セラミックス セラミックスの物性 第 9 回 6月 1 7日 ( 水). セラミックスの物性 ーセラミックスの材料物性ー 機能大分類: ① 熱的機能 ② 機械的機能 ③ 生物・化学的機能 ④ 電気・電子的機能(含 磁気材料関連) ⑤ 光学的機能 ⑥ 原子力関連機能.

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セラミックス セラミックスの物性 第 9 回 6月 1 7日 ( 水)

セラミックスの物性 ーセラミックスの材料物性ー 機能大分類: ① 熱的機能 ② 機械的機能 ③ 生物・化学的機能 ④ 電気・電子的機能(含 磁気材料関連) ⑤ 光学的機能 ⑥ 原子力関連機能

表1.4 ニュ-セラミックスの機能・材料・応用製品

熱的性質 ◎セラミックス材料特有の熱的問題点 (1)熱衝撃による脆性破壊現象 *) ・・・セラミックスの一般的特徴( ← 「セラミックス材料の問題点」) 「セラミックスの熱膨張係数」[:表 4 .1参照] ・・・金属材料に比べ温度変化に伴う変形能が小さい 表 4 .1 セラミックス材料の熱膨張係数(線膨張係数) * ) 熱衝撃 : 材料における熱の急激な変化(急激な温度変化 ) に伴う 脆性破壊現象

『熱応力の定義』・・・材料内部に温度分布や温度勾配がある時に熱応力が発生 σ t =E ×Δ T ×α σ t :熱応力 E:弾性率 ( セラミックス: E は大):次ページの図(弾性率 E の定義)参照 Δ T:材料内部 ( 例えば両表面部)での温度差 (セラミックス・・・熱伝導が悪いため、通常 ΔT は大) α :熱膨張係数(セラミックス・・・ α は小 ) 熱応力の発生要因:①脆くて弾性率Eの大きい材料[:表4.2参照] ②急激な熱の出入りがある ③熱伝導率が小さくて熱膨張係数 α の大きい(通常は小)材料 *) 熱応力による脆性破壊[=熱衝撃]:熱応力が大きくなり、表面での引張り破壊が 生じるようになると、亀裂が発生し始め、さらに亀裂が進行して全体の破壊に至る (2)多結晶体固有の異方性 ( 結晶粒の配列、整合性等 ) に起因した高温焼結後 ・冷却時に生じる粒界部微小応力やひずみによる脆性の発生 セラミックス材料固有の問題 点 (3)熱伝導率[:図4.3参照] ・・・金属材料に匹敵するセラミックスの開発(ダイヤモンド,CBN, BeO,SiC,AlN,TiC) ↓ 温度勾配が小さくなるため熱応力も小さくなり耐熱衝撃性が向上

熱応力: σ t が大きく、これにより脆性破壊を生じやすい( ≡“ 熱衝撃 ” ) (通常は α は小さいが、 E と⊿ T が非常に大きく、 σ t は大となる) セラミックス材料・・・ 大大小 <熱衝撃による脆性破壊機構>

表4.2 各種材料の弾性率: E (Nm -2 ) 図4.3 各種材料の熱伝導率(W/m・K)

機械的特性 ◎基礎概念[:図4.4,図4.5参照] σ =P/A( σ :応力,P:引張り荷重,A:試料の断面積) ε z = Δ l/l 0 ( ε z :ひずみ, Δ l:荷重Pを加えた時の伸び,l 0 :最初の長さ) σ =E ε z (E:弾性係数=弾性率=ヤング率) 図4.4 材料の変形:引張り(a),せん断(b) ,体積圧縮(c) 図4.5 応力-ひずみ曲線(:室温) ( a)金属材料の場合,(b)セラミックスの場合 [ 重要 ] :金属材料とセラミックス材料の破壊機構 (: 「応力 - ひずみ曲線」 ) の違い

セラミックス・・・[常温域]:弾性限界を超えると亀裂発生・成長 → 破壊 [高温域]:結晶粒界の軟化 → 粒界すべりに伴う延性の発現 ※セラミックス材料の製造時に生じた微小亀裂,気孔,介在物または表面の粒界溝 に応力集中が加わって、亀裂が発生,成長 ↓ 亀裂の進行に対する抵抗性=「破壊靭性」 ・・・一方向引張り応力の場合:臨界応力拡大係数(K 1C )[:表4.3参照] :金属比べ、著しく小さい (K 1C が大きければ、亀裂が進行しにくく、破壊に至る時間が長い) ↓ Al 2 O 3 ,SiC,Si 3 N 4 ,ZrO 2 ・・・セラミックスのなかではK 1C が比較的大きいため、セラミックス エンジン,高温用機械材料への開発が進展

表4.3 各種セラミックス材料と合金鋼のK 1C (M・N・m - 3/2 又は M ・ Pa ・ m 1/2 )

気孔率と強度の関係[:図4.6参照] ・・・試験温度に依存せず極端な強度の低下 [対策]:①気孔の発生がない完全焼結 ②結晶粒の微細化(結晶粒界に存 在する微小亀裂や微小残留応力 の起源・・・結晶粒の熱膨張・ 収縮の異方性に起因) ③結晶粒の規則配列 ( 整合化 ) を促進 ↓ 「セラミックスの機械的性質」 ・・・結晶粒径と気孔率に大きく依存する 図4.6 アルミナセラミックス 曲げ強さと気孔率の関係

補足: 1. アルミナセラミックス・・・酸化物セラミックスの代表 特徴:セラミックスの中で最も使用量が多く、かつ古い歴史をもつ代表的材料 (・・・1930年,ドイツ・ジ-メンス社による自動車用スパ-クプラグ の絶縁体が最初の実用材料) 主要機能特性[:図1,図2,表1,図3参照] :①電気・電子的機能,②機械的機能,③熱的機能, ④生物・化学的機能, ⑤光学的機能

図1 アルミナセラミックスの特性と用途

図2 アルミナセラミックスの 図3 アルミナセラミックスの 高温強度 絶縁特性

表1 アルミナセラミックスの構造特性 高純度かつ 微粒が最良

応用例 :①電気・電子的機能・・・電気絶縁性(ex.スパ-クプラグ,IC基板, ICパッケ - ジ)[:図4,図5参照] ②熱的・機械的機能・・・高温高強度特性,耐摩耗性(ex.切削用工具, エンジン用材料) ③透光性機能・・・単結晶Al 2 O 3 (サファイヤ) :高圧Naランプの発光管,高温用赤外線検知用窓材 単結晶Al 2 ー x Cr x O 3 (x=0.00067,ルビ-) :固体レーザー発振素子 ④生物・化学的機能・・・生体用材料(耐食性,機械特性,生体適合性良好) 図4 スパ-クプラグの構造

図5 アルミナ製IC基板とICパッケージ

2. ジルコニアセラミックス ZrO 2 :1100℃で結晶変態(低温:単斜晶 → 高温:正方晶) ↓ 数%の容積変化の発生(亀裂発生に伴う自己破壊の誘発) ↓ ∴安定化剤の添加(CaO,MgO,Y 2 O 3 を数%~数十%添加) ・・・室温で立方晶を呈し、高温での結晶変化がない 『安定化ジルコニア( Stabilized Zirconia )』 ・・・Zr 4+ とCa 2+ ,Mg 2+ ,Y 3+ の置換によって結晶格子中に酸 素イオンが不足し、酸素イオンの伝導体(=『固体電解質』)と して応用 → 各種酸素センサ素子[:図6,図7,図8, 図9参照]

↓ 『部分安定化ジルコニア(PSZ: Partially Stabilized Zirconia )』 ・・・正方晶ZrO 2 (高温安定相),あるいは正方晶ZrO 2 +立方 晶ZrO 2 (安定化ZrO 2 )の混在構造 :強靱,高強度セラミックス材料 [機構]:PSZセラミックスに外力が加えられた場合、 正方晶 構造が単斜晶構造に相転移して、外力を相転移の 駆動エ ネルギ-として吸収する ∴『結晶転移による強化機構』 ・・・TTZ( Transformation Toughened Zirconia ) 特徴:①高強度,高靭性[:図10参照] ②熱伝導率は小さく(断熱性良好)、 熱膨張 係数は金属に近い[:図11参 照] 図6 Y 2 O 3 添加による ZrO 2 の安定化(単斜晶 から立方晶型への相転移) PSZ :高温・高強度 構造材料 Zr 4+ :結合手が 4 つ O 2- : 〃 が 2 つ Y 3+ :結合手が 3 つ O 2- のホールを介した イオン伝導 ( ・・・結晶中を移動)

図7 安定化ZrO 2 固体電解質を用いた 図8 自動車用排気ガス用 酸素センサの酸素濃度と起電力の関係 酸素センサ素子の構造 E=55.7log 10 P R /P M (E:起電力,P R :大気中の酸素濃度,P M :被測定ガスの酸素濃度) E(O 2- のイオン伝導によって生じた起電力 ) = 55.7log 10 P R ( 大気中の O 2 量 ) P M ( 測定ガス中の O 2 量 )

図9 ZrO 2 セラミックス用途

図10 部分安定化ZrO 2 (PSZ)の強度と破壊靭性

図11 部分安定化ZrO 2 (PSZ)の熱伝導率と熱膨張係数