佐久総合病院 総合診療科 高山義浩 平成17年10月11日 インフルエンザの 予防と治療 Prevention and control of Influenza
インフルエンザ ~ なぜ問題か? 感染力が強い とくに小児を中心に大流行し、施設な どでは高齢者への流行が問題となる。 合併症が多い 脳症、肺炎、肝障害、筋炎などなどあ り、高リスク者の超過死亡の主要因と なっている。 Prevention and control of Influenza
インフルエンザの流行 抗原変異が原因 抗原変異により流行を繰り返している。 とくに、大きな変異をおこすと大流行を来 たす。 冬季に大流行 低温と乾燥に強く、飛沫 / 飛沫核感染なの で、冬場の閉めきった室内で感染拡大する。 毎年の国民的流行 600~1200 万人が発症(国民の 5~10% )し、 5,000~20,000 人が死亡する。 Prevention and control of Influenza
ウィルスの構造 3種類 2種類
インフルエンザの予防 うがいと手洗い インフルエンザ感染のみならず、重症化 防止にも役立つ。 ワクチンの接種 予防効果は 100% ではないが、重症化を防 ぐ効果が期待される。 抗ウィルス薬の内服 高齢者や高リスク者については、共同生 活者が発症している場合に予防投与が有効。 Prevention and control of Influenza
インフルエンザワクチン ~ その有効性の評価 対象結果指標相対危険 65歳未満健常者発病 0.1 ~ 0.3 一般高齢者入院 0.3 ~ 0.7 老人施設入所者発病 0.6 ~ 0.7 〃入院 0.4 ~ 0.5 〃死亡 0.2 CDC: MMWR 53(RR-6): 1-40, より作表
Prevention and control of Influenza インフルエンザワクチン ~ 勧奨する対象者 接種を最も強く勧奨する対象者 - 生後 6~23 ヶ月の小児 - 65 歳以上の者 - 2~64 歳で慢性疾患を有する者 - インフルエンザ流行期に妊娠している女性 - 保育所や長期療養施設に入所している者 - 2~18 歳の小児で長期にアスピリン内服している者 - 直接患者の医療に携わる医療関係者 - 生後 6 ヶ月未満の小児をケアする者 接種を勧奨する対象者 - 65 歳以上の者やハイリスク者をケアする者 - 50~64 歳の者
Prevention and control of Influenza インフルエンザワクチン ~ 対象別接種回数 対象者接種量接種回数 0歳 0.1 mL 2回 1~5歳 0.2 mL 2回 6~12歳 0.3 mL 2回 13歳以上 0.5 mL 1回または2回 定期接種対象者 0.5 mL 2回
ワクチン接種の実施手順 1.体温を測定する 2.問診表に記載していただく 3.副反応について説明する 4.ワクチンを皮下注射する 5.ロット番号を記載する 6. 30 分程度院内にて過ごしていただ く Prevention and control of Influenza
ワクチン接種の実施手順 1.体温を測定する 2.問診表に記載していただく 3.副反応について説明する 4.ワクチンを皮下注射する 5.ロット番号を記載する 6. 30 分程度院内にて過ごしていただ く Prevention and control of Influenza 2.問診表に記載していただく - 発熱( 37.5 ℃以上)している人には接種しな い。 - 急性疾患に罹患している人には接種しない。 - 卵によりアナフィラキシー様症状をおこした 人には接種しない。 - 今までワクチン接種で気分不良になったこと がある人については、接種の可否を上級医に相 談する。 - 妊婦への接種は勧奨されるが、 First Trimester における接種は避けた方がよい。
ワクチン接種の実施手順 1.体温を測定する 2.問診表に記載していただく 3.副反応について説明する 4.ワクチンを皮下注射する 5.ロット番号を記載する 6. 30 分程度院内にて過ごしていただ く Prevention and control of Influenza 3.副反応について説明する - 10 ~ 64% に注射局所の痛みがあり、数日間 持続する。 - 発熱、全身倦怠、筋肉痛、頭痛が起こりうる。 - 卵のタンパク成分などによるアレルギー反応 がまれに起こりうる。
ワクチン接種の実施手順 1.体温を測定する 2.問診表に記載していただく 3.副反応について説明する 4.ワクチンを皮下注射する 5.ロット番号を記載する 6. 30 分程度院内にて過ごしていただ く 4.ワクチンを皮下注射する Prevention and control of Influenza
インフルエンザの臨床経過 37 ℃ 40 ℃ (病日) 頭痛・筋肉痛・関節痛 咳・鼻汁 IL12 IFNα TNFα NK cell Killer T cell Antibody
検体感度特異度 咽頭ぬぐい液 60 ~ 90 % 90 ~ 100 % 鼻腔ぬぐい液 70 ~ 100 % 90 ~ 100 % Prevention and control of Influenza 有用性 正診率が高くなり、適切な治療が選択できる。重 症患者では、採血結果を待つよりは速やかな診断が 得られ、院内感染対策ともなる。 問題点 検体中のウィルス量により偽陰性がある。 迅速診断キット
Prevention and control of Influenza 概念 ウイルス感染(インフルエンザ、水痘など)に 続発する急性脳症と内臓の脂肪浸潤をきたす症候群。 インフルエンザ発症から、 Reye 症候群が発現する までの期間は 5~7 日とされる。 症候・所見 ウイルス感染症状の先行後、激しい嘔吐、意識障 害、痙攣(急性脳浮腫)、肝障害、 CK の急激上昇、 高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖 症などの症状が短期に起こる。 Reye 症候群
Prevention and control of Influenza インフルエンザ脳症 症状 急速に意識障害などの神経症状が 進行。異常行動が先行することがあ る。インフルエンザを発症してから、 神経症状が発現するまでの期間は約 1.4 日とされる。 病因 原因は不明だが、血管内皮細胞の 障害が疑われている。発症と重症化 において、 NSAIDs との関連が明ら かになっている。
薬物動態 組織移行性は良好であ り、生体内利用率は約 80% とされる。 投与 3~4 時間後に最高 血漿中濃度となり、半減 期は 7~8 時間である。 食事による影響はほと んどない。 Prevention and control of Influenza インフルエンザ治療薬 ~ オセルタミビル(1)
治療成績 発症 48 時間以内に使用す る必要があるが、「平均 93.3 時間の罹病期間を 70.0 時間 (p=0.0216) に短縮する ことができた」との報告が ある。 Prevention and control of Influenza インフルエンザ治療薬 ~ オセルタミビル(2) 副作用 上腹部痛、嘔気・嘔吐な どの消化器症状が報告され ているが、いずれも軽度で ある。 投与方法 タミフル (75) 2C 2x for 5 days (小児: 4mg/kg 2x )
予防使用 米国の研究では、オ セルタミビル予防使用 により 74% の予防効果 が認められたとの研究 がある。 日本では、 2004 年よ り表のような対象者に 限定して、家族や共同 生活者が発症している ときの予防使用が効能 追加されている。 Prevention and control of Influenza インフルエンザ治療薬 ~ オセルタミビル(3) 予防使用の対象者 1) 65 歳以上の高齢者 2) 慢性呼吸器・心疾患患者 糖尿病などの代謝性疾患患 者 腎機能障害者 投与方法 タミフル (75) 1C 1x for 7-10 days
まずは 皆さんがワクチン接種を受けましょう Prevention and control of Influenza おわり