社会保障改革の経済学
年金問題の解決策 賦課方式から積立方式への移行こそが急務 しかし、「真っ白なキャンバスに今から新 しく絵を描くように」積立方式を選ぶこと はできず、現在の賦課方式の「清算」をし てからしか積立方式に切りかえられない。 2 重の負担問題とは この2重の負担があるために積立方式移行 は現実的ではなく、一度、賦課方式を選択 した以上は積立方式に戻ることはできない という専門家の主張
積立方式への誤解 ①「2重の負担があるから積立方式に移 行できない」 ②「積立方式は個人勘定なので、保険機 能を持たない」 ③「積立方式はインフレに弱い」 ⇒これらは全て嘘。 「フィッシャー効果」
積立方式移行の実際
年金債務は、 670 兆円。積立金は 130 兆 円なので、純債務は 540 兆円。
世代間不公平の解消はそれほど大きい わけではない。 2 重の負担が大きすぎる 結果。
①老後の年金受給に見合った保険料率と、② 2 重 の負担分の保険料率に、区分経理 ①は、いわば、純粋な積立方式であった場合の 保険料率 1980 年生まれの 5.7 %、 2010 年生まれの 7 %もの 保険料率が、 2 重の負担分に対応 「積立金を 2100 年以降も枯渇させない(政府が 赤字国債を発行しない)」というルール(制 約)の下では、なかなかこれ以上、 2 重の負担分 を減らすことが出来ない。
現実的な改革案 「基礎年金財源の税方式化」と同じタイ ミングで積立方式移行を図る 厚生年金の基礎年金拠出金分の保険料が 不必要。本来、厚生年金の保険料率は大 幅に下げることが可能だが、下げずにお いて、将来にわたって保険料率を固定。 見かけ上、保険料率を引上げずに、実は 保険料率を一気に引上げたことと同じ効 果が得られ、積立方式へ移行可能
2009 年以降の保険料率を %に固定す ることにより、積立方式に移行できる 2008 年 10 月現在の厚生年金保険料率は %なので、ちょうど保険料率を 1 %引 下げることができる計算。 世代間不公平は大幅に解消 2 重の負担としてあった膨大な過去の純債 務分の追加負担は、基礎年金拠出金が無く なったことにより打ち消された 厚生年金受給者の基礎年金分( 1 階部分) が無くなるわけではない。
この無くなった 2 重の負担分は誰が負担し ているのかといえば、まずはとりあえず、 国が肩代わり。国の負債として区分経理。 この軽減策として、まずは、相続税から の徴収 クローバック制度 基本は消費目的税化。 基礎年金の消費目的税は、国民年金加入 者にとっては基礎年金の対価、厚生年金 加入者にとっては 2 重の負担の追加負担分 という仕分け
同じ消費税率負担では、厚生年金加入者の 負担が重く、不公平。 過去からの相続税徴収分に応じて、税の還 付もしくは所得税の控除がなされるという 制度導入。 少なくとも初めの 30 年程度の間、厚生年 金受給者の実質的な消費税率(基礎年金目 的税から税還付・税控除を差し引いたも の)を低く抑える。 景気を悪化させる効果も抑える 相続税徴収及びクローバックへのプレッ シャーも厳しいものになり、取立てが進む。
相続税収がやクローバックが無くなった その後はどうするかといえば、税還付・ 控除分を持続させるために、国債発行に よる財源調達 つまり、政府が赤字国債をロールオー バーして負担(積立金がプラスという制 約から解き放つ)。 基礎年金財源の消費目的税も積立勘定を 持たせて、税率を平準化することが望ま しい。
医療保険の積立制度移行 1 国全体の医療保険を全て統合したベース 公費投入分も含めて積立方式移行をした 場合に、どのような保険料率になるか。 賦課方式の下では、今後急速にその保険 料率は引き上がり、そのピークである 2072 年には %。 積立方式の保険料率は、 %。今、直 ちに引上げる。
医療保険の保険料率の推移
純債務は、 380 兆円。これが 2 重の負担分。 100 年間に渡り負担をならすと、積立移行 可 医療保険積立金の推移
医療保険における世代別の生涯保険料率の比較
介護保険の積立制度移行 1 国全体の医療保険を全て統合したベース 公費投入分も含めて積立方式移行をした 場合に、どのような保険料率になるか。 賦課方式の下では、今後急速にその保険 料率は引き上がり、そのピークである 2087 年に 7.60 % 。 積立方式の保険料率は、 4.81 % 。今、直 ちに引上げる。
介護保険の保険料率の推移
純債務は、 220 兆円。これが 2 重の負担分。 100 年間に渡り負担をならすと、積立移行 可 介護保険積立金の推移
介護保険における世代別の生涯保険料率の比較
現実的な医療・介護改革案 積立制度移行のネックは、現在の保険料 率は一気に引き上がることになること つまり、現在低い保険料を払っている世 代、特に現在中高年の世代から強い不満 しかし、制度拒否がなくなることの安心 感はある。 最後の改革である点、世代間の助け合い である点など、説得材料はある。
それでも保険料引上げに強い抵抗がある 場合、給付引き下げとペアで改革を行な い、保険料率を見かけ上上げない改革を 行なう。 高齢者自己負担率引上げ 免責制度導入 自己負担増には、医療貯蓄口座( MSA : Medical Saving Account ) の導入を図る 勤労者は、労使折半で積立 現在の高齢者は、予備的貯蓄から供出
現在の高齢者を納得させるための諸策 シンガポールの MSA のように、 MSA を家 族間で相続できる制度に その際の相続税や利子課税を非課税とす る 医療保険・介護保険の給付引下げによっ て、公費もかなり削減できるわけなので、 この分の余った公費を、①資産保有額が 非常に少ない高齢者の MSA に充当する、 ②現在の高齢者の MSA 拠出に対して、一 定割合の上乗せ補助金とする