FD 海外研修報告 University of Illinois at Urbana-Champaign (UIUC) Department of Computer Science (訪問期間: 2009 年 2 月 19 日~ 3 月 11 日) ソフトウェア基礎学講座 安本慶一.

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FD 海外研修報告 University of Illinois at Urbana-Champaign (UIUC) Department of Computer Science (訪問期間: 2009 年 2 月 19 日~ 3 月 11 日) ソフトウェア基礎学講座 安本慶一

概要 イリノイ大学,計算機科学科の紹介 ◦ 大学に関すること ◦ 入学に関すること ◦ 各種イベントに関すること 訪問先 MONET Research Group の紹介 ◦ MONET での研究指導方針の紹介

University of Illinois at Urbana-Champaign (UIUC) 米国イリノイ州の州立大学 (1867 年創立 ) ◦ 18 の学部,約 4 万人の学生 ( 学部: 3 万人,大学院: 1 万人 ) ◦ 3 キャンパス: Urbana-Champaign, Chicago, Springfield 全米ランキング( U.S. News & World Report’08 ) ◦ 全学: 5 位(全 public university 中) ◦ 工学部: 4 位 ◦ コンピュータサイエンス: 5 位  MIT, Stanford, CMU, UC Berkeley 等とトップクラス争う 発明: LED, IC, Transistor, MRI, Plasma Screen, etc 卒業生が作った会社・組織 ◦ Netscape, AMD, Oracle, YouTube, Lotus, Delta Air Line, NFL, etc

場所 6km 2 に 286 のビル NCSA Siebel Center (Computer Science)

Department of Computer Science 全米ランキング: 5 位 研究分野(教員 53 名) ◦ Algorithms and Theory: 4 名 ◦ Artificial Intelligence: 7 名 ◦ Architecture, Parallel Computing and Systems: 10 名 ◦ Bioinformatics and Computational Biology: 1 名 ◦ Cultural Computing: 1 名 ◦ Database and Information Systems: 3 名 ◦ Graphics, Visualization and HCI: 4 名 ◦ Systems and Networking: 10 名 ◦ Programming Languages, Formal Systems, and Software Engineering: 9 名 ◦ Scientific Computing: 4 名 関連研究機関 ◦ National Center for Supercomputing Applications (NCSA), Beckman Institute for Advanced Science and Technology, Coordinated Research Laboratory (CSL), Information Trust Institute (ITI), Institute for Genomic Biology, Biotechnology Center, etc

Siebel Center (Computer Science Building) 卒業生 Thomas M. Siebel 氏の寄付( 3200 万ドル)により建設. 2004 年春オープン

大学院への入学 願書提出 主に書類選考で学生を選抜 選考基準:出身大学,成績, recommendation letter3 通の内容 など 2009 年度 ◦ 募集人員: 20 名程度 ◦ 出願: 1000 名以上 ◦ 実質倍率:併願も多いので, 10 倍程度? 博士前期・後期一貫教育 ◦ 2 年目に qualifying exam に合格しないといけない ◦ 学費,生活費は教授の研究費から支払われる

Qualifying Exam 日本でのドクターコース進学試験に相当 試験前 ◦ 25 本の研究論文が受験生に提示  networking, security, distributed systems, operating systems, real-time systems から 5 本ずつ ◦ 試験 2 週間前に,追加で 2 本の論文が提示 試験当日(試験時間は 2 時間) ◦ 最後に提示された 2 本の論文の内容をプレゼンテーション ◦ 25 本+ 2 本の全ての論文の内容について,試験官が質問 合格率 ◦ 60% ~ 70% ◦ 2 回まで受験可能 ◦ 不合格者は大学を去る(ただし,修士号は取得できる)

教員と学生の雇用関係 学生 1 名を受け入れるのに年間 1 千万円程度必要 ◦ 学費 300 万円,生活費 300 万円,諸経費 400 万円 ◦ 10 名の研究室では年間約 1 億円必要 教員にとって研究費獲得は死活問題 ◦ NSF (National Science Foundation) ◦ 政府機関 ◦ 民間企業 研究費獲得のためには研究のアクティビティを 高く保つことが必要 ◦ 各分野でのトップレベル国際会議に論文が毎年採録 されることは必須(学生の就職にとっても重要!) ◦ 優秀な学生の確保・育成が非常に重要

就職 博士号取得後,ほとんどの学生は企業 に就職 大学関係はごくわずか  競争率が高く難しい

Job Talks (公開面接リハーサル) アカデミック分野に就職したい学生が開催 ◦ 教授数名,学生が参加( 20~30 名) 内容 ◦ 博士論文内容の紹介 ◦ 研究業績の紹介(これまでにどれだけレベルの高い 国際会議やジャーナルで発表したか) 質疑応答 ◦ 発表中でもどんどん 質問・コメントが入る ◦ 結構厳しい内容

著名人によるセミナー コンピュータサイエンス関係の著名人によるセミ ナーが毎日のように開催 (NCSA, CSL など関連部署含む ) 3/5 William Wulf, バージニア大教授 3/9 Silvio Micali, MIT 教授 3/10 Mani Chandy, Cal Tech 教授 … (なぜかゲーム理論の応用の 話が多かった?)

概要 イリノイ大学,計算機科学科の紹介 ◦ 大学に関すること ◦ 入学に関すること ◦ 各種イベントに関すること 訪問先 MONET Research Group の紹介 ◦ MONET での研究指導方針の紹介

MONET research group MONET: Multimedia Operating System and Networking Group Principal Investigator: Prof. Klara Nahrstedt ◦ ACM SIG Multimedia Chair ◦ PerCom09 等多数著名国際会議 Chair 歴任 ◦ マルチメディア, QoS の世界的権威 訪問実績 ◦ 2004 年 8 月~ 2005 年 2 月( 7 か月,共同研究) ◦ 2007 年 6 月( 1 週間, ACM NOSSDAV2007 ) ◦ 2008 年 1 月( 1 週間,論文執筆) ◦ 2009 年 2 月~ 3 月( 3 週間,論文執筆) ◦ この他に,ポスドク学生を派遣( 2007 年, 2008 年)

MONET の学生 現在( PhD 1 年目~ 6 年目の学生) ◦ 11 名(中国 3 ,ベトナム 2 ,米 1 ,インド 1, タイ 1 , バングラデッシュ 1 ,他).各学年 2 名程度 学生の研究テーマ 3D テレイマージョン 携帯端末へのデータ配信 アドホックネットワーク 携帯端末の位置推定 Mission-critical 無線通信 ネットワークセキュリティ など

卒業生の主な進路 大学関係 ◦ Univ of New Mexico, Florida Int’l Univ, Venderbilt Univ 2, Cornell Univ, Perdue Univ, Univ of Toronto, Univ of Florida, etc 企業関係 ◦ Google 3, Microsoft 2, Motorola 2, IBM, Boeing, HP, Morgan Stanley, etc

学生指導方針  Outstanding Researcher の育成 1 年目学生には, Technical Writing を徹 底的に教える 日頃から Public Speaking 能力を鍛える Faculty staff が協力して学生を鍛える

教授とのミーティング 週 1 回の学生との個別ミーティング ◦ 時間は 1 時間, 30 分のどちらか ◦ 関連研究・アイデア等詳細にアドバイス 週 1 回の研究室全体ミーティング ◦ MONET ミーティング ◦ メンバの誰かまたはビジターがプレゼン テーションし全員で議論

論文執筆 トップレベル国際会議に論文を通す ◦ IEEE INFOCOM ◦ IEEE ICDCS ◦ ACM Multimedia 1 年目の学生には細かいところまで徹底 的に指導 2 年目以降の学生を共著者に入れてアド バイザ役に 投稿する国際会議の writing style を徹底的 に研究(理論重視,実験重視など) 採択倍率 6 倍以上, 毎年各会議に 2 ~ 3 本採録

Public Speaking 研究発表機会を多数設ける ◦ 研究室内ミーティング,国際会議,学 内・学外イベント等 学生への指導事項 ◦ 数だけでなく「良い」質問をする ◦ 高学年の学生は質問の内容が鋭い

授業で論文執筆!? 研究論文を systematic に書く授業 ◦ 先生による講義 ◦ 学生による論文サーベイ・問題点の議論 ◦ 論文執筆・国際会議への投稿  論文は小グループで執筆  著者順:学生,担当教員,研究室の指導教員 メリット ◦ 所属研究室の研究分野外の研究ができる ◦ 業績になる

おわりに University of Illinois, Department of Computer Science の紹介 感想 ◦ 指導方針的には共通点多い ◦ 博士前期・後期一貫教育,学生のモチ ベーションなど制度的に良くできている ◦ 授業で論文執筆まで指導することは興味 深い