24時間営業は必要か? ~コンビニエンスストアを例に~ 森田ゼミ 佐藤 茗荷 矢島 脇原
研究動機 今では飲食店や小売業などで当たり前とな りつつあった24時間営業(以下24h 営業) しかし、最近24h営業が見直される傾向 にある 24h営業はするべきなのか? ↓ コンビニを対象に24h営業すべきか検証
目次 第一章 24h営業の現状 1)24h営業を見直した企業例 2)コンビニを分析の対象とした理由 第二章 コンビニの24h営業の立地別分析 1)予想 2)データに基づく検証 ~立地別に見て~ 第三章 24h営業をしない場合 第四章 結論
第一章 24h営業の現状 1)24h営業を見直した企業例 2)コンビニを分析の対象とした 理由
1)営業時間を短縮した大手企 業 日本マクドナルド 2014 年以内に 24 時間営業店 を約 300 店舗削減へ モスフードサービス ほぼ全店舗を午前 7 時開店と し、一部店舗の閉店時間を 前倒し すかいらーく 深夜営業の約 620 店の閉店時 間を平均 2 時間前倒し ロイヤル ホールディングス 24 時間営業店を 3 年間で 7 割 削減 2014/5/3 日本経済新聞
24h営業に新たに踏み切る企 業 アイン ファーマシーズ 8 月に 9 時~ 18 時の営業だった川崎市の店舗を 24 時間営業に変更。 今後も年 2 ~ 3 店設置していく。 クオール 横浜市で実験的に 24 時間営業を実施。 愛媛県に設ける店舗を 24 時間営業化、 2016 年春 までに 10 か店にする。 同社はコンビニエンスストア大手のローソンに も調剤薬局を併設しており、併設店を 24 時間営 業にすることも検討。 ウエルシア ホールディング ス 2015 年から、年 5 ~ 10 か店を出店する。 15 年 1 月に埼玉県内に新たに出す 2 か店を 24 時間 営業にする計画 日本経済新聞 2014/9/4
2)コンビニを分析の対象とする 理由 (平成19年コンビニ白書より)
コンビニエンスストアの定義 コンビニエンスストアとは・・・ 主として飲食料品を中心とした各種最寄り品 をセルフサービス方式で小売する事業所 店舗規模が小さく、終日又は長時間営業を行 う事業所をいう 含まないもの:ミニスーパー、よろずや (衣・食・住にわたって小売するもの) 参考:日本標準産業分類 ( 平成 25 年 10 月改定 )
今回対象とするコンビニの範囲 24h営業をしている店舗 家族従業者を雇っているような、個 人経営の事業所は対象外とする ※コンビニのみについて分析 他の業種については不問
第二章 コンビニの24h営業の分析 1)予想 2)データに基づく検証 ~立地別に見て~
1)予想 根拠:時間帯別利用客数 2013 年 7 月 リサーチバンク調べ
これより コンビニ全体として見ると、深夜帯は客数 が少なく売り上げが低い しかし店舗により差はあるはず ↓ すべての店舗で24時間営業をする必要は ない ではどのような立地にある店舗なら24h 営業してもよいのか?
予想 深夜帯である 0 時~ 6 時にどれだけ収益を出 せるかがカギとなる ↓ 夜に帰宅者が増える場所なら深夜帯でも需 要を創出でき、収益を出せるはず 住宅街が24h営業すべきでは?
2)データに基づく検証 繁華街、駅前、ロードサイド、住宅街と いう立地条件の異なる場所で、深夜帯の 売上の実態を比較 ※繁華街・・・商業施設が多く立ち並び、 人が多く立ち寄る地域 駅前・・・駅周辺の地域 ロードサイド・・・車を主な交通手段とし、店舗に 付帯する大規模な駐車場により集客効果を高める 幹線道路沿いの地域 住宅街・・・住宅が多く集まる地域 某コンビニチェーン店定義よ り
① コンビニを利用する顧客の特徴 ② 深夜帯のコスト分析 コスト分析の方法:カットオフラインの検 証 カットオフライン・・・損益分岐点。 深夜帯の収益がコストに見合うか検証 ※ここでいう深夜帯とは午前 0 時から午前 6 時 までの間とする 比較方法
カットオフラインの検証 コンビニ1店舗あたりの1か月の電気料金は 約20万 その内訳は、空調費14%、照明用32%、冷 蔵・冷凍用33% 深夜営業をやめたときに節約できるのは、照明 費と冬季の空調費 (某コ ンビニチェーンより)
照明費削減量:32% × (6 / 24)=8% 空調費削減量:14% × (6 / 24) × (3 / 1 2)≒ 0.88% → 20万 × 8.88%=1万7760円の節 約 それに人件費を加える 深夜帯の時給を1100円とし、従業員2人と すると 1100 × 6 × 2=1万3200円 ∴深夜営業をするコストは 1万7760+1万3200=3万960 円
立地ごとに比較 対象の立地のコンビニの1日の売上 コンビニ来店客の特徴 深夜帯のコスト分析
繁華街(中 区) 特徴:夕方までの人口が多く、深夜帯の客数の落ち込みが少ない 深夜帯の売上:0~6時の客数は111人 コンビニの一人当たり平均買上単価は約600円 (2014年日本フランチャイズチェー ン協会調べ) よって深夜帯のおおよその売上:111(人) × 600(円)=6万6600 円 深夜帯の全体 に占める売上 の割合: 8.6 %
駅前(中村区) 特徴: 朝と昼の売上が大きい 終電の時間の関係で(終電0:30前後)0時台の客 数が多い 深夜帯の売上:115(人) × 600(円)=6万9000円 深夜帯の全体 に占める売上 の割合: 6.4 %
ロードサイド(帰宅車線、 東区) 特徴:帰宅側なので、夜の客数が多い 客数の変動が一日を通して少ない 深夜帯の売上:52(人) × 600(円)=3万12 00円 深夜帯の全体 に占める売上 の割合: 5 %
住宅地(緑区) 特徴:帰宅者の関係で夜の客数が多い 朝の通勤時の売上が大きい 深夜帯の売上:43(人) × 600(円)=2万5800円 (グラフは全て 某コンビニチェーンより) 深夜帯の全体 に占める売上 の割合: 5.8 %
以上より 繁華街と駅前が深夜営業をする立地とし て最適である ではこれらの立地の共通点とは? 立地深夜帯売上 カットオフライ ン との差 深夜帯の 全体に占める 売上の割合 繁華街 6 万 6600 円+ 3 万 5640 円 8.6 % 駅前 6 万 9000 円+ 3 万 8040 円 6.4 % ロード サイド 3 万 1200 円+ 240 円 5%5% 住宅地 2 万 5800 円- 5160 円 5.8 %
単身者世帯 総世帯数 (世帯) 単身者世帯数 (世帯) 単身者世帯 比率 中区 50,00034, % 中村区 68,87735, % 東区 38,56220, % 緑区 87,67221, % 2010年日本☆地域番付よ り
二章まとめ 深夜帯に収益を望むのであれば、深夜帯 も人の動きが活発で単身世帯の多い繁華 街、駅前といった立地に出店すべき → ではなぜ住宅街やロードサイドといった あまり収益が望めない立地でも深夜営業 しているのか?
三章 深夜に営業しない場合 先ほど述べたように、深夜帯に営業をやめ たときに節約できるのは約3万円 しかし次の観点から、深夜帯に営業しない と、全体の利益から見たときに、3万円以 上の損失を被ることになると考えられる
以下の観点から考察する ① コンビニ側から見て 朝のピークタイムに向けての補充 配送コストについて 清掃業務 ② 顧客側から見て 深夜営業の信頼度 防犯面
ピークタイムは朝、昼、夜の3回 ( P19 ~ 22 参照) もし、深夜帯に営業をしていなければ、翌 朝の一つ目のピークタイムに備えるための 品出しを、オープン前の2~3時間にやら なければならない 朝のピークタイムに向けての補充 ①コンビニ側
品出しに必要な人時 ※2便、3便の作業時間は客に対応する時間を含む → 全仕入れ量における深夜帯(0~6 時)仕入れ量の割合は、約6割5分 時間人員品数(概数)作業時間 米飯類以外の便0~1時1~2600約50分 1便(米飯、パン 類) 3時ごろ1~2550約40分 2便(米飯、パン 類) 10時ごろ3~4450 30~40 分 3便(米飯、パン 類) 15時ごろ3~4400 30~40 分 某コンビニチェーンより
配送コストについて 深夜に配送するほうが、交通量が少ないた め、時間を短縮できるため効率的であ る。 平成23年浜松市 HP ネクスコ中日本交通量計測データよ り
清掃業務の充実 深夜帯のみに行う清掃(毎日): ・フライヤー、中華まん、おでんなどの什 器清掃 (すべて合わせて約3時間) ・床、トイレ清掃など(合わせて約50 分) 深夜帯のみに行う清掃(月1回) ・床のワックスがけ(所要時間約3時間) 某コンビニチェーンよ り
もし深夜に営業しない場合 深夜に行われる品出し、検品、清掃の作 業をほかの時間で行わなければならない 深夜以外の時間の平均来客数は、1時間 に約 63 人(本研究の調査対象店舗のデー タより) この人数を捌きつつ、先に述べた業務を こなすのは非常に難しい
②顧客側: コンビニの魅力とは? スーパーマーケッ ト 白書2014より
時間帯別対応 対応店 舗数 回答件数 6 時~ 11 時台 12 時~ 5 時台 18 時~ 22 時台 23 時~ 5 時台 無回答 本年 9200 店 9200 件 356 件 760 件 2768 件 5114 件 202 件 (比率) 3.9%8.3%30.0%55.6%2.2% (参考) 前年 8360 店 8770 件 468 件 829 件 2492 件 4813 件 168 件 (比率) 5.3%9.5%28.4%54.9%1.9% 対応店 舗数 回答件数 ストー カー 痴漢 急病、け が 暴力その他 本年 9200 店 件 3506 件 1698 件 1589 件 1570 件 2027 件 (比率) 30.2%14.6%13.7%13.5%17.5% ( 参考 ) 前年 8360 店 9870 件 3036 件 1297 件 1313 件 1294 件 1953 件 (比率) 30.8%13.1%13.3%13.0%19.8% 防犯機能 日本フランチャイズチェーン協会平成22年 度調べ 駆け込みの事例
結論 深夜帯の収益を望む点では繁華街や駅前と いった、夜に人の移動があり単身者世帯数の 多い立地で営業すべき → しかし深夜の売上が望めない住宅街やロード サイドでも コンビニというブランドイメージの向上 店舗全体の売上の達成 のた めには 深夜帯は欠かせない時間帯である
参考文献 日本経済新聞電子版 コンビニ白書 日本標準産業分類 リサーチバンク 日本フランチャイズチェーン協会 浜松市ホームページ 日本☆地域番付 某コンビニチェーン協力