ド・プロニーの計算プロジェ クト 林晋
2016/8/12 ド・プロニーの計算プロジェクト フランス革命直後 1790 年,フランスの数 学者 ド・プロニー (de Prony ) が 大数表作成のプロジェクトを始めた ド・プロニー 数表 計算機がない時代の新国家建設のための 大事業 – 印刷経費の問題などで出版に到らず。
2016/8/13 計算機部品=ヘアドレッサー アンシャン・レジームの象徴だった貴族のヘアドレッサ ーたちが革命で失業。参考リンク。その失業対策を兼ね ヘアドレッサーを「コンピュータ」として雇用。参考リンク もちろん、本来の目的は「正しい数表」を作ること。当 時は対数表が航海のための計算にも使われ重要だった。 今のコンピュータの地位!対数表 これについては比較的易しい論文がある: Work for the Hairdressers: The Production of de Prony’s Logarithmic and Trigonometric Tables, 1990, vol. 12, I, Grattan-Guinness , IEEE Annals of the History of Computing 参考参考
2016/8/14 計算の分業体制 ヘアドレッサーは掛算,割り算が正確にできな いので,足し算,引き算に,すべての計算を分 割・分業化した。 実はほとんどすべての連続関数(演算)は、引 き算・足し算の繰り返しだけで近似的に計算で きる。これを階差計算の原理という。 – つまり、大量の計算をすることを厭わなけれ ば、この世の計算の多くは、足し算・引き算 の繰り返しだけでできるということ。 – 後で説明。
2016/8/15 計算の分業体制 計算プロジェクトのチームは,次の三つの階層 からできていた。 – 理論家 – それをもとに計算計画を立てる人 – そして,失業中のヘアドレッサーである「コンピュ ータ」 このプロジェクトの詳しい仕組みは? 階差計算の原理とは何か? それを以下のスライドで説明する。
フランスの大対数表 (§ )241 知的労働の分業が機械的操作(労働)の 場合と同様に可能であり,それはどちら も時間の節約,時間の経済, に結びつく. (241)241 歴史上最大規模に行われたフランスのド ・プロニーの計算プロジェクトが,この 考え方の現実性を説明している (242)242 その考え方の元はアダム・スミスの国富 論にあることをド・プロニー自身が語っ ている。 (243)243
フランスの大対数表続き (§ )244 ド・プロニーが考えた組織構造は三層構 造による「知の分業」だった (244)244 – 上級層 First section: 数学者。数式を考える。 – 中級層 Second section : 数学者が考えた式を 具体的計算に書き換える(コンパイル)。7 ,8名の人からなる。また、計算の検証(検 算)もする。 – 下級層 Third section :実際に計算をする人た ち (60-80 名)。足し算、引き算しかできない ヘアドレッサー(の棟梁の下働きだったらし い)。 Amazon 堺FCの話か、メトロポリスか?
フランスの大対数表 (§ ) 続き244 最下層の労働の量は大きいが、労働の価 格は安くてすむ (at an easy rate, Amazon FC ピッカーの労賃は低い。「部品だから … 」)。 最上層の仕事は大変だが (extertions) 、一 度やれば済む。 (Google PageRank の発明 とグーグル社の設立。) しかし、計算機 (a calculating-engine) が作 られて最下層を置き換える時には、数学 的見直しが必要かもしれない。 (245)245
チャールズ・バベッジ 以上の三枚のスライドの説明は何か変!林の手 抜きか? 実は、この三枚のスライドは、「コンピュータ のパイオニア」といわれる、英国の数学者チャ ールズ・バベッジの経済学書を引用したもの。 林が考えたものではない。二世紀近く前の史料 !斜体の部分のみが林の補足で、他は林による 要約。英国の数学者チャ ールズ・バベッジ
バベッジ「機械と製造業の経済に就い て」 その経済学書とは、1832年に出版された英 国の数学者バベッジの著書「機械と製造業の経 済に就いて」。バベッジのこの本は Amazon で も買えるし、19世紀の古い版が Google Books にある。 (245) のような引用リンクは、その該当 ページへのリンク。Amazon で も買える Google Books しかし、バベッジ? 誰?!