第 11 回 モデルとしての権限配分 - 不完備契約 (1) おまえのものは誰のもの ?
今日学ぶこと 情報の非対称性 アドバースセレクションモデル 良い人か悪い人かが観察できない モラルハザードモデル 頑張ったかどうか観察できない 頑張った結果が必ずしも成果に結びつかない つまりわからないことが重要 今回と次回 頑張ったこと分かってもらえるが評価してもらえない 頑張ったことが成果につながるが評価してもらえない わかっているのに無視される環境 。 このときにどんなことが起 こるのか ?
不完備契約 完備な市場 おこる状況すべてに対して 、 契約が結べる状況 不完備な市場 おこるであろう状況に対して 、 契約が結べない状況 例 震災前に大津波や原発事故に対する備えは軽視されていた ( ファイナンスやマクロ経済で重要 ) 努力したことは明らかでも報いられない ( テスト直前顔色 が悪い人と血色がいい人 ) → 講義で扱うのはこちら
× 不完全市場 完全市場とは 1. 市場参加者がプライステーカー 2. 均一市場 ( 同じ材は同じ値段 ) 3. 完全情報 ( 材・サービスの質と価格を知っている ) 4. 平等なアクセス 5. 自由な参入・退出 完備だが完全でない例 : よくある寡占モデル 完全だが完備でない例 : ある状態 ( たとえば大地震 ) に対 する保険が存在しないマクロ経済
検討する状況 参加者 アセンブラー : サプライヤーから中間財を買って売る 簡単化のため 、 アセンブラーは何もしない サプライヤー : 努力して ( 投資コストを払って )、 最終品質 ( 売上 ) を向上させる 投資以外のコストを 0 と仮定 。 あるいは減価償却前利益と思ってお いてください 。 タイムライン 1. アセンブラーが中間財の製造をサプライヤーに依頼 2. サプライヤーが投資し 、 中間財を生産 3. サプライヤーがアセンブラーに中間財を販売し 、 それをアセン ブラーは即販売 情報の非対称性・不確実性はなし つまり 、 投資した水準も明らかだし 、 投資からどの程度儲けられる かかも明らか
想定している状況 トヨタとデンソー デンソーが良い部品を作ることで 、 トヨタの売上や利益が 増える 上場子会社の存在
努力とこの財からの利益の関 係 利益関数 売上 q(e)=10e-e 2 投資コスト c(e)=2e 総利益関数 : TP(e)= 8e-e 2 First Best : e*=4 総利益 : TP*=16 投資を行うのはサプライヤー サプライヤーは中間財をア センブラーに販売 アセンブラーは中間財を ( 簡 単化のため ) そのまま販売し 、 売上を得る
注意点 サプライヤーの投資は実際の取引前 取引時点ではサプライヤーのコストはサンクコスト よって 、 交渉に組み込めない 交渉力 アセンブラーが手に入れるであろう価値をどちらがどれだ け採るかを決めるのが交渉力 良くある例では 1/2 ずつと仮定
利益の配分 ( 完備契約の時 ) 交渉力が完全にアセンブラー 交渉力が完全にサプライヤー
利益の配分 ( 完備契約 ) 交渉力が半々
発生する問題 (1) 不完備な契約 努力に応じた契約はできない 。 となると 、 あとは交渉しかない ここでは 、 交渉力が同じとする 。 つまり 、 売上の半分がアセン ブラーに 、 半分がサプライヤーに行くと仮定 サプライヤーの利益 利益関数 : SP(e)= サプライヤーの最適努力 : e s = サプライヤーの利益 : サプライヤーへの配分額 : アセンブラーの利益 : 総利益 : ← FB の時より 1 減少
発生する問題 (2) 不完備な契約 努力に応じた契約はできない 。 となると 、 あとは交渉しかない サプライヤーの交渉力がゼロの場合 サプライヤーが全交渉力を持つ場合
なぜ問題が生じるか 投資後に交渉となるので 、 そうなることを見越して事前 に投資水準を決める 投資に見合うリターンの一部が交渉相手に行くため 、 投 資水準は必然的に下がる その結果 、 FB が達成できず 、 双方の分け前も減る可能性 がある このような問題を という
練習問題 利益関数 売上 q(e)=12e-e 2 投資コスト c(e)=4e 総利益関数 : TP(e)= 8e-e 2 First Best : e*=4 総利益 : TP*=16 サプライヤーとアセンブラーの交渉力が半々の時のサプ ライヤーの投資水準と各々の利益を求めよ
解法
まとめると