市場の失敗とその解決
市場メカニズムでは うまくいかないこと 不安定性 ( 需要曲線右上がり等 ) これまででてきたこと 独占
市場メカニズムでは うまくいかないこと 外部性と公共財 今日見ること 情報の非対称性 公平性の問題
外部性の話
外部性とは 取り引きの参加者以外に影響 をもたらすこと 悪い影響 ( 費用 )→ 「外部不経済」 良い影響 ( 便益 )→ 「外部経済」
外部不経済 取り引き当事者以外に費用を かけてしまう 典型例:公害
外部不経済の例 鉄を生産するとスモッグが出るも のとする。 スモッグは社会の誰かの費用 しかし、鉄鋼会社はそれを払わない
このときの鉄の市場均衡は p x S D x*x* p*p* ここ
これは供給者の限界費用曲線 p x MC D x*x* p*p* スモッグの 費用は含ま れていない
社会全体の限界費用曲線は p x D x*x* p*p* スモッグ の費用が 加わるの でもっと 上にくる S MC
すると、この均衡を余剰分析する と p x D x*x* p*p* S MC
すると、この均衡を余剰分析する と p x D x*x* p*p* S MC スモッグによる 損失
すると、この均衡を余剰分析する と p x D x*x* p*p* S MC 社会的余剰 最大はここ
すると、この均衡を余剰分析する と p x D x*x* p*p* S MC 市場均衡で はこの分、 死荷重 が出 る x ** 社会的に最適な生産量 生産が過剰
死荷重を減らすにはどうするか p x D x*x* p*p* S MC 従量税をか けてみよう S′
従量税をかけると p x D x*′x*′ p* ′p* ′ S MC S′ 均衡はここ に移る
このときの余剰は p x D x*′x*′ p* ′p* ′ S MC S′ 政府の収入
このときの余剰は p x D x*′x*′ p* ′p* ′ S MC S′ スモッグによる 損失
よって、このときの死荷重は、 p x D x*′x*′ p* ′p* ′ S MC S′ これだけ
課税前の死荷重と比べると p x D x*′x*′ p* ′p* ′ S MC S′
減っている。 p x D x*′x*′ p* ′p* ′ S MC S′
ここを通るような税率なら最適 p x D x*′x*′ p* ′p* ′ S MC S′
つまり 普通は、費用が多くかかれば相対価格が 上がり、消費が減る。 → 自動的に節約 外部不経済では、供給者に費用がかから ないので、間接税で人為的に相対価格を 上げる → 消費が減る。 → 自動的に節約 税収で、外部不経済の被害者に補償 → 費用を受益者に帰属。 すなわち、普通の取引と同様になる。
外部経済 取り引き当事者以外に便益を 及ぼす 例:養蜂業 → 果樹園 教育 → 社会全体 この場合の均衡は、社会的余剰最 大の時よりも過少生産になる。 → 補助金などの政策
公共財 「非競合的」で「非排除的」な財 非競合性 何人利用しても減らないこと 非排除性 誰でも利用できてしまうこと 例 ) 取引秩序、治安、一般道路など 私財で生産するとみんながタダ乗り
公共財 私財で生産するとみんながタダ乗り 究極の「外部経済」 市場均衡では全くの過少供給 そこで 政府が必要になる。 租税を強制徴収 → 公共財供給
情報の非対称性の話
医療保険が営利商品だけなら どうなるか 需要側:自分の健康状態を知っている 供給側:客の健康状態をよく知らない 情報の非対称性
需要曲線は、 p x このへんは高くて も需要する人。病 気がちの人が多い。
需要曲線は、 p x このへんは安くな ければ需要しない 人。健康な人が多 い。
供給曲線は、 p x 病気がちの加入者 が多ければ、医療 費支払いが多いの で、費用が大きい。
供給曲線は、 p x 健康な加入者が多 ければ、医療費支 払いが少なくてす むので、費用が小 さい。
供給曲線は、 p x 実際には、保 険会社は、健 康な加入者と 病気がちな加 入者の割合を 予想して供給 態度を決める。
均衡はこうなる p x このへんの健康 な人は加入しな い。 D S 思ったより病 気がちの人が 多いなあ
保険業者が予想を切り替える p x D S 思ったより病 気がちの人が 増えたなあ 比較的健康だっ たこのへんの 人々が保険料が 上がって脱落す る。
保険業者がさらに予想を変える p x D S こうやって加入 者の中でわりと 健康な人から脱 落していく。 思ったより病 気がちの人が 増えたなあ
結局最後には p x D S 市場が消滅す るか
結局最後には p x D S 一部のお金持ちだけ で市場が成立する 今のアメリカが近い
そこで、全員強制加入の公的医 療保険制度がとられている。
医療が自由市場になると どうなるか 需要側:診療の品質がよくわからな い 供給側:自分の診療の品質がわかる 情報の非対称性
供給曲線は、 p x このへんは高 い費用をかけ て良質な診療 をする供給者 が多い
供給曲線は、 p x このへんは費 用をケチって 手を抜く供給 者が多い
需要曲線は、 p x 品質が良けれ ば高くてもみ んな需要する
需要曲線は、 p x 品質が悪けれ ば安くないと 需要しない
需要曲線は、 p x 実際には、 人々は良質な ものと悪質な ものが混ざる 確率を予想し て需要態度を 決める。
均衡はこうなる p x このへん の良質な 供給者は 脱落する。 D S 思ったより質 がよくない気 がするなあ
需要者が予想を切り替える p x D S なんだかもっ と質が悪く なったような 比較的良質 だったこの へんの供給 者が、価格 低下で脱落 する
需要者がさらに予想を変える p x D S こうして営 業している 供給者のう ち良質なも のから脱落 していく なんだかもっ と質が悪く なったような
結局最後には p x D S 安かろう悪 かろうで市 場が成り立 つ 価格自由化後 のタクシー市 場で似たこと が起こった
こういう場合はどうするか 1.公的な価格規制 価格が公定されているもの ・ 診療報酬、薬価 ・ 介護保険単価など ・ かつてのタクシー運賃 ・ 需給調整が自動的に働かない ・ 技術革新が阻害される 等の問題も
こういう場合はどうするか 2.「シグナリング」が起こる 何でもいいからコストのかかることを して見せて、高品質生産に耐えられる 業者であることを示す。 ・ 有名人を起用したコマーシャル ・ 一等地の店舗 ・ 「桐の箱」 ( 「学歴」も同様 ) ・ シグナリングの費用は死荷重
こういう場合はどうするか 一番大事なのは、情報が対称 になるようにすること ・ 情報公開のための規制 ・ 検査機関 ( 行政、企業、 NPO 等 ) ・ 供給者側の挙証責任 → 訴訟 ・ 需要者側による事業の内部化 例 ) 消費生協、医療生協等
最後に公平性の問題
市場均衡は効率的 取り引きすればみんながトクす る パレート改善 均衡に落ち着く パレート改善の余地なくなる パレート最適 ( パレート効率的 )
世の中全体の均衡状態は いろいろあり得る 人々の当初の資産保有の状態に よって、落ち着く均衡が違う。 どれもパレート最適 優劣はつけられない ?
こんな均衡もある 大資産家 均衡での財 産所得大 利子、地代、 配当など 資産の積み増しに使う 資本や土地 を供給
こんな均衡もある 資産がない 生活費で費やされる 労働力を供給 安い賃金
だから、市場均衡だけでは 公平性は保証されない
その他の市場の失敗 貨幣の過剰需要 総需要不足による失業 後期の「基礎経済原論 II 」 ( マクロ 経済学 ) で勉強する