© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 日本版新生児蘇生法ガイドライ ン 2015 改正点のポイント 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会.

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© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 日本版新生児蘇生法ガイドライ ン 2015 改正点のポイント 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 NCPR ガイドライン 2015 作成準備委員会 日本蘇生協議会編集委員 田村正徳 共同座長 杉浦崇浩 細野茂春 作成準備委員会 諌山哲哉、石川 源、茨 聡、大浦訓章、加部一彦、草 川 功、 柴崎 淳、島袋林秀、関 博之、関沢明彦、西田俊彦、 徳増裕宣、藤原崇志、正岡直樹、村瀬正彦、和田雅樹 新生児蘇生法普及 事務局 中川正弘、木谷文治

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 アルゴリズム改訂コンセプト 蘇生に立ち会う医療従事者が誰であって も 遅延なき有効な人工呼吸が実践でき、 質の高い安全な医療が担保されることを 主眼としている。 特に生後 60 秒以内の行動は、遅延なく 人工呼吸をするための流れであり、 その中で行う初期処置は、有効な人工呼吸 を 開始するための準備の一面である。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 救命の流れ救命の流れ 安定化の流れ安定化の流れ NCPR アルゴリズムのコンセプト

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会

① ② ③ ④ ⑤ ⑥

2015 年版アルゴリズム変更点 蘇生中 ( 分娩室)の体温管理 生後 60 秒以内の時間軸の表示 心電図( ECG) モニターについて 換気の有効性の評価 胸骨圧迫時の酸素濃度 アドレナリンの使用 i. ii. iii. iv. v. vi.

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 ① 蘇生中 ( 分娩室)の体温管理

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 分娩室での体温維持 推奨と提案 仮死のない新生児の体温は出生後入院 を通して 36.5 から 37.5 ℃に維持すること を推奨する。 入院時の体温は結果の予測因子として記 録すべきである。

生後 60 秒以内の時間軸の表示 © 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 NCPR2010 アルゴリズム 人工呼吸の開始は遅くとも 60 秒以内に !

NCPR2010 ③ 心電図( ECG) モニターについて © 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会

心拍確認における ECG とパルスオキシメータまたは聴診の比 較 推奨と提案 蘇生を必要とする児において、迅速かつ正 確な心拍測定のために ECG モニターを使用して も良い。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 心拍評価の重要性 心拍数は介入の変更またはより進んだケアの 必要性を決定する i. 過大評価 必要な介入の遅れ ii. 過小評価 不必要な介入 人工呼吸・胸骨圧迫の遅れ !

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 換気の有効性の評価 2015 版 2010 版

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 人工呼吸・胸骨圧迫中の酸素濃度 人工呼吸開始時の酸素濃度 ⇩ 空気 NCPR2010 速やかに 100 %酸素で換気 胸骨圧迫開始時の酸素濃度 NCPR2015 胸骨圧迫中の酸素投与が推奨。 酸素濃度を上げることが堅実 で 自己心拍が再開すれば、 速やかに酸素濃度を調整する。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 心肺蘇生中の酸素濃度 推奨と提案 胸骨圧迫が必要になれば、酸素濃度を上 げることが堅実であろう。自己心拍が再開 すれば、速やかに酸素濃度を下げるべきで ある。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 ⑥ 1. アドレナリンのエビデンスは 乏しく人工呼吸と胸骨圧迫を 中断してまで実施する処置では ない。 2 .投与可能な状況であれば 投与経路・投与量とも推奨の 変更はない。 3 .薬物投与の際にも人工呼吸と 胸骨圧迫は連動して続ける。 アドレナリンの使用

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 呼吸の安定化のアルゴリズム

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 呼吸の安定化のアルゴリズム

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 早産児の蘇生 臍帯遅延結紮 臍帯ミルキング 体温管理 蘇生を受ける早産児の酸素濃度 分娩室での PEEP 使用 出生時の呼吸障害に対する CPAP i. ii. iii. iv. v. vi

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 1. 臍帯遅延結紮 推奨と提案 直ちに蘇生を必要としない早産児の出生時の臍帯 遅延結紮を提案する。 蘇生を必要とするリスクの高い児の多くが研究か ら除外または取り下げられているため、出生後直ち に蘇生を必要とする早産児に対して臍帯結紮の取り 扱いを推奨する充分なエビデンスは存在しない。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 2. 臍帯ミルキング 推奨と提案 28 週以下の新生児に対し、人における有益性のエビデンス が不十分で有り、臍帯ミルキングを積極的にルーチンで使用 する根拠は乏しい。 臍帯ミルキングは個々の状況、または研究といった環境で 考慮され、初期血圧、血液学的指標、頭蓋内出血を改善し得 る。長期的転帰の改善や安全性に関する根拠は認められない。 ただし、在胎 28 週以下での早産児で蘇生処置を必要とする 場合、 CoSTR2015 で推奨する臍帯遅延結紮は実施困難であり、 蘇生処置の妨げにならない臍帯ミルキングで代用するのは合 理的である。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 3. 体温管理 推奨と提案 病院分娩室でのラジアントウオーマで処置を受け る 32 週未満の早産児では NICU 入院時の低体温 ( 38.0 ℃)を回避することを提 案する。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 4. 蘇生を受ける早産児の酸素濃 度 推奨と提案 35 週未満の早産児の蘇生開始時には、高い酸素濃 度 ( % ) の補充を用いないことを推奨する。 低濃度酸素 (21-30%) を用いた蘇生を開始すること 推奨する。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 5. 分娩室での PEEP 使用 推奨と提案 分娩室での蘇生の間、早産児に対し終末呼 気陽圧換気( PEEP) を使用することを提案する。 正期産時に関してはデータが不十分で推奨に は至らない。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 6. 出生時の呼吸障害に対する CPAP 推奨と提案 分娩室で呼吸サポートを必要とする程度の 呼吸障害がある、自発呼吸のある早産児に対 して、挿管、 IPPV を行うよりも、まず CPAP を 使用すること推奨する。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 早産児の蘇生の要点 低体温を防ぐ環境の整備 臍帯の遅延結紮 (>30 秒)または臍帯ミルキング 自発呼吸のある児では人工換気や挿管を行う前に CPAP を施行する。 IPPV が必要なときには PEEP をかける。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 その他の推奨 ラリンゲアルマスクエアウエイ( LAM ) 推奨と提案 34 週を超える早産児や正期産児の蘇生 において、フェイスマスクでの換気が うまくいかなければ、 LMA を気管挿 管に代わる手段として提案する。 34 週を超える早産児や正期産児の蘇 生において、陽圧換気がうまくいかず、 気管挿管が出来ない状況であれば, LAM を推奨する。

© 日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 蘇生トレーニングの受講頻度 推奨と提案 トレーニングは短期間に繰り返す必要があり、 1 年 に 1 回以上の頻度で行う事を提案する。受講生の必要 性に応じて訓練を繰り返すことが、特定の行動や技 能を育てる可能性がある。