸福追求権の内容の1つ すべて国民は個人として尊重される。生命、 自由および幸福追求に対する国民の権利につ いては、公共の福祉に反しない限り、立法そ の他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 世界人権宣言第12条 何人も、その私生活、家庭、住居、通信に対 して恣意的な干渉を受けたり、名誉と信用 に対して攻撃を受けたりすることはない。

OECD の8原則 1980 年 OECD 理事会勧告の 8 原則 個人情報: 識別されうる個人に関するすべての情報 8原則 1.収集制限の原則 収集には制限をつける 適法、公正な手段、同意を得て収集 2.データ質の原則 利用目的に沿った範囲で、正確、完全、最新な データ 3.目的明確化の原則 使用目的を明確にして収集 収集の目的達成に限定した使用 4.利用制限の原則 目的以外に使用しない(例外: 同意、法律の規 定)

OECD の8原則(つづき) 5.安全保護の原則 紛失、不当アクセス、破壊、修正などに対する 合理的な安全保護措置 6.公開の原則 データの存在、内容、利用目的、データ管理者などの 公開 7.個人参加の原則 [個人の権利] データ存在の確認、データを知らしめること、 データに対する異議申し立ての権利 → それに対して、消去、修正、完全化、補正 8.責任の原則 1-7の原則を実施する責任(データ管理者)