製品の音（機械音） のデザイン 岩宮 眞一郎 九州大学大学院 芸術工学研究院
視覚だけでなく聴覚にも 訴えるデザイン 音楽のみに価値，騒音はなくせばいい --- という時代ではない 聞かせようとしない音（機械音）で も音質が問題に
感性にアピールする製品音 音で差別化 自動車のエンジン音，ドアの開閉音 走りを感じる音，高級車にふさわしい開 閉音 カメラのシャッター音（デジカメ） 撮ったという実感 家電製品の音 なくていいとも限らない（騒音抑制 → 音 質） → 製品の魅力
自動車のドアの開閉音 高級車にはふさわしい開閉音 → 製品の魅力 ＜低くて収まりのいい 音＞ 製品から発生する音は 製品の一部 デザインの対象
ＨＶ車，電気自動 車に付加する音 「静か過ぎて気付か ずに危険」 視覚障害者らから指 摘 ↓ 国土交通省は、疑似 エンジン音などを出 す「車両接近通報装 置」の搭載を義務付 けると発表。 ガイドラインを示し、 義務化される前にも 積極的に搭載するよ う、メーカーに要請 （ ）。
ハーレー・ダビットソンのこだわり The Sound of a Legend 空冷 45 度Ｖツインエンジン（ 1909 から）の音 ハーレーの魅力 ＝外観＋フィーリング＋サウンド エンジン自体の改良がなされても，世界各国 の騒音規制をクリアしつつも，「ハー レー・サウンド」にこだわってきた 排気音をユーザーの好む音にデザインし，そ の他の音を極力押さえ込む 登録商標化（ Sound Trademark ）（ → 失敗）
直列 4 気筒エンジン による、スポーツタ イプのバイク HORNET ・ CB400 ・ GSX-R750 ・ CBR900 V 型 2 気筒エンジン による、ハーレーに 代表されるアメリカ ンタイプのバイク XL1200 ・ DS400 ・ VRX 短気筒エンジンの バイク GB250 ・ SR400 原動機つき自転 車に分類される 小型バイク、ま たは小型スクー ター NS1 ・ Cub ・ vino ・ alloro125 バイクのアイドリング音，走行音の音質評価
バイクのアイドリング音に対する好み ライダーは，低域を好む 非ライダーは，大きな音を嫌う ライダー，非ライダーとも，高域を嫌う マッチョでドスのきいたアイドリング音 を好む
バイクの走行音（ 60km/h ）に対する好み ライダーは大きく，変動感があり， 高域の優勢な音を好む （速度に対応して） ライダーはバイクをイメージする 非ライダーは，ライダー好みの音に不快感 ブイブイうなって かん高くほえる走行音 を好む
家電製品に対する意識（同居 57 名／単身 48 名 ） 「うるさ い」製品 掃除機 ミキサー ドライ ヤー
音によって悩まされる製品 悩まされる製品があると 回答した人は 57 名（全体 の 54% ） 掃除機、洗濯機、パソコン、ドラ イヤーは音によって悩まされる人 が多い パソコン：うるさくはない（ 1.93 ） が、悩まされる人は多い（ 11 人） ミキサー：うるさい（ 3.34 ）が、 悩まされる人は少ない（ 3 人）
居住空間における家電製品の音の騒音レベルと主観評価 製品名 対象 数 L Aeq [dB] うるさ さ 改善要 求 洗濯機（洗濯） 洗濯機（脱水） 掃除機 電子レンジ ミキサー パソコン プリンター エアコン 扇風機 換気扇 ドライヤー 空気清浄機 IH クッキングヒーター
コンパクトの開閉音 → デザインの対象 きれいになれる 予感がする
コピー機の 操作音 製品イ メージ カバーの開閉音 トレーの着脱音
[kHz] Time [s] 擦れ音 衝突音 0.2 s (b) トレー収納：高域の擦れ音（キー） → 「不快」「安っぽい」
カバーを閉じる：低域成分（ボン、ド ン） → 「丈夫」「高級」 Time [s] [kHz] (d) 0.1 s
カメラのシャッター音 「撮った」という実感を感じさせる音 ミラーバウンド時間を短く，減衰を速く → 歯切れがよい，シャキッとして気持ちがいい デジカメの音のデザイン？ グレード応じた音（リアルな音、ハイパー な音）
機械音の音質の経済評価 不快な音のするドライヤーの音質を改善 これに対していくら払うか？ 仮想評価法によると 改善前 3,800 円とする 改善後 500 円程度なら余分に払う 音の価値？
元の価格（ 3,800 円）に対する上乗せ額に対す る受託確率（その価格で購入を決意する確 率） \469 音は商品に付加価値を与える 音質の改善に対する 付加価値 元の価格の 12%
各属性の相対重要度（ドライヤー） 12 各属性 メーカー 型式 イオン 重量 音質 価格 発生機能 音の価値は１０％
音が魅力のモノづくり 製品から発生する音（出そうとしてい るわけではない）に気を配ってこそ 美的感性にアピールできる 高級製品には、その価値にふさわしい 音 → 音の付加価値の創造