第5章 センサの基礎知識 メカトロニクス機械を作り上げるには, センサについての幅広い知識と経験が必 要!

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第5章 センサの基礎知識 メカトロニクス機械を作り上げるには, センサについての幅広い知識と経験が必 要!

5.1 センサの使用方法 ★センサの使い方は大きく分けて2つ! (a) メカトロ機械の制御用(b) 機械の性能測定用 ロボット,自動車用エンジン, FA ・・・ 実験用エンジン,各種実験装 置・・・

(1) メカトロ機械の制御用センサ ● ロボット,FA,自動車用エンジンの電子制御・・・ ● 定性的なデータが重要となることが多い。 ● 寸法,信頼性,耐環境性,寿命などが重要となることが 多い。 CCD カメラ 赤外線センサ

(2) 機械の性能測定用センサ ● パソコン計測が主流。 ● 定量的なデータが重 要となることが多い。 ● 取扱い性,測定精度 が重要となることが多 い。 圧力センサ

5.2 センサの分類 (1) 人間の器官とセンサ 人間の 器官 人間の 感覚 センサの種類備 考 目視覚光センサ物体の有無,色,イメージ 耳聴覚音響センサ空気の振動 皮膚触覚振動センサ 温度センサ 圧力センサ 圧力(力),加速度など 温度,風速(流量) 舌味覚(味センサ)化学的性質 鼻臭覚(臭いセン サ) 化学的性質,ガスセンサ

(2) 測定対象による分類 センサの種類 光センサ 磁気センサ 温度センサ 超音波センサ ★使い方やメカトロ機械の種類によって,分類方法は様々。 センサの種類 力センサ磁気センサ 変位センサ温度センサ 位置センサ湿度センサ 速度センサガスセンサ 加速度センサ化学センサ 距離センサ音声認識 光センサインテリジェントセ ンサ 主に直接的な測定 対象(光エネル ギーなど)による 分類。 具体的な測定対象(工学的な物 理量)による分類。

5.3 センサの種類と使用方法 ★どのような種類があるのか? ★何を測りたいときのどのようなセンサを使うのか?

(1) ひずみを測るセンサ ひずみゲージ ● 力学量を測定するための最も基本となるセンサ。 ● 金属線の抵抗の変化を利用している。

● ひずみゲージの接続例 ひずみゲージとパソコンとの接続

(2) 力を測るセンサ ロードセル ロードセルの基本構造 ● ひずみゲージを利用した力センサ。

● ロードセルの使用例 2分力計を用いた魚ロボットの推進性能測定

● ロードセルの使用例 車いす介助者の段差乗り上げ時の負担を測定する装置【設計 中】

(3) トルクを測るセンサ トルク変換器 トルク変換器の基本構 造

● トルク変換器の使用例 発電機性能評価装置 AC サーボモータ トルク変換器 IPM 発電機

● トルク変換器の使用例 発電機の性能評価例

(4) 圧力を測るセンサ ブルドン管式圧力計 ひずみゲージ式圧力センサ

● 圧力センサの使用例 スターリングエンジンの性能評価 圧力センサ

● 圧力センサの使用例 スターリングエンジンの性能評価例

(5) 物体の有無を測るセンサ フォトカプラ 赤外線センサ 赤外線 LED 赤外線受光センサ

● 赤外線センサの使用例

● フォトカプラの使用例 魚ロボットの性能評価装置

● フォトカプラの使用例 スターリングエンジンの回転数計測

(6) 回転角度を測るセンサ ロータリエン コーダ ロータリエンコーダの基本構 造

● ロータリエンコーダの使用例 スターリングエンジンのクランク角度計測 ロータリエンコー ダ

(7) 距離を測るセンサ 超音波センサ ● 超音波を発信し,対象物で反射してく る超音波を再度センサヘッドで受信する。 ● 音波の発信から受信までの時間を計測 することで対象物の位置を検出する。

● 超音波センサの使用例 魚群探知機潜水艦の通信機器

● レーザセンサの使用例 スターリングエンジンのピストン位置計測 レーザセンサ

● レーザセンサの使用例 スターリングエンジンのピストン位置計測

● セミフリーピストン形スターリングエンジン

(8) 温度を測るセンサ バイメタル アルコール式温度計

(8) 温度を測るセンサ シース型熱電対 ● ゼーベック効果:2種類の金属 や半導体の接合部に温度差をつけ ると電位差を生じる現象

● 熱電対の使用例 スターリングエンジンの性能測定 熱電対 銅製ヒータ( φ6×t1.0×64 本)

(9) 流量を測るセンサ タービン式流量 計 マスフロー流量 計 浮き子式流量計

(10) イメージセンサ CCD カメラ (光センサの一 種) CCD カメラを搭載 した魚ロボット

●3 次元 CCD カメラの適用 ● 魚ロボットに 2 台の CCD カメラを搭載し, 物体の立体認識を試みる。 ● 映像信号を水中でリアルタイムに通信 するシステムを構築する。

●CCD カメラの使用例

【演習問題①】 ★身近な生活用品に,何らかのセンサを取 り付け,高性能化・高機能化を図りたい。 具体的な方法を提案しなさい。 その構造・原理を図面で表し,機能およ び役立つ理由を文章で説明しなさい。

5.4 センサ活用例 ★センサを利用した実験装置・研究内容を紹介。 計測用車いす ( 2000 年設計・試 作) 車いす用走行補助装置 ( 2001 年度卒業研究)

(1) 計測用車いす 移動手段 船の旅 旅客船 船舶特有の問題 手動車いすの走行特性 計測用車いすの開発 動揺 不 快? 危 険? 安 全? 快 適?

計測用車いすの開発 ワイヤレス 化 低コスト化 船内での走行実験における 取り扱いやすさ 多くの研究・教育機関での 利用しやすさ 駆動トルクと回転角度の測定 市販の汎用手動車いす

設計時の問題 ハンドリムと車輪 との距離が短い。 トルク測定装置が 車輪の回転運動に 伴い回転する。 車輪の回転数変 動が大きい。 信号線のとりまわしが難し い。 トルク測定装 置の形状に制 限を受ける。 車輪の回転角 度の測定精度 に十分な配慮 を要する。

計測用車いすの基本構造 (a) 外観 (b) 測定部の構造

測定装置系統

駆動トルクの測定

回転角度の測定

データ測定

トルク・仕事・仕事率

走行軌跡と旋回特 性

傾斜装置における走行実験 床寸法: 5.5 m×5.5 m 傾斜角度: 0 ~ 10 deg

測定結果の一例(傾斜角度7 deg )

縦断走行 (a) 速度 (b) 仕事率

横断走行 走行軌跡

計測用車いすのまとめ 1. 本計測用車いすは,ひずみゲージにより駆 動トルクを測定でき,ロータリエンコーダ により車輪の回転角度を測定できる。 2. これらの測定値をパソコンで処理すること で,車いすの走行特性を調べることができ る。 3. 傾斜装置上における手動車いすの基本特性 を測定・評価することができた。

(2) マイコン制御による車いす走行補助装置 船舶のような動揺条件下において手動車いすが、安全か つ快適に操作できるような補助装置を開発する。

手動車いすの構造と走行特性 手動車いすの構造 ・前輪にキャスタを使用。 ・後輪のトルクの与え方 により直進・旋回を行う。 ・重心が後輪車軸の前方 に位置する。 谷側 山側 前輪キャスタ

走行補助方法の検討 どんな車いすにも簡単に取り付けられる。 安全に補助効果が得られる。 A. 前輪の向きの制御 B. 後輪の回転制御(ブレー キ) C. 後輪の回転制御(回転補 助) D. 重心の制御

補助ブレーキ装置の構造

傾斜角センサについて 角度センサ構造 ・ 振り子を応用し、車い すの傾斜角を測定 ・ マイクロスイッチが、 傾斜 角によって 2 段階に 作動

マイコンによるブレーキ装置の 制御 ・スイッチの組み合わせに より、サーボモータの回転 角の制御を行い、ブレーキ 力を調節できる。 回路図 補助ブレーキのサーボ モータをマイコンで制御 する。

製作した補助ブレーキ装 置

補助ブレーキ装置を使用した実験 全長 10m の走行路面中央右側に傾斜をつけ傾斜 角による影響を調べる。 実験に使用した走行路 面

傾斜角 3 度での左右のトルクの様子 補助ブレーキ 制御なし 補助ブレー キ制御あり

補助ブレーキ 制御なし 傾斜角 5 度での左右のトルクの様子 補助ブレー キ制御あり

傾斜角 7 度での左右のトルクの様子 補助ブレーキ 制御なし 補助ブレー キ制御あり

車いす走行補助装置のまとめ 1. 動揺する船舶において,手動車いすの走行が困 難になる原因を調べ,走行補助方法を検討した。 2. 補助方法の検討結果を踏まえ,マイコン制御の 補助ブレーキ装置を製作した。 3. 手動車いすが波状の走行面を走行する際,本補 助ブレーキ装置が左右のトルク差を減少させる ことを確認できた。

(3) 機械制御式車いす走行補助装置

手動車いすの操作・走行特性

( a ) 平面走行時 ( b ) 波状面走行時

波状面走行時の操作と車いすの挙動

通常時 [慣性走 行] トルクが異なる時 [方向修正] 走行補助装置の基本構造

走行補助装置の構造

走行補助装置の部品と外観

カムの形状

走行補助装置を取り付けた車いす

機械制御式車いす走行補助装置のまとめ 1. 車いすにクラッチ機構を取り付けることで,波 状面の直進走行が容易になった。 2. 歯車のバックラッシュやクラッチの切り替えの 強弱によって,わずかな方向修正が難しい。 3. ばねの強さやカム角度の調整機構が必要である。

【演習問題②】 ★我が国は諸外国に例を見ない早さで人口 の高齢化が進んでおり, 21 世紀の半ばに は国民の 3 人に 1 人が 65 歳以上という超高 齢社会の到来が予測されている。このよう な背景のもとで,高齢化社会に役立つメカ トロニクス機械を考えなさい。 その構造・原理を図面で表し,機能およ び役立つ理由を文章で説明しなさい。